ちゅうカラぶろぐ


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もう先々週になりますが今年のボジョレー・ヌーヴォーが解禁になり、皆さんの中にも今年の出来を味わってみた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 ボジョレー・ヌーヴォーが市場としてある意味で成熟したこともあってか、ワインのインポーターは「次」を探して仕掛けにかかっています。イタリアの新酒「ヴィーノ・ノヴェッロ」(10月30日解禁)やオーストリアの新酒「ホイリゲ」(11月11日解禁)などが数年前からワイン専門店やビストロなどでも扱われるようになり、目にする機会も増えました。どれもボジョレー・ヌーヴォーと製法はあまり変わらないのですが使っている品種が違うので味わいも結構違います。見かけたら試してみるのも一興ですよ。

 こんばんは、小島@監督です。
 そうは言いながら私もまだホイリゲって飲んだことないんですけどね(苦笑)後学のために一度飲んでおきたいものよ。

 さて、今回の映画は「モアナ 南海の歓喜」です。

 南太平洋サモア諸島で暮らすルペンガ一家にはモアナとペアという2人の兄弟がいる。兄弟は父と共に常食のタロイモやココナツの収穫にでかけたり野獣の通り道に罠を仕掛けて捕えたり、丸木舟を出して魚を獲ったりして暮らしている。
 また兄モアナにはファアンガセという名の恋人がおり、2人はもうすぐ結婚を控えている身でもあった。結婚式を前に、モアナには成人の儀を上げる必要があった。父ルペンガの吹くほら貝の音が響き渡り、モアナの成人式が始まった。

 よもやコレを観られる機会が出来ようとは、という映画を先日鑑賞の機会を得ることができました。
 この映画の製作年は1926年。監督であるロバート・フラハティが2年間サモア諸島で現地の民族と共に生活しながらその暮らしぶりをつぶさに観察し撮影しつつ、同時にフィクション的な視点でもって映像素材をモンタージュし一編の映画へとまとめ上げたこの作品を、当時の映画作家であり評論家でもあったジョン・グリアスンが「ニューヨーク・サン」紙にてその論評の中で「ドキュメンタリー」という言葉を使用して評しました。そう、これこそが映画における「ドキュメンタリー」誕生の瞬間。この作品の後イギリスでは「ドキュメンタリー映画」への運動が興り現在へ至る基礎が築かれました。「モアナ」は文字通りに伝説的な作品です。
 もちろん原典はモノクロでサイレントな映画ですが、面白いことに私が先日観たのはサウンドが付加されたバージョン。実は1980年にロバート・フラハティの娘モニカが当時の撮影地へと飛び、当時を知る現地住民の協力を得ながら環境音や民族舞踊の音楽、更には映像から予測されうるダイアローグを書き起こして台詞をアフレコし、元の映像にフィッティングしリストアするという作業を行いこの「サウンド版」を作り上げました。もっとも、私が観たのはその後2014年に2Kデジタルリマスターを行い同時に音と映像の親和性をさらに高めたバージョンです。
 フィールドワーク主体のロバート・フラハティの手法に影響を受けた映像作家も多く、1960年代に成田空港建設反対運動、いわゆる「三里塚闘争」の当事者と共に生活しながら7本の映画を製作した小川紳介などはその代表的なところで彼はロバート・フラハティの妻フランシスの著書の邦訳もしたりしています。
 
 90年前の映像に40年前に収録した音を付加した作品、というだけでも相当ユニークですが、更に面白いことにこの音と映像のシンクロぶりが凄いです。そういうものだと言われなければ同時収録したものだと思う方もいるに違いないレベルで不思議で鮮烈な映像体験と直面することになります。このちょっとうまい具合に言葉にできない得も言われぬ感覚は他に代えがたいもので、興味と時間がある人には是非観てもらいたいところ。
 この映画を観ていると、ふとロバート・フラハティのサモア諸島の人々の素朴な暮らしへの憧憬にも似た敬意のようなものを感じます。度々作中に登場するテロップには演出的な作為を禁じ得ないものの、そういう部分を含めてサモアにある種の「楽園」を見出していたように思えます。同時にこの楽園のようなイメージが後の映画たちに与えた影響も大きく、例えば日本でも「モスラ」(1961年)に登場するインファント島などもその影響下にあるとする見方もあるほどです。

 「モアナ 南海の歓喜」は名古屋では12月7日までシネマテークで上映しています。現在の作品とはテンポがまるで違うので眠くなってしまう方もいるかもしれませんが、もはや歴史の教科書に出てくるような領域の作品に触れられる機会もそうそうないので興味の湧いた方はどうぞご覧になってみてください。

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DATE : 2023/01/12(Thu)09:44:38 EDIT
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