ちゅうカラぶろぐ


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昨日開催されたジャパンカップには実に85,000人の観客が集まったとか。昨年東京競馬場で観覧する機会に恵まれましたが、その時で60,000人くらいだったと聞いています。それでも結構な人出でしたが、昨日は映像見てるともうぎっちり埋まっていて人気の程というか人出の戻り具合が一見して分かるくらい。いや壮観壮観。

 こんばんは、小島@監督です。
 レースはイクイノックスの最強ぶりと全力で逃げを打つパンサラッサに心躍らせる最高の2分20秒でした。国内に敵のいなくなったイクイノックスはそのまま引退してしまうんだろうか。世界に挑む姿を見てみたい気もしますが。

 さて、今回の映画は「駒田蒸留所へようこそ」です。

 ニュースサイトでライターをする高橋光太郎(声・小野賢章)は、仕事に馴染めないままうだつの上がらない日々を送っていた。あるとき上司の安元(声・細谷佳正)からクラフトウィスキー蒸留所を訪ねる連載を任される。嫌々ながら引き受けたその仕事で光太郎は、駒田蒸留所を引き継ぎかつて失われたウィスキー「KOMA」を復活させようと奮闘する駒田琉生(声・早見沙織)と出会う。

 ウィスキーが登場する映画は数あれど、ウィスキー蒸留所を舞台にした映像作品は非常に少ないです。パッと思いつくところですとケン・ローチ監督の「天使の分け前」(2012年)とNHKで放送していた朝の連続テレビ小説「マッサン」(2014年)くらいでしょうか。更にアニメとなると恐らく前例が無いんじゃないかと思います。自分としても仕事に直結する内容のアニメ映画なんて滅多にないですし、もうほとんど力づくで時間を作って観に行きました。
 今作を製作したのは「花咲くいろは」「SHIROBAKO」など特定の職業をフィーチャーした「お仕事シリーズ」を度々世に送り出しているP.A.WORKS。監督はそのP.A.WORKS設立時からのメンバーである吉原正行。90年代初頭からのキャリアがあり原画や絵コンテでの参加作品は多いですが監督作は意外なほど少なく「有頂天家族」くらいで劇場用映画としてはこれが初監督作品だそうです。

 ウィスキーという酒が完成までに非常に長い時間を必要とするように、さすがとしか言いようがないほど丹念なリサーチと主題へのリスペクト、丁寧な仕事の結実を感じさせる作品です。エンドクレジットで協力としてもの凄い数のクラフトウィスキー蒸留所の名前が出てきた時には驚きました。舞台となる駒田蒸留所のディテールの見事さ、地に足の着いた登場人物たち、どれもとても心地良い。「継承」をテーマとした物語に気を衒うようなところは全く無く、あまりに真面目過ぎてむしろ薄味に感じてしまう方もいるでしょうが、題材自体が極めて珍しいものである以上余計なフックは却って不純物になってしまうことを思えばコレで充分と言えます。

 主演である小野賢章、早見沙織を筆頭に変にアニメっぽくないフラットで自然体な演技を出演者たちがしているのも特徴で実写映画的な雰囲気を持っているのも面白いところ。早見沙織はこの映画の主題歌も歌っているのですが、正直最初は誰が歌っているのか分かりませんでした(苦笑)。いや、あんな歌い方もできる方だったとは。

 主舞台である駒田蒸留所は、長野県佐久市あたりに所在するメーカーとして登場しますが、モデルとなっているのは富山県砺波市にある三郎丸蒸留所。マスターブレンダーでありCEOでもある稲垣貴彦さんはこの映画のウィスキー監修も務めています。外観や内装、「ZEMON」というポットスチル(お酒の素とも言えるもろみを蒸留するための銅製の釜のこと)を導入していることなどがほぼそのままであるほか、作中言及される「再建資金の一部をクラウドファンディングで確保した」「他の蒸留所と原酒の交換をした」などのトピックは時系列こそ不動であれ三郎丸蒸留所の来歴で実際にあったことが採用されているようです。この辺り、「true tears」「クロムクロ」「花咲くいろは」などに代表されるように積極的に地場を取り込むP.A.WORKSらしい一面であると言えますね。余談ですがこの「ZEMON」というのは三郎丸蒸留所が高岡銅器を用いた梵鐘製作の老舗である老子(おいご)製作所と共同開発したポットスチルです。

 作中、ウィスキーにかなり長い冬の時代があったことが語られています。大手メーカーも率先して販売促進策を打ちますがなかなか芽が出ず、今のようにウィスキーが人気を獲得するようになるにはハイボールが人気を獲得してその後定着したこともそうですが、ドラマ「マッサン」のヒットが一役買いました。私もあそこで急にウィスキーの売り上げが伸びたのを良く覚えています。さすがに映画では「マッサン」について触れることはなく「ある時期を境に冬が明けてきた」くらいの描写に留まっていますが、この映画が日本ウィスキーの更なる飛躍のきっかけになると良いですね。
 
 作品自体があまり身近では知らないだろうことを平易に語り見せるような作りをしてくれていますが、背景やモチーフに対する知識を得てから観るとまた味わいも深くなる、そう言ったところもウィスキーとの共通項。映画を楽しんで興味が湧いたら、是非一歩踏み込んで調べてみたり、あるいはレストランやバーでウィスキーをオーダーしてみてください。きっと新しい楽しさが待っています。

 

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