ちゅうカラぶろぐ


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野球やサッカーなどのプロスポーツにも少しずつ観客を入れた試合が戻りつつある一方で、ライブイベントなどはまだまだ難しい状況。ちゅうカラも再来週に予定されていた歌会が中止になってしまいました。どこにどう折り合いをつけていくか、まだ全ては手探りの途中。でも以前のような日々が一日でも早く戻ってほしいですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 これでまた映画館が休館にでもなったりしたらかなり辛い。観れる時にできるだけ観に行こう。

 さて、今回の映画は「風の谷のナウシカ」です。

 千年前に起きた「火の七日間」と呼ばれる最終戦争により巨大産業文明は崩壊した。錆とセラミックに覆われ荒廃した大地には「腐海」と呼ばれる有毒の瘴気を発する菌類が森を形成し、更に森には巨大な蟲たちが森を守るように棲息し始め、人類は広がりつつある腐海にその生息圏を脅かされながら生きることを余儀なくされた。
 辺境の小国・風の谷の族長の娘・ナウシカ(声・島本須美)は腐海に生きる蟲たちとも心通わせる不思議な力を持ち、また心優しい性格故に風の谷の住民たちから敬愛されていた。ある日、いつものように腐海探索のさなか、ナウシカは怒った王蟲が人を追っている光景を目撃する。何とか王蟲を鎮めたナウシカはその人物が武芸の師でもあるユパ(声・納谷悟朗)であると知り一年半ぶりの再会を喜んだ。谷の住民たちをユパの再訪を喜び、病床に伏せるナウシカの父・ジル(声・辻村真人)も久闊を叙した。
 しかしその翌朝夜明け前、谷に異変が訪れる。東の大国トルメキアの輸送船が谷の近くに墜落したのだ…

 新作映画公開のリズムも未だ立ち戻らない中、配給大手も様々な手を講じています。そして東宝がここに来て強力なカードを切ってきました。6月末より「一生に一度は、映画館でジブリを」と題しこの「風の谷のナウシカ」を始め「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ゲド戦記」の4作品が全国ロードショーされています。もっと言えば先週先々週と「ゲド戦記」以外の3作品が週末の観客動員数と興行収入でトップ3を独占しました。

 実は「風の谷のナウシカ」が製作された1984年はまだスタジオジブリは設立されておらず、製作スタジオはその前身であるトップクラフトが担っています。トップクラフトは東映動画で製作管理を行っていた原徹が1972年に東映動画から独立する形で設立したスタジオで、日本アニメの下請け製作も行う一方でアメリカのアニメスタジオ「ランキン・バス・プロダクション」と共にコンスタントに日米合作のアニメを製作していました。ナウシカ公開後、「天空の城ラピュタ」(1986年)製作のために徳間書店が出資する形でスタジオジブリが1985年に設立。原徹はその取締役に就任、スタッフもそのまま移籍する形で改組されトップクラフトは解散しています。観ている側としてはほとんど気にすることのない部分ではありますが、今ナウシカと共にリバイバルされている「もののけ姫」製作時期には出資者であった徳間書店の経営悪化を受け収益確保の一環として徳間書店に吸収合併され、社名が変わったりしています。スタジオジブリの沿革も調べてみると結構波乱万丈。
 余談になりますが「ナウシカ」は公開当時作品への評価の割に興行は振るわず、現在のような知名度を獲得するには翌年のTV初放送まで待たねばなりませんでした。これはその後の「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」も同様で、特にトトロの観客動員数は「千と千尋」の初日の観客数にすら及ばない程です。作品の評価と集客が両立するのはヤマト運輸とのタイアップを成功させるなど広告戦略が上手くハマった「魔女の宅急便」まで待つ事になります。

 映画の方に話を戻しましょう。
 面白いもので、TV放送などでもう数十回は観ている、何なら次のセリフも浮かぶくらいに観てるのに初めてスクリーンで観てみると何もかもが新鮮に映ります。さすがに自分でもちょっと驚きました。
 映像的な話で言うと「風立ちぬ」(2013年)まで宮崎駿監督作品の色彩設計を一手に引き受けていた保田道世、アクロバティックな表現で日本アニメに一つの変革を起こしたとまで言われる名アニメーター金田伊功(宮崎作品では「もののけ姫」まで参加している)などアニメのマエストロ達の手腕を存分に堪能することができます。自宅のTVで観ていたのではその迫力の10分の1も把握していなかったのだと実感します。

 更にこの作品が描く終末的世界観の見事さ。人類が腐海の跋扈によりその生存圏を脅かされ緩やかに、しかし確実に滅びへと進んでいきながら特に中盤ナウシカが目撃する、腐海最深部で起きている「人間の尺度を超えた形で起きる再生」の姿は今観ても特筆に値します。

 またナウシカという少女の人物像も改めて観るとずっと「哀しさ」をまとっているように見えるのが印象的です。多くの人に敬愛されながら自身の見る「世界」を共有できないことや母性溢れるキャラクターでありながらその「母」への言及が極めて断片的であることなどもあるのでしょうか。
 それはまたもう一人のヒロインともいうべきトルメキアの王女・クシャナ(声・榊原良子)もまた然りで強い言葉で軍を鼓舞する一方で時折弱さが垣間見えます。そのクシャナを武装させた「弱さ」をナウシカは看破しますが、それによりナウシカの哀しみを更に色濃くさせるにすぎません。

 ほかの3作品ももちろんですが、特にこの「風の谷のナウシカ」こそ映画館で観た事のある方は少ないはず。金ローで何度も観ているから良い、ではなく何度も放送されて観ているからこそ再上映されているこの機会に是非スクリーンで観て頂きたいですね。きっと何か発見がありますよ。

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