ちゅうカラぶろぐ


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一昨年暮れのちゅうカラ忘年会で参加者に「中部からの歌声」のロゴが入ったノートが配られたことがありまして、せっかくだからと昨年1月から映画の鑑賞記録として使っていたのですが1年10か月かけて先日遂に使い切りました。昨年の65本と今年10月までの51本を書き留め半券を(観た場所的に無い場合もある)貼り付けていったのでまぁパンパンに膨れ上がりました。単なる自己満足な備忘録に違いはありませんが、見返すと何だかんだニヤニヤしてしまいます。

 こんばんは、小島@監督です。
 ちなみに最初のページが「仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL」で最後のページが「スター☆トゥインクルプリキュア」とどちらもニチアサなのが何とも自分らしいというか(笑)

 さて、今回の映画は「エセルとアーネスト ふたりの物語」です。

 1928年ロンドン。メイドとして働くエセル(声・ブレンダ・ブレッシン)は屋敷の窓から黄色い雑巾を払っていると自転車に乗った牛乳配達のアーネスト(声・ジム・ブロードベント)と偶然目が合う。それ以来毎日互いに互いの姿を探すようになったふたり。ある日アーネストは思い切って屋敷を訪ね、エセルを映画に誘い出す。
 1930年、結婚したふたりはロンドン郊外のウィンブルドンに小さな家を購入し新生活が始まった。アーネストは折に触れ中古の家具を見つけてきては手直しして家を少しずつ快適に変えていった。
 1934年、二人の間に待望の息子・レイモンド(声・ルーク・トレッダウェイ)が誕生する。しかし既にエセルは40歳近い高齢での出産であったため、これ以上の出産は死を意味すると医者から警告を受けてしまう…

 1973年に発表した「さむがりやのサンタ」で著名作家の仲間入りを果たし、1978年には「スノーマン」を、82年には核戦争に際した初老の夫婦を描いた「風が吹くとき」などで世界中にファンを獲得した絵本作家レイモンド・ブリッグズ。その同氏が1998年に発表した自身の両親の生涯を描き英国ブックアワードを受賞した「エセルとアーネスト」を原作に2016年に製作されたアニメ映画です。ブリッグズ作品の柔らかな絵柄をそのまま動き出させてみせたような映像を展開するこのアニメ映画の監督を務めたのは「スノーマン」「風が吹くとき」のアニメ版に参加しブリッグズ作品とも縁の深いロジャー・メインウッド。イギリスを代表するアニメ作家でしたがこの「エセルとアーネスト」完成後の2018年に惜しまれつつ亡くなりました。

 冒頭、レイモンド・ブリッグズ本人が登場して作品について語る映像から始まりますが、そこで語られる通り、本当に特別エキサイティングでスペクタクルな事は何も起こらないのがポイントです。とことんなまでに平凡かつ普通の生活と人生。しかしそうであるが故に強い普遍性を持ち合わせています。また、それを支えるために細部にまで意識の行き届いた画面を成立させているその労力にも感服します。

 平凡そのものである二人の暮らしを大きく揺さぶるものが作中二つ登場します。一つは第二次世界大戦。前半、淡々と進む生活の中でじわじわと侵食していく戦争の姿が見事です。始めは新聞やラジオで、その内、生活物資に軍用品が入り込むようになり、やがて子供が疎開し遂には街に空爆が襲来します。自身らではどうしようもできない巨大で理不尽な暴力によって生活が脅威に晒される様、2016年に公開された「この世界の片隅に」とよく似ています。時代も同じ、そして当時敵国同士であり、鏡像のような対比として観ることができます。両者とも鑑賞できればより深い感慨を得ることができるでしょう。

 もう一つ、二人の生活に大きな変化をもたらすのが息子レイモンドです。手堅い仕事に就いてほしい両親の願いをよそに芸術の道へ進んでしまうレイモンド。しかしその親子のすれ違いと衝突も俯瞰で見ればやはりありふれたものであり、どこまでも平凡と言えるでしょう。
 作中、アーネストはよく新聞を読んでいます。また戦前にはラジオ、戦後にはテレビが登場しますがそこで時代を象徴する事件などが断片的に語られます。ダイナミズムに満ちた現代史がニュースとしてどこかで展開する一方で2人の暮らしはほとんど変化しない、その対照的な速度感覚も作品を味わい深くしています。
 更に興味深いことに、作中の会話からエセルとアーネストはそれぞれ支持政党がまるで違う上に階級意識にも微妙な齟齬があります。それがたまに絶妙に噛み合わない会話を発生させとぼけた味わいを産んでいます。夫婦でいるからと言って政治的な信条までもが重なるわけではない。そこまで含めて「当たり前の普通」が全編にわたって綴られます。

 終盤、少しだけ観る者を驚かせるのは両親の死の描写でしょう。詳細はあえて書きませんが、ここでだけ恐らくレイモンド・ブリッグズは作家的なイマジネーションより主観的な記憶を優先させています。

 映画の最後を飾るポール・マッカートニーの手による主題歌も美しく、穏やかで淡々とした中に無意識的ともいえる両親とその人生への愛慕が感じられる作品です。最も愛おしいものは素朴でありふれた物事の中にある。素晴らしい作品です。是非多くの方の目に留まりますよう。

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