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ちゅうカラぶろぐ


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昨日放送のM-1グランプリはご覧になりましたでしょうか。
 自身のテイストを競技用に研ぎ澄ませる技巧の極致を見せた令和ロマンの連覇で幕を閉じましたが、一方で惜しくも敗れはしましたがバッテリィズの、アホには違いないがその朗らかさが心地良い涼風を吹かせてくれるような漫才も鮮烈な印象を残しました。あの漫才を見てどこか救われた気持ちになった方もいるのではないでしょうか。

 こんばんは、小島@監督です。
 それにしても今回のエントリー数は1万組を超えたとか。どこまで規模が大きくなっていくのでしょうか。

 さて、クリスマス直前ということで今回の映画は「レッド・ワン」です。

 クリスマスを目前にサンタクロース(J・K・シモンズ)が何者かに拉致された!このままではクリスマスが中止となり世界中の子供たちが絶望に襲われてしまう。サンタクロース護衛隊の隊長カラム(ドウェイン・ジョンソン)は、首謀者にサンタクロースの所在の情報を売ったと思しき「世界一の追跡者(トラッカー)」と呼ばれる男ジャック(クリス・エヴァンス)を見つけ出し、手を組んでサンタクロースを探し出すミッションを開始した。果たしてクリスマスを救うことはできるのか!?

 古今を問わずクリスマスというのはその祝祭感と相まって映画としても例えば「素晴らしき哉、人生!」(1946年)や「三十四丁目の奇蹟」(1947年)の頃から定番の題材です。「ホームアローン」や「ダイ・ハード」などその後シリーズ化されるような作品も数多く生まれました。ジャンルもファンタジーやコメディ、ラブストーリー、アクション、ホラーと様々で、サブスクで手軽に楽しめるようになった昨今ではその時のシチュエーションや気分でと言ってもちょっと目移りしてしまうくらいの作品群となっています。そんなクリスマス物に新たな一本が。「ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル」と次作「ネクスト・レベル」を手掛けたジェイク・カスダン監督が二作に主演したドウェイン・ジョンソンと再タッグを組んで、底抜けなエンタメを作り上げて来ました。

 まず何をさておいてもサンタクロース役J・K・シモンズがあまりにハマり過ぎててここからもう面白いというのがズルいです(笑)。この見た目のインパクトたるや。風貌だけでなく優しさとタフさが見事に同居しているのもポイントで、このスタイルなら絶対にやってくれるはず、と期待してしまうことをクライマックスにちゃんとやってくれるのも外さない感じがして良いですね。
 ロケよりもセットを組んでスタジオで撮影したと思われるショットの構成比率が高いことや音楽の使い方などにどこか1980年代のハリウッド映画のような雰囲気があり、ちょっぴり懐かしい気持ちにもなります。

 映画自体はとにかく時間いっぱい頭空っぽで楽しませたいサービス精神の旺盛さが良くも悪くもというところで、結果的に大味が過ぎるところも多分に見受けられるため、こういうボンクラ映画が苦手な方には受け入れ辛いところもあるかもしれません。内容と比して123分という上映時間もいささか長く、105分程度に収めてくれればなお良かったのにと思わざるを得ません。
 それでも、変に残酷なシーンがあるでもなくカラリとした陽性な作りは皆が浮かれるクリスマスに難しい映画なんて観たくないという向きにはぴったりです。フライドチキンやサーモンのお供にどうぞ。

 ただ個人的に一番思うところがあるのは公開から僅か1ヶ月でもうAmazonプライムの見放題配信のラインナップに加わったこと、それ自体にありますね。おかげで劇場公開を取りこぼしていたこれを早々に観ることができたのですが、このスパンの短さは却って日本のスクリーンから洋画がこぼれ落ちていく兆しになってしまうのではないか、そんな危うさを感じてしまいます。むしろ活気付くきっかけになれば良いのですが。

