ちゅうカラぶろぐ


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先週から日本でも配信が始まった「ポケモンGo」、欧米でのムーブメントが連日報道されていたこともあり、日本でも即座にブーム到来。
そうなったら意外なことにというべきか、私の職場からほど近い鶴舞公園が「噴水の形がモンスターボールに似ている」「公園内にレアポケモンがいる」等の情報が拡散されて物凄い人だかりに。夜にチラッと様子を見に行きましたがあんなに人がいるのを見るのは花見シーズンの時くらいです。
それがほぼ全員スマホの画面を覗き込んでる様はどこかシュールアートめいていました。

こんばんは、小島@監督です。
いや~話のネタにやってみようかと思ったけど、ちょっとどうしようか悩む光景でしたわ~(苦笑)

さて、今回の映画は「シリア・モナムール」です。

一人の映画作家がいる。日々YouTubeにアップされる苛烈さを極める紛争の動画に故郷シリアの現状を苦悩し続けるその男は、しかしその無数の動画たちをただ繋ぎ合わせることしかできない。
そんなある日、男の元にSNSを介して「シマヴ」(クルド語で「銀の水」の意)と名乗る女が接触を試みてきた。「シマヴ」は男を「ハヴァロ」(クルド語で「友」の意)と呼び、問い掛ける。
「ハヴァロ、もしあなたのカメラがシリアにあったら、何を撮る?」

2011年、いわゆる「アラブの春」に端を発した民主化運動はシリアにも波及し、42年間続くアサド独裁政権打倒を求める市民の大規模デモへと発展。やがて政府軍による一般市民への弾圧が凄惨な拷問と虐殺へと様相を変え、そこに周辺諸国、欧米各国、アルカイダを始めとした反政府武装勢力が次々と介入し泥沼の騒乱と化していきました。
そのシリアの実情をただ伝えるだけでなく、そこに詩的な余韻をまとわせたドキュメンタリー映画、それが「シリア・モナムール」です。

この映画は一般的なドキュメンタリーとは大きくその手法を逸脱しています。
冒頭、「本作は1001の映像からなる映画である。撮影したのは1001人のシリア人男性と女性、そして私である」というテロップから始まるこの映画は、まずシリアの現状を伝えるYouTubeの映像が次々と登場します。裸にされた少年が拷問される姿、廃墟となった市街を蹂躙する戦車、損傷の激しい遺体…それらを撮ったのは名も無きシリアの人々。虐殺する側もされる側も自身の持つ携帯電話やカメラを手に撮影した映像。携帯電話とSNSの普及がなし得た、マスコミでは決して撮り得ない映像たちがそこにあります。
正視しがたい映像が続出しますが、しかし目を逸らすことは出来ません。逸らせないだけの迫力があります。いや、そうではない。「目を逸らすな。これを観ると決めたなら何が来ようと目を背けるな」と心の奥底が訴えて来るのです。

この映画は基本的には騒乱の映像を収集・編纂する体裁を取ってはいますが、監督オサーマ・モハンメドが「シマヴ」と出会い問い掛けられたことでその趣が変わっていきます。
その結果、後半は酸鼻極める現状を暴露する映像の連続する苛烈さが弱まり、代わりにファインダーが捉えることになるのは父を殺された少年が無邪気に墓参りをする様であったり、おもちゃのピアノを手に歌う少女であったり、負傷しながらも廃墟の街を闊歩する猫であったり、微かに「生」の熱気を帯び始め、言葉にしづらい感銘のようなものを観る者にもたらします。
こんな地獄ような中でも人は生きるのだ。歌い、笑い、生きるのだ。そこで生きているのだ。
人間の最も残酷な部分と最も気高い部分を目の当たりにするこの映画が捉えるのはそんな人々の明日を願う「祈り」、そしてこの現状が伝わって欲しいという「叫び」、そして「生命の鼓動」。

上映時間96分。決して長くはありません。しかし全力で向き合わねばならぬ「何か」を備えているためこれでもかと消耗します。観終わった後、ひどく喉が渇いている自分がいました。すぐ目に留まった自販機で買ったサイダーの味がやけに美味しかった。自分が平和な場所に生きているのを再確認したかったのかもしれません。

携帯電話のカメラから撮ったらしい画素の粗い映像が多いこと、手ブレの激しい映像も多いこと、まともに顔も残らないような損壊の激しい遺体など激烈なショットが続出するため決して多くの方に薦められるような作品ではありません。心底きつい映画です。それでも何物にも代えがたい価値を持つ映画です。もし、興味があるのなら、観てみようと思うなら、全身全霊で向き合ってみてください。


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