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ちゅうカラぶろぐ


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サンライズのロボットアニメの名作たちに新たな解釈を加えて新作のアニメクリップを作る実験動画プロジェクト、その新作として「AURA BATTLER DUNBINE SIDE R」が先日公開されました。

https://youtu.be/l7DwtP3nkq8?si=1aJhiwVTpoFuVLQt

ところがこれがなかなか批判の嵐(苦笑)。「聖戦士ダンバイン」を直撃していない若いスタッフ中心で製作されたそうで、私も動画を観たのですが綺麗に仕上がっている一方で「観ていた人ならそこには着目しない」ところに着目している、悪く言えば勘所を外しているため往時のファンには受け入れ難いのは分かります。
 近年多く作られているリメイク作品、概ねどれも良く出来上がっていて見た目はちゃんとしているのですがそれだけに留まっているようなものが多いように思います。未見の方に薦めるにはそれでも充分とは言え今改めて作るならもう一歩踏み込んで欲しい気もするのですが。

 こんばんは、小島@監督です。
 そうは言ってもこういう試みは臆せずバンバンやって欲しいですね。「サンライズロボット研究所」のサイトを見るとまだ結構準備しているようなので今後も楽しみ。

 さて、今回の映画は「ヴェノム:ザ・ラストダンス」です。

 ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)と地球外生命体シンビオートが寄生して生まれた「ヴェノム」(トム・ハーディ/2役)は、強敵カーネイジとの戦いに勝利したもののその結果として政府機関から追われる身となってしまった。メキシコに逃亡し身を潜めていた彼らだったが、シンビオートの創造主たる邪神ヌル(アンディ・サーキス)により差し向けられたモンスター・ゼノファージにより新たな脅威にさらされることになる。

 「スパイダーマン」に登場するキャラクターたちで構成する「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」と呼称される作品群、その中でも「ヴェノム」は最大のヒット作となりました。グロテスクな風貌と残虐性がインパクトを与えた一方で、二心一体というユニークさと、基本的にネガティブな性格のエディと何だかんだ甲斐甲斐しく世話を焼く陽気なヴェノムの奇妙な共存関係が物語に彩りをもたらし多くのファンを獲得しました。そんなシリーズの第3作が公開。凸凹コンビの関係はいよいよクライマックスを迎えます。
 1作目のルーベン・フライシャー、2作目のアンディ・サーキスから受け継ぎ今作を監督したのはケリー・マーセル。これが初監督作品になりますが、過去2作の脚本を手掛けた人物で今作でもシナリオを兼任しています。

 1作目では出逢いとコンビ結成を描き、2作目では倦怠期に突入していたエディとヴェノムは、今作ではさながら新婚旅行のような珍道中を繰り広げます。物語のスケールが極端に大きくなっているというのに一番時間を割いて描いているのが二人の逃避行というのがいかにもこのシリーズらしいというか(笑)。
 二人(と言ってもどちらもトム・ハーディの二人羽織ですが)の軽妙な掛け合いが相変わらず楽しい一方で、今作初登場の新キャラがさも前からいたような顔で出てきたり、そのくせ物語上の扱いが雑だったり、どうやっても時間内に収まるはずが無かろうというくらいに風呂敷が広がってしまい結局ろくに畳まれもしないなど欠点も多く、完結編を謳いながらいささか据わりの悪さが否めません。
 とは言えそれで変に長尺にしたりせず、3作すべてを上映時間120分以内に収めているのは私としてはかなりの高ポイント。プログラムピクチャーとしての軽やかさを最後まで保ったまま駆け抜けたのは特筆すべきところではないかと思います。ジャンクなものを楽しみたい時にどこから観てもちゃんとジャンクなものが出てくるというのはこの規模の作品では意外と難しい。

 完結編と言いつつ続編への含みというか色気を残しているのもご愛嬌と言ったところ。不満はあれど「こういうので良いんだよ」度合いの強さに何だかんだアリに思えてしまう一本。シリーズを楽しんだ方ならやっぱりマストで押さえておこうぜ!吹替も鉄板の布陣で楽しいですぞ。

