ちゅうカラぶろぐ


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昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 こういうこともあるのね、というべきか、今回コスプレ姿で初参加された「劇団員」な方々の中のお一方と歌会以前にTwitter経由でやり取りがありまして。当初は私がちゅうカラのスタッフと思われたようで「すいません、私は違うんですよ~」とかときちさんをご紹介するという流れに。毎回ブログをアップした後Twitterにタグ付けてツイートしてたのが目に留まり、ブログを読んでいただいたのが参加のきっかけになったご様子。長いことブログ書いてきましたがこういうことが起きるとは思ってもいず、結構嬉しかったですね。歌会も楽しんでいただいたようで何よりです。

 こんばんは、小島@監督です。
 それにしても連休の日本を直撃した台風19号の被害の大きさには言葉を失くします。進路があと30~40㎞西だったら、あるいは同じ規模の台風がまだ偏西風の弱い8月頃に来ていたら、自宅を直撃されたら恐らくただでは済まなかった。今回無事で済んだのはただ運が良かっただけだと背筋に冷たいものが走ります。罹災された方たちに一日も早く「日常」が戻ることを切にお祈り申し上げます。

 さて、今回の映画は「見えない目撃者」です。

 警察学校を首席で卒業し、警官としての将来を嘱望された女性・浜中なつめ(吉岡里帆)は、しかし自らの過失により交通事故を起こし同乗していた弟・大樹(松大航也)は死亡し、自身も視力を失った。
 3年後、警官の道を諦めたなつめは今だ失意と後悔の日々を過ごしていた。ある夜、なつめはスケボーと自動車の接触事故の現場に遭遇する。停止した車の中から後部座席の窓を叩く音と助けを求める若い女性の微かな声を聞くが、車はそのまま走り去ってしまった。誘拐事件を疑うなつめは警察に通報するが担当した警官・木村(田口トモロヲ)と吉野(大倉孝二)は目の見えないなつめの証言に半信半疑だ。そんな折、スケボーの青年が特定される。なつめはその青年・国崎春馬(高杉真宙)のもとを訪ね、協力を願い出るのだが…

 これもシネコンが普及したからできるやり方ではあるのですが、年に何本か「自分の空き時間と上手くハマってたから」という理由で特に予備知識も期待も無いまま何となく観る映画、というのがあります。この「見えない目撃者」もそうしてたまたま観た1本だったのですが、そういう映画が想定外に面白いと何だか得した気分になります。
 原作は韓国で2011年に製作された映画「ブラインド」、2015年には韓国版と同じ監督アン・サンフンの手により中国でリメイクもされた、その日本版になります。アン・サンフンから監督を引き継いだのは「重力ピエロ」(2009年)「リトル・フォレスト」(2014~15年)などを手掛け独特の映像世界に定評のある森淳一が担っています。アジア圏のサスペンスやスリラーは韓国が独壇場かと思っていましたが、日本もなかなか負けていません。原典へのリスペクトは残しつつ日本ならではのオリジナリティを加味し見事な出来栄えの一本になっています。

 「事件の目撃者が視覚障碍者である」というアイディアが「目を引く」この作品、とにかくキャラクターの立たせ方や物語の構図の組み立て方が非常に巧い逸品です。失意と後悔の中で厭世的に生きてきたなつめと他人にも自身の将来にも無関心な高校生春馬、事件が二人を結び付け急作りの相棒として動き始め、一方なつめの熱意に何かを感じた木村とそれに引きずられる形で事件に関わることになる吉野という警官コンビ、2つのタッグが事件の真相を追う構図と、最初の段階で誘拐事件の可能性を見せ、被害者生存率が急低下する「72時間」という時間を一つのタイムリミットとして明示し緊張感を高めることに成功しています。「事件」の被害者にも感情移入しやすいトピックを盛り込んでいるのも技ありと言えるでしょう。
 また、「相棒」という点ではなつめとずっと付かず離れずの盲導犬・パルの存在も大きく、全編にわたって活躍する彼の忠義者ぶりが良いアクセントになっています。
 ここに自身の事故により家族もキャリアも視力も失ったなつめの喪失と再生の物語が絡み、緊張感の中にエモーショナルな輝きを放つ作品になっています。非常に難しい役どころだったに違いありませんが、なつめを演じた吉岡里帆の演技が絶品と言ってよく、彼女の代表作になりそうです。

 映像的にも目を見張るものがあり、特に作中度々登場する「視覚障碍者の視界を視覚化する」シーンは注目すべきショットと言えるでしょう。スマホを利用したトリッキーなチェイスなど、物語の設定を活かしたアイディアがふんだんに盛り込まれているのも楽しいところ。ただ一方でR-15指定だけありかなりグロテスクなシーンも(悪趣味にならないぎりぎりのラインを保ってはいるが)散見されるため、そういうのが苦手な方には若干注意が必要かと思いますが、そうでなければ割とどなたにもお薦めしやすい一本です。公開は既に終盤に差し掛かっていますが、このパワーのある作品を是非多くの方に味わっていただきたいですね。
 

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