ちゅうカラぶろぐ


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世の中にはいろんな研究をする方がいらっしゃるもので、「ハリウッド映画の悪役はお肌にトラブルを抱えがち」という研究論文が最近アメリカ医師会の専門誌に発表されました。
確かに有名どころで言えば「羊たちの沈黙」(1991年製作)でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクターは男性型脱毛症持ちでしたし、「スターウォーズ」のダース・ベイダーは灰色に変色し傷を抱えた素顔をしていました。
悪役がこうなのに主人公の方はどうかといえば、例えばジェームズ・ボンドは喫煙もするし酒量も多いのに肌ツヤが良かったりすることが大抵です。もっともブルース・ウィリス演じる「ダイ・ハード」のジョン・マクレーンの頭部は作を重ねる毎に後退していき最終的には丸坊主でしたが(笑)
なのでこういう描写が「皮膚病持ちの社会的偏見を助長する可能性がある」とその論文では警告していますが、ちょっと気にし過ぎのようにも思えますね。

こんばんは、小島@監督です。
翻って日本はどうかといえば「デス・ノート」の夜神月などのように端正な顔立ちをしていることもしばしばです。この辺りも突き詰めれば民俗的な考察ができるかもしれませんね。

さて、今回の映画は「悪魔祓い、聖なる儀式」です。

イタリア、シチリア。一人の神父が街の人々ともに空を見上げながら日食の光景を楽しんでいた。
鳥の囀りに耳を傾け、吹き抜ける風を肌で感じ束の間の休息を楽しんだ後、教会に戻り儀式を開き、教区の者に電話を掛ける。人々の心の中に広がる闇の世界と戦うために。神父の名は
カタルド。現代に生きる悪魔祓い師、すなわちエクソシストである。

昨年のヴェネツィア国際映画祭で上映され「オリゾンティ部門最優秀作品賞」(オリゾンティ部門とは革新的な映画を集めた部門)を獲得するなど高評価を受けたもののその内容に物議を巻き起こしたドキュメンタリー映画が現在公開中です。
1973年に製作され世界的なヒットとなった「エクソシスト」(監督ウィリアム・フリードキン、主演マックス・フォン・シドー)を始め数々のホラー、オカルト映画の題材となってきた悪魔祓い師、その実像に初めて密着したドキュメンタリーです。監督はスペインのTV局などでドキュメンタリーを製作してきたフェデリカ・ディ・ジャコモ。彼の作品が日本で上映されるのはこれが初めての事になります。ユニークな題材に好奇心が湧いて観に行ってしまいました。

カタルド神父の元に「悪魔の仕業」と信じて集う人々の多さに驚きますが、素行不良が過ぎて両親から締め出された少年や娘の不登校に悩む両親、雇い主が仕事のギャラを払わない事に憤る男性など「それ、悪魔の仕業なん?」と言いたくなるようなことも多く、さながら神父はよろず相談所のよう。
中には確かに「悪魔憑き」のようにも見える不可解な状況に悩む女性も登場しますが、この映画の特徴は、そういった説明の付きづらい現象に対して一様な解釈を観客に与えないようナレーションが排除されているのがポイントです。反面、それは私のようなカトリックではない者にはフィクションのように見えてしまう危険性も孕んでいますが、ジャコモ監督はこの辺りを絶妙なバランス感覚で克服しています。

悪魔祓いは神父なら誰でもできるというワケではなく一種の専門職としてヴァチカンに正式に認可された者だけが行使できる権限だそうです。長らくカトリックの秘儀とされて閉鎖的に秘匿されてきましたが、近年需要が増加しており各教区で悪魔祓いが増員されたり公的な養成機関が発足したりしているそうです。映画の作中にも本来的には非公認とされているらしい集団での解放儀式や電話越しでの悪魔祓いなどが登場して需要と供給のアンバランスさをうかがわせます。実はこの辺りの一連の描写にこの映画が物議を醸した一要因が存在しています。悪魔祓いはそもそも「秘儀」なので「公衆の面前で行ってはならない」というのがあるそうで、カメラの前で執り行う事自体に批判があったほか、私などには知る由も無いのですが、カタルド神父の悪魔祓いの作法は少々正統派ではないらしくその辺りにも批判が起こったとか。
宗教的な秘儀ゆえ慎重に扱いたいヴァチカン、需要に追いきれない現状に悩む神父たち、信者の癒されたい欲求、それらがないまぜになった狭間にこの映画は存在しているのでしょう。

実は想像していたのと内容が少々違っていたのですがそれでもかなり興味深くて面白かったのというのが正直な感想。センセーショナルな題材を単なる野次馬根性ではなくちゃんと観客の知的好奇心に訴求できるように真摯に作り上げられた映画です。一種のプロフェッショナルのあり方、宗教と人とのあり方、様々なあり方が観る者の「宗教観」を刺激して多くの示唆を与えてくれることでしょう。
このユニークな題材に好奇心が湧いたなら、是非観てみてください。











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