ちゅうカラぶろぐ


[13]  [14]  [15]  [16]  [17]  [18]  [19]  [20]  [21]  [22]  [23
大体いつもアッパーでどんな深刻な状況でも絶対にしんみりさせたままにはしておかない作風が印象的だった「トロピカル〜ジュ!プリキュア」が終了し、その余韻も冷めやらぬ中、新シリーズ「デリシャスパーティ♡プリキュア」がスタート。物語の導き手がオネエキャラと言うのも当世らしい感じですが、何より「500Kcalパンチ」の語感のインパクトが最高。また1年間楽しませてもらえそうです。

 こんばんは、小島@監督です。
 「食」がテーマの一つだけあり初回の料理作画のシズル感はどれもかなりのものでしたが、あのクオリティで1年間やり切れるのかしら。

 さて、今回の映画は「大怪獣のあとしまつ」です。

 突如襲来し、首都圏を蹂躙して人々を恐怖に陥れた大怪獣。しかし、突如として発現した原因不明の光により怪獣は死んだ。人々は歓喜に沸いたが一方で大きな問題が残された。
 「この死体、誰が後始末するの?」
新たな観光資源として利用することも試みられたが巨大な死体は腐敗により徐々に膨張が進みいずれ大爆発を起こして周囲を汚染しかねないことが判明する。
 巨大怪獣の死体処理というミッションを任されたのは首相直轄組織・特務隊の帯刀アラタ(山田涼介)だった。果たしてアラタは大爆発を阻止し怪獣の死体を後始末できるのか?

 「映画」と言うのはやはり魔物。そしてある意味でギャンブルと言うのを迂闊にも忘れていました。特にコメディというのは結構難しい代物で、観る側のセンスと作り手のセンスが上手く噛み合えば爆発しますが相性によっては地獄を見ます。自宅で観ている分には合わなければさっさと止めてしまえば良いだけの話ですが、映画館で観るとなるとそうもいきません。だからコメディを観る時はそれなりに選んでるつもりだったんですが今回は思いっきり掴んでしまいました(苦笑)

 倒した、あるいは倒れた怪獣をどうするか、という主題は一見ユニークに思えますが全く前例が無いわけでは無くむしろ結構使われてきたモチーフです。例えば「パシフィック・リム」(2013年)では怪獣の死体を始末する建設車両群やその死体を利用して漢方薬を作るブローカーなどが登場したりします。他にも「ウルトラマンティガ」(1996年)に漂着した怪獣の腐乱死体をどう対処するか、というエピソードがありますし「ゴジラxメカゴジラ」(2002年)ではゴジラの遺骸をベースにメカゴジラ「機龍」が建造されます。ただ、大抵は世界観をより掘り下げるためであったりTVシリーズの1エピソードのように短編で使われることが多いため、今作みたいにそれを長編映画の主題として製作されたのは初めてではないかと思います。なかなか攻めた着眼点を「インスタント沼」(2009年)「俺俺」(2013年)などシュールなシチュエーションの不条理劇を得意とする三木聡監督がどう料理するのか、という期待で鑑賞しました。

 世界観の詰めがいささか甘くは感じたもののシナリオがどうしようもないほど破綻しているワケではありません。山田涼介、土屋太鳳、西田敏行、濱田岳を筆頭とした俳優陣の演技も悪くなく、小道具なども凝っていて映像やサウンドデザインも結構ちゃんと迫力があります。ですが、私には作中繰り出されるギャグとの相性が致命的に最悪でした。例えて言うならそう「職場の飲み会で上司が周囲が引いてるのも気づかず時代遅れでセクハラ紛いの下ネタを延々と喋り続けるのを聞く羽目に陥っている」というところでしょうか。しかもかなり冗長。この内容で上映時間115分は長すぎる。と言うかこの企画で良くこれだけの予算規模とキャストを獲得できたものと心底感心します。もっとずっとチープに出来ていればまだ納得出来る部分が多く、そのギャップの凄まじさに困惑しました。

 また、恐らくある程度意識的にやっているのでしょうが、この映画、「パシフィック・リム」や「シン・ゴジラ」のパロディと思しきシーンも登場します。ですが結果的にそれが笑いに繋がるというよりこの2作が何を作品からオミットすることで評価を得るに至ったかを鮮明に浮き彫りにします。そんな映画が東宝ではなく松竹と東映の共同出資で製作・配給されているのも何とも皮肉めいています。

