ちゅうカラぶろぐ


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先月「宇宙よりも遠い場所」を完走した後、次に観たのが「僕の心のヤバイやつ」。ちょっと厨二病こじらせた少年とクラスメイトの少女との不器用な初恋を描くラブコメアニメです。主人公市川の心象描写や図書室や保健室など学校のロケーション、年中行事を使ったエピソードの組み立て方がとても上手く、とっくに錆びついて忘れ去ったと思っていた遠い昔の記憶の引き出しが開くような感覚に身悶えしたり締め付けられたり。こんな感覚に捉われるアニメも久しく無く、観ている時間もまた宝物のようでした。

 こんばんは、小島@監督です。
 「僕ヤバ」は新規カットを交えた劇場用の総集編を準備中だとか。アレを?スクリーンで?とても観たいが耐えられるかしら。

 さて、今回の映画は「ノー・アザー・ランド/故郷は他にない」です。

 ヨルダン川西岸のマサーフェル・ヤッタで暮らすパレスチナ人の青年バーセルはイスラエル軍の占領が進み隣人たちの家が取り壊されていく様をカメラで撮影し続け、世界へ発信していた。そんな彼の元へイスラエル人ジャーナリスト・ユヴァルが訪れる。自国政府の暴力的な行いに忸怩たるものを感じていたユヴァルは危険を承知でマサーフェル・ヤッタへ赴いて来たのだ。同じ思いで行動する2人はやがて友となるが、軍の破壊行為は日に日に過激さを増していく。

 イスラエルとパレスチナ、現代史においてあまりに深く憎悪と悲哀の爆心地であり続けた地で今何が起きているのか、それこそ当事者の目線で語られるドキュメンタリーです。マサーフェル・ヤッタは1967年からイスラエル占領下にある地域でありイスラエル政府は軍の訓練場の建設を決定し、また最高裁判所もその姿勢を支持したことで住民の強制移住が推し進められています。まるで真綿で首を絞めるかのように日ごと週ごとに1軒ずつ取り壊されていく家屋。時には学校のような公共の場さえ破壊されていきます。その様をパレスチナ人ジャーナリストでこの映画の共同監督の1人であるパーセル・アドラーはひたすらに撮影し続け発信を繰り返して来ました。
 井戸さえ埋められ生活を断たれていく住民たち、しかも軍の訓練場と言いながら何故かイスラエルから入植者たちが現れ住宅が建築されていく。さらには入植者たちが暴徒化して住民を襲い死者まで出る事件も発生。重大な人権侵害と侵略行為を観客は目の当たりにします。アクション映画のようにヒーローが駆けつけることは無く、ただただ理不尽に晒される姿が捉えられています。

 当事者が撮影しているが故に主観的な視線を獲得したこの映画は、破壊行為に対し決然と立ち向かう一方で呆然としながらただカメラを回すしかない無力感すらも浮き彫りにして行きます。この映画が強いのは、ギリギリのところで折れてはいないという点でしょう。この映画が誕生したこと自体が国境を超えた連帯の結実とも言え、そこに一筋の希望が見出せます。

 まさにジャーナリズムの矜持を感じさせるこの映画は各地で絶賛され、ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞をW受賞しただけでなく、先日アメリカでアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を獲得しました。特にアカデミー賞での受賞は私としては正直意外で、トランプ政権発足後パレスチナへの人道支援の中止を決定するなどイスラエルへの支持を打ち出した政府の方針に異を唱えるような姿勢を見せる気骨が今のハリウッドにあるとはちょっと思っていなかったからです。

 観ていて苦しくなるような作品ですが、それでも向き合うべきものがある力作。
 当のイスラエルでは政府主導の上映中止運動が起こるほど、今渦中にいる一本です。これが普通に観られるということはまだそれに触れられる自由があるという事。祈りと決死の覚悟が宿ったこの映画が、1人でも多くの方の目に留まりますように。

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「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「ダークナイト」「バック・ドラフト」などの劇伴で知られる作曲家ハンス・ジマーが5月に初来日ライブを、しかも名古屋公演があると知り、ウキウキ気分で最速先行の抽選にエントリーしようとしたらぴあのクレジットカードを作る必要があって心底がっかり。流石にそこまではしたくない。

