ちゅうカラぶろぐ


[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8
お盆休みに入りましたが強めの雨が降り続いていて必要な買い物を済ませる以外は出かけたりせずにほぼ引きこもり状態。たまにはこんな時間も良いですね。深刻な大雨ではないからこんなこと言えますが、数年前の身動き取れなくなるほどの降り方されたらさすがに怖い。九州で被害に見舞われていれる方々のご無事を祈ります。

 こんばんは、小島@監督です。

 さて、今回の映画は、特集上映「EU FILM DAYS 2025」より「FLEE/フリー」です。

 アフガニスタンで生まれ育ったアミンは共産主義体制下で父を当局に連行され、その後はムジャヒディンの侵攻による首都カブールの陥落から辛くも逃れる形で国を脱した。約20年後、彼は公的には内戦で家族を皆殺しにされただ1人デンマークへ流れ着いたことになっている。そこに至るまでにアミンの身に何があったのか。友人である映画監督ヨナス・ポヘール・ラスムセンに、アミンは自身の半生を語り出す。

 アイドルマスター765オールスターズのライブを観に横浜へ行こうとしていたその前日、仕事帰りの電車が大雨で運転見合わせになって足止めを食ってしまい、横浜行きの準備も全くできていない焦りもある中で再開までの時間を潰そうと入ったナゴヤキネマ・ノイでちょうど上手くタイムテーブルがハマっていたのがこの映画でした。2021年の作品で、翌2022年に日本でもロードショーされましたがその頃は観れずに終わってしまった一本が、全く思いもかけない形で機会が巡って来ました。

 アニメーションという媒体が持つ意外なほどの強みを感じさせてくれる作品です。基本的に映画は映画監督ラスムセンがアミンにインタビューし、彼の半生を聞き取る形で展開します。当時のニュース映像のフッテージなど実写映像も多く使われていますが大半はアニメーションで語られます。過酷な内容故に実写では凄惨になり過ぎることもアニメであればそれを抑えることができ、なおかつ感情移入もしやすくなるように思われます。比較的シンプルな描線で枚数も決して多くない今作はビジュアルに抑制が効いていながらも温かみがあり、主役であるアミンの「語り」を邪魔していません。そして何より今作に限って言えば全てが明らかにされれば「法」の庇護を失ってしまうアミンや関係者たちの身体と生命の安全を図れるというのが最大のメリットでしょう。こう言った方向でアニメーションを最大限活用している作品は初めて観た気がします。

 国を追われたアミンたち。しかし彼らの敵は戦争だけではない。逃げ込んだロシアでは難民として認定されず就労ビザも無いので不法滞在者扱い。ソ連から崩壊したばかりのロシアは社会機構が硬直していて彼らを助けられるほどの力は無く警官は腐敗して弾圧しながら金品をせしめて行く。どうにか脱出しようにも密航業者はそのほとんどが難民を食い物にする連中ばかり。さらに悪いことにアミンはゲイであることを自認しています。イスラム原理主義であるタリバン支配下となったアフガニスタンではアミンの生きられる場所はありません。出身国に強制送還される結末だけは何としても避けなければならない。どれだけマイルドに描かれていても息が詰まるような状況の連続です。アミンが生き抜けて来たのは彼に類稀なる力があったからではなく微かな幸運の糸をどうにか掴み取れただけに過ぎません。

 実はドキュメンタリーをアニメーションでもって語るという手法は意外なほど古いです。2008年にはアリ・フォルマンが1982年のレバノン内戦での自身の経験をもとにアニメ化した「戦場でワルツを」という作品がありますし、更に遡れば1918年に漫画家ウインザー・マッケイがイギリス船籍の客船ルシタニア号がドイツのUボートに沈没させられた、いわゆる「ルシタニア号事件」のてん末を描いた「ルシタニア号の沈没」があります。戦争やそれに翻弄された人々について語った作品が多いところに宿命のようなものを感じますね。

