ちゅうカラぶろぐ


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今くらいの時期は恵那峡まで車を動かしてそこで散歩して帰る、というのが大抵の休日の行動パターン。で、昨日も行ってみたらクラシックカーのイベントやってました。

どこからやって来たのかポルシェやらGTRやらアルピーヌなど、数十台が集まっていて壮観。ほとんどの車にナンバープレートが付いていて、今でも現役なのに驚きます。

 こんばんは、小島@監督です。
 恵那峡はちょうど桜が散り際で、舞い散る花びらとクラシックカーというコントラストも美しかったですね。

 さて、今回の映画は「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」です。

 1980年代初頭、名古屋でビデオカメラのセールスをしていた木全純治(東出昌大)の元に伝手を頼って映画監督若松孝二(井浦新)が尋ねてくる。若松は名古屋に映画館を作ろうとしており、木全にその館長になってもらいたいとオファーに来たのだ。映画への情熱が消えない木全はこの勧誘を受け館長に就任。映画館は「シネマスコーレ」と名付けられた。
 開館後、スコーレに熱心に通い詰める青年・井上(杉田雷麟)がいた。若松に弟子入りしたい井上は、若松に会える可能性に賭けて通っていたのだ。ある日、たまたま来館した若松が木全に促され舞台挨拶することになる。そして客席には井上がいた…

 ミニシアターから始まる、青春のドラマ。
 名古屋の映画文化で大きな役割を担うミニシアター、シネマスコーレ。その黎明期の姿と共に映画に懸ける青年の痛い青春劇を描きます。脚本と監督を務めるのは故・若松孝二の弟子の一人であり、コロナ禍で苦しむミニシアターの応援団体「勝手にしゃべりやがれ!」の結成メンバーである井上淳一。前半こそシネマスコーレ館長の木全を中心に展開しますが次第に物語は井上の方へフォーカスしていき、この映画は井上監督自身の自伝的性格を持ち合わせていくことになります。
 シネマスコーレが主舞台だけありスコーレで撮影も行われていて、良く知っている場所が良く知らないアングルと共にバンバン出てくるので何だか不思議な気分になります。余談ですが、木全純治さん本人と、スコーレの現支配人坪井篤史さんとスタッフ大浦奈都子さんが作中にカメオ出演しています。
 私がシネマスコーレに行くようになった時には既に若松孝二監督は故人だったのでお見かけしたことは無く、井浦新が演じるその居住まいが本人と比べてどうかは良く分かりませんが、東出昌大演じる木全さんはさすが役者というか、仕草や雰囲気が本人と良く似ていて驚きます。腰は低いのに意志は強い、そして名古屋でインディペンデント映画の下地を築く一翼を担っていくことになる、そんな人物を好演しています。

 映画を作りたい衝動に突き動かされる井上と対照的なのが芋生悠演じる金本法子。この方は実在の人物ではないようですが、映画を作りたいのに今一歩動けずにいる金本の存在が井上の青春をより重層的に描き出し映画に深みを与えます。

 映画の中で語られるトピックとして少し説明が必要と思われるのは、作中で度々名前だけ登場する足立正生の存在。若松孝二の元でピンク映画などの制作に携わっていた人物ですが、その後パレスチナ解放人民戦線のゲリラ部隊に加わったあと日本赤軍に合流し、国際手配された人物です。1990年代終わりにレバノンで逮捕され、刑務所に収監。刑期満了後日本へ強制送還されました。帰国後は再び映画の世界へ戻っており、日本映画大学で非常勤講師を務めたりしています。2022年、安倍晋三襲撃事件の実行犯の半生を描いた映画「REVOLUTION +1」を監督し、大きなニュースとなりました。その「REVOLUTION+1」の脚本とプロデュースを手掛けたのが誰あろう井上淳一氏です。同映画は短期ながらシネマスコーレでもロードショーされました。

 地元志向の強い映画、というだけでなく決して光溢れる場所ではないアングルから描かれる日本映画史の一幕としても興味深いものを見せてくれる作品です。大手メジャーのシネコンだけでは、この映画は生まれなかった。
 ミニシアターだってまだ負けてない。

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