 主題に対するアプローチの濃度がシーン単位で大きく乱高下するが故の観る側のスタンスの掴み辛さも手伝って、自分は映画については結構悪食だと思っていたのですが、観てるのがあまりに苦痛になり途中で席を立ちたい欲求に駆られるなどまだまだ修行が甘かったようです。これも経験と言い聞かせて何とか最後まで観ましたけれども。
 公開直後からかなりの酷評に晒され炎上気味のこの映画、全国300館規模の公開作品にしてはかなり尖っていることとこれまでの特撮や怪獣映画をパロディ、というより下品に揶揄していると取れてしまうくだりがいくつも散見されるためそりゃあ脊髄反射的にキレる人も出てきてしまうだろうとは思います。が、一方で滅多に観られないタイプの作品であることも確か。もともと三木聡監督の作風が気に入ってる方なら尚更楽しめるでしょう。そうでない方も劇物扱いの映画がどういうものかを確かめてみたい人は鑑賞料金と2時間を投げ捨てるくらいのつもりで行けば、話のネタになるだけの映像体験ができるかもしれません。

拍手[1回]

昨日開催された「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND TOUR!!! Tropical Land」day2を配信で鑑賞。本来なら初めての沖縄公演になる予定でしたが昨今の情勢がそれを許さず別会場(どうやら幕張メッセだった様子)からの無観客配信ライブとなりました。
 思わず見惚れてしまうようなパフォーマンスがバンバン飛び出す熱いライブで、実に見応えがありました。出演陣の中に最近声優としてよりもプロ雀士としての活躍が目覚ましい伊達朱里紗さんがいたのも多士済々なデレマスらしくて面白い。

 こんばんは、小島@監督です。
 ところでこのライブ、もともと落ち着いて観られるday2だけに絞るつもりでいたのですがday1の評判があまりに良かったのでそちらのチケットも買ってしまいました。ライブだけでなく一定期間のアーカイブ配信も常態化したお陰で公演のチケットを後追いでも買えると言うのは考えてみれば何だか不思議な気分。

 さて、今回の映画は「バイオハザード:ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」です。

 1998年、アメリカ中西部ラクーンシティ。そこにはかつて製薬会社アンブレラ社の工場が存在したが今ではほとんどの施設が移転してしまい、残ったのは少ないスタッフと貧困層だけになっている。
 かつてラクーンシティの養護施設で育ったクレア(カヤ・スコデラリオ)は、アンブレラ社が秘密裏に研究していた「何か」が街の住民に健康被害を及ぼしているというメッセージを受け取り、一度は飛び出したラクーンシティへ帰ってきた。今ではラクーン市警に所属する兄・クリス(ロビー・アメル)を訪ねるが、クリスはクレアの言うことを一笑に付して取り合わない。その時、街中に大きなサイレンが鳴り響いた…

 ホラーゲームの金字塔「バイオハザード」、2002年から2016年までポール・W・S・アンダーソン監督、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のコンビで実写映画が6作品製作されました。ゲームの映画化としては破格のヒットを遂げ、ゾンビ映画としても最高の興行収入を記録しておりジャンル映画の大きな成功例として存在しています。そんな実写映画版「バイオハザード」がシリーズ完結後6年を経てリブート。新たな実写映画が登場です。監督は海中で逃げ場を失う恐怖を描いたパニック・スリラー「海底47m」などのヨハネス・ロバーツが手掛けています。

 新作である「ウェルカム・トゥ・ラクーンシティ」では前シリーズでは1度もやっていなかった、「ゲームのストーリーラインとキャラクターをベースにした映画」として製作されています。ゲーム原作として一番成功を収めた作品が原作から距離を置いた独自のビジョンの下で製作されている、というのはいささか皮肉めいた話でもありますが、結果的に「バイオハザード」には大きな鉱脈が残された格好になりました。

 陰鬱なビジュアルと不穏なBGMで幕を開ける今作は、CG主体ではなくセットで以て組み上げられたラクーンシティの衰退しつつある街並みや、1998年という時代設定を十二分に活かすビデオデッキやポケベルなどのガジェット(インターネットもちゃんとダイヤルアップ接続である)などが醸し出す雰囲気はなかなかです。
 また、監督が原作ゲームの大ファンなのか、全編に渡りかなりの数の小ネタが仕込んであるのも特徴です。予告編でも使われていた「振り向きゾンビ」だけでなく、ある場所には赤・青・緑のハーブが置いてありますし、ショットガンの弾薬の箱や部屋を開ける鍵の意匠などが原作に沿ったものになっていたり、「かゆい うま」のフレーズが登場するくだりがあったりします。この辺りを探してみるのも楽しいでしょう。
 登場人物の造形についてもシリーズ初期のものに倣っているようで、クリスはマッチョゴリラではありませんし、レオンも後々の凄腕エージェント感は1㎜も無く、赴任初日にエグい目に遭う青年の頼りなげな右往左往ぶりが良く表現できていると思います。