 まあ正直言ってライブを観に遠征しようかという前の晩に観るような映画ではないことだけは確かですが(笑)、それでも心震える一本との出会いは嬉しいものです。
 今も世界は変わっておらず、各地で哀しみが降り積もっています。だからこそ観る価値のある一本です。私は周回遅れも良いところでスクリーン鑑賞の機会を掴まえましたが、単に観るだけならAmazonプライムなどで観られます。戦争に思いを馳せる機会が増えるこの時期、こう言ったアプローチから考えてみるのもまた有意義な時間となるでしょう。

拍手[0回]

昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。と言いながらすいません、今回欠席してます。
 私みたいなお太り様ではちょっとヤバいくらいの汗ダルマになってしまうような暑さの中、横浜まで行って来ました。

 こんばんは、小島@監督です。

 さて、昨日はKアリーナ横浜にて
THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS LIVE ~NEVER END IDOL!!!!!!!!!!!!!~
day2を観てきました。765プロオールスターズ3年ぶりの単独ライブ、前回はまだコロナ禍で声出しができなかったのでそれもOKとなると恐らくは7年ぶりではないかと思われるライブです。叶うならday1も観たかったのですが、職場の事情でどうしてもどちらかしか観られない状況だったので早い段階でチケットを入手出来たday2のみに絞っての鑑賞になりました。

 後でセットリストを確認してみるとday1は懐かしい曲を入れ込ませながらも結構新しい試みを取り込んでいて懐古主義に陥らない作りをしており、現地勢できなかった上にちょうど開演時間中仕事帰りの電車が止まってしまって配信もリアルタイム視聴が叶わないという残念過ぎるあり様にぐぬぬしたとは言えその挑戦を忘れない姿勢を好ましく思っていました。さて、ではそれを踏まえてday2はもっと先を見据えた感じになるのかと思っていたら違いました。20年間の集大成を、4時間弱の時間の中で限界以上に詰め込んでみせてきました。

 不動のテーマ曲「THE IDOLM@STER」で開幕した後は「GO MY WAY‼︎」「relations」など最初期の楽曲が次から次へと飛び出します。中にはライブでの披露が10年以上ぶりなんてものもあったのではないでしょうか。そうでなくても「CDに収録されていたメンバーで」の披露が実は初めてというのもあったりして、古参の方ほど刺さってしまうようなセットリスト。敢えて今、そのアイドルの原点もしくはターニングポイントとなるような楽曲を「今の出演者が出し得る全力で」見せてくる、そんなパフォーマンスの数々は、楽曲もキャラクターもただ過去に置いてきた思い出を懐かしむためだけのものには絶対にしない意思をひしひしと感じさせます。出演者の中には自分より歳上の方もいますが彼女たちがステージを駆け回る姿は惚れ惚れする程にカッコ良い。そうだ、いつだってこの人たちは全力だった。

 ライブの最後にはプロデュース初日を終えたプロデューサーへ向け、これをいつか目にする日が来ることを願ってアイドルがそれぞれにメッセージを収録するという内容の映像が用意され、その後「ねえ最初に出会った日、覚えているかな?」という歌詞で始まる夢を追うアイドルたちの希望と決意に加えてプロデューサーへの感謝を込める名曲「Destiny」へと繋げる趣向には、何をやっていてこの後何を歌うかの予想も付いていたのですがそれでも避けられない破壊力がありました。

 20周年も終わりではなく通過点の一つにする思い、新たなブランドが立ち世界が広がっていく中でも最前線で妹や弟たちに背中を見せていくことを決めた矜持と覚悟に震え、気付けば何だかよく分からないくらいに泣きながらライブを観ていました。
 アイマスに少しでも興味をお持ちならぜひ今回のライブの配信をどうぞご覧になってみてください。私が十数年追い続けたアイドルたちはこんなにもカッコいいんですよ。私も負けていられない。

拍手[0回]

先日、「ストリーマー」という韓国のB級ホラーを観ていたら(正直出来はイマイチなのであまりお薦めはしません(笑))、主人公たちが廃墟の中で古いカレンダーを見つけて盛り上がるシーンがあったのですが、それが1988年というところに私の中のナニかが大ダメージ。そうね!20代の人にとっては生まれる前よね!!でもソウルオリンピックをリアルタイムで見てたクチにはまあまあショックよ!

