ちゅうカラぶろぐ


[8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  [17]  [18
せっかくの連休に超大型台風がストライク。私も昨日は映画を観に行きたい欲求をこらえて台風に備えて色々買い出ししたり車の給油に行ったりたりしてました。これを書いている今は風は強いけど雨は降っていないというところ。このまま大過なく行ければいいのですが。
 
 こんばんは、小島@監督です。
 もう一つ言うと明日の出勤は大丈夫だろうか…?

 さて、今回の映画は「サバカン SABAKAN」です。

 なかなか小説家として芽が出ずゴーストライターをしながら生計を立てる久田孝明(草彅剛)には、ある忘れられない思い出があった。
 1986年夏、長崎。久田孝明(番家一路)はキン肉マン消しゴムを集めアイドル斉藤由貴が好きな小学生。同じクラスに家が貧しくいつも同じ服を着ていてクラスで孤立している少年・竹本健次(原田琥之佑)がいた。夏休みのある日、ひょんなことから孝明は健次から「イルカを観に行こう」と誘われ「ブーメラン島」と呼ばれる場所を目指すことに。

 後になって振り返れば、自分の人生のきたし方を定めたのは決して大仰な事件ではなく、何気ない日々の中で起きたさざ波のような1日のことだったりするものです。
 空は青く高く、セミの声が鳴り響く夏の日。そんな一日のささやかな冒険は、少年をほんのちょっぴり大人にします。海辺を走り回る日焼けした子供たち、そんな子供たちをごつごつして荒っぽいけど絶妙な距離感で大人たちが見守ります。「子供が大人を見ている感覚」と「大人が子供を見ている感覚」の両方が実に良く映像化されています。
 作家が少年時代を追想する、という形で物語が進むので名作「スタンド・バイ・ミー」をほうふつとさせますが、長崎を舞台にしたグッとミニマムでローカルな雰囲気は決して単なる類似品にさせていません。
 この映画を手掛けたのは、長崎出身で元お笑い芸人でバラエティ番組の構成作家でもあるという経歴を持つ脚本家・金沢知樹。「半沢直樹」などドラマの脚本も数多く手掛けていますが、長編映画の監督としてはこれがデビュー作となります。

 ちょっと感心するのは、ほとんど全てスタジオではなくロケで撮影されているようですが、ある程度手は施しているだろうとは思えどちゃんと「昭和っぽい」雰囲気を映像が醸している点です。いやよく見つけたなあんな場所、と思えるロケーションがポンポン出てきて、恐らく多くの方がこの場所に行ったことがあるとないとに関わらずほのかなノスタルジーを感じるのではないでしょうか。

 ほとんどキャリアは無いらしいですが主演の子役2人の演技が実に瑞々しく引き込まれるうえに、出番は少ないながらも大人になった孝明を草彅剛が演じてその無二の存在感でこの映画を引き締めてくれます。
 
 最近起伏の激しい作品を見過ぎてしまっていたためか、何かヤバいオチがつくのではないかと変な気を揉みながら観ていましたが(苦笑)、そんなことはなくとても優しいところに着地するのも良いですね。
 
 決して派手さは無いものの、まるで夏休みの思い出をめいっぱい詰め込んだアルバムかタイムカプセルのような映画です。かすかなノスタルジーと共に背中を押されるような思いをする方も多いでしょう。
 エンドクレジットのあとにもう1シーンありますので、ご鑑賞の際はどうぞ最後まで席をお立ちになりませんように。

拍手[8回]

エリザベス女王逝去の報が世界を席巻した先週ですが、アニメ界でも1人、偉大な人物が世を去りました。
 小林七郎さん。TVアニメ黎明期だった1960年代から背景美術に携わり、「あしたのジョー」「ガンバの冒険」「ルパン三世カリオストロの城」「少女革命ウテナ」など多くの作品を手がけました。2010年代に入ってからも「ミルキィホームズ」に関わっていたりとまさに生涯現役を貫きました。時に写実的に、時に淡い水彩画のように、時には大胆に省略し僅かな線だけで空間を表現してみせるその手腕に多くのアニメ監督・演出家達は支えられて来たに違いありません。極めて多くの作品に携わっていたので、多くの方が知らず彼の仕事を目にしているはずです。

