先週末、目に留まった方はお知りになったと思いますが、香港映画の雄レイモンド・チョウ氏がお亡くなりに。1960年代に黄金時代を築いたショウ・ブラザーズに勤めたのち1970年にゴールデン・ハーベスト社を設立し、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、サモ・ハンなど日本でも名の知れたスターを次々と輩出していきました。ある意味でこの方がいなければアジア映画は現在とは少し違う姿になっていたことでしょう。既に80を超えていたので大往生という所ですが、また惜しい方が一人世を去っていきました。
こんばんは、小島@監督です。
たまには久しぶりに「ポリス・ストーリー」とか「ドラゴン危機一髪」でも観てみるとしましょうか。
さて、今回の映画は「若おかみは小学生」です。
両親を事故で亡くし、祖母・峰子(声・一龍斎春水)の経営する旅館「春の屋」で暮らすことになった小学6年生の関織子こと「おっこ」(声・小林星蘭)。旅館に到着するなりおっこに少年が声をかけた。自身を「ウリ坊」(声・松田颯水)と名乗る少年は春の屋に住み着く幽霊だった。ウリ坊はおっこに跡を継げる者が一人だけになってしまった春の屋の若おかみとなって修業していつか旅館を継いでほしいと懇願する。その熱意に負けたおっこは祖母の指導のもと若おかみとして修業を始めることになるのだが。
児童文学を原作とし絵柄も子供向けではありながら、9月に公開されるやその完成度の高さが口コミで広まりロングランとなっている評判のアニメ映画を先日ようやく観ることが出来ました。脚本に「けいおん!」や「リズと青い鳥」など京都アニメーション作品のシナリオを多く手掛け定評のある吉田玲子、監督には寡作ながら「茄子 アンダルシアの夏」などが国内外で高い評価を得る高坂希太郎が務めています。もうこの布陣ってだけで只者ではありません。実はアヌシー国際アニメーション映画祭でもコンペティション部門に正式招待されるなど既に海外でも好評を得ています。
観る前はてっきり成り行きで若おかみになったおっこの苦労話を中心に描く、いわゆる「朝の連続テレビ小説」的な話かと思っていたのですが、実際はかなり違いました。児童文学原作らしい個性的なキャラクター達は実に楽しく(中でも水樹奈々演じる、ある意味でおっこのライバルとなる大旅館・秋好旅館の跡取り娘真月、通称「ピンフリ」ちゃんのパワフルなキャラクターは出色)、その躍動を観ているだけでも充分に楽しいのですが、描かれる物語は大人が「子供の世界」というものに真剣に向き合った、そんな姿勢の強さを感じさせる骨太さを持っていました。
ウリ坊を始めおっこにだけ見える幽霊たちという幻想的な部分と少しずつ春の屋の若おかみとして成長する部分を行きつ戻りつしながらその境界線で描かれるのは両親の死に対してまだ折り合いがついていないおっこがその事実とどう向き合っていくか、そこに物語の核が置かれています。季節の移り変わりを要所に挿し挟みながらおよそ1年間のおっこの若おかみとしての日々を描く物語の中で、3組の宿泊客がクローズアップされて登場します。それぞれがおっこの心の再生への一つのハードルとして現れるその客たちとのエピソードは、映画の中で決して大仰ではなく抑制を利かせ静かに、しかし丹念に積み上げられていきラストで大きく爆発します。正直私の涙腺は決壊してボロ泣きでした。鑑賞時たまたま私の前列に座っていらっしゃったご夫婦らしい2人組の方も終映後しばらく立ち上がれずに目元をハンカチで拭っていたところが目に留まったので恐らくストライクだったに違いありません。
物語を下支えする作画の方も背景美術や服装、小物などのデザインに至るまで隅々にまで神経の行き届いた、まさに「細部に神宿る」映像を楽しむことが出来、極めてレベルの高い作品となっています。