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大河ドラマ「光る君へ」が昨日最終回を迎えました。後に紫式部と呼ばれるようになる女性・まひろを主人公に、藤原道長との恋物語を軸に女流文学の開花や光と闇が渦巻く摂関政治只中の平安時代を見事に描き切ってくれました。「源氏物語」「枕草子」と言った古典文学を身近に感じさせてくれ、遠い昔ただ試験勉強のために暗記したに過ぎないあれこれがドラマを楽しむ下地になってくれた感覚は他に類を見ません。劇中のセットや衣装も美しく、つい美術解説書を購入してしまいましたよ。まだ余韻が消えず今かなりロスな気分を味わっています。

 こんばんは、小島@監督です。
 年明けからスタートの次作「べらぼう」も楽しみではありますが、もう少し「光る君へ」の世界に浸っていたい思いもあり、ちょっと複雑。

 先週末、幕張メッセまで 「THE IDOLM@STER M@STER EXPO」 に行って来ました。来年で20周年を迎える「アイドルマスター」、そのメモリアルイヤーの先駆けとしてこれまでアイマスを構成してきた全部を一堂に介したイベントです。
 ステージではライブやトークショーがあり、各ブランドのオフィシャルの展示に加えて企業展示ブースもあり、キッチンカーではコラボ飲食が提供され、謎解きやDJブースまであってまさに全部盛り。

 ライブについても出演している声優自身がパフォーマンスするミニライブもありましたが、メインは「LIVE SHOW CASE」と題してここ数年度々公演が行われてきた「キャラクター自身がパフォーマンスするライブ」を1日4ステージ上演。私もDay1の「シンデレラガールズ」のステージを鑑賞しました。出演者は久川颯、久川凪、高垣楓、速水奏、安部菜々、佐藤心の6人。声優が出演するリアルライブでは高垣楓役早見沙織さんが多忙を極めていますし、佐藤心役花守ゆみりさんは膝に故障を抱えていてステージでのパフォーマンスが現状望めないという事情もあり、ちょっとした夢の共演状態でした。個性派なメンバーがメタなネタを放り込んだり他のブランドをダシにしてでも力尽くでアゲにかかる演出はまさにデレマスらしいノリで、約60分程度とは言え実に濃密な時間でした。これが2日間で5ブランド計8ステージあるのだから物量も大したものです。

 アイマスが他のIPと比較して抜きん出て特徴的である点、と言えばファン即ち「プロデューサー」たちが例えば「ニコマス」と呼ばれた動画群がニコニコ動画で一大ジャンルを形成したことなど草創期から積極的に発信し続けてきたことが挙げられるでしょう。近年でも遂に実際にコラボるまでに至った高槻市と高槻やよいのような例に代表した、企業や自治体とのコラボレーションもこうした遺伝子のなせる技と言って差し支えないところです。このメーカーとユーザーの一種の共犯関係ももちろんEXPOには盛り込まれ、会場内で掲示する応援幕の公募や同人製作のエリアが設けられサークル参加した方たちによる同人誌やグッズの頒布、模型やフィギュア、切り絵、スノーボード等の展示が行われて即売会としての性格も有し、更に屋外エリアでは痛車の展示まで行われていました。中核スタッフも積極的に来場者に話しかけたりしていたようで、実は私も名刺交換させていただいた方がいます。名刺や入場時などに配布されたフレークシールの交換のためのスペースまであったのも「らしい」ところ。

 様々なユーザーの「アイ」を表現・発信する場とこれまでを形作ってきた全部を盛り込みつつ、今年リリースされた「学園アイドルマスター」出演者のミニライブや虚構と現実の間を行くVtuber「Vα-LIV(ヴイアライヴ)」3人のステージにこれから先の未来への期待も感じさせ、一つの祭りとして素晴らしいイベントだったと思います。さすがに初めての試み故にところどころ不具合も見受けられましたのでそこを踏まえて第2回があると嬉しいですね。
 あと実は当日ちょっと体調が今ひとつで宿泊ではなく日帰りにしてしまったためちょっと不完全燃焼なところもあるのでリベンジの機会が欲しいっす(苦笑)

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昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 8年ぶりのパーティールーム!もはや懐かしいというべきでしょうか。ちょっと気分がアッパーになった皆さんの歌を聴けたのも面白く、とても楽しい時間を過ごせました。

