ちゅうカラぶろぐ


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先週ボジョレー・ヌーヴォーが解禁されました。コロナ禍の只中で例年通りではなかったのもありますが、今年のヌーヴォーは思い入れ深いものになりました。
 実は今年は初めて輸入前の現地法人とのやり取りから任されることになり、最初に購入の打診を送ったのは5月の連休明け。その後、立てようがない需要予測に翻弄されたり発注した後の通関のための書類のやり取りに四苦八苦したり、コロナ禍で飛行機が減便されていたのでそもそも現地をいつ出港されるかから不透明だったりとこの1~2か月は増加する一方の残業時間と共に本当に心身ともにキツい時間を過ごしました。
 どうにか商品も無事入荷し解禁に漕ぎつけることができ、いくつかの後始末を残して今はひと段落といったところです。

 こんばんは、小島@監督です。
 そんな今年のヌーヴォーは、普段のあっさりとした、悪く言えば水っぽい印象を覆すかなりしっかりとした味わいをしています。少し完熟した甘さも感じるので今年のボジョレー地区は夏場結構暑かったのでしょう。何気に美味しいのでたまにはワインもいかがでしょうか。

 さて、今回の映画は「今日もどこかで馬は生まれる」です。

 9万人の人がひしめく東京競馬場。高らかに鳴り響くファンファーレと共にG1レースが幕を開けた。出走する十数頭のうち勝利の栄光に浴するのは1頭のみ。多くの競走馬はこの場に立つことも無く引退を余儀なくされる。引退した競走馬は、その後一体どうなるのであろうか。この問題に当事者たちはどう向き合っているのか。さまざまな立場で馬と関わる人々を訪ね、彼らの想いを聞く。

 映画の中でも語られますが、JRAの売上高は実に2兆7000億にも上りその国庫納付金は3000億にもなるそうです。そんな華々しい場に立てる者は少なく、またその時間も短い。野球やサッカーなどのプロ選手も現役でいられる時間よりそうでない年月の方が長いと言われますが、屠畜される馬も少なくない競走馬の世界はさらにシビアなものであると言えるでしょう。セカンドキャリアとして再調教されて乗馬クラブの所属になる馬も多いそうですが(自分も乗ったことありますし)、人を乗せられなくなった馬のその後のサードキャリアとなると最早統計も無いそうです。
 この映画は、馬に関わる多くの者たちへのインタビューを通して競馬産業の中で生きる人たちの想いを浮かび上がらせます。監督平林健一を始め、広告映像制作会社に勤める若手クリエイターたちのチームによって資金をクラウドファンディングで募る形で製作されました。

 主題に対し、本当に多くの人への取材を行ったのが見て取れるドキュメンタリー映画です。インタビューした相手も競馬場に足しげく通うファンや馬主、騎手だけでなく競走馬の生産・育成を行う牧場のオーナーやスタッフ、調教師、厩務員を引退後も馬に関わる生活を選んだ者や元競走馬をパートナーに馬術大会への出場を目指す選手、馬を屠畜し食肉へと加工する工場の職員、引退馬のセカンドキャリアを支援するNPO代表、人を乗せられなくなった馬のために養老牧場を営む者、ジオファームを立ち上げ放牧した馬の糞尿で堆肥を作って農家へ卸したりそれを利用してキノコを栽培する者、と競走馬が「生まれてから死ぬまで」のどこかに濃密に関わるさまざまな人々にカメラを向けています。
 競馬を趣味している方には既に承知している事実をなぞっているだけの箇所もあるのかもしれませんが、乗馬クラブに通っていた時期があるとはいえ気が向いた時にG1レースをTVで見る事がある程度の私には新鮮に映るトピックの方が多いです。

 競走馬の世界は人間が作り出した枠組みの世界であり、本来の生物の営みとは一線を画します。しかし兆に届くほどに産業として巨大化しており多くの者の生活を支える場になっている以上その枠組みを生半可に壊すことは最早出来得ないでしょう。引退馬の在り方に対し多くの葛藤を抱えながらその道を模索する者たちを活写しながらも安易な結論を提示しないこの映画のスタンスは、タームに対して「答えなどは無く、あがくしかない」ことをよく理解していると言えます。

 丹念に作りながらも94分とテンポ良くまとめられていてダレることが無い一方で、かなり素朴な印象を受けるのは若手作家ならではというところでしょうか。作中ある競走馬について度々言及されるのですが、特にテロップなどで概要を解説したりはせずに語りっぱなしになっているのは不親切なのかそこに興味を持って調べるというアクションを起こして欲しい意図の表れなのか分かりにくいところなどもあったりもして熱意が先行し過ぎている感もありますが、語り口にまでそれを押し付けていてはいないところに好感が持てますね。
 高い問題意識と、それに真摯に向き合ったのが見て取れる力作。ミニシアターでの上映が中心なので鑑賞できる機会が限られる作品ではありますが、多くの方に観て頂きたい一本ですね。

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