 ゲームに忠実な作品を仕上げようという姿勢に好感が持てる一方で、映画そのものの出来栄えとしては特に後半に行くほど多すぎる要素をまとめるのに手いっぱいの慌ただしさが目につき、序盤に成功した雰囲気作りも活用しきれておらずいささか弾んでいかないのが残念なところ。この辺り、作中のシーンがゲームへとフィードバックされたりもしたポール・W・S・アンダーソン監督版の方が勢いもパワーもあったと言わざるを得ません。

 不満も少なくないのですが、個人的には何だかんだ楽しめてしまったので割と嫌いではありません。そこら中に潜んだ小ネタを探しつつツッコミを入れながら観る、そんなノー天気な楽しみ方するのが丁度いい一品。出来るなら仲間内でわいわい言いながら観るのが一番楽しいタイプの作品です。気になってる方は気楽な気持ちでどうぞ。

拍手[0回]

先週訃報が流れた野球漫画の第一人者だった水島新司さん、私も「ドカベン」や「あぶさん」などその著作をよく読んでいました。特にパ・リーグが今ほどの人気を獲得する遥か前から「あぶさん」において南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)を中心に丹念に取材を重ねて各球団の選手たちを実名で登場させるなど漫画を通しての野球界への貢献と影響が計り知れないほどです。パ・リーグの本拠地である球場ではほとんど顔パスだったと聞きます。訃報が流れた翌日、主要スポーツ紙がこぞって1面トップで報じ、全国紙でも社会面だけでなくスポーツ面でも報じられたのが何よりの証拠と言えるでしょう。
 主要作品のほぼ全てを完結させ引退宣言をしてからのご逝去、まさに大往生だったのではと思います。

 こんばんは、小島@監督です。
 久しぶりに何か読んでみたくなってきた。

 さて、今回の映画は「クナシリ」です。

 北方四島の一つ、国後島。北海道の東端からわずか16㎞のところにあるその島は、日ロ間で領土問題が横たわる。そこには寺の石垣などの遺構が残り、シャベルで土から掘り起こせば醤油瓶や欠けた茶碗などかつて日本人が暮らしていた痕跡が残っている。1949年に日本人の退去が完了したこの島で現在暮らすロシア人たち。彼らにカメラとマイクを向けると、各々がそれぞれの立場で島の姿を語り始めた。

 北方四島と呼ばれる島々があること、そこに領土問題があること、半世紀以上の長きにわたり返還のための交渉が続いていること、それらをご存じの方は多いと思います。ですがその一方でそこがどういう場所なのかを知っている方はほとんどいないのではないでしょうか。北方領土問題という言葉の下でだけその名を聞く島、私にとって国後島というのはその程度の印象でした。またロシア側から俯瞰すれば国後島はあくまで首都モスクワから遥か離れた最果ての一離島であり、そもそも関心を示す場所ですらないようにも思えます。そんな国後島に焦点を当てて取材を行った恐らくは初めてのドキュメンタリー映画です。手掛けたのはベラルーシ出身で現在はフランスを拠点に活動しているドキュメンタリー作家、ウラジーミル・コズロフ氏。

 そもそもどんな風景をしているのかすら知らない国後島、普通に撮ってるだけの映像がもうそこから興味深い。実は温泉もあるらしいですよ、あの島。ある意味でチョロい客状態でした私(笑)もっともこの数十年日本人が未踏だったわけではなく1992年より始まった交流事業により7~9月のサマーシーズンにビザなしの訪問団が訪れたり鳥類などの学術研究で滞在する学者の方などもいるのですが、取材時期とは外れていたらしくこの映画には登場していません。
 実際のところ、映画は数人の人物の生活とインタビューを淡々と綴っているだけの作品です。モチーフこそ刺激的ですが良くも悪くもフラットで、そこに大きなストーリーも無ければ何かを煽るようなことも無いのが特徴です。

