ちゅうカラぶろぐ


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台風接近中とは言えお盆休みだからか、昨日近所のスーパーへ買い物に行ったらキャンプの買い出しらしい人たちがチラホラと。今くらいの時期だとお馴染みの光景なのですが、今年は昨年よりもその数が多い印象。人の動きがそれだけ活発になって来たと言うことでしょう。そんな昨日夕方に結構強い雨が降り、キャンパー達はどうしているだろうかとちょっと気になったり。

 こんばんは、小島@監督です。
 これを書いている今、天候はとても静かだわ暑いわでとても台風が近づいているように見えない。このまま楽に済めば良いのだけど。

 さて、今回の映画は「ミッション:インポッシブル/デッド・レコニングPART ONE」です。

 IMFのエージェント・イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、賞金首となったイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)を捕らえ、彼女が持つ「鍵」を回収する任務を受ける。アラビアの砂漠でイルサと接触し「鍵」を入手したイーサンだが、アブダビ空港で思わぬ妨害に直面する。

 コロナ禍の観客減少から映画館を救った「トップガン・マーヴェリック」も記憶に新しいトム・クルーズの主演最新作は、彼のライフワークとも言える「ミッション:インポッシブル」のシリーズ第7作目。シリーズ初の二部作で、何と人間ではない敵・AIとの戦いに挑みます。
 タイトルの「デッド・レコニング」とは計器に頼らずコンパスなどを用いて現在地点や針路を推測しながら割り出していく航法の事を言い、ここから転じて「行き当たりばったり」とか「当てずっぽう」という意味もあります。今作は冒頭で極秘任務を負ったステルス潜水艦が登場しそれが物語の肝でもあるのでその事を指すようにも見えますが、今作は結末を決めずに撮影しながら脚本を書くという手法で作られているので作品の行方自体が「デッド・レコニング」であると言えるでしょう。

 そんな作り方をしているので物語は非常に粗っぽく、登場人物の行動にイマイチ一貫性が無かったり、今作から登場するヒロイン、ヘイリー・アトウェル演じるグレースが終盤までただの嫌な女だったりと緻密とは言い難いです。ただ4作目までは1作毎に監督が変わり作品の顔も大きく異なる「ミッション:インポッシブル」ですが5作目「ローグ・ネイション」以降はクリストファー・マッカリー監督が務め続けていることにより、作品に連続性が生まれキャラクターに厚みが出て来ており、それが物語を牽引する一助になっています。

 もう一つ、今作を強力に形作るのが何と言ってもアクションです。もう還暦だというのにお前に限界は無いのか?と思ってしまうほど体を張り、その名は身体性と直結していると言っても過言ではないトム・クルーズのアクションが全編に渡り展開。しかも各シークエンス毎に全く毛色の違うスタントを見せて観客を飽きさせません。164分という長尺を事実上アクションだけで牽引するパワーは並大抵のものではありません。イタリア・ローマで見せる「ルパン三世カリオストロの城」を彷彿とさせるフィアット500のカーチェイスだけでも観てるこっちは元が取れたような気分になります。

 AIという今日的なテーマを扱っていますが、この1〜2年で急速な進歩を遂げているトピックに対して製作と撮影自体はコロナ禍前から始まっていたことを思うと、今作での描かれ方はどこか先見の明があると感じます。当初の予定通りに2021年に公開できていたらもっと観客の目には先進的に映っていたことでしょう。
 また、AIに仕事を奪われかねないとハリウッドでストライキまで起こっている現状を思えば、走行中の列車上での格闘だろうが崖からのダイブだろうが実際にやってのけるトム・クルーズの生き様は、人間にはまだAIでは代替できない領域がある事を見せつけてくれるかのようです。

 二部作の前編という体なので、164分もかけて物語は風呂敷を広げるだけ広げて終わります。そして後編は何とまだ撮影中。シナリオもまだ未完成かもしれません。どこに落着するのか全く見えませんが、PART ONEとはまた違うアクションのフルコースでこちらを楽しませてくれることでしょう。それはある意味で1920年代に活躍したムービースター、バスター・キートンを思い起こさせるような、映画というもののプリミティブな興奮に満ちた時間とも言えます。
 映画とは、突き詰めればこういうので良いのかもしれませんね。