 こんばんは、小島@監督です。
 時の移ろいとはどうしようもないものですが、今年も次々と偉大な先達が去っていき、何とも寂しい限りです。

 さて、今回の映画は「ブレット・トレイン」です。

 東京、久しぶりに仕事復帰した殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)は、東京発京都行の超高速列車に乗り込みブリーフケースを奪うという仕事を請け負う。何かにつけ不運が付きまとうレディバグだが、難易度の低い仕事に気合を入れて列車に乗り込む。容易く目的のブリーフケースを発見し、次の停車駅である品川駅で降りようとするが、ドアが開いた途端に何故か自分に強い復讐心を抱くメキシコ№1の殺し屋ウルフ(バッド・バニー)と鉢合わせし襲撃を受けてしまう。更に列車内には腕利きの殺し屋コンビ・タンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)&レモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)、乗務員に化けた毒使いの暗殺者ホーネット(ザジー・ビーツ)などが乗り込みブリーフケースの争奪戦が始まる。果たしてレディバグは依頼を完遂することができるのか。

 A級キャストのアンサンブルとB級テイスト満載の荒唐無稽なストーリー、アニメのようにポップなビジュアルが合わさって2時間頭空っぽにして楽しめるエンターテインメントです。原作は伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」、列車を舞台にしたエンタメということで原作でも言及のあるスティーブン・セガール主演の「暴走特急」をどこか彷彿としますが物語は結構ひねりが効いていて意外に一筋縄ではいきません。当初は日本でのロケも計画されていたそうですが、コロナ禍によりそれができなくなり、日本を舞台にしているけど日本では撮影していません。恐らくはそれすらも逆手にとって敢えて全くもってリアルとはかけ離れた、例えば名古屋と米原の間に富士山がそびえているような嘘全開の「ニッポン」をコミック的なビジュアルで見せているのが特徴です。

 バカバカしい世界観ですが決してそれに溺れず、テンポ良くキャラクターのバックボーンを見せたりアクションの組み立てやファッションでも個性を際立たせいてスタッフたちの仕事も光り、俳優陣の演技に更なる説得力を加えています。
 劇中で使われる挿入曲にも遊び心が見え、カルメン・マキの「時には母のない子のように」や坂本九の「上を向いて歩こう」のような歌謡曲までもが効果的に使われています。何よりクライマックスでは麻倉未稀の「ヒーロー」をバックに真田広之の殺陣が展開する、という驚きのシーンが登場。これに無駄にテンション上がるのはある世代以上の日本人だけでしょう(笑)

 だいぶ癖の強い作品なので合わない人もいるでしょうが、ノー天気なものを観たい方や特異なシチュエーションで展開される名優達の化学反応を楽しみたい方、次々とエッジの効いた殺し屋がエントリーしたりヤクザ天狗みたいな奴らが大挙して登場したりするのでニンジャスレイヤー大好きな人たちは絶対に楽しめると思います。どうぞスクリーンでご堪能あれ。

拍手[0回]

面白いもので、声優・武内駿輔さん結婚の報に、身内でも何でもないのに親戚の伯父さんめいた心持ちになるのはやはりTVアニメ「シンデレラガールズ」のプロデューサー役に抜擢されてブレイクしたところを見てるからでしょうか。Twitter覗いたら似た心境を持った方が結構いたようで、どいつもこいつもですよ(笑)

 こんばんは、小島@監督です。
 え?私自身はどうなのかって?HAHAHA!そんなことは良いじゃないか。

 さて、この週末日本ガイシホールで開催された「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LIKE4LIVE #cg_ootd」を、Day1は配信で、Day2は現地で観覧してきました。地元開催ってのはやっぱりいいですね!終演後に仲間内で焼肉食べてもまだ時間に余裕があるしね(笑)!