 ただこのインタビューが曲者。全体を通して老人が多いのですが人生の晩期をインフラの整備も今ひとつよろしくない最果ての地で暮らしているせいか愚痴っぽい方が多く、失くすものが無いのかロシア政府や役人への不満や批判もお構いなしなのがなかなかに驚きます。ちょっと笑えてしまうくらい。中には日本人とロシア人が共存していた1940年代を記憶している方もおり、思いがけない話が登場してきたりもします。
 彼らの中には別にロシア政府のように北方四島を日本に返還することを頑なに拒むような強い主張はなく、むしろ温泉などの観光資源を活用して雇用を生み出して欲しくて日本人が再び来てくれることを望んでいる者さえいます。

 作品の中で見え隠れするのは第二次大戦時に日本との戦いに勝利し住民を全員退去させ自国の領土の拡大に成功したことをプロパガンダしたい旧ソ連からのロシア政府の思惑と、更に色濃く目に留まるのは最果ての離島という地理的条件がそうさせるのか、住民の精神性がアップデートする環境に乏しい、つまり「時間が止まっている」ように見えることでしょう。
 翻って、これほどロシアの風土に染まってしまった国後島を仮に日本の国土に引き戻せたとして、今、その島に生きる人はどうなるのか、そして島をどうしたいのか、その先を見つめるビジョンが日本にはあるのだろうかという思いも浮かんでは消えて、かなり複雑な思いを湧き立たせずにはおきません。

 百聞は一見に如かずとはまさにこのこと。歴史と不和の果てに存在する島の在り様に現在を映し見る作品です。聞けばコズロフ氏は同じ題材を、今度は根室の側から撮影する映画を準備中とのこと。この合わせ鏡がどのような形で完成するのか、今から楽しみです。

拍手[1回]

昨日トンガの海底火山噴火を原因とした津波が日本全国を広範囲に襲いました。人的被害は少なかったようですが、皆さんのところは影響などなかったでしょうか。今回の津波、正確なメカニズムはまだ分かっていないそうで、世界でも随一の地震と津波の知見があってもなおまだ不明な現象が生じるところに大自然の恐ろしさと大きさを感じます。

 こんばんは、小島@監督です。
 それにしてもこれが更なる天災の前触れとかでないと良いのですが。 

 さて、今回の映画は「銀河鉄道999」です。

 メガロポリスのスラムに住む少年・星野鉄郎(声・野沢雅子)は、機械の身体を無償でもらえるという星に行くため銀河鉄道に乗れる切符を必要としていた。ある時、鉄郎は切符を購入した者から奪取しようとするが鉄道警察に追われることになってしまう。その最中、鉄郎は謎めいた美女メーテル(声・池田昌子)と出会う。

 「宇宙戦艦ヤマト」(1977年)の大ヒットを呼び水として、「機動戦士ガンダム」(1979年)、「うる星やつら」(1981年)「超時空要塞マクロス」(1982年)などが後に続き1980年代半ばまでの約10年間、アニメブームと呼ばれる現象が起きました。「ドラえもん」や「ルパン三世」など、現在まで連綿とシリーズが続く作品に初めての劇場版が製作されたのもこの頃です。それまで小学生くらいの子供が見るものという扱いと意識が強かったアニメがそれよりも上の世代であるティーンエイジャーや大人の鑑賞に耐えうる作品が登場するようにもなり、1983年にはよりコア・ターゲット層に向けてオリジナル・ビデオ・アニメーション(OVA)が発売され始めたりと製作体制や作品の在り様、マーケット規模に至るまで大きな変容を遂げた時期でもあります。
 そんな最中に一つの金字塔と呼べる作品が登場しました。それが1979年に製作・公開された「銀河鉄道999」です。実はそれまで親会社の東映の下で劇場アニメを製作していた東映動画(現・東映アニメーション)の初の自社製作作品でもあります。同年の邦画配給収入の第1位となり、アニメ映画としては初めて映画雑誌「キネマ旬報」のベストテンにランク入りするなど興行的にも批評的にも大きな成功を収めました。また、青木望の手によるサウンドトラックもオリコンチャート1位を獲得。1997年に「新世紀エヴァンゲリオン」のサントラが並び立つまで、アニメのサウンドトラックでチャート1位を獲得した唯一のアルバムでした。
 そんな日本アニメの歴史を語る上で外せない1作が、ドルビーシネマ版となって再上映されています。私もTV放送やDVDなどで何度も観た事がありますがスクリーンで鑑賞するのは今回が初めてです。
  