 こんばんは、小島@監督です。
 またこんな場があるのも楽しいかも。

 さて、今回の映画は「室井慎次敗れざる者」「生き続ける者」です。

 室井慎次(柳葉敏郎)は、かつて心通わせた男との約束を胸に警察組織の改革を進めていたが目に見える成果を出せぬまま組織内での風当たりが強くなり、道半ばで警察を去った。故郷の秋田へ帰った室井は古民家を買い取り修復して暮らし始めた。その後、母親を殺され孤児となった少年・貴仁(齋藤潤)、父親が罪を犯して収監中の子ども・凛久(前山くうが/前山こうが)を里親として引き取り育てていた。
 そんなある日、家のそばで他殺体が発見され、その身元が20年前のレインボーブリッジ事件の犯人グループの一人だと判明する。折しも、室井は森で行き倒れた少女・杏(福本莉子)を助け、預かるようになるが杏はかつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美(小泉今日子)の娘であった。
 小さな山村で、異変が迫りつつあった。

 不思議な巡り合わせと言うべきか、今年は「あぶない刑事」と「踊る大捜査線」という1980年代と90年代を代表する警察ドラマの新作映画が公開される年となりました。アクションと軽妙なテイスト、洗練されたファッションで見せる底抜けのエンターテインメントだった「あぶない刑事」、より現実的な警察組織の業務形態を物語に落とし込み、個人と組織の相克を描いた「踊る大捜査線」、いずれも今日に至るまで息が長く続くシリーズになり、ドラマシリーズを今観ればどちらも当時の時代の空気を色濃く写していたことに気付かせてくれます。
 「踊る大捜査線」が画期的だったのは織田裕二演じた明るく個性的な性格の刑事・青島俊作と堅物な超エリートだった室井慎次の対立と協力を繰り返しながらやがて強い友情で結ばれる二人を中心としながらも、刑事と犯人だけでなく「警察」という組織に関わる様々な人物が大量に登場する群像劇だったことが上げられ、「個人と組織の関わりを描く物語」というパッケージ自体が後続に与えた影響が非常に大きい作品です。1997年の連続ドラマの好評を得て翌1998年に初映画化。以降断続的に映画やスペシャルドラマが製作されており、特に2003年公開の第2作は実写邦画の歴代興収第1位の座を未だに譲り渡していない大ヒットとなりました(アニメも含めた日本映画としては2024年現在第7位。)

 そうは言っても2012年以降シリーズが途絶えていた「踊る」の12年ぶりの新作の中心になるのは、実直に生きた男・室井慎次。プロデューサー・亀山千広、監督・本広克行、脚本・君塚良一と言ったシリーズの中核メンバーも再結集して二部作の劇場版として製作されました。主演はもちろん柳葉敏郎。四半世紀に渡り同役を演じ続けてきた彼の、集大成とも言える仕上がりになっています。
 警察を去り山奥に隠棲している室井を、過去の因縁が追いかけてきます。追いかけてくるのは事件だけではないようで、室井はある種のヒーローになっているらしく警察を辞めているのに何かにつけて協力を求めに人がやって来ます。
 しかし、サスペンスやスリラーとして極めて魅力的な舞台が用意されているものの、そこが主眼にはなっていないのがこの二部作の大きな特徴で、良きにつけ悪きにつけ恐らく観に行った大半の方が「期待とは違う」と思ったのではないでしょうか。

 事件ものとして観ると、舞台を整えるのみに終わる前編を受けてさて後編はどうなるかと言えば、これが結構簡単に解決してしまいます。室井にしてみても「過去が追いかけてきた」から協力しているに過ぎない姿勢を終始崩さないため事件の顛末が物語に占める優先度は思いのほか低いところにいます。
 代わって全編に渡り重要なものとして語られるのが里親としての室井の姿です。貴仁、凛久、杏、3人ともそれぞれ相当にヘビーな境遇の持ち主である少年少女たちを精一杯愛して育てようとしている不器用な男の姿を前後編合わせて4時間という上映時間の大半を使って描いています。冬になれば雪も深くなる山村というロケーションと合わせて、同じフジテレビ系列のドラマで今も名作の呼び声高い「北の国から」が感触として近い印象です。
 また一方で、目に見える形での成果は無かったのだろうとは言え、実は室井が手掛けた組織改革は様々なところで着実に萌芽している描写もあり、その意味で確かにタイトル通りに「敗れざる者」であり「生き続ける者」であることが伺えます。