 今年4月に10周年記念ライブを開催したばかりのシンデレラガールズ、一つの区切りを経て新たなスタートとなる今回のライブでは、センターである島村卯月役大橋彩香さんが出演しているにもかかわらずメインMCを務めるセンターが高森藍子役金子有希さんと久川凪役立花日菜さんだったりと意識的にこれまでの「定番」を外す試みが盛り込まれていました。何よりDay1ではライブの最後を飾る曲として最早定番というより「お決まり」と言えるほどだった「お願い!シンデレラ」ではなく「Brand New!」を持ってきたというのはmobageの「シンデレラガールズ」が来年3月にサービス終了することが告知されていることを思えば実に象徴的であり、新たなステージへ進もうとすることのある種の決意表明とも言えるでしょう(Day2では普通に「おねシン」やってましたが)。
 また、今回はライブ開催前からInstagramやTwitterなどSNSを積極的に活用して連動企画を展開し、そこに加えてナナちゃん人形をデコレートしたり「名鉄観光」「矢場とん」「中部電力MIRAI TOWER」「名古屋市博物館」「名古屋城」など名古屋名所や在名企業各社とコラボレーションする企画「でらます!」を実施したり(こちらは10月末まで開催)ライブ内外から「お祭り感」を醸成して盛り上げてみせたのは配信がライブの主戦場になりつつある昨今へのアンチテーゼのようにも見えます。

 そのライブ自体も各キャラクター固有のソロ曲を他のメンバーがカバーする趣向がふんだんに盛り込まれ、アイドルたちの「新たな表情」と楽曲の「新たな一面」を徹底して見せて行きます。どこから弾が飛んでくるか分からない、まさに予測不能のセットリストがもたらすグルーヴが心地良い。10年かけて「定番」を築き上げて来たからこそ見せられる面白さと言えるでしょう。
 辻野あかり役梅澤めぐさん、砂塚あきら役富田美憂さん、夢見りあむ役星希成奏さんのトリオユニット「#ユニット名募集中」(そういうユニット名)を中核に据えつつ、センターの重責から離れ軽やかさを見せつつも要所をキリッと締める大橋彩香さんや、リリースから2年半越しのデュオ曲の初披露にノッたのか曲の真っ最中にパフォーマンスのレベルが上がっていく結城晴役小市真琴さんと的場梨沙役集貝はなさん、5人以上の多人数ユニットに於いて全体を取り仕切るキーパーソンとしての才を見せる堀裕子役鈴木絵理さん、写真撮らせたら強い二宮飛鳥役青木志貴さん、何かもう全方位的に可愛くてずるい乙倉悠貴役中島由貴さんなど随所に目を引く要素が多く、3時間弱というデレマスにしては若干短めの上演時間ながら実に濃密で楽しいライブでした。

 ライブの最後には次のライブの告知が。てっきり来年初頭くらいかと思いきや11月末。もう直ぐじゃないすか!しかもベルーナドームて。絶対に寒いじゃないか。しかし次回はストリングスユニットが入るとの事で今から期待値も高いです。さてどうしたものか。
 11年目を迎えてもなお攻め続けるシンデレラガールズ、楽しみは尽きませんが、自分の財布とは本気で相談しないといけないかも(苦笑)

拍手[0回]

「アイドルマスターシンデレラガールズ」の10周年を記念するOVA「ETERNITY MEMORIES」の配信イベントが昨日あり、がっつり鑑賞してました。ゲーム内で好評を博したイベントをベースにしたエピソードを始めとして、190人のキャラクター全員が登場するなど10年間の軌跡をこれでもかとばかりに盛り込んだ50分間。情報量が多すぎてちょいと追い切れないレベルの密度でしたが、このごった煮的なところもデレマスの魅力。今週末のライブを前に弾みを付けてくれる良いものが観れました。