 当時TVシリーズも放送されていた「銀河鉄道999」、総集編ではなく完全新作として製作された劇場版の方では大枠の筋立ては同じものの大胆なアレンジを行っています。主人公・星野鉄郎の年齢を原作やTVでの10歳から15歳へと引き上げられて顔つきも精悍なものになっているのも特徴。原作ではゲスト的に登場するキャプテン・ハーロック(声・井上真樹夫)やエメラルダス(声・田島令子)の物語上のウェイトも大きく増した形で登場するほか、何より当時はまだTVシリーズも放送中である上に原作の連載も続いていた最中でありながらその結末を先んじて語るという野心的な試みが取り入れられました。

 世紀も変わり、時代も令和となった今観ると、やはり描かれている感覚が良くも悪くも昭和であることに少し目が行ってしまう部分もあります。ですがそれを差し引いてもダイナミックなアドベンチャーロマンであり、同時に少年の成長を描く青春物語としても骨太な語り口、そして比類なきヒロインであるメーテルの人物像に心動かされます。ラストシーンなどは何度も観ているはずなのに涙が出てきてしまったのは、やはりスクリーンで観ているせいでしょう。
 非常に丁寧にリマスタリングされているようで、そのエネルギッシュな映像を余さず堪能できるようになっているのはドルビーシネマという形式がもたらす恩恵でしょうか。こういう形で旧作と再会できるようになるのは嬉しいですね。

 中盤、鉄郎が亡き母の仇の情報を求めて酒場に立ち寄るくだりがあります。そこではリューズ(声・小原乃梨子)という名の女性の歌声に客達が涙を流して聴き入っており、酒場のマスターは鉄郎に「彼らはこの歌に二度と帰らぬ遠い日々を思い出して泣いている」のだと言います。この映画を初めて観たのは確か小6か中1の頃。TVで放送されたこれを観て心動かされた日から30年近くを経て今、ある種のノスタルジーにも押されてこの映画を観に行った私も気付けばあの酒場の客と同じところにいるのだろうかと思うと少し寂しさを覚えますが、それが歳を重ねるという事かもしれません。
 さらば少年の日々と言いながら、変わらないままの部分もあると知る、まるでほろ苦さを覚える再会のよう。そんな感慨もまた旧作を観る楽しみの一つ。今週末からは続編である「さよなら銀河鉄道999」のドルビーシネマ版の公開も始まるそうで、せっかくだからこちらとも再会してみたいところですね。

拍手[1回]

正月休み中にやった事で印象に残った事と言えばうえぽん宅にお呼ばれして楽しんだ麻雀ですね。全自動麻雀卓を開封して4人がかりで組み上げるところからやりましたからね!さすがにそこからやった事なんて今まで1度もありませんし、今後もまず無さそうでしたから誘われた際にホイホイ乗りましたよ(笑)結構重量のある代物なので1人でやれることではないですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 麻雀の方も割と勝ち気味で終われたのでより楽しかったですね(笑)

 さて、今回の映画は「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」です。

 ロンドンで戦ったミステリオの計略によりピーター・パーカー(トム・ホランド)は自身がスパイダーマンの正体であることが世界中に知れ渡ってしまった。ミステリオが死の間際に残した映像によりロンドンでの事件の首謀者に仕立てられてしまったピーターは疑惑の渦中に落とし込まれ、連邦捜査局の捜査対象にまでなってしまう。しかもその影響は知人にまで及び恋人のMJ(ゼンデイヤ)やネッド(ジェイコブ・バタロン)もスパイダーマンの仲間として注目と中傷の的になり、志望校のMITから進学を拒絶されるまでになってしまう。
 親しい人が苦境に立たされる状況に耐えられなくなったピーターはドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に救いを求め、魔術で自身の正体が誰にも知られていない世界にして欲しいと頼むが発動した術の途中でピーターが注文を付けた事で魔術は失敗してしまう。それは思いもかけない状況を生み出した。別の世界でスパイダーマンと戦ったドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)が現れピーターに襲い掛かってきたのだ!

