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ちゅうカラぶろぐ


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まさに今日、それもつい先ほど、一つの試験を受けてきました。その名も「アイドルマスター検定」!
 今年20周年を迎えて様々な施策やイベントを打っているアイマスですがその中でも指折りに珍妙なイベントです。試験時間90分間、全120問でリスニングテストまである本格派。試験前後にはキャストや中核スタッフが登壇してのトークショーも用意され、ちゃんと「イベント」の性格も持たせていたのが面白い。ペーパーテスト自体が自分には久しぶりですし、鉛筆片手に真剣に頭抱える「遊び」の場としても極めて楽しい時間でした。

 こんばんは、小島@監督です。
 実際のところ大して事前準備しないほぼ記念受験のノリで受けたのですが、やってみたらマジになってる自分がいて「もっとちゃんと準備すれば良かった」と軽く後悔してしまうところも含めてしっかり検定試験してました(笑)次があるかは分かりませんが、機会があればまたトライしたいですね。

 さて、今回の映画は「野生の島のロズ」です。

 嵐によって輸送機から脱落したケアロボット「ロッザム7134」通称ロズ(声・ルピタ・ニョンゴ、吹替綾瀬はるか)は無人島に漂着した。偶発的に起動したロズは役割を求めて島を彷徨うが、動物たちに怖がられてしまい近づけない。ロズは動物の言語を学び動物たちをケアしようとするが相手にされないまま逆にグリズリーのソーン(声・マーク・ハミル、吹替田中美央)に追われる羽目になってしまう。ソーンから逃げる中でロズは雁の巣を壊してしまい、一個の卵だけが残された。卵から孵化した雁のひな鳥キラリ(声・キット・コナー、吹替鈴木福)は刷り込みによってロズを親だと思うようになる。ロズはキツネのチャッカリ(声・ペドロ・パスカル、吹替柄本佑)、オポッサムのピンクシッポ(声・キャサリン・オハラ、吹替いとうまい子)らの協力を得ながらキラリを育てようと試みるが。

 ただただ、素晴らしいというほかない。
 「リロ&スティッチ」「ヒックとドラゴン」で知られるアニメーション作家クリス・サンダース監督とドリームワークスアニメーションから新たな傑作が生まれました。もしも無機質なロボットが子育てを通して「心」が生まれたら?SFにおける定番とも言えるテーマに見事なアプローチで映画化しています。
 動物はみな油彩画を思わせる淡いビジュアルをしており、また背景美術は全て手描きで描き起こされていて、そんな柔らかな画の中に佇む無機質なロズの姿はそれだけで極めて印象深いものになっています。球体型の胴体にフレキシブルに動く長い手足というロズのデザインはどこか宮崎駿監督作品に登場したロボットを思わせます。クリス・サンダース監督は宮崎駿監督へのリスペクトが強い方なのでもしかしたらある程度は意識的にそうしているのかもしれません。

 ロズはやがては渡りができるようになるまでキラリを育てる中で次々と不測の事態に出会い、それに対応していくうちに徐々に自身に設定されたプログラムから逸脱するようになっていきます。その中で本来ならあり得ない「心」を獲得していくことになります。いわゆる「シンギュラリティ」ですが、改まって説明や強調すること無しに自然と物語の中に溶け込んでいることに驚かされました。
 そしてさらに驚くことにこれでも物語の半分でしかないという点です。
 予告編ではロズが子育てする点にのみフォーカスしているのでそれが映画のクライマックスかと思っていたのですが、そこからさらに跳ねてみせます。
 
 物語が後半に入るに至り、実は島の外の世界が思いがけない姿をしている点などイメージの飛翔が実に見事。しかもそれに対しての説明がほとんどされないので多くは観る者の想像に委ねられているのも私としてはとてもポイントが高いです。終盤の展開や映像など見方によってはどこか宗教画的な雰囲気すら漂っています。
 
 ところでドリームワークスアニメーションの完全自社製作としてはこれが最後の作品で今後は外部スタジオを多用する製作体制へと移行することになっているとか。今後はこういうこだわりの強い画作りをしたタイトルはもしかしたら減っていってしまうかもしれません。それを思うとこれは目に焼き付けておいて欲しい。
 年中何かしらのアニメ映画が公開されている日本では少々目立ちにくいかもしれませんが、是非スクリーンでこの鮮やかな映像を味わっていただきたいですね。