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こんばんは、小島@監督です。

 去る7月28日、1軒の映画館が閉館しました。

「名古屋シネマテーク」。開館は1982年。名古屋のミニシアターとしては最古参の映画館でした。前身は倉本徹氏が代表を務めていた自主上映サークル「名古屋シネアスト」、ホールでの貸切上映を続けていたシネアストが常設の映画館として今池スタービルに居を構えたのが始まりです。
 独自の選別眼で他に類を見ないラインナップで上映を続けて来た映画館で、最後の年となった今年に入ってもジャン=リュック・ゴダールや原一男と言った監督の特集上映が組まれたほか、シネコンではあまりお目にかかれないジョージアやハンガリーなど東欧諸国、イスラム語圏の映画の特集企画を度々組んで来ました。1998年に日本公開されインド映画の知名度を飛躍的に向上させた「ムトゥ踊るマハラジャ」を東海地方でいち早く紹介したのもシネマテークです。
 積極的に舞台挨拶が行われ、映画と観客の距離感が近い映画館でもありました。私も「港町」の想田和弘監督など、何度か観させてもらいました。来日していたイランの巨匠アッバス・キアロスタミが唐突に来場してその場で舞台挨拶が組まれた、なんてこともかつてあったようです。

 館内の至るところに貼られたサイン色紙。中には庵野秀明のものも。
年に一度自主映画の集中上映を行なって来た映画館でもあり、「何でも持って来い!」と題して持ち込み作品を無審査でそのまま上映する企画も行われ、無名時代の園子温や黒沢清、沖田修一らの作品が上映されたこともあったと聞きます。
 写真はありませんが、倉本徹氏が収集した映画に関する書籍や資料を配架した私設の図書館が併設されていました。閲覧は自由、有料ながら貸出しも行なっていました。3,000点はあろうかというそれらの書籍のほとんどは群馬県にあるミニシアター「シネマテークたかさき」が引き継ぐそうです。

 堅い映画ばかりでなくB級の魅力溢れる「サイコ・ゴアマン」、アンソニー・ホプキンス主演のサスペンス「ハイネケン誘拐の代償」、韓国ホラーの俊作「コンジアム」などエンターテインメントも幅広く上映。この硬軟織り交ぜたラインナップの懐の深さが魅力でした。会員になると翌月の上映作品の紹介とタイムテーブルを載せた「シネマテーク通信」が送られてきて、毎月コレが届くのが結構楽しみでした。
 アニメ映画の上映も多く行われ、私が初めてここで観た映画も「鉄人28号白昼の残月」でした。日本の作品だけでなくユーリ・ノルシュテイン、ヤン・シュヴァンクマイエル、ミッシェル・オスロなど海外の作家の作品も数多く紹介してくれました。


 最後にシネマテークに訪れた日に観たのは2本。
 1本目は「ロング・グッドバイ」、ロバート・アルトマン監督が1973年に発表した、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」を大胆に翻案した作品です。原作の寡黙さを無視し象徴とも言えるギムレットも出て来ませんが、軽妙な語り口がクセになる作品で松田優作はこの映画からインスパイアされて「探偵物語」を生み出したことで知られています。こんな軽やかなフィリップ・マーロウも悪くない。
 2本目は「世界が引き裂かれる時」、2022年にウクライナ・トルコの合作として製作された作品です。シネマテークでの最後の新作として上映されました。2014年にウクライナで起きた旅客機撃墜事件を背景に、ロシアとの国境付近で住む夫婦の日常が紛争に侵食されていく様を描きます。ロシア・ウクライナ紛争最前線の息詰まる空気感が反比例するように美しい映像の中で描き出され、観る者の魂に刻みつけてきます。


 実は閉館後に一度立ち寄りました。来週以降の上映予定のボードに何も貼られていないのが寂しさをいやます。
 シネマテークに行くようになるまで、映画好きとは言いながらただ一時の娯楽として観ているに過ぎなかったように思います。シネコンよりずっと映画との距離が近い場所で、時に寝落ちしてしまうこともありましたが(苦笑)、ここで映画と向き合う楽しさと深入りする面白さを学ばせてもらいました。どれだけ感謝しても足りないくらいです。この寂しさを埋められるような映画館は現れないかもしれません。
 シネマテークでの映画帰りに立ち寄る事が常だった書店「ちくさ正文館」も先月31日に閉店。自分の好きだった場所が相次いで無くなってしまい、この喪失感はちょっと上手く言い表せないくらい。