 こんばんは、小島@監督です。
 20世紀も気づけばだいぶ遠くに。おぅふ。

 さて、今回の映画は「スーパーマン」です。

 崩壊した惑星クリプトンから地球に送り込まれたカル=エルは心優しいケント夫妻に育てられ、今はクラーク・ケント(デイビッド・コレンスエット)として大手新聞社「デイリープラネット」で記者として暮らす一方で地球の平和と人々を守る超人「スーパーマン」として日々戦い続けていた。
 だが、スーパーマンを敵視する天才科学者にして億万長者のレックス・ルーサー(ニコラス・ホルト)によりスーパーマンを破滅させるための陰謀が静かに進行していた。

 2013年製作の「マン・オブ・スティール」から始まった「DCエクステンデッド・ユニバース」が一旦幕を閉じ、「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」を手掛けたジェームズ・ガンがトップに就任して新たなユニバースを展開させることになり、その第一弾になります。ジェームズ・ガンらしい陽性で明るい大活劇でユニバースの門出を華々しく飾ります。

 冒頭からして意表を突いてくる作品です。スーパーマンはその知名度からしてもう改めてオリジンのエピソードを語り直さなくても良いという判断なのか、最初のカットの字幕でスーパーマンが3年前にヒーローデビューしたことがシンプルに語られ、何ならヒロインであるロイス・レイン(レイチェル・ブロスナハン)とももう恋仲になっていてほぼ説明無しで舞台が整っている状態で、かつスーパーマンがレックス・ルーサーの策にハマってヴィランにボコボコにされたところから始まります(笑)。いわゆる「マーベル・シネマティック・ユニバース」以降ヒーロー映画が量産されたことで「文法」のようなものが浸透してきたことや「スターウォーズ」のように最初にあらすじを見せた先達もいるからこそ可能になった手段と言えますね。

 「マン・オブ・スティール」や続編の「バットマンvsスーパーマン」ではザック・スナイダー監督はスーパーマンをキリストのメタファーとして描き、ダークでシリアスな作風の中でキリスト教的精神を体現する崇高な雰囲気を持ったものとなっていましたが、ジェームズ・ガンの描く新たなスーパーマンは人間臭く不完全で、それ故に自身の手で抱えきれない時は他に助力を求められる柔軟さを持っています。
 そのため「スーパーマン」というタイトルながらワンマン映画ではなくミスター・テリフィック(エディ・ガテギ)、グリーン・ランタン(ネイサン・フィリオン)、ホークガール(イザベラ・メルセド)らヒーロー仲間が次々と登場し、初っ端からチーム戦が展開します。特にミスター・テリフィックは主役顔負けの大活躍。そしてこの「無敵のスーパーマン」でないことが終盤の展開に生きてきてヒーロー映画らしい熱さをたたえたクライマックスが待っています。

 そしてこの映画のもう一つの大きなポイントが超パワーを持つスーパードッグ・クリプト。やんちゃな性格の飼い犬のあるあるがこれでもかとばかりに詰め込まれたマスコットキャラクターで犬を飼ったことが無くても「何かこんな動きしてる犬見たことある!」と思ってしまう人も多いのでは。その奔放さでスーパーマンどころかレックス・ルーサーさえも翻弄されてしまうクリプトの可愛らしさが今作の絶妙なアクセントになっています。

 極めて出来の良い作品なのですが「鬼滅の刃」大旋風の煽りを受けて公開から半月しか経過していないのにもう隅に追いやられてしまっているのが正直もったいないくらい。「ファンタスティック4」も封切られて「ジュラシック・ワールド」の新作も控えている手前割りを食いっぱなしになりそうなので鑑賞を検討している方はお早めに。

拍手[0回]