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冬アニメの消化も今ひとつなのにこういう時に限って旧作にどハマりしてしまう罠。女子高生4人が南極を目指す「宇宙よりも遠い場所」を何気なく観始めたらこれがもうどストライク。清々しい青春ドラマと南極観測のディテールにかき立てられる知的興奮に気づけば一気見。ニューヨークタイムズが取り上げたというのも納得の面白さでした。

 こんばんは、小島@監督です。
 それにしても出会うのが30年遅かった。10代の頃に出会っていたらきっと南極目指してましたよ(笑)

 さて、今回の映画は「トワイライト・ウォリアーズ決戦!九龍城砦」です。

 1980年代香港。密入国したチャン・ロッグワン(レイモンド・ラム)は身分証を獲得すべく港湾を支配するボス(サモ・ハン)の元へ赴くもトラブルになり、九龍城砦へ逃げ込んだ。ロッグワンは九龍城砦を支配するロン・ギュンフォン(ルイス・クー)やその右腕であるソンヤッ(テレンス・ラウ)と出会い城砦での生活を始めるが。

 熱い時代を生きた者たちの矜持。
 1990年代初頭まで香港に存在したスラム街「九龍城砦」、現地の本来の読み方ではありませんが「クーロンじょう」という読み方に親しみがある方も多いのではないでしょうか。施政権がはっきりしないまま放置された城砦は無計画に増築が重ねられ、「一度入ると出られない」と言われるほど迷路のような状態になったと聞きます。1970年代、無法を極めた状態に対抗するため住民たちが自警団を結成したことで治安が徐々に回復し、平穏が訪れた時期がありました。とは言えど1997年の中国への香港返還へ向けて1987年には香港政庁が住民の強制移住と九龍城砦の取り壊しを決定。数年後にはもうこの場所は無くなっているだろうという不安や焦燥が住民に通奏低音として響く時期。これがこの映画の時代背景です。

 どこまでも熱く観る者を震わせてくれる、ド直球の熱血少年漫画のような映画です。ストーリーは大味でご都合主義。しかし出てくるキャラクターが誰も彼も魅力的。特にルイス・クー演じるロン・ギュンフォンの燻し銀の色気は出色です。谷垣健治が手掛けたアクションは天井知らずのボリュームで超ハイカロリー。エンターテインメントとはこういうものさ!という気概と熱量が全編に満ち溢れています。香港映画のオールドファンにとってはレジェンドと言うべきサモ・ハン・キンポー(現サモ・ハン)が70代になってもなお衰えぬキレを見せてくれるのも嬉しいところ。

 九龍城砦が取り壊され中国へ返還された香港は、中国共産党により民主主義が骨抜きにされ今や往時の輝きは見る影も無くなり中国の一地方都市に変容させられてしまいました。香港映画界も時代の波に抗えず、俳優やスタッフの海外流出、巨大な大陸資本の流入により独自世界の多くは失われたと言って過言ではないでしょう。
 この映画はそんな輝いていた時代の香港映画を思わせてくれる点においてどうしようもなくノスタルジーを感じさせ、それが唯一無二の味わいともなっています。
 しかし消えかけていてもその残照はどこまでも烈しく熱い。この映画、実は大陸資本が全く入っていません。香港の資本のみで製作されたこの作品にもしもあなたが強いロマンを感じたなら、それは時代に埋もれさせられた魂を蘇らせ再び火を灯そうと集まった者たちの矜持の結晶です。

 幸いにもというべきか香港映画史上最大のヒットとなった「トワイライト・ウォリアーズ」は三部作となることが決定され、2作目3作目が製作準備に入ったそうです。続報を楽しみに待ちたいところですね。

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先週の大型寒波、皆さんの影響はどうでしたでしょうか。私の自宅の方では数年ぶりにまとまった量の雪が降り、週の後半は連日朝に自宅周りを雪かきしてから出勤してました。幸いにも電車が運行を止めるほどではなかったので通勤に差し障るほどではありませんでしたが。

 こんばんは、小島@監督です。
 昨日も良く晴れてくれ、今週は少し気温も上がるようでいくらかは過ごしやすくなりそう。

 さて、今回の映画は「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」です。

 幼い頃、弟が一緒に出かけた山で失踪した過去を持つ青年・児玉敬太(杉田雷麟)、今は失踪した人間を探すボランティアを続けていた。ある日、敬太の元に母から突如古いビデオテープが送られてくる。そこには弟が失踪した瞬間の映像が収められていた。
 霊感を持つ敬太の同居人・天野司(平井亜門)はビデオテープに禍々しいものを感じ、敬太に深入りしないように助言するが自身にまつわる忌むべき過去を決着させたい敬太は行動を起こす。新聞記者の久住美琴(森田想)はそんな敬太を記事のネタにしようと追い始め、3人はやがてあの「山」へと導かれてゆく。

