ちゅうカラぶろぐ


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先週のバレンタインデーに一つの訃報が。
ミニシアターの先駆けともいえる「岩波ホール」の総支配人・高野悦子さんがお亡くなりに。
北欧やアジア各国のそれまで陽の当たらない国々の映画の公開に尽力された方で現在ほぼ世界中の国の映画が年中どこかしらで鑑賞できる土壌を築き上げたと言っても過言ではありません。
1映画ファンとして心よりご冥福をお祈りします。

こんばんは、小島@監督です。
映画は鑑賞する側にも文化がある。

さて、最近ライブの話が続きましたが今回は久しぶりに映画の話。
いわゆる9.11事件より2011年5月にあったビンラディン暗殺事件に至る過程を1人の女性CIA情報分析官の目を通して描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」です。タイトルの由来は作戦の決行時刻であった午前0時30分の事を指す軍事用語なのだとか。

名も無き一般市民である自分には正直泥沼にしか見えなかった対テロ戦争にいきなり降って湧いたように見えたビンラディン暗殺事件は何と言うか、異様な衝撃を受けた事を覚えています。
それからまだ2年と経っていないのに製作されたこの映画は、その題材故に「ホットな話題のモノ」というよりはある種の生臭さがどうしても拭えない作品です。この生臭さがアリに思えるかどうかがまず最初のハードルと言えるでしょう。

映画の作りは徹底的に冷徹な視点で貫かれています。
主人公はマヤと言う若き女性分析官で、彼女がどうビンラディンに辿り着いたかが物語の肝ですが、カメラは彼女に寄り添っているというより随行している感じで、事象は詳らかに追うものの彼女の心象には迫るほどには寄っていきません。それは終盤の約40分ほどをかけて展開される暗殺作戦の顛末を描く際も同じで、この際は兵士の真後ろからカメラが付いていく感じです。
9.11以降作戦に至るまでの10年間の主要な事象を断片的にピックアップして取り上げている点や、2005年にロンドンであったバス爆破事件や2009年のCIA局員を巻き込んだアフガニスタンでの自爆テロについても触れられますがその際には実際のニュース映像も使用され、全体的には一種のフェイクドキュメンタリーのイメージです。

上映時間は158分。はっきり言ってその間ずっと張りつめたような緊張感が続き、気の休まるタイミングは一度とてないままクライマックスの作戦まで突き進むので観ててとても疲れます(苦笑)。

マヤとカメラとの距離感が唯一崩れるのがラストシーン。圧倒的にリアルな映像の中でここだけは劇映画の様相です。
しかしここでの非常に象徴的ともいえるやりとりはこの映画の結末には相応しい味わいを持っています。

正直この映画、個人的にはかなり楽しめたんですが、かと言って人に薦めやすい映画でもありません。
緊張感溢れ過ぎるサスペンスを楽しみたい方、アカデミー賞候補作は取り敢えず押さえておきたい方、「今のアメリカの心象」を読み取ってみたい方、そんな方にはトライしてみる価値のある一本だと言えるでしょう。

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