 ただ、映画ではテークで上映を予定していた作品をシネマスコーレが一部引き継いで上映するらしいことや、大須シネマが2番館としての立ち位置は保持しながらも新作も上映出来るように準備していたり、書店の方も今池のウニタ書店や金山のTOUTEN BOOKSTOREのように独自のこだわりで書籍を販売する、大手チェーンとは一線を画すショップが各所に出てきたりと、決して消えるに任せたりしない動きを見せてくれているところに一縷の希望を感じています。これらの場所がこれから先も長く続いてくれる事を願って止みません。

 シネマテークもちくさ正文館も、長い間お疲れ様。そしてありがとうございました。

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何故か先週はゲリラ豪雨と思しき雨に自分の帰りの足を止められる、というのが2度も発生して変に生活リズムを狂わされて妙に疲れました。で、足止め食らってる時間は映画館行ってました。空調効いてるゆったり座れる映画館は、居酒屋で2時間過ごすより出費も抑えられるのでメリットしかありませんでした。最悪映画が自分に合わなければ寝てしまえば良いですしね(笑)

 こんばんは、小島@監督です。
 ところで先週の更新でこのブログが遂に600回に到達しました。我が事ながらよくこんなに続いたものよと感心しますが、今後ともよろしくお願いします。

 さて、この週末ポートメッセなごやで開催された「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-2 5 TO SP@RKLE!! 」Day1を観に行って来ました。
 今年で10周年を迎えるアイドルマスターミリオンライブ、そのアニバーサリーを約1年かけて祝うライブツアーが展開されており、今回は4月の埼玉公演に続いての第2公演になります。
 実は10年間も観ていながらミリオンライブの単独公演を現地で観るのは初めてです。本当にずっと縁が無くライブビューイングや配信でしか観た事の無かったミリオンライブの音を遂に現地で味わう事ができました。
 
 Act-1に続き今回も10年間の軌跡を振り返るのをコンセプトにしており、特に今回は5〜9thライブの追想をメインに構成されていました。ステージのセットもよく観るとかつてのライブのモチーフがそこかしこに配置されているほか、出演者の衣装も当時の要素を盛り込んだものになっている(MCでのトークによれば生地も当時と同じに合わせているそう)と、過去のライブを強く意識したものに。

 当然セットリストもそれを踏襲したものになっており、ライブの最後に披露された「グッドサイン」以外は全て5〜9thのどこかで使われた楽曲ばかりです。出演者各人のソロ曲を1曲ずつとユニット曲数曲、最終ブロックではユニット曲を大胆にリミックスしたメドレーという形で構成され、ユニット曲の中には当時と同じ衣装で披露されたものも。
 5thの頃というのはちょうどミリシタがサービス開始した頃で、ゲーム中でキャラクターが踊る映像を観られるようになったこの辺りからダンスの振り付けが急激に難しくなったと出演者が語っていたのが印象的。かつて1度は披露された曲ばかりとは言えただノスタルジーを喚起させるというのではなく、どれもその後の経験や蓄積も踏まえてアップグレードしたステージを見せてくれました。

 前述の通りミリオンライブをここに至るまでに一度も現地で観たことなかった事に加えて、ミリオンの楽曲の中でもジャンルの垣根を軽やかに超えて多様な曲を次々送り込んでバラエティーに富んでいた時期だった5〜6thあたりにリリースされたものが一番聴き込んだ時期でもあったため、自分にとって「現地で聴きたかった曲」だらけ。高山紗代子役駒形友梨さんの伸びやかなヴォーカルが全身を突き抜ける「REACH THE SKY」、ホールの壁にシルエットを映す幻想的なライティングのもと凛とした歌声を聴かせる白石紬役南早紀さんの「さかしまの言葉」、「のーりーこ!」コールが楽しい福田のり子役浜崎奈々さんの「WE ARE ONE!」、物語性の強い歌詞で聴かせる打ち込み系バラードの傑作「Melty Fantasia」など数年越しでやっと拾えてあまりに感無量でうっかり落涙。長い間待ち続けた甲斐がありました。

 ミリオンライブは10thツアーもまだ2ヶ所4公演を残している他、ライブに合わせて名古屋市の各企業とコラボした「でらます!」、来月からはいよいよ TVアニメの先行上映もスタートと今年はいつにも増して熱い夏。熱中症起こさない程度には満喫しようと思っています。

 それはそれとして真夏にポートメッセなごやへライブ観に行くのは正直言ってキツい。いやもう特に行き帰りが(苦笑)