 ロケ撮影の多い映画で、中でもシーンの合間に度々挿入される荘厳な秋田の山村の点描が映画を彩ってくれる、相当に渋い燻し銀の人間ドラマ。求めてるものが違い過ぎて映画2本分の時間とお金を返して欲しくなる人もいるだろう一方で、私みたいにうっかり涙腺を刺激されてしまう人もいるはず。でもこれは恐らく私の方が少数派。ロッキングチェアでウイスキーのグラスを傾けたくなったそこのあなた、友達になりましょう(笑)

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自宅からほど近いところにあるコインランドリーが、今年になってから機械が刷新されて布団や毛布も洗えるようになったらしく、せっかくだしと先日やってみたらめっちゃふかふかに仕上がってとても良い感じ。
 これまでは少し遠いところのコインランドリーを使ったり布団も扱ってくれるクリーニング店に出したりしてましたが手間が減りそうで助かります。

 こんばんは、小島@監督です。
 布団ふかふかとか言ってると何となくウマ娘のアドマイヤベガ気分。

 さて、今回の映画は「ロボット・ドリームズ」です。

 1980年代のニューヨーク、孤独を募らせたドッグはある時たまたま目にしたロボット「アミカ2000」を購入し、友達を作った。ロボットとの絆が深まるにつれニューヨークで暮らす日々が輝きだすドッグ。しかし、夏の終わりに海水浴を楽しんだ夜、ロボットは故障し動かなくなってしまう。ドッグはロボットを修理して連れて帰ろうとするがビーチは来年の夏まで閉鎖されてしまった。
 離れ離れになったドッグとロボット、再会を心待ちにしながらそれぞれの時を過ごすことになるが。

 なんと美しく詩情に満ちた映画だろうか。
 白雪姫と闘牛をモチーフにモノクロ・サイレントで描く異色のダーク・ファンタジー映画「ブランカニエベス」で知られるスペインのフィルムメーカー・パブロ・ヘルベルが手掛けた初めてのアニメ映画は、思慕にも似た友情の行く末を綴る物語です。冒頭の無表情で孤独感に苛まれるドッグの姿にはヘルベル自身の経験による部分も活かされているとか。ビデオゲーム「アタリ・ポン」やフラワーロックなどの80年代カルチャーの数々に加えて、画面の隅には今は無いツインタワーが描かれる人種のるつぼニューヨークに懐かしさを刺激される人もいるでしょう。
 シンプルな描線と色使いでもって擬人化された動物たちとロボットといういかにもカートゥーンなビジュアルながら、紡がれる豊かな感情に心揺さぶられる傑作です。

 物語にはセリフは一切登場せず、状況を説明するような字幕も片手で数えられるほどしか出てきません。しかしシンプルなビジュアルだからこそキャラクターたちは表情も動きもいきいきと描かれ、セリフを数多重ねるよりも雄弁にキャラクターの心情を語ります。
 ヘルベルの映画遍歴なのか、「サイコ」「オズの魔法使い」「グレムリン」などの映画のオマージュと思しきカットがいくつも見受けられるのもポイントで、モチーフを探してみるのも一興でしょう。

 離れ離れになった二人はそれぞれの時間を生きることになります。どうにかロボットを救おうとするドッグですが、意表を突くような機転を効かせることもできずにただビーチの閉鎖が解かれるのを待つしかなく、結局日々の生活がついて回る中で孤独感を癒そうとあがく内に少しずつ頭の中でロボットが占める領域が少なくなっていきます。また、身動きの取れないロボットはドッグとの再会を待ち侘び夢にまで見るものの、時折ビーチに現れる侵入者たちがロボットの時間を穏やかなままにはしておきません。着実にすぎてゆく時間の中、記憶は徐々に思い出へと変わってゆく。
 そんな物語をさらに後押しするのが音楽です。特に事実上主題歌と言って良いアースウィンド・ファイアーの「セプテンバー」が極めて印象的に使われていて、映画が終わって席を立つ頃には頭の中で余韻と共にあのメロディが長くリフレインしているに違いありません。