 年明け早々にもう今年のベスト1が出てしまったのでは。そう思わされてしまうくらい超弩級の1本がいきなり登場しました。
 「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の最新作はMCU加入後のスパイダーマンの活躍を描く「ホーム」三部作の最終章。多元宇宙「マルチバース」からかつてスパイダーマンと戦ったヴィランたちが続々と登場しピーターと戦うことになります。
 こと映画と言うものに関して「スパイダーマン」は他のマーベルヒーローよりかなり特殊な位置に立っています。スパイダーマンだけは映画化権そのものはマーベル・スタジオではなくソニー・ピクチャーズが有しており、MCUへ加わることが可能になったのもソニー・ピクチャーズとマーベル・スタジオがパートナーシップを締結したから。事実、「アメイジング・スパイダーマン」(2010~2012年)は当時既に始まっていたMCUとは無関係な独立したシリーズとして製作されていますし、現在2作目が公開されている「ヴェノム」もMCUとは距離を置いたものになっています。結果、21世紀に入って以降「スパイダーマン」は今作を含めて8本の映画が製作されたことになります。シリーズ始まって13年になるMCUとは別に20年の蓄積がスパイダーマンにはあるのです。

 次々と登場するスパイダーマンに恨みを抱くヴィランたち。その多くは戦いの末に命を落としています。そんな彼らを前にピーターは、大半が元は善人であったヴィランたちの苦痛や苦悩の根源を取り払えばスパイダーマンと戦うことなくその命も救われるのではないかと考えます。青臭く純粋なティーンエイジャーらしい願いに奮闘するピーターですが、その先に大きな苦悩と戦いを経験することになります。
 そんな物語の中に、観客を驚かせる大きなサプライズが仕掛けられています。どよめきと歓声が観客席が上がる映画を観たのはいつ以来でしょう。私もつい「うおああ!!?」なんて声が出てしまいました(笑)観客席の温度とテンションが上がるのが肌で分かる感覚、これは映画館でなければ決して味わえないでしょう。気になっている方は絶対に映画館で観て頂きたいと思います。

 死闘の果てにピーターが辿り着くのは青春の終わりであり、同時に「アベンジャーズ」の一員としてではなく「親愛なる隣人」としてのヒーロー・スパイダーマンの旅立ち。通過儀礼を経て、万感の思いと共に少年は大人へと成長するのです。
 マーベルヒーロー多しと言えどもスパイダーマンでしか為しえない、数限りないハードルを越えた先に可能となった奇跡。映画「スパイダーマン」20年分の全てを総括しその先へと進む、まさに傑作。きっと私はこういうのが観たくて映画館に足を運んでいるのです。

 しかしいきなりこんな凄いの観れてしまって今年の映画大丈夫か!?要らない心配してしまいそうだ(笑)

拍手[2回]

皆さん、明けましておめでとうございます。
 また、今日の歌会に参加された皆さんお疲れ様でした。ようやく以前のような雰囲気が戻りつつあるかなという感じがしてきましたね。昨年12月の回は所用で早抜けせざるを得なかったんですが、今回はがっつり最後まで楽しませていただきました。

 こんばんは、小島@監督です。
 皆さん、今年もよろしくお願いします。

 さて、今回の映画は「マトリックス レザレクションズ」です。

 トーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)は、デウス・マキナ社に所属するゲームデザイナー。人気ゲーム「マトリックス」三部作を手掛けて世界的名声を手に入れていた。しかし精神的不調を抱えるトーマスはゲーム制作に没頭するあまり現実と創作の境界線を見失い始めていた。
 ある時、トーマスはCEOのスミス(ジョナサン・グロフ)から親会社であるワーナー・ブラザーズからの意向で「マトリックス4」を製作せざるを得なくなったことを知らされる。アナリスト(ニール・パトリック・ハリス)のセラピーを受けながら連日の企画会議をこなすトーマス。
 ゲーム制作の合間にカフェに立ち寄ったトーマスはそこでティファニー(キャリー=アン・モス)という女性に出会う。ティファニーは、トーマスが「マトリックス」の中で想像したトリニティに不思議と酷似していた…

 1999年から2003年まで、文字通り世紀をまたぐように三部作が製作された「マトリックス」は仮想現実に囚われそこからの脱出と変革への戦いに挑む人間の姿を一種の神話的な語り口の中で描き出して一大ムーブメントを起こしました。2000年に発売された1作目のDVDは、同年に発売されDVDの再生機能も有していたPS2の売り上げに大きく貢献したと言われているほどです。TVゲームの歴史の中で、映像ソフトがゲームハードの販売促進に繋がった例は後にも先にもこの1例だけ。それほど当時の衝撃は大きいものでした。「攻殻機動隊」などジャパンカルチャーへのリスペクトと影響も強く見受けられる「マトリックス」でしたが同時に日本アニメへ与えた影響も大きく、2003年に続編である「マトリックス リローデッド」の公開に先立ち世界観を共有した「アニマトリックス」というアニメも日本のアニメーターが多数参加する形で製作されました。そんな「マトリックス」の実に18年ぶりの新作です。

