ちゅうカラぶろぐ


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3月の終わりから4月に入った年度の変わり目にかけて忙しい日が続いてとにかくリフレッシュしたかったので一昨日の休日は「とにかく1日好きに使う!」と心に誓い、歯医者の定期検診(これだけは以前から予約入れてた)を終わらせた後は数年ぶりにテイラーに寄ってスーツを仕立て、靴を1足新調し、映画を2本ハシゴして、最後に太陽さんに寄って居合わせたちゅうカラメンバーたちと談笑して帰るという、スーツと靴に時間かけすぎて昼食を食べ損ねたことが誤算だった以外はほぼしたかったことをやり切った最高の休日を過ごせました。

 こんばんは、小島@監督です。
 ほぼ全く予定の無い上に翌日も休みなんていう日は実はなかなか取れないのが辛い所ですが、でもたまにはこんな日が無いとね。

 さて、今回の映画はそんな一昨日観た映画の一つ、「ビリーブ 未来への大逆転」です。

 ハーバード大学法科大学院に入学したルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は、新入生歓迎の食事会の席でグリスウォルド学部長(サム・ウォーターストン)から「女子学生は、男子の席を奪ってまで入学した理由を聞かせてくれ」と問われて驚く。時は1956年。弁護士はまだ「男の仕事」であった。
 法科の2年生である夫マーティン(アーミー・ハマー)と共に子育てと家事をこなしながら猛勉強するルース。しかし現実は厳しく、首席で卒業しても弁護士の道は開けず席の空いていた大学教授に就任することで折り合いを付けざるを得なかった。
 時は流れ1970年、ルースは学生たちに性差別と法について教鞭を執っていた。憲法では「法の下の平等」を歌いながら堂々と男女差別を認める法律が数多く存在する。そんな状況を変えようと情熱を燃やす学生たちを弁護士へと育て上げるのがルースの仕事だったが、自身が弁護士になれなかったことに不満を募らせていた。
 そんなある日、マーティンはルースにある訴訟の記録を見せる。それがルースの運命を大きく変えることになるのだった。
 
 貧しい家庭に生まれながら苦学して法学を修め、男女平等や女性の権利のために長年闘ってきた人物であり現在85歳を超えてなお現役最高齢の最高裁判事として活躍を続けるルース・ベイダー・ギンズバーグという人物は、現代アメリカにとって生ける伝説のような人物です。そんな彼女の学生時代から1970年代までの業績を主軸に描き上げた劇映画です。「ビリーブ」という邦題は、1960年代から長くNASAで活躍した黒人女性キャサリン・ジョンソンの姿を描いた「ドリーム」を思い起こさせるものとなっていますが、これは原題の直訳ではなく原題は「ON THE BASIS of SEX」、直訳すれば「性に基づいて」。率直とも思えるこのタイトルは作中に台詞としても登場します。この言葉に対するある人物のリアクションがなかなかニヤリとさせられるのでどうぞお楽しみに。
 監督は「ディープ・インパクト」や「ペイ・フォワード 可能の王国」などを手掛けた女性監督ミミ・レダー。映画ではエンターテインメント色の強い作品が多い彼女ですが、今作ではむしろTVドラマ「ER緊急救命室」で見せたような専門用語を飛び交わせながらも緊張感を持たせ観客を惹きつける手腕を存分に発揮している印象です。また脚本はルース・ギンズバーグの実の甥であるダニエル・スティープルマンが手掛けています。ルース本人に時間をかけてインタビューすることが出来たようで、例えば作中描かれる裁判は当日の口頭弁論以上に事前に提出する趣意書に比重が置かれて描かれているのもルースからの要望だとか。

 この映画を観るに当たって留意する点は常に時代背景を念頭に置いておくこと、でしょう。先月このブログで取り上げた「グリーンブック」もそうなのですが、60年代は公民権運動が盛り上がりを見せていた時期であり、性差別の撤廃はそんな機運の中でルース以前にも既に度々訴えられては退けられていた時期で、ルースの登場はある意味時代の必然とも言えたでしょう。
 また作中ルースよりもむしろ夫であるマーティンの方が家事も子育ても主体的に行っているのですが、「男は仕事、女は家事」というジェンダーロールが一般的だった1950年代~70年代という時代背景を考えればルース以上にマーティンの方が開明的な考えの持ち主であることが分ります。更に言えば妻の能力を誰より評価し最大の理解者として献身的に寄り添い続けるマーティンの姿はある意味で女性にとって最高のパートナーのように映るのではないでしょうか。ルースを人間観たっぷりに演じるフェリシティ・ジョーンズも勿論ですが、マーティンを篤実に演じるアーミー・ハマーの姿も観る者に強く印象に残ります。

 また、この映画の優れている点、いやそれは実際のルースの鋭い着眼点の表れでもあるのですが、ルースはただ女性の権利を主張していただけでなく「女を女らしさで縛る時、男も男らしさに縛られている」事の落とし穴を見出しており、それを作中でも明確に描き出してみせた点です。これが非常に見事で、男女問わず示唆に富んだ映像体験を与えてくれるでしょう。

 現在、トランプ政権発足時から保守派が幅を利かせる中でルースは政権批判も辞さないリベラル派のアイコン的存在でもあり昨年には彼女が最高裁判事になるまでを追ったドキュメンタリー映画「RBG」も製作され(日本では5月公開予定)、ますます存在感を増す人物です。日本でも様々な形で色濃く残る性差別について考える契機ともできますが一方で同じ人物をクローズアップさせた映画が2本同時期に公開されている点を鑑みてもこれ自体が近く行われる中間選挙へのメッセージとも取れ、なかなかに深読みをさせてくれる1本です。既に公開が後半に差し掛かっているため上映回数も減ってきているところではありますが、大作やアニメ映画が続々上映される時期にあって独特の存在感を示すこの作品、熱い内に観て欲しい1本でもありますね。
 

 

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