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ちゅうカラぶろぐ


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いよいよ近づいてきた夏の暑さ対策として自室の窓にすだれを掛けてみたのですが、そうしたら驚いたことにアシナガバチに巣を作られました。幸いできて1日2日くらいのところで気づけたためまだ小さく、早めに手が打てたので事なきを得ましたが、油断できないぜ大自然。

 こんばんは、小島@監督です。
 あまりに窓の真ん中に作られてしまったので駆除せざるを得ませんでしたが、実のところアシナガバチなら性格も大人しいですし蛾が寄り付かなくなるので軒先に出来るくらいなら放っておいてもそんなに問題は無いんですけどね。

 さて、今回の映画は「大いなる幻影」です。

 第一次大戦のさなか、フランス飛行隊のマレシャル中尉(ジャン・ギャバン)とド・ボアルデュー大尉(ピエール・フレネー)はドイツ軍に撃墜され、捕虜となってしまう。2人は度々収容所からの脱走を企てるがうまく行かない。何度失敗しても諦めない2人に対し、ドイツ軍はかつての古城に造られた収容所へと連行した。脱走不可能とされるその収容所の所長を務めるのはかつて2人を撃墜した貴族出身のラウフェンシュタイン大尉(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)。同じ貴族階級出身のド・ボアルデューとラウフェンシュタインには友情が芽生えるも、マレシャルの脱出計画は着々と進行していく…

 1937年にフランスで製作され、公開時にはルーズベルト大統領に絶賛され、ゲッベルスには敵対視されるなどの逸話を持ち、オールタイムベストなどを問えば必ずその名が挙がる不朽の名作。そのデジタルレストアバージョンが現在各地のミニシアターで順次公開中です。自分としても一度は観ておかねばと思っていた作品を鑑賞する機会を遂に得ることが出来ました。

 開幕してすぐ見受けられる、検閲はあるけどチェックは緩く手紙や小包などの郵便物がそのまま届く上に酒保(兵営地での売店)で買い物もできる捕虜収容所の大らかな雰囲気にちょっと驚いてしまいます。監督ジャン・ルノワールはフランス映画におけるリアリズムを確立した人物であるため、決してこの雰囲気もファンタジーではなかったかもしれません。製作から僅か数年後には世界大戦が再び勃発するため、その流れの中でより冷酷なものになっていったのでしょう。
 それでも捕虜はいつ解放されるか分からないゆえに常に脱走を企て、歩哨はそれに目を光らせます。そこに独特の緊張感が宿る作品です。また、収容所からの脱走劇を主軸に据えながらも収容された捕虜たちの国籍や人種を越えた交流やド・ボアルデューとラウフェンシュタインの敵同士ながらも相手への敬意を無くさない関係性など様々なドラマが重層的に展開し複雑で芳醇な物語が紡がれます。作中語られる関係性は多いですが、全てが対立や敵がい心から融和へと向かっていこうとする辺りにどこか「願い」のようなものを感じさせずにはおきません。

 この映画、作品自体ももちろん素晴らしいですが、作品にまつわる物語もまた劇的です。公開後、多大な反響を得るも1941年にフランスがドイツに占領されてからは上映が禁止に。戦後再上映を試みるも検閲でカットされたシーンも多く、戦災でネガも紛失してしまいルノワール監督が散逸したフィルムを集め再編集して完全な形での再公開にこぎつけたのは1958年のこと。ファシズムが台頭していた国ではとことん嫌われていたようで、日本でもフランス公開から間もなくフィルムが輸入されてきており試写では絶賛されたものの軍部からの圧力がかかり公開中止に追い込まれ、初上映は1949年と戦後になってから。
 ところでデジタルレストア版の原盤となったフィルムは現在フランスの映画保存施設「シネマテーク・フランセーズ」に保管されているものですが、それはルノワール戦後再編集されたものではなく37年当時のオリジナルフィルムが保管されています。ではそれはどこからもたらされたのか?それをは意外にもソ連。ナチス占領下のパリ、ゲッベルスのフィルム廃棄命令を無視したナチス高官(帝国映画院所長を務めたフランク・ヘンゼルなど諸説ある)の手によりベルリンへ密かに送られ、ベルリン陥落後は占領したソ連軍によってゴスフィルモフォンド(ソ連国立映画保存所)へ運ばれ、60年代にフランスへ送還されたものだそうです。

 時代の荒波に揉まれながらもなお様々な人の想いとささやかな抵抗によって消え去ることなく今も観ることが出来る、まさしく時を越えた傑作です。映画館で鑑賞できる機会は限られていますが、DVDでも配信でも構いません、多くの人の心を突き動かし繋いできたその「力」を是非一度ご覧になってみてください。
 


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DATE : 2018/06/05(Tue)10:46:12 EDIT
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