 津々浦々で語られる怪談の中には無念を抱いて死んだ悪霊という分かりやすいものばかりではなく「何だか良く分からないが恐ろしい」というものもあります。そんな「良く分からないもの」は人の想像力を刺激し、その想像の中に怖さを植え付けていくのです。
 「リング」や「呪怨」という金字塔を大きなマイルストーンとして今日まであり続けるJホラー。貞子や伽倻子のようなアイコンとなるキャラクターが牽引する幽霊譚を保守本流とし、近年では怖がらせるというよりいっとき驚いてもらうアトラクション色の強い作品も少なくない中で、なかなかに異色のホラーが登場しました。ジャンプスケア(大きな音と共に映像や出来事を突然変化させる手法。1980年代以降から主に使われ始め、現在ではホラー映画の常套手段になっている)を一切排除した静謐な作りで、観客を禍々しい怪異譚へと誘います。
 監督はフェイクドキュメンタリー「イシナガキクエを探しています」を手がけた新星・近藤亮太。これが長編映画初監督作品になります。

 ノイズ混じりのビデオ映像やカセットテープの音声と言ったクラシックでアナログな媒体をフル活用した不気味な空気が全編を包み込み、また残された者の焦燥を丁寧に描いて不穏さをいやましていきます。撮影もかなりアナログに作っていたようでビデオ映像のノイズはVFXでそれっぽく処理したのではなく監督が友人から譲り受けたビデオテープの一番ノイズが走るところを見つけ出してそこにうまくハマるように調整して収録したのだとか。
 登場人物たちが直面する怪異は杳として全容を見せず、良く吟味された効果音の妙も手伝って観る者の想像を掻き立てます。中でも中盤ある青年が敬太に語る物語は、優れた民俗的な怪異譚を聞いているようで非常に怖くなってきます。

 一方で単純な分かりやすさとは無縁の作りな上に変なところで生真面目でそれでいてちょっとたどたどしいところもあり、序盤で掴まれなければ退屈さすら覚えてしまうかもしれません。ただCGも特殊メイクもほとんど使わない画作りは地味に見えつつも挑戦的で荒削りながらも新風と反骨精神を感じさせてくれる一本であるのは間違いなく、閉塞しかけたJホラーにまだ可能性があることを教えてくれます。今週末より名古屋会場の開催がスタートする「行方不明展」でも場内映像の一部を手がけているそうで、近藤亮太監督、今後要注目と言ったところですね。

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どういう偶然の結果なのかわかりませんが今年の4月11日に「アマチュア」「ベテラン」「プロフェッショナル」という3本の映画が公開されます。しかも全部アクション映画。「アマチュア」はディズニー配給、「ベテラン」は韓国映画、「プロフェッショナル」はリーアム・ニーソン主演と三者三様で全く相互に関係は無いのですがこうなったらもう3本立てで観たい。

 こんばんは、小島@監督です。
 でもホントにハシゴできたとして、3本目をどれにしても疲れて途中で寝ちゃいそう(笑)

 さて、今回の映画は「ベルサイユのばら」です。

 1770年、同盟関係を強固なものとするためオーストリア女大公マリア・テレジアは娘の1人である皇女マリー・アントワネット(声・平野綾)をルイ15世の孫、後に王位を継ぎルイ16世(声・落合福嗣)となる青年の元へ嫁がせた。婚礼の日、アントワネットは近衛兵の中に美しい人物を目に留める。見目麗しき青年と思われたその人物は男として育てられたジャルジェ将軍(声・銀河万丈)の娘・オスカル(声・沢城みゆき)であった。

 漫画家・池田理代子が1972年に発表した「ベルサイユのばら」は連載中から支持を集めて社会現象と呼べるほどのヒットとなり、1974年に宝塚歌劇団で初演されてその後半世紀に渡り演じ続けられる定番の演目となりました。1979年にはTVアニメも放送され漫画史上に輝く不朽の名作と言って良い作品です。私も中学生ぐらいの頃にTVアニメの再放送を観て強くハマった経験があります。そんな今なお熱い支持を受ける「ベルサイユのばら」が、実に45年ぶりに劇場用作品としてアニメ化されました。