 いささか意外だったのは今作がリメイクでもリブートでもなく続編として製作されていた点です。かつての三部作では風呂敷を広げ過ぎて畳み切れず最終的にはデウス・エクス・マキナを登場させ強引に終わらせた印象が拭えませんでしたが、今作ではその三部作を継承した上で新たな物語を構築しようと試みています。それ故に導入部からして「こう来たか!」と思う一方でかなりややこしい構図が提示されています。その歪ともいえる感覚は映画全体も貫いており、多分に大作でありながら非常に私小説的でもある極めてユニークな作品に仕上がっています。

 それは恐らく監督のラナ・ウォシャウスキーがこの18年の間に性別適合手術を受けて男性から女性へと変わっていること、また「クラウド・アトラス」(2012年)や「センス8」(2015~18年)など「マトリックス」後のフィルモグラフィも華々しい反面どうしても「マトリックス」という金字塔が二つ名のように自身について回ったであろうことへの葛藤など監督の人生の機微への彫りの深さが随所から伺えるものになっています。それは時に自虐的ですらあるセリフが飛び出すほど。SFアクション映画としては十分すぎるほどのボリュームを有していながらどこか弾み切らないものが見え隠れしているのもその辺りに起因するものがあるでしょう。

 三部作を観ていることが前提の作りである上にかなり作家性が前面に出てしまっているので正直ちょっと薦め辛い一本です。ですが、当時未見性の塊であったこの世界観に心躍らせた方にとっては見届けるに足る作品になっているとも思えます。「映画」と言うものが生み出した複雑な産物であるこの逸品、観るならどうぞスクリーンで味わってみてください。

拍手[0回]

書店で本を購入してそれを寄贈し、NPOを通して困窮する家庭の子供たちにプレゼントする「ブックサンタ」という取り組みがあると知りクリスマス前の最後の休日に書店へ立ち寄ってきました。人に贈る本を選ぶのも、子供向けの本を選ぶのも何だか久しぶりでちょっと楽しくなってました(笑)。
 選んだのは「アンダーアース・アンダーウォーター」という地面の下の世界や水中の世界を描いた絵本。書店で見つけて子供の頃に出会っていたらきっとハマり込んだだろうなと思った1冊です。誰の手に渡るのか分かりませんが、気に入ってもらえると嬉しいですね。

 こんばんは、小島@監督です。

 さて、2021年最後の更新となる今回は「今年の5本」と題して今年鑑賞した映画を振り返ります。例年同様今日現在の鑑賞可能状況も記載しますので参考になれば幸いです。

1.シン・エヴァンゲリオン劇場版
 今年1本だけ選ぶとしたらもうこれしかありません。25年という長きにわたり自分の人生に食い込んできた作品、その別れの挨拶などというものは一生の間にそう何度もあるものではないからです。そういう意味でまさに唯一無二の映像体験でした。現在はAmazonプライムにて配信中。ソフトのリリースについてはまだ未定のようです。

2.映画大好きポンポさん
 映画製作の内幕と創作のエネルギーをポップな絵柄で活写したアニメ映画。凝縮された時間に展開される濃密なドラマの心地良い熱さに酔いしれられる一本です。「編集」というあまり注目はされないけど映画の肝ともいえる闇深い迷宮のような箇所にスポットを当てたのも好印象と言えますね。Blu-ray発売中。またU-NEXTにて配信中。

3.トゥルーノース
 北朝鮮の強制収容所ではいったい何が起きているのか。脱北者たちの証言をもとに製作されたアニメ。理不尽な地獄のような場所で生きる人間の弱さと強さを描き切る。DVD発売中。またNetflixにて配信中。

4.フリー・ガイ
 自身をオンラインゲームのモブキャラだとは気づかない男がプレイヤーの女性に恋をしたことで始まるアドベンチャー。思い切り笑えてちょっぴりほろりとできる王道のエンターテインメント。やっぱり映画はこういうのが楽しい。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。

5.アナザーラウンド
 血中アルコール濃度0.05%、ほろ酔い気分は人のパフォーマンスを向上してくれるのか?そんな実験に身を投じたおっさんたちの悲喜こもごもな人生模様。名優マッツ・ミケルセンの演技とキレッキレのダンスが光る。各地のミニシアターにて続映中。Blu-rayなどソフトのリリースは今のところ未定です。

