今月から始まった「機動戦士ガンダム水星の魔女」、まだ何もかも断片しか見せていないのにキャラクターとストーリーのフックが巧く序盤から引き込まれるよう。ちょっと「少女革命ウテナ」や「新機動戦記ガンダムW」を彷彿とさせるノリも楽しい。
こんばんは、小島@監督です。
シリーズ構成とメインライターが「コードギアス」の大河内一楼なので先々油断できないですが、その先読みのできなさも含めて楽しませてもらえそうです。
さて、今回の映画は「LAMB/ラム」です。
アイスランドの人里離れた山間の土地に暮らすマリア(ノオミ・ラパス)とイングヴァル(ヒルミル・スナイル・グドゥナソン)の羊飼いの夫婦。2人は子供を亡くして悲しみに暮れていた。
ある日、2人は1頭の羊の出産に立ち会うが、生まれてきた子羊の異様な姿に驚愕する。しかしその容貌に愛らしさを覚えた2人は「それ」を「アダ」と名付け自分たちの子供のように育てることに決めるのだった。
尖った作風の映画を製作・配給する会社として着実に知名度を上げているインディペンデント系企業「A24」が、北欧からまたユニークな映画を発信してきました。今年も様々なタイプの映画が公開されていますが、その中でもかなり特異な部類に入る一本です。
白夜に彩られた荒涼とした山間の風景はさながらルネ・マグリットの抽象画のようでどこまでも広いのにどこか閉鎖的に映りそこから場所を移すことは無く、登場人物も数えるほど。極めて限定的な物語空間で展開するのはホラーともファンタジーともつかないどこか寓話性の強いストーリーです。
説明的なセリフもほとんどないままに淡々と物語が進むため、展開する事象の多くは観客の想像性に委ねられており、知らず知らずのうちに観客は「檻」とも「澱」ともつかぬ物語の様相に絡めとられ、先読みのできない不穏な空気感に煽られていくのです。
物語がいくらかなりともその輪郭を確かなものにし始めるのは、中盤イングヴァルの弟ペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)がふらりと二人の農場にやってきてから。ペートゥルはマリアとイングヴァル、そしてアダで完結していた空間に波紋と亀裂をもたらす存在であり、それに対してマリアとイングヴァルがどう対したかが物語の行く末を決定づけます。
登場人物の人名や物語のキーである存在が「羊」であることなどにキリスト教的モチーフを見出すことはたやすく、物語に内在する不純物の少なさが寓話というよりむしろ神話性さえ内包していると言える1本です。
この映画を手掛けたのは「ローグ・ワン」の特殊効果などを担当したヴァルディマル・ヨハンソン。なんとこれが長編映画デビュー作。初作品からこのオリジナリティ。いきなり監督自身の名刺にできる映画を作り上げたと言って間違いなく、今後のフィルモグラフィーが楽しみです。
観客に羊のごとく反芻を促さずにはおかず、癖が強すぎて合わない人も多いでしょうがそれ故に虜になる人もきっといるであろう怪作です。これは悪夢なのか福音なのか。
しかし「ミッドサマー」と言い「スイスアーミー・マン」と言いA24のエッジの効いたセンスは面白い。「ノマドランド」や「スリービルボード」を発信したサーチライト・ピクチャーズのように会社の名前で選べるところが一つ増えたようです。
こんばんは、小島@監督です。
シリーズ構成とメインライターが「コードギアス」の大河内一楼なので先々油断できないですが、その先読みのできなさも含めて楽しませてもらえそうです。
さて、今回の映画は「LAMB/ラム」です。
アイスランドの人里離れた山間の土地に暮らすマリア(ノオミ・ラパス)とイングヴァル(ヒルミル・スナイル・グドゥナソン)の羊飼いの夫婦。2人は子供を亡くして悲しみに暮れていた。
ある日、2人は1頭の羊の出産に立ち会うが、生まれてきた子羊の異様な姿に驚愕する。しかしその容貌に愛らしさを覚えた2人は「それ」を「アダ」と名付け自分たちの子供のように育てることに決めるのだった。
尖った作風の映画を製作・配給する会社として着実に知名度を上げているインディペンデント系企業「A24」が、北欧からまたユニークな映画を発信してきました。今年も様々なタイプの映画が公開されていますが、その中でもかなり特異な部類に入る一本です。
白夜に彩られた荒涼とした山間の風景はさながらルネ・マグリットの抽象画のようでどこまでも広いのにどこか閉鎖的に映りそこから場所を移すことは無く、登場人物も数えるほど。極めて限定的な物語空間で展開するのはホラーともファンタジーともつかないどこか寓話性の強いストーリーです。
説明的なセリフもほとんどないままに淡々と物語が進むため、展開する事象の多くは観客の想像性に委ねられており、知らず知らずのうちに観客は「檻」とも「澱」ともつかぬ物語の様相に絡めとられ、先読みのできない不穏な空気感に煽られていくのです。
物語がいくらかなりともその輪郭を確かなものにし始めるのは、中盤イングヴァルの弟ペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)がふらりと二人の農場にやってきてから。ペートゥルはマリアとイングヴァル、そしてアダで完結していた空間に波紋と亀裂をもたらす存在であり、それに対してマリアとイングヴァルがどう対したかが物語の行く末を決定づけます。
登場人物の人名や物語のキーである存在が「羊」であることなどにキリスト教的モチーフを見出すことはたやすく、物語に内在する不純物の少なさが寓話というよりむしろ神話性さえ内包していると言える1本です。
この映画を手掛けたのは「ローグ・ワン」の特殊効果などを担当したヴァルディマル・ヨハンソン。なんとこれが長編映画デビュー作。初作品からこのオリジナリティ。いきなり監督自身の名刺にできる映画を作り上げたと言って間違いなく、今後のフィルモグラフィーが楽しみです。
観客に羊のごとく反芻を促さずにはおかず、癖が強すぎて合わない人も多いでしょうがそれ故に虜になる人もきっといるであろう怪作です。これは悪夢なのか福音なのか。
しかし「ミッドサマー」と言い「スイスアーミー・マン」と言いA24のエッジの効いたセンスは面白い。「ノマドランド」や「スリービルボード」を発信したサーチライト・ピクチャーズのように会社の名前で選べるところが一つ増えたようです。
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