 結構長い原作を3部作ではなく2時間で全編やり切ると聞いて期待と不安が半々で観に行きましたが、なかなかどうして見応えのある作品に仕上がっていました。
 まず、ミュージカルに仕立ててあるのが非常に効果的に働いています。ほぼダイジェストと言ってもいいくらい大胆に省略されているのですが、時代背景の解説を黒木瞳によるナレーションに任せ、主要人物の心情の変遷を歌に乗せてさながら舞台上でセットが回転して場面が切り替わるかのように次のシーンへ移行するのでぶつ切り感が薄くなっています。
 限られた時間に対するエピソードの取捨選択も上手く、数多い要素が重奏的に交錯する原作から激動の時代の中で凛々しく立つオスカルの鮮烈な生き様にのみを貫くようにスポットを当て続けて構成しているため、かなり観やすく分かりやすいものになっています。
 他方でデュ・バリー伯夫人やロザリーなど原作で重要な役割を持っていてもほぼ全く出てこない人物や一切触れられないエピソードも当然のように多いため、この構成に不満がある方もいるでしょう。ここは割り切って翻案というものの面白さを楽しんでしまいましょう。

 ミュージカルなので当然と言えば当然なのですが珍しくヴォーカル曲が多い澤野弘之の音楽と原作の描線を活かしつつ現代的にリファインした岡真理子の手による華やかなビジュアルも相性が良く、美しい映像と音楽に身を任せて舞台劇を楽しむかのように観られる一本。ほとんど蛮勇と言っても良いくらいの今回のアニメ映画化ですが、これを機に原作本を手に取ったりTVアニメ版や宝塚歌劇へと手を伸ばしたりしても良い、そんな入り口になれる作品ではないかと思いますね。

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数年前からの懸案事項でもあり、また自治体から配布されたクーポンの期限が迫っていたのもあって先日風疹のワクチン(正確には風疹麻疹混合ワクチン)を打ってきました。いやそれは良いのですが、確かに基本的には子どもが打つものだからか病院で接種のために案内されたところが小児科!!四十代後半のおっさんが1人で小児科の待合室で順番待ちしてるとか何かの罰ゲームとしか。取り敢えずちゃっちゃと終えられて良かった。

 こんばんは、小島@監督です。
 接種からさして日をおかずに東京で麻疹患者が出たというニュースが。期せずして備えもできたようでしばらく居心地の悪い思いをした甲斐もあったというもの。

 さて、今回の映画は「機動戦士ガンダムジークアクス・ビギニング」です。

 スペースコロニーで平和に暮らしていた女子高生アマテ(声・黒沢ともよ)は、戦争難民の少女ニャアン(声・石川由依)と予期せぬ出会いを果たしたことで非合法なモビルスーツ競技「クランバトル」に足を踏み入れた。アマテは軍と警察双方から追われている謎めいた少年シュウジ(声・土屋神葉)とともにクランバトルに挑む事になる。

 よもやこれほどとはな!
 ロボットアニメの雄サンライズと、「エヴァンゲリオン」のカラーという2大スタジオがタッグを組んだ新作「機動戦士ガンダムジークアクス」、監督に「フリクリ」「トップをねらえ!2」の鶴巻和哉、シリーズ構成に「少女革命ウテナ」「STAR DRIVER 輝きのタクト」の榎戸洋司、さらに脚本や絵コンテの一部には庵野秀明も迎えてのまさに大型企画。そのお披露目としてTVシリーズ放送に先駆け序盤部分を劇場用に再構築してフォーマットされた「ビギニング」が現在公開中です。

 まさかこう来るとは!!という驚きに満ちた作品です。
 正直なところあくまで序章で、これで物語の全容が見えるわけではないですし観たところで特に強めの感想とか言わずに素通りするつもりでいたのですがあまりの衝撃にちょっと黙ってられそうになく(笑)
 と言っても迂闊に書くと一番美味しいところをポロッとネタバレしてしまいそうで何も書けないのですが。