 こんばんは、小島@監督です。
 作中、初めてのCDのリリースイベントを基にしたカットがあったのですが資料用としてもほとんど写真が残っていなかったのにたまたま作画スタッフの1人が当時1ファンとしてイベントに赴き撮影した写真を持っていてそれを資料として描き起こしたそうです。何という縁。
 僅か数秒のショットにも、時に歴史が宿る事があるものです。

 さて、今回の映画は「NOPE/ノープ」です。

 南カリフォルニアの片田舎で映画撮影に使われる馬の飼育をして暮らすヘイウッド家。しかし当主で優れた調教師でもあるオーティス(キース・デイヴィッド)はある日空中からの落下物に当たり事故死してしまう。跡を継いだ息子のOJ(ダニエル・カルーヤ)だが父のようにははうまくいかず、妹エメラルド(キキ・パーマー)とと共に撮影現場に向かうが、そこでトラブルを起こし仕事を不意にしてしまった。
 やむなくOJは牧場の近くで西部劇のテーマパークを経営している元子役俳優のジュープ(スティーブ・ユアン)に馬を何頭か売りに出さざるを得なくなってしまう。
 その日の夜、停電が発生し。馬たちが怯えだした。OJは上空に巨大な「何か」が存在するのを目撃する。

 「ゲットアウト」「アス」と言った個性的な作品で脚光を浴びたジョーダン・ピール監督の長編第3作、過去作は配信でしか観ていないのでちゃんとスクリーンで一度鑑賞してみたいなと思っていたところに新作が来てくれました。モチーフとしては未確認飛行物体、いわゆる「UFO」ものですが、そこはジョーダン・ピール監督、一筋縄ではいきません。空に現れた飛行物体、それに遭遇したOJたちは恐ろしいとは思いながらも逃げるどころか何とどうにかしてUFOを撮影して売り込んで一獲千金を目論みます。何ならギリギリまでおびき寄せようとさえするクソ度胸ぶりを発揮。「アス」あたりでも見受けられましたが監督のこの独特の明るさが今作でも表れています。
 また、今作の撮影監督を務めたのは「TENET」などクリストファー・ノーラン作品でカメラを担ってきたホイテ・バン・ホイテマ。スタジオではなくロケ中心であることに加えてIMAXカメラをフルに駆使したダイナミズム溢れる映像が作品に更なる説得力をもたらしています。

 オープニングタイトルで、馬に乗った黒人騎手の姿を投影した連続写真が象徴的に登場します。作中でも言及されますがこれは1878年に写真家エドワード・マイブリッジが撮影した連続写真で、「ゾエトロープ」(回転覗き画とも言われる、静止画を早回ししてのぞき窓を通して観ることで画を動いているように見せる機械)などを使って「動画」としての再生が可能になった写真であり、即ち世界最初期の映像の一つです。ですが作中でも言われるように撮影した人の名は残っていますが騎乗していた黒人騎手の名は残っていません。映画ではこの騎手がOJの祖先という設定になっています。これが象徴するのは「忘れられた存在」たちです。それはOJとエメラルドが黒人であることだけでなく、CG技術の隆盛により実際の馬を使っての映画撮影の機会も奪われつつあることを指し示し、また、かつてはドラマで人気を博した子役であったジュープも「ある事件」をきっかけにショービズから遠ざかりかつての自身の栄光が残した財産を糧に田舎のテーマパークでどうにか再起を図ろうと足掻いていることも指し示しています。
 そんな表舞台から忘れ去られた人たちの前に飛行物体が現れた時、彼らは自分なりの方法で自分を忘却の彼方に追いやろうとする世界に一矢報いようとするのです。それが絶対的に不利で無謀な状況であろうとも。何故なら彼らが取り戻したいのはアイデンティティーだからです。