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週末開催されたアイドルマスターシャイニーカラーズのイベント「283PRODUCTION SOLO PERFORMANCE LIVE「我儘なまま」」をDay2のみですが配信で鑑賞。物語性の強いステージングをするシャニマスらしく、曲と曲の合間に朗読劇を挟みセットリストの流れで物語を綴る構成のイベントです。劇中の登場人物の心情を代弁するかのような歌曲のパフォーマンスと言いミュージカル的な色合いも強く、特にメインを張った2人の内、三峰結華役の希水しおさんは声優以上に舞台劇の経験が多い方とあってその表現力の粋を堪能させてもらいました。終幕にはエンドロールまで流してみせる趣向も面白かったですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 年末には「異次元フェス」と題しアイドルマスターとラブライブのコラボライブイベントが発表され、今から心躍らざるを得ません。スケジュール難しいタイミングだけど両日行きたいものです。

 さて、今回の映画は「君たちはどう生きるか」です。
 今回はストーリーもキャストも完全シークレットで封切られたため、粗筋は割愛します。吉野源三郎の小説からタイトルが取られていますが、内容的にはほぼ無関係とだけ言っておきます。

 引退作と表明していた「風立ちぬ」から約10年、宮崎駿が引退を撤回して生み出された作品が公開されました。第一報として明かされたタイトルとキービジュアル以外何もかもが封切りまで伏せられたままという異例ずくめのこの作品は、はっきり言って物語の妙を楽しむような作品ではありません。宮崎駿監督は時にストーリーより作りたい映像を優先して作劇する作家で、特に「ハウルの動く城」以降その傾向が顕著になって行きますが、今回はそれが行き着くところまで言ったという印象です。
 この映画は破綻したとすら言える物語の代わりにひとえに溢れ返るイマジネーションと共にアニメーションの動きそのものを楽しむ作品です。

 今回宮崎駿監督は絵コンテと演出に徹したようで、例えばただ階段を降りる動作一つにとんでもない手数で見せる全編に渡る強烈な作画は「新世紀エヴァンゲリオン」や「電脳コイル」でキーアニメーターだった本田雄作画監督の下、錚々たるメンバーの手で描かれました。ご鑑賞の際は是非エンドクレジットを注意深く見てください。作画陣にレジェンド級の名前しか出てきません。ほとんどアベンジャーズかエクスペンダブルズです。

 異様に力のある映像を見せる一方で物語は断片だけ見せて放りっぱなしの要素が多く、整合性が取れていないため普通に観ても呆気に取られてしまうだけに終わるでしょう。マスに訴えるエンターテインメントというよりはアート系作品に近い印象があります。
 ただ綻びだらけの物語を俯瞰すればそこに強いパーソナリティが見えてくるはずです。登場人物は宮崎駿の関係者たちに、起きる事象は監督の人生の1ページのようにも思えます。ある種の訣別の念と悔悟の感情を抱きながらそれでも作る事を止められない1人の不世出のクリエイターがその晩年に最高のスタッフの手を借りて語り上げる、それはさながら贅沢な自主映画の趣です。
 自分は直撃した身ではありませんが、黒澤明のファンが晩期の一作「夢」を突き付けられた時、こんな気分だったんでしょうか。スティーブン・スピルバーグやジャン=リュック・ゴダールもそうですが、映画監督が人生も黄昏時に差し掛かった時に、作品がパーソナルな方向に行くのに洋の東西は問わないようです。

 公開前はタイトルからしてもっと説教臭くなるのではと言われていましたが、そんなことは無く、むしろ語りのレベルに置いてけぼりを食う人の方が多いのでは。比類ない傑作に映る人もいる一方で時間を無駄にした気分になる凡作に映る人もいる一本でしょう。しかし、良いか悪いかを超えたところでスクリーンで観ておくべき作品というのは存在し、これはその一つと言って差し支えありません。宮崎駿という巨匠の新作を同時代で前知識も無く観る機会などもう訪れません。どうかお見逃し無きよう。

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昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 今回は気が付けば気心の知れた仲間が集まって、気が付けば90年代のアニソン固めになる奇妙な流れに。十数年ぶりに歌ったり聞いたりした曲やそう言えば歌ったこと無いわコレみたいな曲ばかりでなかなか普段こうはならない流れを楽しみました。10代の時期に聴いてた曲たちって結構覚えてるものですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 今回歌ってみようかと思って用意して来た曲はほとんどやらなかったのでそれは次回に持ち越し。

