ちゅうカラぶろぐ


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少し前の話なのですが、仕事の絡みで「カバラン」の試飲会に行って来ました。その名に聞き覚えのある方もいらっしゃるかと思いますが「カバラン」は台湾のウィスキーで、誕生してからまだわずか10年ほどながら数多くのコンテストで表彰され世界的ブランドに成長したウィスキーです。本場スコットランドや日本の余市など基本的にウィスキーは高緯度で熟成させるものという常識を覆し、亜熱帯地域での熟成を成功させ世界に衝撃を与えただけでなく、現在インドや鹿児島など南方でのウィスキー商品化に拍車をかけ新たな潮流を生み出したブランドです。
 南国の蒸留酒は自然蒸発分、いわゆる「天使の分け前」がスコットランドより遥かに多い(年間20%近い!)ため急速に熟成が進むのが特徴で、そのくせ年数は若いからどこかフルーティーさを残しているところが美味しいですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 とは言えカバランは割とお値段が張る物が多いのであまりホイホイ買って飲んだりできないからこういう機会を捕まえられるのは結構嬉しい。

 さて、今回の映画は「クワイエット・プレイス」です。

 「それ」は隕石と共に地球へやってきた。その「何か」により人類は瞬く間に存続の危機に立たされてしまう。
 荒廃した街で食糧や息子のための薬などを探すアボット一家。夫のジョー(ジョン・クラシンスキー)、妻のエヴリン(エミリー・ブラント)と3人の子供たちは手話で会話をし道路には砂を敷き詰め音を立てないように息を殺して暮らしている。街での用を終えて帰途につく一家。しかしその帰路、異変が起こった…

 ワン・アイディアを徹底して研ぎ澄ませたことで忘れがたい印象を観る者に与えてくれる逸品の登場です。ホラーやスリラー映画ではたまにこういうのが現れてくれるから観るのは止められません(笑)
 滅亡寸前の人類社会を描く映画はゾンビ映画などで度々見受けられますが、この映画が他と明確に一線を画す点はその作品内での設定やルールの描写に光る巧さにあります。「聴覚が異常発達したモンスターが跋扈している」ため「大きな音が立てられない」ことを様々な形で見せていくのですが、そのほとんどをセリフに頼らないようにしています。特に序盤は寡黙そのものなのでぼんやり観ていると肝心なところを見落す可能性もあり気を抜けません。一方で「音を立てなければ割と何とかなる」ところも見せているのが面白く、こういった終末映画にお決まりのバリケードが無かったりドアに鍵もかけていなかったり。あまつさえ兄弟でボードゲームに興じたりするシーンが登場したりしています。

 この映画を極めて忘れがたいものにしてくれるのは何より中盤から終盤の展開にあります。妻のエヴリンは妊娠しており臨月を迎えています。大きな音を立てればモンスターが襲ってくるというこの状況で!まさに極限。ビリビリ来るような緊張感が持続するハイテンションな展開が連続します。

 この映画をより豊かなものにしているポイントとして、長女リーガン役ミリセント・シモンズの演技があるでしょう。聴覚障害を持ち生まれつき耳が聞こえないリーガンはある意味で健常者よりもモンスターに対して無防備であり、また同時にコレが親子の葛藤の一つの要因ともなっているのですが、そんなリーガンを演じるミリセントは実際に聴覚障害者だそうです。それ故作中に登場する手話は実際に彼女が扱う手話であり、また作品のサウンドデザインにも影響を与えたとか。この映画が独特のパワーを持ちうるに至ったのは彼女の功績も大きいでしょう。

 ユニーク、という言葉でくくるにはもったいない、アイディアの極めて優れた磨き上げぶりが活きた上質な作品です。単にホラーとして観るには暖かな(というか熱い)余韻を残してくれる逸品でもあるので普段はホラーは苦手だ、という方でもどうぞご覧になってみてください。

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