 第1作から45年が経過し半世紀も見えてきてシリーズとして厚みが増してきたと同時に飽和状態になりつつあった「ガンダム」、だいぶ語り尽くされたように思えたこのシリーズにもまだこのような鉱脈があるのかという驚きと、それを超一流のスタッフが料理するとこう言ったものが出来上がるのかという驚きに同時波状攻撃されて謎の興奮を味わえました。
 面白いのは「鶴巻監督の作品に参加してるだけ」というスタンスだとインタビューで答えていた庵野秀明が自身の世界観を譲る気は無く鶴巻和哉監督にとんでもない無茶振りをし、鶴巻監督もそれに見事に応えて全く異質な2つの世界観がシームレスに同居しており、ガンダムという土台の上にクリエイターそれぞれが持つビジョンの違いをガチンコで戦わせることで強烈にエネルギッシュなうねりを産んでいます。
 また、観ていて思ったのですが「物語の序盤部分を再構築」という今作、単純に1〜4話くらいをまとめたのではないような。特にあのプロローグはこの劇場版だけのエピソードかあるいは放送話としてはもっとずっと後、15話あたりで語る内容なのではないか、という気がします。

 無論「ビギニング」故に全く完結はしておらず現時点で評価を固めるのは早計ですが、これから先の放送開始が非常に楽しみ。というか良いから早く観せてほしい。そう思わされた時点でこの先行上映は大成功でしょう。TVシリーズのものとは言いながらスクリーンに負けないほど映像のレベルも高く、その点でも先が楽しみです。ただ間違い無く「旬」を捕まえている作品ですし個性の強いクリエイターがバチバチやってるのを観ているだけでも楽しいので、放送開始を待てば良いと思っている方も上映中に機会を捕まえて観に行って頂きたいですね。

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昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 私は所用があって途中からの参加になりましたが、特撮部屋でも1曲歌えてコールまで入れてもらえたので楽しかった。デュエット部屋も覗きに行きましたが、途中参加で何か歌おうとするにはちょいとハードル高かったですね(苦笑)。

 こんばんは、小島@監督です。
 今年の歌会も皆さんよろしくお願いします。

 さて、今回の映画は「ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い」です。

 それは「中つ国」において、「指輪」にまつわるフロドたちの冒険が始まるより昔、ビルボの手に指輪が委ねられるよりも更に前の物語。人間の国ローハンでは名君と誉れ高い「槌手王」ヘルム(声・ブライアン・コックス、吹替・市村正親)の統治によって平和な時を暮らしていた。しかし野心に燃え陰謀を巡らすローハン西領の領主フレカ(声・ショーン・ドゥーリー、吹替・斧アツシ)が不運な形で命を落としたことで国内に暗雲が立ち込める。ヘルムへの復讐を誓ったフレカの息子ウルフ(声・ルーク・パスクァリーノ、吹替・津田健次郎)はローハンを急襲する。王国滅亡の危機にヘルムとその娘たる王女ヘラ(声・ガイア・ワイズ、吹替・小芝風花)はどう立ち向かうのか。

 「ハリー・ポッター」シリーズと並んで2000年代以降のファンタジー映画のスタンダードとなったと言っていい「ロード・オブ・ザ・リング」三部作。それに連なるスピンオフとして一本のアニメ映画が製作されました。ピーター・ジャクソン製作総指揮の下で今作を監督したのは「攻殻機動隊S.A.C」「東のエデン」などの神山健治。さながらトップクリエイターたちのコラボレーションと言った趣の、贅沢な作品になっています。

 ぱっと見でも充分に分かってしまうくらい、大変な手数をもって作られているのが分かる作品です。聞けば一度俳優に演じてもらったものをモーションキャプチャーで取り込み、3Dモデル化した上で出来上がった素材を更に手描きで起こしてアニメ化したそうで、その動画枚数は実に13万枚!実写的なアングルを用いながら展開するのは流麗そのもののアニメーション。近年では「呪術廻戦」などに代表されるように、派手なエフェクトでケレン味とダイナミズムを演出する作品も少なくない中で純粋な手数で勝負している凄みは相当のものです。

 物語は「語り部たるエオウィンがローハンの歴史に残る戦いにまつわる伝承を語る」という形で進みます。エオウィンも「ロード・オブ・ザ・リング」で同役を演じたミランダ・オットーがそのまま続投しています。実は主人公であるヘラは原作では「ヘルム王には娘がいた」と一度だけ言及されるだけの名前も登場しない人物ですが、単に名前を得ただけでなく意思の強さと凛々しさを兼ね備えた非常に魅力的なキャラクター造形で物語を牽引します。
 古い伝承を語るという形だからか、ところどころ主要人物たちが帳尻が合わないというか不合理な行動を取ってしまうのが人によっては気になってしまうところかもしれません。そういうところも含めて私は結構楽しめてしまいましたが。