 さて、今回の映画は「M3GAN/ミーガン」です。

 両親を事故で喪い自身も心身共に傷を負った少女ケイディ(ヴァイオレット・マッグロウ)を、叔母のジェマ(アリソン・ウィリアムズ)は引き取った。ジェマはおもちゃメーカーに勤めるエンジニアだが、上司からの要望が厳しく多忙な日々を送っており心の傷が癒えないケイディと向き合う時間を取れずにいた。そこでジェマは開発中断中のアンドロイド「M3GAN(ミーガン)」(エイミー・ドナルド、声・ジェナ・デイヴィス)に密かに調整を施しケイディに与えることにした。優れた学習能力を持つミーガンは少しずつケイディの閉ざした心を解きほぐしていく。しかしジェマはミーガンに依存しつつあるケイディに危惧を抱いていた。

 AIや人工知能をモチーフに取った作品の歴史は古く「2001年宇宙の旅」のHAL9000や「鉄腕アトム」を思えばもう60年以上作り続けられていますが、発展著しい近年はいよいよリアリティを持って迫って来たと言えますね。
 「ハッピー・デス・デイ」や「ゲット・アウト」などホラーをメインに比較的ローバジェットながら野心的かつ創造的な作品を世に送り出し続けるプロダクション「ブラムハウス」を率いるジェイソン・ブラムと、「ワイルドスピード」や「アクアマン」など大作を手掛けながら折に触れホラーに帰ってくるジェームズ・ワンが「インシディアス」以来のタッグを組みプロデュースしたSFスリラー。監督はこれがハリウッドデビューとなるニュージーランドの俊英ジェラルド・ジョンストン。奇妙に踊りながら人を襲うシーンが予告編で公開されるや評判となったのでそれでご記憶の方もいらっしゃるでしょう。気になっていた作品なのですが公開終了目前でようやく機会を捕まえることができました。

 100分ちょっとという上映時間も含めて、明快なコンセプトと余剰の少ないスピーディーな構成で非常にスマートかつ洗練された作品です。
 ホラー以前にまずサイエンス・フィクションとして優れているのが良いですね。学習型AIが最優先のオーダーに最適解を求めるあまり倫理の壁を超えてしまうというだけでなく、ユーザー(ここではケイディ)と接する中で回答がユーザー好みに特化されていき、心の隙間に入り込んでしまいケイディはやがて依存するようになり実の家族であるジェマとの間で亀裂が生じるというところの「ありそう」と思わせてくれる生っぽい恐ろしさがあります。独り身でケイディを引き取るも仕事を優先してしまい子供のことをミーガン任せにしてしまうジェマにシングルマザーの苦悩や恐怖を見出すことも可能でしょう。

 そして何より恐怖も笑いも、この映画の感情の振れ幅を一手に引き受けるミーガンの突出したキャラクター性が最大の見どころ。可愛いと薄気味悪さが共存した不気味の谷の真ん中を行くようなデザインや、演じるエイミー・ドナルドの高い身体能力が遺憾無く発揮されたダンスやスタントの数々が実に目を引きます。
 正直これ1作で終わらせてしまうには勿体無いくらいに魅力的なキャラクターなので是非シリーズ化を検討して欲しいところですね。何なら「チャイルドプレイ」のチャッキーとかエスターとかとクロスオーバーしてガチンコファイトするようなのも観てみたい。

 終盤はエンタメに振り切っていくものの急速に発展を続けるAIというものに思い巡らせるには格好の一本です。AIによる自動生成で脚本も映像も作れてしまい自身の仕事が脅かされることへの危惧も理由の1つとしてハリウッドでは今俳優組合と脚本家組合がストライキを起こしている只中を思えば恐らく作り手の思惑以上にタイムリーなトピックとなりました。
 もっと早めに観てご紹介できれば良かったのですが(笑)、公開中に観れただけ良しとしましょう。

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コロナ禍の只中では全然やれなくなって、最近になりようやく戻って来たこと、皆さんの周囲にも結構あると思いますが、私の仕事的には試飲会が増えてきました。読んで字の如くワインやウィスキーなど様々なお酒の味を見る場です。それは時にインポーターの売り込みの為だったり時に勉強の為だったりと様々ですが、3年くらい本当に離れていた事にここ最近立て続けにその機会に恵まれました。自発的にはなかなか買わない東欧系のワインや、ボトルデザインがホストクラブやキャバクラ向けに特化していてこんな機会でもなければまず飲もうとすら思わないスパークリングワインなどの味を見ることができて嬉しいばかり。

