ちゅうカラぶろぐ


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現在も熱戦が続くワールドカップ北中米大会、アルゼンチンVSカーボベルデ戦はご覧になりましたでしょうか。連覇を目指す王者アルゼンチンと今大会初出場でFIFAランク的にもずっと格下であるカーボベルデ、しかし格上相手に真っ向勝負を仕掛け点を取られても取り返し挑み続けるカーボベルデ、その姿勢がアルゼンチンをも本気にさせ(あのメッシが全力でディフェンスに回る局面もあったほど!)、双方が死力を尽くす姿には清々しさが漂いサッカーというスポーツが持つ素晴らしさが詰まった心震える名勝負でした。

 こんばんは、小島@監督です。
 そんな試合の後にラフプレー続発のサッカーの悪いところが煮詰まったようなフランスVSパラグアイみたいな試合があったりするのもまたワールドカップ(笑)

 さて、今回の映画は「ロングウォーク」です。

 近未来、激しい内戦の末にアメリカは軍事独裁政権下にあった。人々は経済破綻による深刻な不況にあえぎ、政府は国民に愛国心と勤労意欲を喚起するために各州の代表である若者たち50人による「ロングウォーク」と呼ばれるゲームを主催している。足を止めた者は3回の警告の内に再び歩き出さねば射殺され、最後の1人になるまで歩き続けるのだ。その過酷なゲームの優勝者には莫大な報奨金と、願いを一つ叶えられる権利を得る。
 今回の開催地メイン州出身のレイ(クーパー・ホフマン)は、母ジニー(ジュディ・グレア)に別れを告げロングウォークに参加する。
 “少佐”(マーク・ハミル)の号令の下、参加者たちが歩き出した。レイは顔に傷のある青年ピーター・マクブリーズ(デヴィッド・ジョンソン)、アジア系で口達者なハンク・オルソン(ベン・ウォン)らと意気投合するが、徐々に蓄積していく疲労が彼らを追い詰めて行く。

 モダン・ホラーの帝王と言われる作家スティーブン・キング、彼は「リチャード・バックマン」というペンネームで発表した7本の作品があります。キングが小説家としてのキャリア私スタートさせた当初、アメリカの出版業界には「1人の作家が1年に出せる本は1冊まで」という風潮がありました。キングのようにハイペースで作品を書き続けられる作家は年に複数冊発表するためにペンネームを用意して小説を出版しており、キングもそれに倣ったと聞きます。またせっかく別名義で発表するなら自分名義の作品と比べてどれくらい売れるのか試してみたかった、と語ったりもしています。リチャード・バックマン=スティーブン・キングということも広く知られるようになった現在では映像化の際は「原作スティーブン・キング」とクレジットされるようにもなっています。
 そんなバックマン作品が今年相次いで映画化されました。それが「ランニング・マン」と今回の「ロングウォーク」です。ともに近未来ディストピアを舞台にデス・ゲームに身を投じる者たちを描いた作品であるというのも共通していて、作品の方向性こそ違えど閉塞感漂う時代の空気を感じさせてくれます。

 いわゆる「デス・ゲームもの」の先駆的作品として後続に大きな影響を与えたとされる「ロングウォーク」ですが、後続の「バトルロワイヤル」や「ハンガー・ゲーム」などのように参加者たちが殺し合うわけではないという点が大きく違います。ただひたすらに歩くだけ。策を弄して他を追い詰めるような余地がほとんど無く、歩みが止まった者が最終警告前に歩き出せなければ射殺されるという厳然たるルールがあるのみ。なので一見地味に思えるかもしれませんが、全くもってそんなことはありません。高い緊張感を保ちつつ珠玉のドラマが展開します。

 歩くだけでは手持ち無沙汰なのでやがて参加者たちは互いに語り合い始め意気投合し、やがて友情が生まれていきます。困窮と抑圧で皆何がしかの絶望を抱えており、ロングウォークが持つ僅かな希望にすがるしかない若者たち。数時間後か遅くとも数日後には永訣の刻を迎える彼らの儚く熱い友情に気づけば観客は「誰一人として死んで欲しくない」とすら思うでしょう。しかしそんな甘さは用意されていません。観客にとってもなかなかにキツい映画です。
 そして「ずっと歩いてばかりということは食事とか排泄とかどうするのさ?」という当然の疑問に、この作品は直球で見せてきます。生理現象をここまでサスペンスフルに描いた映画もそうそうありません。

 アイロニカルな舞台設定にスティーブン・キング一流のキャラクター造形とダイアログが乗っかった今作は、特にレイとピートの関係性において極上のブロマンス映画でもあります。そういうのが好きな方には確実に刺さります。
 先が見通せないというこの時代に誰もがうっすら感じているであろう感覚、これが絵空事ではなく、どこか地続きのように感じられてしまうところに「ロングウォーク」の凄みはあります。そしてそれは人生そのものでもあるのでしょう。
 どこまでも歩いて行くしかない。倒れるまで。

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