蓋を開ければ与党の大敗と既存のスタイルの限界が見えたような今回の参院選。皆さま投票には行かれましたでしょうか。こういう祭りは参加してこそです。旧来からの政党が伸び悩む一方で新興勢力も台頭する多党体制の兆しが見え、先行きがなかなか見えないですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 いやでもホント取り敢えず手取りをもう少し増やしておくれ。

 さて、今回の映画は「鬼滅の刃無限城編第一章猗窩座再来」です。

 決戦の時は来た。産屋敷耀哉(声・森川智之)の策略により一度は鬼舞辻無惨(声・関俊彦)を追い詰めるに至るが、無惨は逆に鬼殺隊を無限城に追い込み全滅を図る。無数の鬼たちの襲来をかわしながら胡蝶しのぶ(声・早見沙織)は上弦の弐・童磨(声・宮野真守)と、我妻善逸(声・下野紘)は上弦の陸・獪岳(声・細谷佳正)と対峙する。そして竈門炭治郎(声・花江夏樹)と冨岡義勇(声・櫻井孝宏)は上弦の参・猗窩座(声・石田彰)と因縁の再会を果たす。

 2020年、コロナ禍に喘いだ日本映画界を救い史上最高興収を叩き出した「鬼滅の刃無限列車編」、そこからTVシリーズにフィールドを戻して「遊郭編」「刀鍛冶の里編」「柱稽古編」と進みいよいよ最終章となる「無限城編」が三部作の劇場版として公開が始まりました。封切り後の初週は全国のシネコンで軒並み1日20回以上、中には40回に達する破格の上映体制が組まれ3連休というカレンダーも手伝ってその多くで満席かそれに近い集客を獲得し僅か3日で興収50億(!)を突破する勢いを見せています。

 異様なほどの期待を背負っての公開となった今作ですが、さすがはufo table。軽々と超えて来ます。というか期待したものが最高純度でお出しされてくる時間がみっちり続く驚異の映像体験が待っています。
 原作の主題と描写を吟味し整理できるところは整理しながらアニメでしかやれないカメラワークと表現に昇華させる映像、精緻な音響設計とフィルムに合わせて書き上げられた椎名豪・梶浦由紀コンビによる音楽のダイナミズム、「こんな演技できるの!?」と言いたくなるくらいに次から次へと飛び出す実力派声優たちの名演、これらが混然となり観客を圧倒する時間が155分間1秒も余さず続きます。

 物語は「無限列車編」の終盤で突如登場し煉獄杏寿郎と死闘を繰り広げ、炭治郎たちにとってもターニングポイントとなった猗窩座との対決が中心となり、ちょうど「無限列車編」と対になっている構図です。「無限列車編」では単に強さに固執している面だけが強調されていた猗窩座の背景が明らかになります。「鬼滅の刃」という作品は鬼となった者のバックボーンが物語にがっちり組み込まれる時とそうでない時とあって、ハイボリュームなアクションで押す仕様はどれも変わらないものの「遊郭編」のように強く組み込まれてる時の方がドラマとしてより面白くなる傾向にあり、今作はまさにそのパターン。ドラマとアクションの高次元で充実しているだけでなく密度も恐ろしく高く、上映中何気無く腕時計を見たら「こんなにがっつり見せてもらえているのにまだ1時間ちょっとしか経ってない!?」という時間感覚がおかしくなるような密度をしています。

 これ単体で既に尋常じゃない面白さながらこれでまだ第一章。まだいくつも山場が控えています。取り敢えず早く続きが観たい!という渇望を胸に劇場へ再度足へ運んでしまいたくなるので完全にチョロい(笑)現代日本における商業アニメーションの極致かつ最高峰、ネタバレに怯えるタイプの作品ではないので初動の過熱が落ち着いてからでも充分ですが是非スクリーンで味わっていただきたいですね。

拍手[0回]

昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 いや〜三大シリーズ封印特撮部屋、ちょっと覗いてみたのですがハードルが高い(笑)。歌ってみようと思って聞いていた曲が少ないと言いますか。最初から部屋にいたとして最後までやり切れる気がしない(苦笑)。まだまだレパートリー拡大の余地がありそうです。

 こんばんは、小島@監督です。
 それはそれとして前回前々回と不参加だったぶん聴き込んだ曲がそこそこあったのをいくつか初挑戦できたので結構充実。でもまだ歌い足りない(笑)

 さて、今回の映画は「LUPIN THE ⅢRD THE MOVIE 不死身の血族」です。

 度々ルパン3世(声・栗田貫一)らに刺客を送り込み、窮地に追い詰めた謎の存在。その黒幕を突き止め、隠された莫大な財宝を盗み取るべくルパンたちはバミューダ海域へ向かっていた。そこには地図に書かれていない島があるという。しかし目的地に近付いたと思われた瞬間ルパンたちが乗る飛行機が狙撃され撃墜された。辛くも難を逃れたもののルパンたちを更なる敵が襲いかかる。

 半世紀を超えてシリーズが続く「ルパン3世」、数多くのアニメが作られてきましたがその中でもスタイリッシュな映像とハードボイルドなテイストで国内外で支持されている「LUPIN THE ⅢRD」というシリーズがあります。2012年放送の「峰不二子という女」を出発点に、その後TVシリーズから劇場での限定公開も視野に入れたOVAへとフォーマットを移し2014年製作の「次元大介の墓標」以降「血煙の石川五ェ門」(2017年)「峰不二子の嘘」(2019年)「銭形と2人のルパン」(2025年。配信のみ)と不定期にシリーズが続けられて来ました。その集大成とも言える劇場用新作の登場です。
 「ルパン3世」が割と間断なく新作が登場するのと旧作のリバイバル上映などもあったりしたおかげでであまりそんな印象は無かったですが、2Dアニメーションの劇場用作品としては1996年に原作者モンキー・パンチ自らが監督した「DEAD OR ALIVE」以来実に29年ぶりだそうです。「次元大介の墓標」以降のシリーズを手がける小池健が監督を務め、ジェイムス下地のクールな音楽が作品を引き締めてくれます。

 このシリーズの醍醐味とも言えるエッジの効いたビジュアルとともにダイナミックなアクションを全編に渡り楽しめる作品です。コミカルさは極力排され高い緊張感を保ち続けているのも特色。アクションの手数も多く作画も非常に流麗でスクリーンで観る迫力は充分です。
 物語は実質最初から決戦地に入り込んで行く格好なので「起」と「承」をすっ飛ばして「転」から始まるような印象。冒頭にここまでのあらすじが語られるのでこの映画だけ観ても概ね支障が無いように作られてはいますが、ヴィランたるムオム(声・片岡愛之助)はともかくとしてそれに匹敵するくらいにストーリーに絡んで再登場してくるサブキャラが複数いるので可能ならシリーズは予習しておく方が置いてけぼりは食わないように思います。あるいは鑑賞後に追いかける楽しみがあるという捉え方もできますね。

 「全てのルパンに繋がる」という大仰なコピーがついた本作ですが、実質のところ直結しているエピソードは一つだけである点と、過去のルパン作品にゲスト出演した声優陣が数名カメオ出演しているくらいです。このリンクの見せ方が個人的にちょっぴり不満で、本編の結構早い段階でサラッと明かされてしまうのです。どうせならもっと勿体つけて「満を持して」感を出して欲しかった気がします。何せムオムのキャラクターデザインがアレなので恐らくそうだろうとは思っていてもやっぱりそういう美味しいところはもっと溜めて欲しかった。
 アクションで押しつつも知略を巡らし強者を上回っていくルパンのキャラクター性やB'zの歌うテーマ曲のカッコ良さなど作品として光るところは多いのですが、大ネタの使い方のもったいなさがどうしようもなくのしかかって来ている印象でどこか消化不良が拭えない印象でした。
 