 こんばんは、小島@監督です。
 ちょいちょいそういう場を持っておかないとみるみる勘が鈍っていくというのをこの数年で実感しました。やっぱりちゃんと勉強は続けないとダメですね。

 さて、今回の映画は「ザ・フラッシュ」です。
 実は封切り直後に観ていたのにちょいと後回しにし過ぎましたよ、ええ。

 法医学捜査官として事件解決を陰で支える青年バリー・アレン(エズラ・ミラー)には、超高速で活動できる特殊能力があり、その力を買われて「ジャスティス・リーグ」のメンバー・フラッシュとして戦うもう一つの顔があった。
 ある時バリーは超高速での移動中に時間の流れから切り離され、過去に行ける力を得た事に気付く。ジャスティス・リーグのリーダー、バットマンことブルース・ウェイン(ベン・アフレック)から過去への干渉は極めて危険だから止めるべきと警告されるが、バリーには何としても変えたい過去があった。

 個人の想いと世界の危機が相克する時、果たしてどちらを選ぶべきなのか。ヒーローもので数限りなく問われて来た命題に、今回向き合う事になるのは心優しい1人の青年。
 開幕すぐに始まる崩壊する病院からの赤ん坊たちの救出劇は、アイディアと迫力に溢れバリー・アレンのキャラクターを強烈に印象付けて掴みは充分。そこからタイムトラベルを巡る繊細でウェットなドラマへと移行して、なかなか複雑な味わいを見せ、ヒーローものの定番の一つになりつつある概念「マルチバース」に独自のアプローチで迫ります。
 マルチバースにタイムトラベルまで加わって、一見何でもありの世界観ですが、物語の骨格は思いのほかオーソドックスです。1980年代の名作映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思い出させるプロットしてますが、作中でも何度もネタにされるので意図的にやっていることでしょう。実際企画段階では同作を手掛けたロバート・ゼメキス監督にオファーすることも検討されたそうです。最終的に抜擢されたのは「IT」二部作を成功させたアンディ・ムスキエティ。情報量の多い内容を、集中力を散逸させることなく見事にまとめ上げています。

 タイムトラベルとマルチバースの中で本筋と共に語られるのは、ジャスティス・リーグの総決算。シリーズを彩って来た人物が続々と登場します。であると同時にDCコミックの歴史をも網羅します。過去に対してアクションを起こした事で別の時空へ迷い込むバリー。そこで出会うブルース・ウェインを演じているのは、1989年にティム・バートン監督作の「バットマン」でブルースを演じたマイケル・キートンです。予告編でも出てくるこのトピックだけでなく、大量の小ネタが仕込まれており中には「このためにわざわざ!?」と言いたくなるような大技までキメてくれます。それなりに観て来た方なら少なくとも2回はびっくりすること請け合い。取り敢えず私は観た人同士で語りたい。
 時間から切り離された超光速の空間「スピードフォース」を、さながらゾエトロープのようなビジュアルで見せる映像表現もユニーク。近年モチーフにした作品が増えた反動で急速に手垢が付きつつあるマルチバースというものに、ちゃんと他と差別化した画を作り上げたこともポイント高いです。

 バリー・アレンを演じるエズラ・ミラーの演技も素晴らしく、出来れば更なる続きが観たいくらいなのですが、何分エズラは今ティーンエイジャーへの性的搾取や脅迫などで複数の州から告発されている真っ只中。当面再演は期待できない上にDCユニバース自体も昨年ジェームズ・ガンを新リーダーとして招聘し解体とリビルドが進んでいる最中。正直なところまっさらな気持ちで映画を楽しもうにもノイズが大き過ぎる中での今作は、なまじ完成度が高いだけにどこかやるせなさを覚えざるを得ません。
 ある意味ではかなり「見納め」となりそうな今作、シリーズのファンはどうかスクリーンでご堪能あれ。

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昨日の放送で「機動戦士ガンダム水星の魔女」が最終回に。何だかんだ言ってもガンダムブランドは強いというか、毎週極力リアタイで視聴したいほど楽しみにできるアニメというのもなかなか久しぶりで、ドライブ感溢れる物語を満喫しました。尺がカツカツで本編で語られていないエピソードが多々ありそうなのでその内スピンオフとかもやって欲しいところ。

 こんばんは、小島@監督です。
 という余韻も冷めやらぬ内にブン投げられる「ガンダムSEED」劇場版の告知!とっくにポシャったものだと思っていたけど生きていたのか!!