 こんばんは、小島@監督です。
 2次抽選はそこまでしないでエントリーできると良いなぁ…

 さて、今回の映画は「バンパイアハンターD」です。

 人類が最終戦争により衰亡して1万年近い時を経た未来、人類は「貴族」と呼ばれたバンパイア達の支配下にあった。しかしその「貴族」たちも種族的衰退と精神的退廃の中にあり徐々に繁栄を失いつつあった。再び繁栄の糸口を掴んだ人類は「貴族」に反旗を翻し都から追い立てるに至るが、なお不死に近い生命力と超常の能力は人類を脅かし続けていた。「貴族」に対抗するための必然として「貴族」を狩るプロフェッショナル「ハンター」が誕生した。中でも「貴族」と人間の混血児「ダンピール」は最高のハンターであるとされた。そしていつしか一際美しい容貌を持つ黒衣の青年「D」(声・田中秀幸)の名が人々に囁かれるようになる。
 ある夜、荘園主エルバーン(声・清川元夢)の令嬢シャーロット(声・篠原恵美)が貴族マイエル・リンク(声・山寺宏一)によって誘拐された。エルバーンは「D」にシャーロット奪還を依頼する。一方で先んじて依頼を受けたボルゴフ(声・屋良有作)率いるマーカス兄弟もまたシャーロットとマイエルを追っていた。

 よもやもう一度スクリーンで出会えることが出来ようとは。
 伝奇小説の第一人者・菊地秀行により1983年に第1巻が刊行され現在もシリーズが続くゴシックホラー「吸血鬼ハンターD」、その中の第3巻「妖殺行」を原作として2000年にまず海外での上映が先行する形で劇場版アニメが製作されました。日本では翌2001年に公開されましたが、英語音声日本語字幕という上映形態も手伝い、高い評価を得ながらもそれほど反響は大きくなかったように思います。現在ではDVDも廃盤となり配信にもかからず長く幻の作品状態になっていましたが、マフィア梶田と中村悠一のWEB番組「わしゃがなTV」で取り上げられたことで再評価の機運が高まり、リマスターBlu-rayの発売決定と製作25周年というタイミングで初の日本語音声によるスクリーン上映が実現しました。
 私も結局DVDでも観る機会が無かったため実に四半世紀ぶりの再会となりました。

 改めて観てもため息が出そうなほど超絶美麗、ここまで描き込めるものなのかと惚れ惚れするほどの緻密な作画が全編に渡り展開します。監督はアクションエンターテインメントの分野で世界的に高い支持を集め、後継への影響も大きい川尻善昭。もともとハードボイルドな作品を得意とする方で、伝奇作家菊地秀行の作品とは相性が良く1987年の「妖獣都市」は川尻監督の出世作と言える一本です。ダイナミックなアクションを流麗そのものの作画で見せつつ、原作の陰鬱で耽美な世界観を余す事なく画として構築し、それでいて叙情的でもある今作はまさに川尻善昭の真骨頂と言えるでしょう。全体的にセリフがそれほど多くはないのも特徴で、画自体が雄弁に語ってくれるアニメ映画の楽しさに溢れています。
 
 2000年製作のこの映画は、アニメ製作がアナログからデジタルへ移行する過渡期の最中の作品であり一部にデジタル技術が用いられているものの、基本的にはセル画での手塗りで描かれたアニメの最後期に当たる作品です。手数を惜しまない手工業の極致とでも言うべきでしょうか、この頃公開された作品には今観れば一種の到達点のような輝きがあります。1週間限定ではなかなか厳しいかもしれませんが滅多に無い機会ですし、今では失われた超絶技巧がもたらす迫力をスクリーンで味わっていただきたいですね。

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まさに今日、それもつい先ほど、一つの試験を受けてきました。その名も「アイドルマスター検定」!
 今年20周年を迎えて様々な施策やイベントを打っているアイマスですがその中でも指折りに珍妙なイベントです。試験時間90分間、全120問でリスニングテストまである本格派。試験前後にはキャストや中核スタッフが登壇してのトークショーも用意され、ちゃんと「イベント」の性格も持たせていたのが面白い。ペーパーテスト自体が自分には久しぶりですし、鉛筆片手に真剣に頭抱える「遊び」の場としても極めて楽しい時間でした。

 こんばんは、小島@監督です。
 実際のところ大して事前準備しないほぼ記念受験のノリで受けたのですが、やってみたらマジになってる自分がいて「もっとちゃんと準備すれば良かった」と軽く後悔してしまうところも含めてしっかり検定試験してました(笑)次があるかは分かりませんが、機会があればまたトライしたいですね。

