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ちゅうカラぶろぐ


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いろいろと思うところあって、先日脳ドックを受診してきました。人生初のMRIです。約20分間、仰向けに寝たまま体勢を変えられないというのはなかなかきつく、仕方ないから深呼吸を繰り返していたら耳元で絶え間なく機械の作動音がしているのに段々眠くなってしまいました(笑)
結果は脳自体には問題無く、ただ頸動脈に1.5㎜ほどの小さな隆起が認められるとのこと。動脈瘤かどうかは即断できないそうなので経過観察扱い。また1年後に受診して欲しいとのコメントでした。
 取り敢えず差し迫った案件は無いようでひと安心…かな。

 こんばんは、小島@監督です。
 まあ、後はとにかく体脂肪を減らせって話ですな(笑)

 さて、今回の映画は「ブレッドウィナー」です。

 タリバン政権下のアフガニスタン、カブール。11歳の少女パヴァーナ(声・サーラ・チャウディリー)は戦争で足を失った父、体の弱い母、姉そして幼い弟と暮らしている。だがある日、パヴァーナが父の行商を手伝っていると理不尽な因縁を付けられ「イスラムの敵」として刑務所へ連行されてしまった。その日を境に家族の生活は一変する。タリバン政権下では女性一人の外出も女性だけでの買い物も禁じられており、その日の水や食事にも事欠くように。何とか刑務所へ嘆願に行こうとした母は街を出ることもできず兵士に鞭打たれてしまう。どうにかしたいパヴァーナは自分の髪を短く切って「少年」として街へ稼ぎに出るのだが…

 「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」「ブレンダンとケルズの秘密」などで近年注目を集めるアイルランドのアニメスタジオ「カートゥーン・サルーン」、その設立メンバーの一人である女性アニメーター・ノラ・トゥーミーが長編初監督作品の原作として選んだのはカナダの作家・平和活動家のデボラ・エリスが2000年に発表した「生きのびるために」。パキスタンやアフガニスタン難民に取材を重ね、女性や子供がいかにして貧困や苦難と向き合ってきたかを物語にして綴ったこの1冊は日本を含め世界各国で翻訳されました。映画化の実現には俳優でありながら国連難民高等弁務官事務所で特使も務めるアンジェリーナ・ジョリーもエグゼクティブ・プロデューサーとしてサポートしたそうです。
 作品自体は2017年に製作され、翌2018年のアヌシー国際アニメ映画祭などで高い評価を受けるなど評判は既にその頃から伝え聞いていたのですが、題材がヘビーすぎるのか、なかなか日本公開されないのを今か今かと待ち望んでいた作品です。
  
 3年近く待ち望んだ期待を裏切らない、非常に重厚で熱い作品です。
 「ブレッドウィナー」とは「働き手」や「稼ぎ頭」を意味する言葉。身体的な性差が顕在化しにくい年頃だから可能な手段ともいえますが、少年となったパヴァーナは極端な男尊女卑の世界で男が生きる世界を垣間見ます。更には同じように男装して生きる少女ショーツィア(声・ソーマ・チハヤー)と出会い、男として生きる術を学んでいきます。何よりパヴァーナには元教師であった父から教わった知識と想像力があります。物語を作って家族やショーツィアに聞かせることを僅かな楽しみの一つとするパヴァーナ。彼女の語る物語が自身の冒険とシンクロしていく構成のダイナミズムが映画をより味わい深いものにしています。

 印象的なシーンの多い作品ですが中でも際立っているのはパヴァーナが文字の読めないタリバン兵ラザク(声・カワ・アダ)から家族からの手紙の代読を頼まれたシーン。物語的にも終盤への重要な伏線となるシーンですが、父を連れ去ったタリバン兵をただの粗野で残酷な者たちとしか見ていなかったパヴァーナに人間の複雑さや多面性を感じさせるシーンにもなっており、その精神的成長を大きく促すきっかけになります。また、少なからぬタリバン兵が「イスラム原理主義者と言いながら実はコーランを読んだこともない」という事実を暗に見せ、単にジェンダー的な問題だけでなく教育に接する機会の重要性という更なるテーマを浮き彫りにします。

 政権による抑圧がもたらしたパヴァーナの一家の危機は、終盤更に巨大な力がもたらすうねりの中に飲み込まれていきます。その終着点は決して安易なハッピーエンドではありません。ただ成長したパヴァーナの瞳に一条の希望を見出し、観客に重厚な余韻をもたらすのみです。 
 近年、「この世界の片隅に」や「エセルとアーネスト」など過酷な戦時下で生きる名も無き市井の人を描くアニメーションの秀作が世界各国で生まれています。これもまたそういう潮流の中にある作品の一つといえるでしょう。ようやく劇場公開されたとはいえその規模は限定的で決して気軽に観られる環境にはないですが、真にパワーのある作品なので是非、多くの方にご覧になって頂きたいですね。

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