 さて、先週大須シネマさんでは「最狂サメ映画フェス2023」と題し1週間B級(またはそれ以下の)サメ映画しか上映しない最高にロックな企画が催されていました。この手のジャンル映画は何気に日本は無視できないマーケットだそうですが、そうは言ってもほとんどDVDや配信スルーのタイトルばかりを10本も引っ提げて1週間特集上映するというのは前代未聞だと思われます。

今回はそのラインナップの中の1つ「シャークネードカテゴリー2」をご紹介。

 ロサンゼルスでの惨劇を経て家族とのよりを戻したフィン・シェパード(アイアン・ジーリング)。元妻エイプリル(タラ・リード)と共にニューヨークへ向かう途中、飛行機が嵐に突入する。乱気流の中でフィンは嵐がまたしてもサメを巻き上げる姿を目にする。空高く舞い上がったサメたちは飛行機を襲い機長の命を奪ってしまう。パイロット不在となった機をフィンはどうにか胴体着陸することに成功するが、サメを伴う嵐「シャークネード」が勢力を増しながらニューヨークへ迫りつつあった。

 嵐に乗ってサメが空から降ってくるパニックを描いた「シャークネード」は2013年にアメリカのSyfyチャンネルで放送されるやぶっ飛んだ設定と大袈裟な芝居でカルト的な人気を勝ち得、その後5本の続編が製作されました。「シャークネードカテゴリー2」は2014年に製作された2作目で、前作に負けない評判を獲得したことでシリーズ化を決定付けた1本です。
 「シャークネード」を製作したスタジオ「アサイラム」は低予算のB級映画を大量に作り続けるスタジオで、サメ映画やゾンビ映画のほか「トランスモーファー」やら「パイレーツ・オブ・トレジャーアイランド」などどこかで聞いたような名前の作品(これを大作映画を意味する「ブロックバスター」と模倣という意味の「モック」を合わせて「モックバスター」と呼びます)をポンポン世に送り出すことでも知られています。何ならワーナー・ブラザースと訴訟沙汰になったこともあるくらいです。基本どれも作品としては酷評されるものばかりですが、「シャークネード」はその中にあってオリジナリティ溢れる企画として高い評価を集め、主人公フィンのフィギュアが作られたり作中に登場する書籍が実際に売られたりしたこともあります。

 1作目ではアサイラムの本拠地であるロサンゼルスが舞台でしたが、今作では予算規模が大きくなった(と言っても低予算な事に変わりは無いが)ことで舞台をニューヨークに移して全編に渡りかなりがっつりとしたロケが行われています。
 その他ジャド・ハーシュやロバート・ヘイズと言った名優の起用やアメリカNBCの朝のニュース番組「Today」の司会者やお天気キャスターが本人役で登場したりと端々でゴージャスになっています。
 まあ物語はノリの軽いB級映画なのであらすじ以上のことは起きませんし何だかんだ適当な箇所も多いのですが、ワンアイディアを突き詰めて気楽に観られるエンターテインメントとしては悪くない1本です。

 なお上映後にはサメンテーター中野ダンキチ氏によるトークショー付き。大量に仕込まれた小ネタの解説などしてくれました。

 今回大須シネマで上映されたサメ映画の10本のラインナップではコレが一番のビッグバジェット。懐の深さも一番で、普段サメ映画を観ないライト層でも耐えられるのはせいぜいこの「シャークネード」1と2くらい。あとは「エイリアンVSジョーズ」「エクソシストシャーク」「シャーケンシュタイン」など地獄の釜の底にこびりついたかのような代物ばかり。ただ世間の潮流を一切無視してそもそも上映機会のまずない作品を取り上げ上映するこういう企画はまさにミニシアターだからこそ出来ることです。その甲斐あってどこで聞きつけて来たのかサメ映画を観るためにわざわざ四国や山陰から足を運んだ方もいるようです。年1くらいで良いのでまたこういうクレイジーなイベントをやってほしいですね。次回があるなら「シャーコーン」と「ウィジャ・シャーク」を是非とも(笑)。
 
 

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