 観るのに人も年代も選ばない作品とは思いますが、子どもよりも大人の方がより迫ってくるものがあるでしょう。過ぎていく今を、いかにして輝いた過去へ移ろわせていくのか。余韻と共に心の中で大切にしているものの引き出しが開くような、そんな時間が待っています。

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お誘いを受けて先日友人宅で麻雀を楽しんで来ました。実際の牌を握るのはもちろん「雀魂」などのゲームもほとんどプレイしていなかったので、本当に数ヶ月ぶりの麻雀です。久しぶりなので楽しめれば結果はズタボロでも良いや〜くらいに思いながらやっていたのが良かったのか、最終的にかなりのボロ勝ち。二盃口なんて初めて上がれましたよ。

 こんばんは、小島@監督です。
 やっている間はずっと思考を巡らせているからか、終わってみると座りっぱなしなのに結構疲れていて、その感覚も含めて楽しい一日でした。また卓を囲みたいですね。

 さて、今回の映画は「ネズラ1964」です。

 1963年、映画会社社長ユカワ(蛍雪次朗)は「ゴジラ」シリーズで席巻する東宝に負けじと新たなコンセプトの特撮映画を企画する。折しも公開されていたヒッチコックの「鳥」にもインスパイアされ、大量のネズミが人々を襲う「大群獣ネズラ」を立ち上げる。撮影には着ぐるみのほか、生きたネズミをそのまま接写して特撮映像に用いることも取り入れ、新基軸の映画として世に送り出そうとしていたが。

 ここ最近仕事が立て込んでいてちょっと新作を観に行く時間が取れず、さりとてでも何かは観たいとAmazonプライムの画面を眺めていたらまさかのコレが目に飛びこんで来ました。
 「大群獣ネズラ」は1964年の正月映画として大映が準備していた作品ですが、結局公開されることは無くお蔵入りした幻の映画です。この映画を題材に、当時の記録をリサーチし、その製作状況をフィクションを交えて描いたのがこの「ネズラ1964」です。監督は主にインディーズ畑で特撮映画を製作している横川寛人。「大仏廻国」や「怪猫狂騒曲」などクラシックな特撮映画の発掘と再映画化を良く手掛けている方で、2020年、コロナ禍の只中で製作された作品になります。

 高度経済成長期の熱狂の中というのは特撮映画界も様々な機器の登場や技術革新と共に試行錯誤を繰り返していた時期でもあり、「大量の生きたネズミを撮影に投入する」、という今からすればどう考えてもいかんだろ、というようなことにも果敢に挑戦した、またそれができてしまった時期でもあります。ネズミを集めるために「ネズラ」の横断幕を付けたトラックを映画館各所へ向けて走らせ、持ち込まれたネズミを一匹いくらで買い取って行ったそうです。
 そんな状況だから当然衛生環境など良いわけも無く、ネズミを媒介にしたダニアレルギーで瀕死に陥った撮影クルーもいたとか。不衛生さが人づてに広がり近隣住民からの抗議運動まで起こった末に保健所からも指導が入り映画は中止を余儀無くされ、ネズミは全て焼却処分となりました。1971年の大映倒産、その後の徳間書店による子会社化、2000年代に入ってからの角川書店への権利譲渡などを経る中で残っていた素材も散逸していき、今ではスチル写真が僅かに残るのみになっています。
 ただ、この失敗を糧に後年「大怪獣ガメラ」の誕生に繋がることにもなる(「ネズラ1964」にもそれを示唆する描写がある)ため日本特撮映画史においてユニークな立ち位置にいるとも言えるでしょう。

 「ネズラ1964」はそうした状況をうまく取り込んで映画にしている作品で、当時と同じ手法を用いながら撮影したショットもあるなどなかなか熱意が伺える映像です。
 しかしいかんせんほぼインディーズの低予算作品なので、「昭和38何月何日」と度々テロップが登場しますが、特撮シーン以外の箇所では使っている小道具や衣装が全く時代に合っていなかったり、恐らく当時としてはこの言い回しは無いと思われるセリフが散見されるためどうにもちょっと落ち着かない印象。熱意に対して作品のクオリティが追いついていないのを飲み込んで観る映画と言わざるを得ない、しかしかと言って嫌いではないという複雑な心境。

