ちゅうカラぶろぐ


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昨年からの懸案事項の一つだったタブレットの方の機種変更を「iPad mini」の新モデル発売を機にようやく実行に移しました。
 先代は何せ6年以上使っていたのでさすがにガタが来始めていたのもあったのですが、新しいiPad mini、ゲームをプレイしてみても動画を再生してみても画質音質が格段に向上してビビります。

 こんばんは、小島@監督です。
 iPad mini 6、サイズ感も丁度良くて色々使いでがありそう。

 さて、先日「辻凪子・大森くみこ ジャムの月世界活弁旅行」というイベントに行ってきました。サイレント映画を弁士の活弁付きで楽しもうというイベントです。
 音の無いサイレント映画に活弁を乗せて観る、というのは1900~20年代に隆盛していた鑑賞方法です。トーキーつまり音声付きが映画の基本となってからは衰退してしまいましたが、現在でも話芸の一つとして活動を続けている人たちがいます。
 長く多くの映画を観てきましたが、この形式で映画を楽しむのは初めての経験です。実のところ現在1920年代以前の映画をDVDや配信などで観る際には既に弁士によるナレーションが付されているものもあるのですが、実際に観てみるとやはり一味も二味も違いました。

 今回上映されたのはコメディ色の強い短中編を4本。
 1本目は「迷惑帽子」。映画の上映が始まる映画館を舞台に派手ででかい飾りを付けた帽子をかぶった貴婦人が次々と映画館前方の席を陣取っていく、という内容の約3分の短編です。1909年の作品で監督は映画芸術の基本を作ったと言われるD・W・グリフィス。「國民の創生」(1915年)や「イントレランス」(1916年)が特に知られています。この映像に合わせてイベントの諸注意を織り込んでいく弁士大森くみこさんの話芸が見事。
 
 2本目は「月世界旅行」。科学者たちがロケットで月へ飛び、不可思議な冒険を経験します。1902年にジョルジュ・メリエスが手掛けた13分の短編で、「世界初のSF映画」とも言われる、映画の歴史を語る上で外すことのできない1本です。複数のシーンを繋いでフィルムを「編集する」という今ではスマホ1台でもできるくらい一般的に浸透したテクニックがこの映画で初めて取り入れられました。

 3本目は「ぱん。」。小さなパン屋を舞台にドタバタが繰り広げられます。今回のイベントに登場した辻凪子さんが阪元裕吾監督と共同で手掛けた17分の短編で、2017年に製作されました。これのみもともと音声のある通常の映画(何なら劇中歌まである)を敢えて音声を消して活弁を乗せる方式で上映されました。劇中歌もライブで歌うなかなかに意欲的な試みで、スラップスティックでスピード感のある内容と活弁がマッチしていてコレはコレで興味深い1本でした。

 4本目は「キートンの探偵学入門」。1924年、バスター・キートンが監督と主演をこなした45分の中編です。探偵に憧れる映写技師の青年が思わぬ事件に巻き込まれます。途中夢の中で映画に入り込んだキートンが次々に切り替わる場面展開に翻弄されたりと言った映像トリックがふんだんに盛り込まれているほか、バイクチェイスや走る列車の上でのスタントと言ったバスター・キートンの身体能力の高さが可能にしたスタントの数々が楽しめるこの作品は高い評価を受け(とはいえ本国での初上映時は興行的にはイマイチだったとか。)、アメリカ国立フィルム登録簿に保存されています。何より白眉は中盤で登場するビリヤード。「13番ボールが悪漢の手により爆弾入りの物にすり替わっている」という状況の中で次々決まるスーパーショットに目を奪われます。
 活弁の魅力を一番感じたのもこの作品で、キャラクターたちのセリフ回しだけでなく状況説明の巧みさも相まって心底楽しい1本になりました。

 4本の上映後にはアフタートーク。活弁士は活弁の台本を自分で書いて用意すること(そのため同じ映画でも弁士によってテイストが変わる)や、今回の公演では天宮遥さんが務めたピアノ演奏は、基本的に弁士の喋りに合わせて終始アドリブで演奏することなど興味深い話も多々。今回のイベントに登場した辻凪子さんは今、新作で活弁用のためのサイレント映画を準備しているそうでそのチャレンジングな試みがどのように結実するか楽しみです。
 温故知新、とはこういうことを言うのでしょう。実に刺激的で楽しい時間でした。また機会があれば是非行きたいですね。阪東妻三郎とかの時代劇も観てみたい。  

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