ちゅうカラぶろぐ


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コロナ禍の只中では全然やれなくなって、最近になりようやく戻って来たこと、皆さんの周囲にも結構あると思いますが、私の仕事的には試飲会が増えてきました。読んで字の如くワインやウィスキーなど様々なお酒の味を見る場です。それは時にインポーターの売り込みの為だったり時に勉強の為だったりと様々ですが、3年くらい本当に離れていた事にここ最近立て続けにその機会に恵まれました。自発的にはなかなか買わない東欧系のワインや、ボトルデザインがホストクラブやキャバクラ向けに特化していてこんな機会でもなければまず飲もうとすら思わないスパークリングワインなどの味を見ることができて嬉しいばかり。

 こんばんは、小島@監督です。
 ちょいちょいそういう場を持っておかないとみるみる勘が鈍っていくというのをこの数年で実感しました。やっぱりちゃんと勉強は続けないとダメですね。

 さて、今回の映画は「ザ・フラッシュ」です。
 実は封切り直後に観ていたのにちょいと後回しにし過ぎましたよ、ええ。

 法医学捜査官として事件解決を陰で支える青年バリー・アレン(エズラ・ミラー)には、超高速で活動できる特殊能力があり、その力を買われて「ジャスティス・リーグ」のメンバー・フラッシュとして戦うもう一つの顔があった。
 ある時バリーは超高速での移動中に時間の流れから切り離され、過去に行ける力を得た事に気付く。ジャスティス・リーグのリーダー、バットマンことブルース・ウェイン(ベン・アフレック)から過去への干渉は極めて危険だから止めるべきと警告されるが、バリーには何としても変えたい過去があった。

 個人の想いと世界の危機が相克する時、果たしてどちらを選ぶべきなのか。ヒーローもので数限りなく問われて来た命題に、今回向き合う事になるのは心優しい1人の青年。
 開幕すぐに始まる崩壊する病院からの赤ん坊たちの救出劇は、アイディアと迫力に溢れバリー・アレンのキャラクターを強烈に印象付けて掴みは充分。そこからタイムトラベルを巡る繊細でウェットなドラマへと移行して、なかなか複雑な味わいを見せ、ヒーローものの定番の一つになりつつある概念「マルチバース」に独自のアプローチで迫ります。
 マルチバースにタイムトラベルまで加わって、一見何でもありの世界観ですが、物語の骨格は思いのほかオーソドックスです。1980年代の名作映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思い出させるプロットしてますが、作中でも何度もネタにされるので意図的にやっていることでしょう。実際企画段階では同作を手掛けたロバート・ゼメキス監督にオファーすることも検討されたそうです。最終的に抜擢されたのは「IT」二部作を成功させたアンディ・ムスキエティ。情報量の多い内容を、集中力を散逸させることなく見事にまとめ上げています。

 タイムトラベルとマルチバースの中で本筋と共に語られるのは、ジャスティス・リーグの総決算。シリーズを彩って来た人物が続々と登場します。であると同時にDCコミックの歴史をも網羅します。過去に対してアクションを起こした事で別の時空へ迷い込むバリー。そこで出会うブルース・ウェインを演じているのは、1989年にティム・バートン監督作の「バットマン」でブルースを演じたマイケル・キートンです。予告編でも出てくるこのトピックだけでなく、大量の小ネタが仕込まれており中には「このためにわざわざ!?」と言いたくなるような大技までキメてくれます。それなりに観て来た方なら少なくとも2回はびっくりすること請け合い。取り敢えず私は観た人同士で語りたい。
 時間から切り離された超光速の空間「スピードフォース」を、さながらゾエトロープのようなビジュアルで見せる映像表現もユニーク。近年モチーフにした作品が増えた反動で急速に手垢が付きつつあるマルチバースというものに、ちゃんと他と差別化した画を作り上げたこともポイント高いです。

 バリー・アレンを演じるエズラ・ミラーの演技も素晴らしく、出来れば更なる続きが観たいくらいなのですが、何分エズラは今ティーンエイジャーへの性的搾取や脅迫などで複数の州から告発されている真っ只中。当面再演は期待できない上にDCユニバース自体も昨年ジェームズ・ガンを新リーダーとして招聘し解体とリビルドが進んでいる最中。正直なところまっさらな気持ちで映画を楽しもうにもノイズが大き過ぎる中での今作は、なまじ完成度が高いだけにどこかやるせなさを覚えざるを得ません。
 ある意味ではかなり「見納め」となりそうな今作、シリーズのファンはどうかスクリーンでご堪能あれ。

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