 とは言え55分という短めの上映時間に加えて作品の性格上なかなか視聴が難しいタイプの映画に違いはなく、今回のAmazonプライム配信開始は素直にありがたいのひと言です。ここ最近はインディーズでもパワーのある作品が出つつある中、押さえておいて損は無い一本。特にアナログな特撮にこだわりを感じられる作品ですので、そういうのが好きな方には是非おすすめしたいですね。

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サンライズのロボットアニメの名作たちに新たな解釈を加えて新作のアニメクリップを作る実験動画プロジェクト、その新作として「AURA BATTLER DUNBINE SIDE R」が先日公開されました。

https://youtu.be/l7DwtP3nkq8?si=1aJhiwVTpoFuVLQt

ところがこれがなかなか批判の嵐(苦笑)。「聖戦士ダンバイン」を直撃していない若いスタッフ中心で製作されたそうで、私も動画を観たのですが綺麗に仕上がっている一方で「観ていた人ならそこには着目しない」ところに着目している、悪く言えば勘所を外しているため往時のファンには受け入れ難いのは分かります。
 近年多く作られているリメイク作品、概ねどれも良く出来上がっていて見た目はちゃんとしているのですがそれだけに留まっているようなものが多いように思います。未見の方に薦めるにはそれでも充分とは言え今改めて作るならもう一歩踏み込んで欲しい気もするのですが。

 こんばんは、小島@監督です。
 そうは言ってもこういう試みは臆せずバンバンやって欲しいですね。「サンライズロボット研究所」のサイトを見るとまだ結構準備しているようなので今後も楽しみ。

 さて、今回の映画は「ヴェノム:ザ・ラストダンス」です。

 ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)と地球外生命体シンビオートが寄生して生まれた「ヴェノム」(トム・ハーディ/2役)は、強敵カーネイジとの戦いに勝利したもののその結果として政府機関から追われる身となってしまった。メキシコに逃亡し身を潜めていた彼らだったが、シンビオートの創造主たる邪神ヌル(アンディ・サーキス)により差し向けられたモンスター・ゼノファージにより新たな脅威にさらされることになる。

 「スパイダーマン」に登場するキャラクターたちで構成する「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」と呼称される作品群、その中でも「ヴェノム」は最大のヒット作となりました。グロテスクな風貌と残虐性がインパクトを与えた一方で、二心一体というユニークさと、基本的にネガティブな性格のエディと何だかんだ甲斐甲斐しく世話を焼く陽気なヴェノムの奇妙な共存関係が物語に彩りをもたらし多くのファンを獲得しました。そんなシリーズの第3作が公開。凸凹コンビの関係はいよいよクライマックスを迎えます。
 1作目のルーベン・フライシャー、2作目のアンディ・サーキスから受け継ぎ今作を監督したのはケリー・マーセル。これが初監督作品になりますが、過去2作の脚本を手掛けた人物で今作でもシナリオを兼任しています。

 1作目では出逢いとコンビ結成を描き、2作目では倦怠期に突入していたエディとヴェノムは、今作ではさながら新婚旅行のような珍道中を繰り広げます。物語のスケールが極端に大きくなっているというのに一番時間を割いて描いているのが二人の逃避行というのがいかにもこのシリーズらしいというか(笑)。
 二人(と言ってもどちらもトム・ハーディの二人羽織ですが)の軽妙な掛け合いが相変わらず楽しい一方で、今作初登場の新キャラがさも前からいたような顔で出てきたり、そのくせ物語上の扱いが雑だったり、どうやっても時間内に収まるはずが無かろうというくらいに風呂敷が広がってしまい結局ろくに畳まれもしないなど欠点も多く、完結編を謳いながらいささか据わりの悪さが否めません。
 とは言えそれで変に長尺にしたりせず、3作すべてを上映時間120分以内に収めているのは私としてはかなりの高ポイント。プログラムピクチャーとしての軽やかさを最後まで保ったまま駆け抜けたのは特筆すべきところではないかと思います。ジャンクなものを楽しみたい時にどこから観てもちゃんとジャンクなものが出てくるというのはこの規模の作品では意外と難しい。