絵柄が完全に子供向けのそれなのでノーマークだった方も多いに違いない、思いがけない所から現れた傑作。観ればきっとこんな旅館に泊まってみたくなること請け合いの珠玉の逸品です。封切日から公開されていた館では既に終盤に差し掛かっていますが、評判の高さを受けてこれから上映が始まるところもあり、是非この素敵な作品を多くの方にご覧になっていただきたいですね。
こんばんは、小島@監督です。
たまには久しぶりに「ポリス・ストーリー」とか「ドラゴン危機一髪」でも観てみるとしましょうか。
さて、今回の映画は「若おかみは小学生」です。
両親を事故で亡くし、祖母・峰子(声・一龍斎春水)の経営する旅館「春の屋」で暮らすことになった小学6年生の関織子こと「おっこ」(声・小林星蘭)。旅館に到着するなりおっこに少年が声をかけた。自身を「ウリ坊」(声・松田颯水)と名乗る少年は春の屋に住み着く幽霊だった。ウリ坊はおっこに跡を継げる者が一人だけになってしまった春の屋の若おかみとなって修業していつか旅館を継いでほしいと懇願する。その熱意に負けたおっこは祖母の指導のもと若おかみとして修業を始めることになるのだが。
児童文学を原作とし絵柄も子供向けではありながら、9月に公開されるやその完成度の高さが口コミで広まりロングランとなっている評判のアニメ映画を先日ようやく観ることが出来ました。脚本に「けいおん!」や「リズと青い鳥」など京都アニメーション作品のシナリオを多く手掛け定評のある吉田玲子、監督には寡作ながら「茄子 アンダルシアの夏」などが国内外で高い評価を得る高坂希太郎が務めています。もうこの布陣ってだけで只者ではありません。実はアヌシー国際アニメーション映画祭でもコンペティション部門に正式招待されるなど既に海外でも好評を得ています。
観る前はてっきり成り行きで若おかみになったおっこの苦労話を中心に描く、いわゆる「朝の連続テレビ小説」的な話かと思っていたのですが、実際はかなり違いました。児童文学原作らしい個性的なキャラクター達は実に楽しく(中でも水樹奈々演じる、ある意味でおっこのライバルとなる大旅館・秋好旅館の跡取り娘真月、通称「ピンフリ」ちゃんのパワフルなキャラクターは出色)、その躍動を観ているだけでも充分に楽しいのですが、描かれる物語は大人が「子供の世界」というものに真剣に向き合った、そんな姿勢の強さを感じさせる骨太さを持っていました。
ウリ坊を始めおっこにだけ見える幽霊たちという幻想的な部分と少しずつ春の屋の若おかみとして成長する部分を行きつ戻りつしながらその境界線で描かれるのは両親の死に対してまだ折り合いがついていないおっこがその事実とどう向き合っていくか、そこに物語の核が置かれています。季節の移り変わりを要所に挿し挟みながらおよそ1年間のおっこの若おかみとしての日々を描く物語の中で、3組の宿泊客がクローズアップされて登場します。それぞれがおっこの心の再生への一つのハードルとして現れるその客たちとのエピソードは、映画の中で決して大仰ではなく抑制を利かせ静かに、しかし丹念に積み上げられていきラストで大きく爆発します。正直私の涙腺は決壊してボロ泣きでした。鑑賞時たまたま私の前列に座っていらっしゃったご夫婦らしい2人組の方も終映後しばらく立ち上がれずに目元をハンカチで拭っていたところが目に留まったので恐らくストライクだったに違いありません。
物語を下支えする作画の方も背景美術や服装、小物などのデザインに至るまで隅々にまで神経の行き届いた、まさに「細部に神宿る」映像を楽しむことが出来、極めてレベルの高い作品となっています。
絵柄が完全に子供向けのそれなのでノーマークだった方も多いに違いない、思いがけない所から現れた傑作。観ればきっとこんな旅館に泊まってみたくなること請け合いの珠玉の逸品です。封切日から公開されていた館では既に終盤に差し掛かっていますが、評判の高さを受けてこれから上映が始まるところもあり、是非この素敵な作品を多くの方にご覧になっていただきたいですね。
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