ちゅうカラぶろぐ


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週末名古屋で開催されたG20国際外相会議、6月で大阪で行われた首脳会議同様名古屋市内でも大規模な交通規制が敷かれました。なにぶん今回は規制区域内に自分の勤め先があるため(幸いど真ん中ではなかったけれど)、数週間前から各所に情報を集め、週の作業の中心を前半に集中させたりと段取りに四苦八苦。しかも先週はボジョレー・ヌーヴォーの解禁週!もう色々重なっちゃって大変でした。

 こんばんは、小島@監督です。
 あ、今年のヌーヴォーですか?フレッシュな果実味が…というか、今年は気候が不安定だったのかかなり銘柄ごとに味わいに違いがあったのでぶどうの生産者単位で出来栄えに差があるようです。もしも飲んでみたものを美味しくないと感じたら別の銘柄を試してみてください。

 さて、今回の映画はリクエストを頂きまして、「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」です。

 彼らは真ん中は何だか苦手。落ち着くのはいつもすみっこ。それがすみっコたち。
 ある日すみっコたちはお気に入りの店、まめマスターが営む「喫茶すみっコ」の地下室で「せかいのおはなし」と題された古い1冊の飛び出す絵本を見つける。
 絵本を眺めていると突然仕掛けが動き出しすみっコたちは絵本に吸い込まれてしまった。
 桃太郎に赤ずきん、人魚姫。お伽噺の世界に放り出されるすみっコたち。その中ですみっコたちはどこから来たのか自分が誰なのかも分からない独りぼっちのひよこに出会う。

 新しい映画との出会いは時に予想外。正直人から薦められるまでは全く選択肢の中にも入っていなかった1本ですが、自分からはまず絶対的に選ばないタイトルだからこそ、新鮮な体験を味わえるものです。
 「たれぱんだ」や「リラックマ」など数多くのキャラクターを輩出してきたサンエックス。そのサンエックスが2013年に生み出し関連商品の売上は200億を超え、今年「日本キャラクター大賞」グランプリを受賞するなど高い支持を集める「すみっコぐらし」。度々ゲーム化はされてきたようですが映像化は今回が初めてとなります。ぶっちゃけこのトピックも観終わった後でいろいろ調べました(笑)
 興味深いことに「すみっコぐらし」のキャラクターたちは程度の差はあれ皆ネガティブです。寂しがり屋で人見知りの「しろくま」、恥ずかしがり屋の「ねこ」、自身が何者か分からず自分探しを続ける「ぺんぎん?」、実は恐竜の子孫であることを隠して生きる「とかげ」、実際はナメクジだけどカタツムリに憧れ貝殻を背負う「にせつむり」、ほとんど脂身なので残されてしまった「とんかつ」の端っこと同じく残されがちの「えびふらいのしっぽ」とメインストリームを歩けない者・素性を隠している者・アイデンティティが満たされない者ばかり。変に深読みすれば皆マイノリティー達です。そうであるが故に自分にも他者にも優しいすみっコ達の姿は生きづらさを抱えるマイノリティーへの願望も含めたアイロニーなのかもしれません。

 作品としては元となる絵本そのままの世界を堪能してもらうことを最優先に映像化したようで、キャラクター達に声優が当てられてはおらずナレーションのみで進行します。ナレーションを担当したのはV6の井ノ原快彦と本上まなみの二人。独特の温度感で進行していくので不思議な印象を残します。キャラクターの心情をほぼ動きや表情のみで見せる当たりはカートゥーンに近い風合いとも言えますね。
 原作そのままのビジュアルで躍動させることに成功させた今作の監督を務めたのはまんきゅう。ショートアニメを中心に製作されている方で近年では「アイドルマスター シンデレラガールズ劇場」全シーズンを手掛けてファンから支持を集めました。特に頭身の低いキャラクターを可愛く見せることに長けているようで、時にちんまりと時に大胆にすみっコ達を動かしてみせます。ころころした真ん丸な見た目でアラビアンナイトの世界では空飛ぶ絨毯でバレルロール決めてみせたりするのでなかなか油断できません。

 この映画が思いも寄らず反響を集めているのはひとえに終盤に見せる展開にあります。すみっコたちは自身が誰かもわからないひよこの居場所を探そうと奮闘します。その結果、最終的にひよこが何者かが明らかにされるのですが、その正体が判明した後に訪れる帰結に驚かされます。ハッキリ言って安易なハッピーエンドではありません。ある意味残酷ですらある地点へ到達します。幼い子供も触れる作品に対して時にシビアな面も描いてみせるという点では古くは「今昔物語集」、現代では「ハリー・ポッター」などでもしばしば見られますが、その系譜に連なる作品と言って差し支えないでしょう。特に童話という形を取りながら貧困層やマイノリティーの悲哀を描き続けたアンデルセン童話が雰囲気としては一番近いのかもしれません。実際意識的か偶発的かは分かりませんが「赤ずきん」「人魚姫」など作中でもアンデルセン童話をモチーフとしたシーンが度々登場します。もちろんちゃんと「救い」は用意されてあり(これも落としどころとして良く考えられているなと感心しました)、ただ哀しい状況に叩き落すだけではないのですが、この感情の揺さぶりとそれによってもたらされる苦みを含んだ余韻の深さが素晴らしく、ツボにはまれば大号泣してしまう方もいらっしゃることでしょう。

 65分と短い尺なのでタイムテーブル次第では空いた時間にふわっと観られるタイプの作品です。反響の大きさと動員数の良さも手伝って公開館数が増加中のこの逸品、普段なら私同様ノーマークの方も多いでしょうが、スルーしてしまうのは勿体ない。この異色作、どうぞ劇場でご堪能あれ。

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