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ちゅうカラぶろぐ


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前回のブログで大雨のせいで帰宅が深夜2時を回ったなんてことを書いたらそれから3日もしない内に今度は雨で家に帰れなくなる羽目に。
あまりの状況に早々に帰宅を諦め金山のカプセルホテルを取りましたが、同じような思考をした方も多かったようで大浴場もサウナも人が多くてあまりくつろげない有様。
心身共にあまり疲れも取れないままの翌日の業務はそりゃもうきつかったです。もっともその次の日が休日シフトだったので何とか頑張れましたが。

こんばんは、小島@監督です。
それでも2年前の台風の時の丸2日家に帰れなかった上に翌日休日出勤とかに比べれば1日で済んだので楽なもんです。

さて、今回の映画は先日引退宣言を発表した宮崎駿の最後になるかもしれない長編アニメ映画「風立ちぬ」です。ようやく観る事が出来ました。8月中に2度トライしましたが2度とも満席だったですよ。2度目なんか平日の昼間にトライしたのに!どんだけ集客力あるんだ!

ジブリ作品では初めて実在の人物を扱うこの作品は零式艦上戦闘機、いわゆる零戦の設計主任であった堀越二郎(声・庵野秀明)を主人公に矛盾を抱えながらも自分の夢を追う男の姿を描きます。

零戦で歴史に名を刻むことになった堀越二郎ですが、この映画では零戦の扱いはそれほど大きくなく、物語の中心は1923年の関東大震災から堀越が九六式艦上戦闘機を設計開発する1935年頃までの十数年を虚実をないまぜにして描いていきます。

作中多くの人物が堀越と関わることになりますが、特に濃密に関わることになるのがジャンニ・カプローニと里見菜穂子という2人の人物です。
映画前半、まだ少年であった堀越の夢に現れて以降青年となっても度々夢の中で対話を重ねるカプローニは言うなれば設計者としての堀越の矜持の根幹をなす精神的な師範として登場します。夢と現実を行きつ戻りつしながら語られる前半は、むしろそのファンタジックな作りに少し面食らいました。
余談ですがカプローニの飛行機の一つである「Ca.309」は通称「GHIBLI」と呼ばれスタジオジブリの名の由来の一つになっています。
そして堀越と深く関わるもう一人にしてこの映画のヒロインでもある里見菜穂子。菜穂子の登場を持って物語は大きな転換点を迎えます。戦争への足音が日に日に大きくなる中恋心を募らせる2人のロマンスは、菜穂子が結核に罹患しているという状況と相俟って死の臭いが濃厚に漂い悲壮感に満ちています。

私がこの映画で何より唸ったのは「風」の表現です。これまでの作品も宮崎駿は卓抜した演出力で風を表現していましたが、ダイナミックさでは「ナウシカ」「ラピュタ」などには及ばないものの、その豊かなバリエーションで「風立ちぬ」はまさにその集大成と言って良いでしょう。
この風によって、堀越は飛行機への夢を抱き、菜穂子と出会い、再会し、恋心を育むことになります。その表現一つ一つはセリフ以上に堀越と菜穂子の心を語っているので是非じっくりと味わって欲しい所ですね。

またこの映画はとにかく「矛盾」に満ちた映画と言えます。そもそも宮崎駿自身無類の兵器・飛行機マニアにして戦争嫌いという矛盾を抱えており、それは兵器としてしか飛行機を設計できない堀越の苦悩へと繋がります。そこに目を向けるとこの矛盾に苦悩する難役に敢えて庵野秀明という素人を抜擢してみせた「矛盾」の意図にも何となく理解できる気がします。
実際大概な棒読みなのですが、不思議と聞いてる内に慣れてきます。
そしてこの映画最大の「矛盾」はラストシーンに訪れます。既にご覧になった方はご理解いただけるでしょうが、物語の流れからして普通あって然るべきシーンがありません。明らかに賛否を呼びそうな流れなのですが、堀越(あるいは宮崎駿自身)の抱えた矛盾への苦悩の表れと見れば納得出来る流れではあります。

「風立ちぬ」ははっきり言って分かりやすい作品ではありません。飛行機を題材にしながら「紅の豚」ほどには疾走感あふれるシーンもありません。しかし、うねる様な「何か」を感じさせるこの映画は宮崎駿の引退宣言がどうのとか言う話は抜きにして、彼がある種の「到達点」に達した事を感じます。お金を払って観るだけの価値のある映画です。まだの方は、この勢いなら年内中はやってそうですし急ぐ必要も無いと思いますが、是非足を運んでご覧になってみてください。


余談:割とギリギリまで今日のブログのタイトルは「宮崎、映画やめるってよ」にしようかと考えてましたが、な~んか違うよなと思ってやめてしまいました。でもそっちの方がそれっぽかったですかね(苦笑)?




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飛行機は詳しくないですが、 By ヒジリ
複葉機は好きです。形が。
DATE : 2013/09/11(Wed)12:27:40 EDIT
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