 ところでジョーダン・ピール監督、結構アニメ好きなようで、クライマックスに「AKIRA」を思い起こさせるシーンがあるほか、ところどころでオマージュしたと思しきショットが飛び出します。その辺を注意して観てみるのも一興でしょう。あと本編には特に関係ないものの何より個人的に目を引いたのが、OJら登場人物たちが何と「キリン一番搾り」を呑むシーンがあります。あれはさすがに身を乗り出してしまいました(笑)
 
 相変わらずクセは強く好き嫌いの分かれるタイプの作品ですが、独自路線を貫くジョーダン・ピール監督の才気煥発さがスクリーンを縦横無尽に駆け回るような楽しさは実に魅力的。俗っぽさ上等。危機的状況でも歯を食いしばり立ち上がる人間のたくましさをどうぞスクリーンでご堪能あれ。

拍手[0回]

偉大な先達の訃報が相次ぐ昨今に、また一人。声優・清川元夢さんの訃報がつい先程流れて来ました。「エヴァンゲリオン」の冬月コウゾウ役が良く知られたところですが、他にも「機動戦士ガンダム」のテム・レイ、「HELLSING」のウォルターなどアクの強いキャラクターを歴任してきました。
 私にとっては何より「ふしぎの海のナディア」のガーゴイル役が印象深く、今でも悪役の最高峰ではないかと思っています。

 こんばんは、小島@監督です。
 四半世紀に渡って冬月役を演じた「エヴァ」が昨年完結して、何か全うされたように思われたのでしょうか。寂しいけれどきっと大往生だったことでしょう。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 さて、今回の映画は「ONE PIECE FILM RED」です。

 かつては「音楽の都」として栄えながらある事件によって一夜にして滅びた島、エレジア。そこに熱狂が戻ってきた。世界で最も注目を集める歌姫・ウタ(声・名塚佳織/歌唱・Ado)が初ライブを開くためだ。ルフィ(声・田中真弓)たち「麦わらの一味」もライブを楽しむために島にやってきた。一方でウタを拉致して一攫千金を目論む海賊たちや彼女の影響力を危険視した海軍本部や世界政府も人員を潜り込ませていた。
 不穏さを宿しながらライブは開幕する。ステージに立つウタの姿にルフィは驚く。ウタはルフィにとって幼馴染であり、12年前突然に姿を消したシャンクス(声・池田秀一)の娘だったのだ。

 最終章へ向けて物語がうねり出している「ONE PIECE」、その連載25周年を記念した劇場版が公開されています。「ONE PIECE」の劇場版もこれが通算15作目。様々な意味でメモリアルな作品と言えるでしょう。2009年公開の「STRONG WORLD」以降劇場版は原作者尾田栄一郎が積極的に関与するようになっていますが今回も総合プロデューサーとして作品に携わっています。脚本は映画「キングダム」やドラマ「グランメゾン東京」などの黒岩勉、監督は「スクライド」「コードギアス」などの谷口悟朗が務めています。谷口悟朗はかつてTVアニメ放送開始前にイベント上映された「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」(1998年。ルフィやゾロたちも現在のシリーズとは声優が異なっている)で監督を務めたことがあり(またこれが同氏の初監督作品でもあった)、今作で実に四半世紀ぶりに「ONE PIECE」に関わることになります。
 音楽を重要視している今作ではTVシリーズで音楽を担っている田中公平・浜口史郎ではなく中田ヤスタカが手掛けており、面白いことに音楽が違うと随分と作品の雰囲気が違って見えます。

 「超時空要塞マクロス」のリン・ミンメイの頃から近年では「BANG DREAM!」「戦姫絶唱シンフォギア」「竜とそばかすの姫」など日本アニメに連綿と流れてきた歌姫の系譜。そこにまた一人新たな名前が刻まれました。ルフィの幼馴染にしてシャンクスの一人娘・ウタ。ルフィの前から姿を消して、再び現れるまでの12年間に何があったのか?が物語の核心になります。はじめは楽しげに歌うウタですが、やがて心の奥底に秘めていた、それこそ海賊も海軍も天竜人さえ敵に回して世界にたった一人で挑みかかるほどの絶望に彩られた狂気が露わになっていきます。