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本来なら今回のブログは土日に開催されるはずだった「アイドルマスターミリオンライブ11thLIVE」のイベントレポートを書く気満々だったのですが、あろうことか開演まで24時間切っているところで延期という事態に。出演者の複数に新型コロナウイルスの感染が確認されてステージのクオリティが確保できなくなった、というのがその理由で、新型コロナが過去のものになっていないことをつきつけられてしまいました。
 しかしその逆境にただへこたれたりしないのがアイマス、特にミリマスP。直前過ぎて今更ホテルや飛行機、新幹線のチケットもキャンセルもできないからと続々と名古屋へ集結し、ライブに合わせて名古屋各地の施設や飲食店で実施されているコラボイベント「でらます」を巡ってコラボ商品を完売させたり、何も無いのを承知で会場に行って同じように集まったPたちと交流したり、あるいはたまたま日程が重なっている小倉唯やオーイシマサヨシのライブに行ったりと力尽くで滞在時間を満喫して行ったようです。
 この逞しさがSNSなどでもちょっと評判になっていたようですね。ミリオンライブは止まらねぇぜ。

 こんばんは、小島@監督です。
 私?私は映画観に行ってました。会場であるAICHI SKY EXPOまで足を運ばなかったことをちょっぴり後悔してます(笑)

 さて、今回の映画はそうして観た一本、「風都探偵:仮面ライダースカルの肖像」です。

 自身の無くした記憶と向き合おうとするときめ(声・関根明良)の思いに応えるため、左翔太郎(声・細谷佳正)は過去を語り始める。それは翔太郎が「おやっさん」と呼び師と仰いだ男・鳴海荘吉(声・津田健次郎)との出会いと別れの物語であり、相棒フィリップ(声・内山昂輝)といかにして出会い「W」になるに至ったかの物語でもあった。

 2009年に放送されてからもう15年になりますが未だ根強い人気を誇る「仮面ライダーW」、2017年には続編となるコミック「風都探偵」の連載が始まり2022年に序盤のエピソードがTVアニメ化されました。今作はそのTVアニメの続編という位置付けですが単にそれだけに留まらない顔を持つ作品に仕上がっています。

 物語は2010年公開の映画「オーズ&W feat.スカル」の一編「メッセージforダブル」の後の時点から始まりやがて2009年公開の「W&ディケイド」の一編「ビギンズナイト」へと繋がって行きます。「風都探偵」の劇場版でかつての「仮面ライダーW」の映画2本を結びつけるという趣向がなかなか小憎らしい。
 中でも驚きは後半。事実上「ビギンズナイト」をアニメでフルリメイクして語り直す格好になっています。もともとの映画が濃密というより短い時間でぎゅうぎゅうに詰め込むような印象の作品でしたが特に人物描写で足りていない部分を補完し、さらには当時の映画にもコミックにも無いエピソードを追加し、ファンサービス的なところも含めて見事にアップグレードした作品に仕上がっています。
 恐らく監督椛島洋介のこだわりではないかと思うのですが、アクションシークエンスがアニメというよりちゃんと特撮っぽく見せているところもポイントで端的に言うと原作である「仮面ライダーW」が好きすぎる人が作っているのが良く分かります。単体で非常に収まりが良いのも嬉しいところでここから「仮面ライダーW」の世界に足を踏み入れても問題の無い敷居の低さがあります。はっきり言ってとても人に薦めやすい。

 唯一のウィークポイントと言えば津田健次郎始め声優陣の演技は素晴らしいものの、桐山漣、菅田将暉、吉川晃司らの顔がチラついてしまうことでしょうか。これはさすがにもうどうしようもないところかも。
 とは言えこの懐かしい顔に再会できたような気分は悪くない。もう一度「仮面ライダーW」を改めて見直したくなってるのでこれはもうこの映画を作った人たちの勝ちですね。

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いやまさかあそこから4連勝するとは。先週「第6戦無くない?」とか言ってすんませんした!何って日本シリーズの話です。DeNAが下剋上を果たし26年ぶりの日本一に。おめでとうございます!横浜スタジアムの現地まで応援に行った私の同僚も感無量で恐らくまだ余韻に浸っていることでしょう。