 ただ1番困るのは「ここまでやったんならこれを集大成として終わりにせずにあと一本作って欲しい。何ならアレをリメイクして欲しい」という期待もある自分(笑)。何だかんだ気に入ってるんじゃないか。「ルパン3世」を最初にアニメにした大隅正秋氏のテイストを現代に甦らせようとするこのシリーズ、ユーモアとカリスマ性で語る軽妙洒脱なルパンとは一線を画す面白さはやはり捨てがたいですね。

拍手[0回]

先日弟夫婦が1歳半になる姪っ子を連れて自宅を来訪。歩き出して行動範囲も広くなり始めた可愛い盛り。それは良いのですが、迂闊に触ったりして怪我したり危ないものがないように事前に結構真面目に片付けて掃除したはずなのに何故そこに目を付けるのだ姪っ子。今日イチ興味を示すのがモップというのはどうなのだ姪っ子。まさかデラウェアを一房完食するとは思わなかったぞ姪っ子。

 こんばんは、小島@監督です。
 幼児の体力と好奇心油断できねえ!たった1日だけでぐったりでございましたよ。

 さて、今回の映画は「F1/エフワン」です。

 かつてF1レーサーとして将来を嘱望されていたソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)はあるクラッシュ事故をきっかけにF1の世界から離れ、今は様々なレースとチームを渡り歩く漂泊のレーサーとして古びたバンで寝泊まりする生活を送っていた。ある日、かつてのチームメイトであるルーベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム)と再会したソニーは、ルーベンから彼がオーナーを務めるF1チーム「APX」のドライバーのオファーされる。APXは低迷を続けており残り9戦で結果を出せなければ売却される可能性があるという。複雑な思いを抱きながら、ソニーはサーキットへと向かっていた。

 なんとF1主催のリバティメディア全面協力、現役レーサーのルイス・ハミルトンがプロデューサーとしてクレジットされた破格のレース映画の登場です。主人公が所属するチーム以外の全てのチームとサーキットが実在のものが登場し、実際のレース中にも撮影が行われたという代物です。同じくF1レースをモチーフにした映画としては2013年に「ラッシュ/プライドと友情」という実在のレーサー・ジェームス・ハントとニキ・ラウダの活躍を描いた秀作がありましたが、史実映画の側面も強かった同作と違ってこちらはとことんエンタメ志向。
 監督ジョセフ・コシンスキー以下「トップガン・マーヴェリック」の主力スタッフが再結集。機材も労力も惜しまない贅沢さで映像と音響を作り上げ、観客をハイスピードの世界へ誘います。

 物語は身も蓋も無い言い方をすれば「トップガン・マーヴェリック」の地上版です。かつて天才を欲しいままにしたロートルが若者のメンターとなり、相互に影響し合ってやがてはロートルの中でも変化が生じていきクライマックスへと突入していく流れまでほぼそのまま。
 だからと言って観てて萎えると言うことはありません。レーサーのドライビングテクニックだけをクローズアップせず戦略技巧とピットワークにも重きを置いたストーリー展開は、結構ダーティーな手段をホイホイ使うソニーのスタイルと相まって未見性が高く、レースを魅力的に見せてくれます。
 ソニーとタッグを組む事になる若手レーサー・ジョシュア(ダムソン・イドリス)とのドラマもなかなかで、ソニーとジョシュア2人のキャラクターを存分に描けていることがクライマックスの面白さに繋がっていて終盤は最高にアガリます。
 まあソニーが30年以上一線離れていて根本から往時とは変わっているはずのF1マシンをサラッと使えていることが一番リアリティ無いのですがそこをツッコむのは野暮ってものでしょう(笑)

 その映像と音響の迫力から可能ならIMAXやDolby cinemaなどのラージフォーマットで味わって欲しい一本。なのですが、あと2週間で超大物「鬼滅の刃」が公開されるとそちらに全部持って行かれてしまいそうなので興味のある方はお早めに。

拍手[0回]