 さて、今回の映画は「野生の島のロズ」です。

 嵐によって輸送機から脱落したケアロボット「ロッザム7134」通称ロズ(声・ルピタ・ニョンゴ、吹替綾瀬はるか)は無人島に漂着した。偶発的に起動したロズは役割を求めて島を彷徨うが、動物たちに怖がられてしまい近づけない。ロズは動物の言語を学び動物たちをケアしようとするが相手にされないまま逆にグリズリーのソーン(声・マーク・ハミル、吹替田中美央)に追われる羽目になってしまう。ソーンから逃げる中でロズは雁の巣を壊してしまい、一個の卵だけが残された。卵から孵化した雁のひな鳥キラリ(声・キット・コナー、吹替鈴木福)は刷り込みによってロズを親だと思うようになる。ロズはキツネのチャッカリ(声・ペドロ・パスカル、吹替柄本佑)、オポッサムのピンクシッポ(声・キャサリン・オハラ、吹替いとうまい子)らの協力を得ながらキラリを育てようと試みるが。

 ただただ、素晴らしいというほかない。
 「リロ&スティッチ」「ヒックとドラゴン」で知られるアニメーション作家クリス・サンダース監督とドリームワークスアニメーションから新たな傑作が生まれました。もしも無機質なロボットが子育てを通して「心」が生まれたら?SFにおける定番とも言えるテーマに見事なアプローチで映画化しています。
 動物はみな油彩画を思わせる淡いビジュアルをしており、また背景美術は全て手描きで描き起こされていて、そんな柔らかな画の中に佇む無機質なロズの姿はそれだけで極めて印象深いものになっています。球体型の胴体にフレキシブルに動く長い手足というロズのデザインはどこか宮崎駿監督作品に登場したロボットを思わせます。クリス・サンダース監督は宮崎駿監督へのリスペクトが強い方なのでもしかしたらある程度は意識的にそうしているのかもしれません。

 ロズはやがては渡りができるようになるまでキラリを育てる中で次々と不測の事態に出会い、それに対応していくうちに徐々に自身に設定されたプログラムから逸脱するようになっていきます。その中で本来ならあり得ない「心」を獲得していくことになります。いわゆる「シンギュラリティ」ですが、改まって説明や強調すること無しに自然と物語の中に溶け込んでいることに驚かされました。
 そしてさらに驚くことにこれでも物語の半分でしかないという点です。
 予告編ではロズが子育てする点にのみフォーカスしているのでそれが映画のクライマックスかと思っていたのですが、そこからさらに跳ねてみせます。
 
 物語が後半に入るに至り、実は島の外の世界が思いがけない姿をしている点などイメージの飛翔が実に見事。しかもそれに対しての説明がほとんどされないので多くは観る者の想像に委ねられているのも私としてはとてもポイントが高いです。終盤の展開や映像など見方によってはどこか宗教画的な雰囲気すら漂っています。
 
 ところでドリームワークスアニメーションの完全自社製作としてはこれが最後の作品で今後は外部スタジオを多用する製作体制へと移行することになっているとか。今後はこういうこだわりの強い画作りをしたタイトルはもしかしたら減っていってしまうかもしれません。それを思うとこれは目に焼き付けておいて欲しい。
 年中何かしらのアニメ映画が公開されている日本では少々目立ちにくいかもしれませんが、是非スクリーンでこの鮮やかな映像を味わっていただきたいですね。

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冬アニメの消化も今ひとつなのにこういう時に限って旧作にどハマりしてしまう罠。女子高生4人が南極を目指す「宇宙よりも遠い場所」を何気なく観始めたらこれがもうどストライク。清々しい青春ドラマと南極観測のディテールにかき立てられる知的興奮に気づけば一気見。ニューヨークタイムズが取り上げたというのも納得の面白さでした。

 こんばんは、小島@監督です。
 それにしても出会うのが30年遅かった。10代の頃に出会っていたらきっと南極目指してましたよ(笑)

 さて、今回の映画は「トワイライト・ウォリアーズ決戦!九龍城砦」です。

 1980年代香港。密入国したチャン・ロッグワン(レイモンド・ラム)は身分証を獲得すべく港湾を支配するボス(サモ・ハン)の元へ赴くもトラブルになり、九龍城砦へ逃げ込んだ。ロッグワンは九龍城砦を支配するロン・ギュンフォン(ルイス・クー)やその右腕であるソンヤッ(テレンス・ラウ)と出会い城砦での生活を始めるが。

