ちゅうカラぶろぐ


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先日深夜に放送されていたので超久しぶりに(多分20年ぶりくらいに)「グレムリン」(1984年製作のSFブラック・コメディ。監督ジョー・ダンテ、製作総指揮スティーブン・スピルバーグ)を観ました。
昔何度も観たので今更内容がどうとか言うのは無いのですが、今観ると懐かしさで童心に帰れるのが良かったですね。
コレに限らず「インディ・ジョーンズ」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とか80年代の洋画って最近ほとんど地上波でも放送してくれなくなったので何だか寂しいです。ゴールデンタイムでなんて贅沢は言わないから深夜にでも時々放送してくれると嬉しいのですが。

こんばんは、小島@監督です。
遅くなりましたがみなさんあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、新年1発目にして通算101回目との今回の映画は監督ポール・グリーングラス、トム・ハンクス主演の「キャプテン・フィリップス」です。

2009年、海運会社に勤務するリチャード・フィリップス(トム・ハンクス)はバーモント州の自宅を出発した。今回の任務はオマーンからケニアへ援助物資を運搬する輸送船の船長だ。航海プランに近年海賊活動が活発化しているソマリア海域を通過する事を知ったフィリップスは、出港後に緊急時訓練を実行しようと決意する。しかし、その訓練の真っ最中に本物の海賊の襲撃に遭うのだった。

実際にソマリア人海賊に襲撃され人質となったリチャード・フィリップスの回顧録(「キャプテンの責務」というタイトルで発売中)を原作に、海賊と孤独な戦いを繰り広げる男の姿を描いた作品です。
この映画の大きな見どころはもちろんフィリップス船長が人質にされる極限状況の中、海賊相手にいかに生き抜いたかを描くサスペンスにあり、ただの1人の職業人でしかない男がいかにこの困難な状況に立ち向かったかをトム・ハンクスが実に人間臭く演じ切っています。更に実際にソマリアの血を引く者たちからオーディションで抜擢されたという海賊役の青年たちも皆演技経験がほとんど無いとは思えないほどの真に迫った演技でこちらを驚かせてくれます。というかパッと見本物にしか見えなかったです(苦笑)
そして監督ポール・グリーングラスは、「ジェイソン・ボーン」3部作で見せたようなサスペンスの迫力と、911で貿易センタービルに突っ込んだハイジャックされた旅客機内を再現した「ユナイテッド93」で見せた登場人物に寄り切らないドキュメンタリー的な冷徹さを両立させ、サスペンスとしても実話物としても非常に高レベルな作品に仕上がっています。

現実問題としてアフリカ海域での海賊の氾濫は大きな国際問題になっており、特にフランスはその撃退に熱心になっています。また、その海賊行為の根底にあるのは先進国と途上国との大きすぎる経済格差でありフィリップスを人質に取った海賊たちは、最終的にアメリカのプライドそのものと戦うことになります。
わずか1人の人質を救うために戦艦やSEAL(米海兵特殊部隊)の派遣も厭わないアメリカの前には小銃しか持ち合わせの無い数人のソマリア人海賊などまさに無力。サスペンスの面白さとは別に、この容赦の無さの中に思うものこそ、この映画の醍醐味であると言えるでしょう。
作中フィリップス船長を襲った海賊たちは元々漁師たちだったという描写がありますが、ソマリア近海は主要な漁場を国外の漁船が乱獲して壊滅状態になっていると聞きます。ソマリアは長く無政府状態が続いているため、その現状を正式に抗議する事も出来ずにおり、漁師が海賊へとなり替わる一因ともなっています。
直接的でなくともこの辺りの事を作品の中に忍ばせる手腕の巧みさは見事と言う他ありません。エンターテインメントとして成立していながら世界情勢の一端を垣間見させるほどにジャーナリスティックでもあり、極めて高いレベルの映画です。公開からちょっと時間が経過しているため一部の公開館ではそろそろ上映が終了してしまいそうですが、まだご覧になってない方は是非、この濃密な緊張感と今日性を味わっていただきたいですね。

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