 技術的な高さに加えて様々な試みも結実しておりこれぞ日本アニメの本気、が観られる作品です。また同時に飽和状態に見える日本アニメも然るべき機会があればまだまだ進化の余地を残していることを教えてくれる作品でもあります。上映も終盤に差し掛かっていますが機会がありそうな方は是非捕まえていただきたいですね。

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よりにもよってこの三連休に入ると同時に夏場にやった溶連菌が再発して高熱を出してブッ倒れてしまい、連休中はひたすら寝て過ごす羽目になってしまいました。何よりアイドルユニットTHE ENCOREの最推し藤元ういさんのバースデーライブに行けなかったのがマジで辛い。何という不甲斐無さ。ぐぬぬ。

 こんばんは、小島@監督です。
 インフルエンザも大流行中です。皆さんマジで健康には気をつけましょう…

 さて、今回の映画は「正体」です。

 東村山の民家で一家三人が惨殺される事件が起きた。警察は現場にいた高校三年生の鏑木慶一(横浜流星)を犯人として逮捕し、その後死刑判決が下された。しかしある時鏑木は東京拘置所から決死の脱出を図り逃走した。死刑囚の脱走を許した不祥事を挽回すべく警察はかつて鏑木を逮捕した又貫(山田孝之)の指揮のもと一大捜査体制を敷く。だが鏑木の行方は杳として掴めずにいた。
 数ヶ月後、大阪の飯場で働く野々村和也(森本慎太郎)は工事中の事故で足を骨折してしまうが、会社からの保障を得られず途方に暮れていた。だが周囲から「ベンゾウ」と呼ばれる青年が豊富な法律の知識で助力を買って出、それがきっかけで2人は友人になる。しかし鏑木に報奨金がかけられたことをニュースで知った和也は、その人相から「ベンゾウ」が鏑木ではないかと疑い始めた…

 「余命10年」「新聞記者」など話題作・問題作を相次いで世に送り出す実力派・藤井道人監督。ドラマや配信作品も手掛けておりそれらも含めるとかなり多作の部類に入るフィルムメーカーですが、中でも近年抜群の相性でタッグを組んでいる俳優がいます。それが今作でも主演を務める横浜流星。今年のNHK大河ドラマ「べらぼう」でも主演に抜擢され躍進目覚ましい横浜流星の、恐らく現時点でのキャリアベストと言って良い珠玉の名演できるのがこの「正体」です。昨年11月公開作品ですが好評を得てロングランが続いており、おかげで私も先日ようやく鑑賞できました。
 
 物語は鏑木が潜伏する先々で出会った人との交流と共に鏑木を追う又貫の矜持と葛藤を描きつつ、更に発端となった事件の真相を解き明かしていくという非常に重層的な作りになっています。逃亡する囚人と追跡する刑事の確執というモチーフは、それこそ「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンとジャベール警部や「逃亡者」のリチャード・キンブル医師とジェラード保安官の関係性を思い起こさせ、古今より人気の題材とも言えますね。

 演出面で巧みだなと感じたのは物語が進むと潜伏先も変わって行きますが、「逃亡から〇〇日」のテロップ一つ出すのみでその過程をほぼ全く見せないところ。容姿も変えるわ職も得るわと大胆な立ち回りを見せる鏑木ですがそれをどう準備してそこに入り込んだかについては触れないことで映画の流れを疎外しないばかりか「年若いが頭が切れる」鏑木のキャラクター性を強調するのに成功しています。
 
 そして「若いが頭が切れる」しかし「頭が切れるが若い」、この相反する要素が同居する鏑木慶一を演じる横浜流星の演技がとにかく素晴らしい。容姿を変えつつ各地で潜む中で友人と呼べる者や信頼するに足る人物と出会い、世界が広がっていく喜びを感じていきながら、一方でいつ追っ手が来るかも分からない中で真相を追う焦燥に取り憑かれてもいるその際どさに見事なまでの説得力を持たせています。

 映画は最後までなかなか予断を許さず、サスペンスと人間ドラマが高次元で絡み合う極上の映画体験を用意してくれています。しかもこれほどの密度で物語を展開しながら120分ジャストという上映時間も私は高く評価したい。スクリーンで味わうに足る一本だと自信を持ってお薦めしたい。流石に回数は減ってきていますがまだまだ上映は続いています。まだの方は是非。

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