 熱い時代を生きた者たちの矜持。
 1990年代初頭まで香港に存在したスラム街「九龍城砦」、現地の本来の読み方ではありませんが「クーロンじょう」という読み方に親しみがある方も多いのではないでしょうか。施政権がはっきりしないまま放置された城砦は無計画に増築が重ねられ、「一度入ると出られない」と言われるほど迷路のような状態になったと聞きます。1970年代、無法を極めた状態に対抗するため住民たちが自警団を結成したことで治安が徐々に回復し、平穏が訪れた時期がありました。とは言えど1997年の中国への香港返還へ向けて1987年には香港政庁が住民の強制移住と九龍城砦の取り壊しを決定。数年後にはもうこの場所は無くなっているだろうという不安や焦燥が住民に通奏低音として響く時期。これがこの映画の時代背景です。

 どこまでも熱く観る者を震わせてくれる、ド直球の熱血少年漫画のような映画です。ストーリーは大味でご都合主義。しかし出てくるキャラクターが誰も彼も魅力的。特にルイス・クー演じるロン・ギュンフォンの燻し銀の色気は出色です。谷垣健治が手掛けたアクションは天井知らずのボリュームで超ハイカロリー。エンターテインメントとはこういうものさ!という気概と熱量が全編に満ち溢れています。香港映画のオールドファンにとってはレジェンドと言うべきサモ・ハン・キンポー(現サモ・ハン)が70代になってもなお衰えぬキレを見せてくれるのも嬉しいところ。

 九龍城砦が取り壊され中国へ返還された香港は、中国共産党により民主主義が骨抜きにされ今や往時の輝きは見る影も無くなり中国の一地方都市に変容させられてしまいました。香港映画界も時代の波に抗えず、俳優やスタッフの海外流出、巨大な大陸資本の流入により独自世界の多くは失われたと言って過言ではないでしょう。
 この映画はそんな輝いていた時代の香港映画を思わせてくれる点においてどうしようもなくノスタルジーを感じさせ、それが唯一無二の味わいともなっています。
 しかし消えかけていてもその残照はどこまでも烈しく熱い。この映画、実は大陸資本が全く入っていません。香港の資本のみで製作されたこの作品にもしもあなたが強いロマンを感じたなら、それは時代に埋もれさせられた魂を蘇らせ再び火を灯そうと集まった者たちの矜持の結晶です。

 幸いにもというべきか香港映画史上最大のヒットとなった「トワイライト・ウォリアーズ」は三部作となることが決定され、2作目3作目が製作準備に入ったそうです。続報を楽しみに待ちたいところですね。

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先週の大型寒波、皆さんの影響はどうでしたでしょうか。私の自宅の方では数年ぶりにまとまった量の雪が降り、週の後半は連日朝に自宅周りを雪かきしてから出勤してました。幸いにも電車が運行を止めるほどではなかったので通勤に差し障るほどではありませんでしたが。

 こんばんは、小島@監督です。
 昨日も良く晴れてくれ、今週は少し気温も上がるようでいくらかは過ごしやすくなりそう。

 さて、今回の映画は「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」です。

 幼い頃、弟が一緒に出かけた山で失踪した過去を持つ青年・児玉敬太(杉田雷麟)、今は失踪した人間を探すボランティアを続けていた。ある日、敬太の元に母から突如古いビデオテープが送られてくる。そこには弟が失踪した瞬間の映像が収められていた。
 霊感を持つ敬太の同居人・天野司(平井亜門)はビデオテープに禍々しいものを感じ、敬太に深入りしないように助言するが自身にまつわる忌むべき過去を決着させたい敬太は行動を起こす。新聞記者の久住美琴(森田想)はそんな敬太を記事のネタにしようと追い始め、3人はやがてあの「山」へと導かれてゆく。

 津々浦々で語られる怪談の中には無念を抱いて死んだ悪霊という分かりやすいものばかりではなく「何だか良く分からないが恐ろしい」というものもあります。そんな「良く分からないもの」は人の想像力を刺激し、その想像の中に怖さを植え付けていくのです。
 「リング」や「呪怨」という金字塔を大きなマイルストーンとして今日まであり続けるJホラー。貞子や伽倻子のようなアイコンとなるキャラクターが牽引する幽霊譚を保守本流とし、近年では怖がらせるというよりいっとき驚いてもらうアトラクション色の強い作品も少なくない中で、なかなかに異色のホラーが登場しました。ジャンプスケア(大きな音と共に映像や出来事を突然変化させる手法。1980年代以降から主に使われ始め、現在ではホラー映画の常套手段になっている)を一切排除した静謐な作りで、観客を禍々しい怪異譚へと誘います。
 監督はフェイクドキュメンタリー「イシナガキクエを探しています」を手がけた新星・近藤亮太。これが長編映画初監督作品になります。