 「今回は音楽映画」と言うだけあり、全編に渡りウタの歌声が響き渡ります。ミュージカルとはまた違い、基本的に「ライブで歌ってる」体なので雰囲気としては「マクロス」や「シンフォギア」のようなイメージが近いでしょう。ウタの心の叫びを歌い上げるAdoのボイスも実にパワフル。色調も華々しくさながらVtuberのMVのよう。楽曲でウタの心情を現しつつそこにルフィたちのアクションもかぶせていくので非常に映像のカロリーも高いです。

 物語自体はウタを中心にシャンクスとルフィを結ぶ一本線が主軸であり、終始そこからぶれずに進むために話に振り落とされるような複雑さは無いのですが、ここに多量な要素を肉付けしているため登場人物は非常に多く、付随して描きこまれている情報量も多いです。ところどころ終章へ向けての伏線とも取れる描写もあり、長年のファンはなるたけ細部にも注目した方が良さそうですね。
 一方であくまでも主眼がウタであるためルフィやシャンクスでも狂言回しに過ぎないところがあり、それ自体は「ONE PIECE」の他の劇場版にも散見される特徴ではあるものの、今回はそれ以上にウタというかAdoのオンステージみたいな色彩が強いため保守本流的なファンの方には違和感を感じる方も少なくないように思います。

 実のところ「仮面ライダー」「スーパー戦隊シリーズ」のニチアサ枠が放送時間で重なるようになってからTVシリーズから離れてしまった上に劇場版も「GOLD」「STAMPEDE」の前2作も観ておらず本当に数年ぶりの「ONE PIECE」でしたが特に問題無く楽しめたので敷居はとても低い作品だろうなと思います。大音響で楽しむのに丁度いい作品ですし、せっかくならTV放送を待たずに劇場で楽しむことをお勧めします。
 

拍手[0回]

連日の厳しい暑さに耐えきれず、先日日傘を購入しました。正直日傘とか似合うタイプでないのは重々承知していますが、昨今の猛暑のエグさはそんなカッコつけてられる具合でもなくなってきたので遂に日傘ユーザーの仲間入りです。
 いや~使ってみたらビビるほど快適。これ程の威力があるものだとは。なるほど夏場は手放せそうにないわ。

 こんばんは、小島@監督です。
 ま、そうは言っても元々が汗っかきなので汗ダルマになる運命からは逃れられなかったんですがね…(苦笑)

 さて、今回の映画は「Gのレコンギスタ」です。

 科学技術が頂点を極めながらも、宇宙戦争が繰り返され人類が滅亡の危機に陥った「宇宙世紀」が終焉を迎えて1,000年以上の時が流れ、「リギルド・センチュリー」と呼ばれる新たな世紀を迎えるに至った世界。前世紀の遺物たる「キャピタル・タワー」は、宇宙よりエネルギー源「フォトン・バッテリー」を地球に供給する唯一の経路として、キャピタル・タワーの地球側基地は「キャピタル・テリトリィ」と呼ばれて神聖視されていた。
 宇宙世紀時代の技術は禁忌とされ封印されていたが、アメリアとゴンドワンの二大国は緊張状態が沸点に達し大陸間戦争が勃発するに至り、封印された技術の復元を始めてしまう。
 そんな折、宇宙から所属不明のモビルスーツがキャピタル・テリトリィに降下してくる。キャピタル・テリトリィの自衛組織「キャピタル・ガード」の候補生ベルリ・ゼナム(声・石井マーク)は、モビルスーツから降り立った少女アイーダ・スルガン(声・嶋村侑)と運命の出逢いを果たすのだった。

 齢80を超え「巨匠」と呼ばれる領域に達していながら「鬼滅の刃」や「エヴァンゲリオン」など時代の寵児となった作品に対抗意識を燃やす、創作意欲の塊のような御大、富野由悠季監督が、2014年に放送されたTVシリーズ「Gのレコンギスタ」を5部作という破格の構成で再構成され、2019年より順次公開されていきましたが、完結編に当たる第5部「死線を超えて」が先日遂に公開されました。

