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ちゅうカラぶろぐ


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題材が自分の仕事に直結する内容なのでNHKの朝ドラ「マッサン」を欠かさず観ています。
正直朝ドラは毎日追いかけるのが大変なので「あまちゃん」や「ゲゲゲの女房」のようにどんだけムーブメントを巻き起こそうがスルーしていたのですが、今回はさすがに逃げるワケにいきません。

ニッカウィスキーの創業者・竹鶴政孝(作中では亀山正孝)と、その妻リタ(作中ではエリー)の生涯を描くドラマで、大正時代にはまだ珍しかった国際結婚と日本最初の国産ウィスキーの完成という前代未聞の事業へ挑む苦闘や冒険が描かれます。

いまのところまだウィスキー研究も緒に就いたばかりで突如異人さんが混ざり込んでのホームドラマ的要素が強いですが、日本の広告史に多大な影響を与えた「赤玉ポートワイン」(作中では太陽ワイン)のヌードポスター(下図参照) のエピソードを盛り込んだり、

なかなか業界史物としても興味深い感じになっています。

こんばんは、小島@監督です。
でもやっぱり面白くても毎日観るのは結構しんどい(苦笑)

さて、今回はかなりユニークな映画をご紹介。「ローマ環状線、巡りゆく人生たち」です。

ローマの外周を囲む全長約70kmの環状高速道路GRA。その周辺には旅行者が知りえない名も無き人々の暮らしがある。
ブルジョアを装う没落貴族、車上生活を営むニューハーフ、激務の合間を縫い置いた母親の面倒を見る救急隊員、後継者がいないことを嘆く鰻漁師、集合住宅に住みあてどないおしゃべりに興じる老紳士とその娘、木の中の「音」を研究する植物学者…これは、かれらの生活の点描をつづったドキュメンタリー。

一応「ドキュメンタリー」というカテゴリーに属する映画ですが、その枠組みの中に納まる作品ではありません。
ドキュメンタリーとは概してメッセージ性、あるいは記録性の強い作品、いわば作家の意志が前面に出る作品になるものなのですが、この作品はそういうものとは大きく一線を画しています。
根本的に、まず被写体の対象になった人物のインタビュー映像が無い時点で他とは大きく異なっています。
場所を変えながら次々と登場する人々は、しかし一つ一つが何かの繋がりがあるわけでもなく、一つのエピソードが作品の中で何らかの解決を見るでもなく、さながら散文詩のような点描が続きます。
まるで2時間足らずの映画の中に人の生き死になど描けようハズも無いと言わんばかりに全ては始まりでも終わりでもないエピソードばかりです。
しかも淡々とヤマもオチも無いまま並べられるので、さしもの私ですら中盤は眠気との戦いになりました(苦笑)

しかし、そう言う作品であるにも関わらず何故か観終わると人と語ってみたくなったり、もう一遍観返してみたくなる不思議。
ちょっと上手く表現しにくい得がたい魅力がこの映画には存在します。
そもそもどうやってこの被写体の対象である人物の自然な日常的振る舞いをカメラに収める事が出来たのか不思議でならない映像がポンポン出てくるのにも驚きますし、説明的な描写を一切省きながらもその人物の「核」のようなものを見つけ出している監督の確固たる観察眼、批評眼にも驚かされます。
被写体にどこまでも近づきながら「客観性」を失わないその映像、だからというだけではないでしょうが、この映画はヴェネチア国際映画祭で審査員の絶賛を浴び、金獅子賞に輝きました。

おそらく相当に、いや極端に人を選ぶ作品です。一生の宝物になる人がいる一方で、爆睡して一瞬たりとも記憶に残らない人もいるに違いありません。
だからこそ色んな人に観ていただきたい作品、という感じがします。もしどこかでこの映画に触れる機会があったなら、その時は是非ご覧になってみてください。

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