 ノイズ混じりのビデオ映像やカセットテープの音声と言ったクラシックでアナログな媒体をフル活用した不気味な空気が全編を包み込み、また残された者の焦燥を丁寧に描いて不穏さをいやましていきます。撮影もかなりアナログに作っていたようでビデオ映像のノイズはVFXでそれっぽく処理したのではなく監督が友人から譲り受けたビデオテープの一番ノイズが走るところを見つけ出してそこにうまくハマるように調整して収録したのだとか。
 登場人物たちが直面する怪異は杳として全容を見せず、良く吟味された効果音の妙も手伝って観る者の想像を掻き立てます。中でも中盤ある青年が敬太に語る物語は、優れた民俗的な怪異譚を聞いているようで非常に怖くなってきます。

 一方で単純な分かりやすさとは無縁の作りな上に変なところで生真面目でそれでいてちょっとたどたどしいところもあり、序盤で掴まれなければ退屈さすら覚えてしまうかもしれません。ただCGも特殊メイクもほとんど使わない画作りは地味に見えつつも挑戦的で荒削りながらも新風と反骨精神を感じさせてくれる一本であるのは間違いなく、閉塞しかけたJホラーにまだ可能性があることを教えてくれます。今週末より名古屋会場の開催がスタートする「行方不明展」でも場内映像の一部を手がけているそうで、近藤亮太監督、今後要注目と言ったところですね。

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どういう偶然の結果なのかわかりませんが今年の4月11日に「アマチュア」「ベテラン」「プロフェッショナル」という3本の映画が公開されます。しかも全部アクション映画。「アマチュア」はディズニー配給、「ベテラン」は韓国映画、「プロフェッショナル」はリーアム・ニーソン主演と三者三様で全く相互に関係は無いのですがこうなったらもう3本立てで観たい。

 こんばんは、小島@監督です。
 でもホントにハシゴできたとして、3本目をどれにしても疲れて途中で寝ちゃいそう(笑)

 さて、今回の映画は「ベルサイユのばら」です。

 1770年、同盟関係を強固なものとするためオーストリア女大公マリア・テレジアは娘の1人である皇女マリー・アントワネット(声・平野綾)をルイ15世の孫、後に王位を継ぎルイ16世(声・落合福嗣)となる青年の元へ嫁がせた。婚礼の日、アントワネットは近衛兵の中に美しい人物を目に留める。見目麗しき青年と思われたその人物は男として育てられたジャルジェ将軍(声・銀河万丈)の娘・オスカル(声・沢城みゆき)であった。

 漫画家・池田理代子が1972年に発表した「ベルサイユのばら」は連載中から支持を集めて社会現象と呼べるほどのヒットとなり、1974年に宝塚歌劇団で初演されてその後半世紀に渡り演じ続けられる定番の演目となりました。1979年にはTVアニメも放送され漫画史上に輝く不朽の名作と言って良い作品です。私も中学生ぐらいの頃にTVアニメの再放送を観て強くハマった経験があります。そんな今なお熱い支持を受ける「ベルサイユのばら」が、実に45年ぶりに劇場用作品としてアニメ化されました。

 結構長い原作を3部作ではなく2時間で全編やり切ると聞いて期待と不安が半々で観に行きましたが、なかなかどうして見応えのある作品に仕上がっていました。
 まず、ミュージカルに仕立ててあるのが非常に効果的に働いています。ほぼダイジェストと言ってもいいくらい大胆に省略されているのですが、時代背景の解説を黒木瞳によるナレーションに任せ、主要人物の心情の変遷を歌に乗せてさながら舞台上でセットが回転して場面が切り替わるかのように次のシーンへ移行するのでぶつ切り感が薄くなっています。
 限られた時間に対するエピソードの取捨選択も上手く、数多い要素が重奏的に交錯する原作から激動の時代の中で凛々しく立つオスカルの鮮烈な生き様にのみを貫くようにスポットを当て続けて構成しているため、かなり観やすく分かりやすいものになっています。
 他方でデュ・バリー伯夫人やロザリーなど原作で重要な役割を持っていてもほぼ全く出てこない人物や一切触れられないエピソードも当然のように多いため、この構成に不満がある方もいるでしょう。ここは割り切って翻案というものの面白さを楽しんでしまいましょう。