 特徴的なセリフ回しや絵コンテのキレと言い、富野由悠季ならではの語り口が全5部通して炸裂しているシリーズです。ナレーションを排し、場面や用語の説明は最低限にして物語が進むため、一見するとかなり分かりにくく感じる方も多いでしょう。
 戦闘の様相も、基本的には国家間の闘争だった「機動戦士ガンダム」や、異なる文化圏同士の相克を描いた「∀ガンダム」のような富野由悠季監督の過去作品と違い、フォトン・バッテリーや封印された技術を巡るいわば「利権争い」であり、そこに国家的なイデオロギーは介在しているもののどの陣営からも離反者を出してしまい、そんな人たちが寄り集まった海賊「メガファウナ」という勢力(アイーダはもちろんベルリもここに属することになる)も登場し、最終的には四つ巴のような状況になるので実相はかなり複雑です。ですがそれを明瞭にしてくれるような解説は作中ではなされません。ただTVシリーズと違うのは物語の軸足をベルリとアイーダの旅路にフォーカスし続けるので少なくとも「どこを観れば良いか」という点についてのみガイドがあるようにできている点にあるでしょう。 

 一方で、TVシリーズ以上に強調されている点が2つあります。1つはモビルスーツ戦。特に第4部「激闘に叫ぶ愛」のクライマックスで展開されるMS戦はアイディアもボリュームも素晴らしく、富野由悠季監督が今なおロボットアニメのフロントランナーであることを十二分に見せつけてくれます。
 もう一点、これはちょっと説明しにくいのですが、登場人物たちの「身体性」にあります。パイロットスーツのファスナーを閉じるのに難儀したり、戦闘が長引いたためにインナーを着替えたりと言った描写が相次ぐほか、特にアイーダなどは「とても健康的な女性である」ということが視覚的にも伝わるキャラクターデザインをしているのが最たるものでしょう。だからこそ物語の後半で登場する、人類が宇宙へ進出したことで身体的にも変容を遂げた「ムタチオン」という人々の存在が際立つのです。
 また、この「身体性」、TVシリーズではCM前後のアイキャッチで主要人物たちがそれぞれ個性的な動きでダンスをする短いアニメが挿入されましたが、極めてプリミティブな生命力の発露ともいえるこのシーンをエンドクレジットで採用した部もあり、「身体性」を象徴するショットと言えるでしょう。思えば富野由悠季監督はずっとセックスや裸の肉体という生々しいところまで踏み込んだ「生命力の発露」を描き続けてきた方です。今作でも数え切れないほどこれを示唆する描写が登場するのでご鑑賞の際は意識して観てみると良いでしょう。

 何より、「老害」という言葉さえ何のそので世の10代の少年少女たちへ向けて本気で作品を作ろうとするその姿勢はちょっと尊敬します。しかもこれより20年前に製作された「∀ガンダム」よりある意味で軽やかな語り口をしていることにも驚かされます。時代のテンポにあった作品とは言い難い部分は確かにある。ありますが、こういう作品から得られるものも少なくないはず。TVシリーズで挫けた人も、分かりにくいなどと言わずに観てみて欲しいですね。



拍手[0回]

半世紀に渡り「ルパン3世」の次元大介役を演じ続け昨年勇退された声優・小林清志さんの訃報が。
 他にも「機動戦士ガンダム0083」のエギーユ・デラーズや「勇者王ガオガイガー」のナレーション、洋画の吹き替えでも「大脱走」のジェームズ・コバーンや「逃亡者」のトミー・リー・ジョーンズなどが印象に残っている方も多いでしょう。次元大介に限らず晩年まで出演作の途絶えない、まさに生涯現役を貫いてご活躍されました。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 こんばんは、小島@監督です。
 6月に96歳で没した作曲家・渡辺宙明さんと言いやっぱり生涯現役で大往生というのは、どこか憧れるものがありますね。