 今年は何だかアニメ映画寄りの5本になってしまいました。
 さて、ここからはそれ以外にも印象に残った作品を振り返り。こちらは鑑賞順に列記していきます。

・ポケットモンスター ココ
 ポケモンに育てられた少年と育ての親であるポケモンを主軸に据えた作品。これでボロ泣きしてしまうくらいには私もおっさんになりました(笑)Blu-ray/DVD発売中。
・KCIA 南山の部長たち
 1979年の朴正煕大統領暗殺事件をベースにしたポリティカルサスペンス。韓国現代史のダークサイドを描き出す重厚な逸品。イ・ビョンホンの苦み走った演技が素晴らしい。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。
・私は確信する
 2000年にフランスで起きた未解決事件を元に描く法廷サスペンス。火花散る法廷バトルがもたらす極上のスリルが堪らない。DVD/デジタル版発売中。
・ステージマザー
 普通の主婦が息子の死をきっかけにドラァグクイーンたちと瀕死のゲイバーを立て直すドラマ。個性的なキャラクターたちが織りなす物語とマイノリティたちを見つめる温かな眼差しが心地良い逸品。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。
・すばらしき世界
 出所した受刑者が、傷物には生きづらい世の中でもがきながら自分の居場所を見つけ出していく。ヘビーな物語だが正面から向き合うだけの凄みのある逸品。主演役所広司の演技が絶品。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。
・ノマドランド
 生活の必要なものを車に積み込み大陸を放浪するノマドたちの生き様を綴る。フィクションでありながらドキュメンタリー的でもある独特のテリングに引き込まれる。アカデミー賞受賞は伊達じゃない。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。
・ナタ転生
 「封神演義」でも名高い人気キャラ・ナタ(哪吒)の魂を受け継いだ青年の戦いを描く。「羅小黒戦記」に続く、躍進目覚ましい中国アニメのエネルギーを味わえる逸品。上映は終了。Blu-rayなどソフトのリリースも現在未定です。
・るろうに剣心最終章The Final
・るろうに剣心最終章The Beginning
 佐藤健演じる緋村剣心の戦いを描く実写版るろ剣の最終章。ダイナミックなアクションとエモーショナルなドラマが見事に融合した、エンターテインメントとしてレベル高い逸品。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。
・機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
 ブライト・ノアの息子ハサウェイの戦いを描く新たなガンダム映画は、ロボットアニメの新たな地平を感じさせる1作となりました。パンプキンヘッドのテロリストが何故か動画界隈で人気者になってしまう珍現象も。Blu-ray/DVD発売中。また配信大手各社で見放題配信も始まっています。
・モータルコンバット
 格闘ゲームを原作としたゴア描写強めのアクションエンターテインメント。何故か主役より目立つ真田広之が面白すぎる。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。
・アメリカン・ユートピア
 トーキング・ヘッズのフロントマンだったデヴィッド・バーンが仕掛けるミュージカルの映画化。アメリカの病巣と希望をあぶり出す。Blu-ray/DVD/デジタル版発売中。また、各地のミニシアターで断続的に上映が続いています。
・劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライト
 今年多方面で話題になったアニメ映画。舞台劇を意識した演出の数々と、前衛芸術のような作りが印象的。Blu-ray/DVD発売中。夏封切の映画ですが現在でも一部で上映が続いています。
・リョーマ!新生劇場版テニスの王子様
 もはや説明困難。テニプリの新作映画は「テニプリ」というジャンルでしか存在し得ない逸品。良いから観てみてくれとしか言えない(笑)。現在も上映中。またU-NEXTにて配信も開始。Blu-ray/DVDは来年3月30日に発売予定。
・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
 ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンド、そのフィナーレ。少し不満も無くは無いけど万感の大団円に胸が熱くなる。館数は減ってきていますが現在も上映中。

 こんなところでしょうか。今年は9月後半以降急速に仕事が忙しくなってしまい、ここ3か月はメジャー作品をフォローするのが精いっぱいで気になっているタイトルの多くをスルーせざるを得なかったのが辛い。だから印象に残った作品も割と上半期の方に偏っています。あと思った以上にアニメ映画多めなのは自分でも驚き。実際かなりの豊作だった印象です。来年の下半期はもう少し落ち着いた気分で小規模の作品も観れたらいいな。

 

拍手[0回]

/