 完結編と言いつつ続編への含みというか色気を残しているのもご愛嬌と言ったところ。不満はあれど「こういうので良いんだよ」度合いの強さに何だかんだアリに思えてしまう一本。シリーズを楽しんだ方ならやっぱりマストで押さえておこうぜ!吹替も鉄板の布陣で楽しいですぞ。

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本来なら今回のブログは土日に開催されるはずだった「アイドルマスターミリオンライブ11thLIVE」のイベントレポートを書く気満々だったのですが、あろうことか開演まで24時間切っているところで延期という事態に。出演者の複数に新型コロナウイルスの感染が確認されてステージのクオリティが確保できなくなった、というのがその理由で、新型コロナが過去のものになっていないことをつきつけられてしまいました。
 しかしその逆境にただへこたれたりしないのがアイマス、特にミリマスP。直前過ぎて今更ホテルや飛行機、新幹線のチケットもキャンセルもできないからと続々と名古屋へ集結し、ライブに合わせて名古屋各地の施設や飲食店で実施されているコラボイベント「でらます」を巡ってコラボ商品を完売させたり、何も無いのを承知で会場に行って同じように集まったPたちと交流したり、あるいはたまたま日程が重なっている小倉唯やオーイシマサヨシのライブに行ったりと力尽くで滞在時間を満喫して行ったようです。
 この逞しさがSNSなどでもちょっと評判になっていたようですね。ミリオンライブは止まらねぇぜ。

 こんばんは、小島@監督です。
 私?私は映画観に行ってました。会場であるAICHI SKY EXPOまで足を運ばなかったことをちょっぴり後悔してます(笑)

 さて、今回の映画はそうして観た一本、「風都探偵:仮面ライダースカルの肖像」です。

 自身の無くした記憶と向き合おうとするときめ(声・関根明良)の思いに応えるため、左翔太郎(声・細谷佳正)は過去を語り始める。それは翔太郎が「おやっさん」と呼び師と仰いだ男・鳴海荘吉(声・津田健次郎)との出会いと別れの物語であり、相棒フィリップ(声・内山昂輝)といかにして出会い「W」になるに至ったかの物語でもあった。

 2009年に放送されてからもう15年になりますが未だ根強い人気を誇る「仮面ライダーW」、2017年には続編となるコミック「風都探偵」の連載が始まり2022年に序盤のエピソードがTVアニメ化されました。今作はそのTVアニメの続編という位置付けですが単にそれだけに留まらない顔を持つ作品に仕上がっています。

 物語は2010年公開の映画「オーズ&W feat.スカル」の一編「メッセージforダブル」の後の時点から始まりやがて2009年公開の「W&ディケイド」の一編「ビギンズナイト」へと繋がって行きます。「風都探偵」の劇場版でかつての「仮面ライダーW」の映画2本を結びつけるという趣向がなかなか小憎らしい。
 中でも驚きは後半。事実上「ビギンズナイト」をアニメでフルリメイクして語り直す格好になっています。もともとの映画が濃密というより短い時間でぎゅうぎゅうに詰め込むような印象の作品でしたが特に人物描写で足りていない部分を補完し、さらには当時の映画にもコミックにも無いエピソードを追加し、ファンサービス的なところも含めて見事にアップグレードした作品に仕上がっています。
 恐らく監督椛島洋介のこだわりではないかと思うのですが、アクションシークエンスがアニメというよりちゃんと特撮っぽく見せているところもポイントで端的に言うと原作である「仮面ライダーW」が好きすぎる人が作っているのが良く分かります。単体で非常に収まりが良いのも嬉しいところでここから「仮面ライダーW」の世界に足を踏み入れても問題の無い敷居の低さがあります。はっきり言ってとても人に薦めやすい。

 唯一のウィークポイントと言えば津田健次郎始め声優陣の演技は素晴らしいものの、桐山漣、菅田将暉、吉川晃司らの顔がチラついてしまうことでしょうか。これはさすがにもうどうしようもないところかも。
 とは言えこの懐かしい顔に再会できたような気分は悪くない。もう一度「仮面ライダーW」を改めて見直したくなってるのでこれはもうこの映画を作った人たちの勝ちですね。

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