 さて、今回の映画は「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」です。

 かつて「ジュラシック・ワールド」があったイスラ・ヌブラル島よりアメリカ本土へ恐竜が運び出され、メイジー・ロックウッド(イザベラ・サーモン)の手によってそれらが解き放たれてから4年の歳月が過ぎた。今や恐竜たちは地球各地に棲みつくようになり、人類と恐竜が混在する世界が始まりつつあった。
 オーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、恐竜たちの保護に尽力しながら山奥の一軒家でメイジーを育てる生活を送っていた。しかし、メイジーと山に棲みついていたヴェロキラプトルのブルーが出会ったところを密猟者に見つかってしまう。
 一方、古生植物学者のエリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)は巨大化したイナゴの大群に襲撃された農場の調査に訪れていた。イナゴが人為的に改良された種ではないかと推測したエリーは、古生物学者のアラン・グラント博士(サム・ニール)に協力を願い出る。

 映画の歴史を変え、古生物研究をも大きく進歩させたと言われる1993年の「ジュラシック・パーク」、それから約30年の時を経てシリーズの完結編と銘打った作品が公開されました。
 2015年から始まった「ジュラシック・ワールド」三部作は、「パーク」三部作を設定や世界観を踏襲しながらスケールアップを目指す形のリブートとして製作され、より大きな舞台で恐竜たちが暴れまわる姿をダイナミックに描いて来ました。
 実際のところ語っていること自体は1作目から変わらず、より重厚化、というよりは6度にわたり同じテーマを焼き直して語っているようなものなのですが、今回は六部作全体の完結編として「パーク」三部作で主演したサム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラムの3人が再集結するなど、まさに集大成、あるいは「祭りの最後の花火」と言った趣です。今回物語の核になる「バイオシン社」も1作目でインジェン社のエンジニア・デニス・ネドリーを買収したライバル企業の名前だったりして、これまでのシリーズに登場したファクターやキーワードが随所に使われています。

 映画冒頭の時点である意味状況は行きつくところまで行ってしまっており、既に人類社会のすぐそばに恐竜がいるようになっているので遭遇のシチュエーションの多彩さは群を抜いています。中でも序盤で観られる「雪の中に佇む恐竜」のビジュアルの非日常性と静けさが同居した美しさが素晴らしい。これが早い段階で提示されるのでもっと哲学的な物語になるのかと思いきやそんなことはないのですが(笑)。むしろ147分の上映時間をいっぱいに使って市街戦からジャングル、洞窟まで豊富な見せ場のバリエーションで楽しませてくれる映画です。いくつかのシーンはどことなくゲーム的でもあり、何となく往年のゲーム「ディノクライシス」を思い出し、先日久しぶりにPS VITAの電源入れてプレイし直したりしましたね(笑)

 登場する恐竜たちもシリーズで度々フィーチャーされたティラノサウルスやヴェロキラプトルだけでなく最早ちょっぴり懐かしささえ覚えるディロフォサウルスやT-REX以上の巨体だったと言われるギガノトサウルス、巨大な爪を持つテリジノサウルスなど次々と登場。さながら怪獣映画のようなシーンもあり実にバラエティ豊かで華々しさに満ちています。
 一方で、物語の軸の一つを担う「巨大イナゴの大量発生」もかなりのリアリティを持って描かれているので昆虫系が苦手な方はちょっぴり注意が必要。多分いくつかのショットが軽くトラウマ級です。

 いくつかのやり残したことを拾い上げようとするとともに、最後に大きな祭りを仕掛けようとしている今作、大味ではあるものの、やっぱり夏休みみたいな時期にはこんなエンターテインメントが王道に居て欲しいもの。こういうのは映画館で観て何ぼです。夏のひと時、どうぞご堪能あれ。


拍手[0回]

/