先週最終回を迎えた「機動戦士ガンダムGQuuuuuuX」を振り返るなら、ひとえに「祭り」であったように思えます。サンライズ×カラーのコラボレーションがもたらしたのは富野由悠季監督の「機動戦士ガンダム」を正史とした「本歌取り」の物語によってもはや古典の領域になりつつある1st〜逆襲のシャアまでの作品群を「再発見」する導線を作ってみせ、平日深夜という不利な放送時間も意外なほどライブ感の醸成に一役買って古参どころかご新規さんも巻き込み、先行上映「Beginning」も入れると約半年間ファンを楽しませてくれました。マチュやニャアンらのキャラクターも個性的で、もうちょっと彼女たちの活躍を観ていたかったような気も。

 こんばんは、小島@監督です。
 さすがに古びていく一方であった旧作群を再発見できた功績は大きく、「ガンダム」というコンテンツはこれで更に10年は戦えるようになったと思えます。ここからガンダムに入ってきた人たちが後年更なる傑作を生み出して来たら嬉しいですね。

 さて、今回の映画は「罪人たち」です。

 1932年アメリカ南部。大金を得た双子の兄弟スモークとスタック(マイケル・B・ジョーダン/2役)は閉鎖された製材所を買い取り客に音楽と酒を提供するジューク・ジョイントをオープンしようとする。酒を手配しミュージシャンを雇いいよいよ店はオープンの時を迎えた。酒、音楽、ギャンブルまでも始まり狂騒の夜が幕を開ける。それはやがて人ならざる者さえも呼び寄せる事になる。

 「フルートベール駅で」や「ブラックパンサー」などアメリカにおける黒人の悲喜とカルチャーを作品に落とし込みながら高いエンターテインメントを見せるフィルムメイカー・ライアン・クーグラー監督。その最新作は黒人差別も強く残る1932年の南部でブルースの音楽と共に人外の存在、ぶっちゃけて言えばヴァンパイアと死闘を繰り広げることになった者たちの一夜を描きます。
 
 吸血鬼ものも数あれど、まだこんなアプローチがあるのかと驚かされる一本です。
 前半は意外なほどゆったりとしたテンポで南部の片田舎での濃密な人間模様を描いていきます。結構な数の人物が登場しますが、きちんと把握しやすく配置され人物描写が積み重ねられている手腕はなかなかのもの。
 物語の中心はスモークとスタックの双子ですが、彼等の従兄弟である少年「プリーチャー・ボーイ」サミー(マイルズ・ケイトン)も非常に重要な存在です。神父の息子であるサミーは天才的なブルースの才能を持っていますが聖歌たるゴスペルに傾倒している父とは対立しており、それはそのままブラックミュージックの対立軸とも言えるでしょう。ミュージカルというわけでもないのですが、この映画は非常に音楽の比重が高いことが重要なファクターになっています。

 サミーの奏でるブルースは客たちをトランス状態へと導いていきますが、その音色にヴァンパイアも誘われてしまいます。ここで吸血鬼ものの定番「招かれないと家に入れない」という設定が活かされているのが特徴的。これに匹敵するのは小野不由美の「屍鬼」くらいではなかろうかというくらいに前面に出て機能しています。また登場する吸血鬼たちがアイルランド系というのもポイント。彼らもまたアメリカの主流から外れた遅れて来た移民たちである点は、この映画を読み解くのに重要でしょう。
 緊張感と恐怖が沸点に達し狂騒が惨劇と死闘に変わる頃には、物語はそれまでのゆったりしたテンポをかなぐり捨てて爆発し、ブルースとケルティックミュージックが交錯するクライマックスに突入します。

 全編にわたるブルースの哀愁を帯びた旋律は一方で非常にクールで、観ているとサントラが欲しくなってくるくらい。正直当初は別の映画を観ようとしたら満席だったので代わりに、という程度で観た一本でしたが想定外の面白さに大満足。
 なお本当のクライマックスはエンドクレジットの最中に語られる上にクレジットの終わりにももうワンシーンあるのでご鑑賞の際は明るくなるまで席をお立ちになりませんよう。

拍手[0回]

/