 ミュージカルなので当然と言えば当然なのですが珍しくヴォーカル曲が多い澤野弘之の音楽と原作の描線を活かしつつ現代的にリファインした岡真理子の手による華やかなビジュアルも相性が良く、美しい映像と音楽に身を任せて舞台劇を楽しむかのように観られる一本。ほとんど蛮勇と言っても良いくらいの今回のアニメ映画化ですが、これを機に原作本を手に取ったりTVアニメ版や宝塚歌劇へと手を伸ばしたりしても良い、そんな入り口になれる作品ではないかと思いますね。

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数年前からの懸案事項でもあり、また自治体から配布されたクーポンの期限が迫っていたのもあって先日風疹のワクチン(正確には風疹麻疹混合ワクチン)を打ってきました。いやそれは良いのですが、確かに基本的には子どもが打つものだからか病院で接種のために案内されたところが小児科!!四十代後半のおっさんが1人で小児科の待合室で順番待ちしてるとか何かの罰ゲームとしか。取り敢えずちゃっちゃと終えられて良かった。

 こんばんは、小島@監督です。
 接種からさして日をおかずに東京で麻疹患者が出たというニュースが。期せずして備えもできたようでしばらく居心地の悪い思いをした甲斐もあったというもの。

 さて、今回の映画は「機動戦士ガンダムジークアクス・ビギニング」です。

 スペースコロニーで平和に暮らしていた女子高生アマテ(声・黒沢ともよ)は、戦争難民の少女ニャアン(声・石川由依)と予期せぬ出会いを果たしたことで非合法なモビルスーツ競技「クランバトル」に足を踏み入れた。アマテは軍と警察双方から追われている謎めいた少年シュウジ(声・土屋神葉)とともにクランバトルに挑む事になる。

 よもやこれほどとはな!
 ロボットアニメの雄サンライズと、「エヴァンゲリオン」のカラーという2大スタジオがタッグを組んだ新作「機動戦士ガンダムジークアクス」、監督に「フリクリ」「トップをねらえ!2」の鶴巻和哉、シリーズ構成に「少女革命ウテナ」「STAR DRIVER 輝きのタクト」の榎戸洋司、さらに脚本や絵コンテの一部には庵野秀明も迎えてのまさに大型企画。そのお披露目としてTVシリーズ放送に先駆け序盤部分を劇場用に再構築してフォーマットされた「ビギニング」が現在公開中です。

 まさかこう来るとは!!という驚きに満ちた作品です。
 正直なところあくまで序章で、これで物語の全容が見えるわけではないですし観たところで特に強めの感想とか言わずに素通りするつもりでいたのですがあまりの衝撃にちょっと黙ってられそうになく(笑)
 と言っても迂闊に書くと一番美味しいところをポロッとネタバレしてしまいそうで何も書けないのですが。

 第1作から45年が経過し半世紀も見えてきてシリーズとして厚みが増してきたと同時に飽和状態になりつつあった「ガンダム」、だいぶ語り尽くされたように思えたこのシリーズにもまだこのような鉱脈があるのかという驚きと、それを超一流のスタッフが料理するとこう言ったものが出来上がるのかという驚きに同時波状攻撃されて謎の興奮を味わえました。
 面白いのは「鶴巻監督の作品に参加してるだけ」というスタンスだとインタビューで答えていた庵野秀明が自身の世界観を譲る気は無く鶴巻和哉監督にとんでもない無茶振りをし、鶴巻監督もそれに見事に応えて全く異質な2つの世界観がシームレスに同居しており、ガンダムという土台の上にクリエイターそれぞれが持つビジョンの違いをガチンコで戦わせることで強烈にエネルギッシュなうねりを産んでいます。
 また、観ていて思ったのですが「物語の序盤部分を再構築」という今作、単純に1〜4話くらいをまとめたのではないような。特にあのプロローグはこの劇場版だけのエピソードかあるいは放送話としてはもっとずっと後、15話あたりで語る内容なのではないか、という気がします。

 無論「ビギニング」故に全く完結はしておらず現時点で評価を固めるのは早計ですが、これから先の放送開始が非常に楽しみ。というか良いから早く観せてほしい。そう思わされた時点でこの先行上映は大成功でしょう。TVシリーズのものとは言いながらスクリーンに負けないほど映像のレベルも高く、その点でも先が楽しみです。ただ間違い無く「旬」を捕まえている作品ですし個性の強いクリエイターがバチバチやってるのを観ているだけでも楽しいので、放送開始を待てば良いと思っている方も上映中に機会を捕まえて観に行って頂きたいですね。

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