 こんばんは、小島@監督です。
 こう言うことがあるからスポーツは面白い。こちらも予定を大幅に変えた甲斐もあったというもの。

 さて、今回の映画は「セッションマン/ニッキー・ホプキンズ ローリング・ストーンズに愛された男」です。

 1960〜70年代にかけてザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フーなど数多くのアーティストのレコーディングに参加し、さらにはザ・ビートルズのメンバー全員のソロアルバムにも参加した実績を持つセッション・ピアニスト、ニッキー・ホプキンズ。天賦の才を持ちながら体が弱く難病を抱えていたためスタジオ・ミュージシャンに専念した男の業績を追う。

 かかりつけ医の休日診療に行くために出かけた昨日、家を出た後に最近推しのアイドルTHE ENCOREがもう一つのアイドルユニットと2マンでミニライブを行うことを知り、当日券あるだろうかとライブハウスに行ってみたものの前売り完売で入れず(苦笑)、さりとてそのまま帰宅するには時間的にまだ早く、さて今からでも行ける映画でもないかと調べてみて見つけたのがこの作品。

 ニッキー・ホプキンズの名を聞いてパッとどんな方だったか思い浮かぶ人、そんなに多くはないのではと思います。私も何となく名前を知っているという程度でした。しかしローリング・ストーンズの「サタニック・マジェスティーズ」(「悪魔を憐れむ歌」収録アルバム)、ザ・フーの「フーズ・ネクスト」(「無法の世界」「ビハインド・ブルー・アイズ」収録アルバム)や、ジョン・レノンの「イマジン」など250以上のアルバムに参加、スタジオ・ミュージシャンであったホプキンズは必ずしもアルバムにクレジットされているわけではないものの、実績からして「誰もが一度は聞いている」ピアニストの1人と言って差し支えない錚々たる経歴です。
 クラシックの教育を受けながらブルース、ゴスペル、ブギウギなど多くのジャンルにも造詣が深く、その多彩なピアノでロックの歴史に重要な位置付けのミュージシャンとなりました。一方で若い頃から難病であるクローン病を患いキャリアの大半をセッション・ピアニストに専念し、経歴の割には正当に評価されていないミュージシャンの1人とも言えます。そんなホプキンズの業績を関係者のインタビューやアーカイブ映像で構成したドキュメンタリーです。

 ドキュメンタリー映画としては気のてらったところの無い極めて真っ当な作りで悪い言い方をするといささか凡庸。ですが、細かくチャプター分けされた編集と構成はトピックを分かりやすく伝え、なるたけ多くのトピックを盛り込もうとしながら散漫にはなっていない構成のバランス感覚は絶妙。結果的に余分な感傷と感情を廃しながらもエネルギッシュな作品になっています。この映画のためにキース・リチャーズがインタビュー出演しているのもポイントの一つでしょう。没後30年を経て未だ正当に評価されているとは言えないホプキンズを知る者たちによって彼をロックの殿堂に入れたいという動きがあるようで、この映画はそうした思惑もあるものかもしれません。知らない人にはロックの名曲への入り口に、知っている人には再発見のよすがに。これはそんな映画です。

 好きなジャンルなのに長く音楽ドキュメンタリー観てなかったわと妙な感慨。思った以上に飢えてたところに良いのが来ました。この巡り合わせに感謝。
 ところで、熱心なロックファンが多いせいか日本では先人たちがニッキー・ホプキンズを見出していたようで、晩年に近い時期ながらTVドラマ3本と映画1本のサウンドトラックを手掛けているばかりかこの映画も日本での公開が世界最速上映、何ならこの映画のメインビジュアルも日本で作ったものだとか。今も昔も強火オタクの行動力は侮れない。

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職場で私と同じセクションにいる同僚が、名古屋生まれ名古屋育ちだけど野球はDeNAファンという人で、早い話が今回の日本シリーズに浮き足だっています。で、何としても現地で観に行きたくて第6戦と第7戦のチケットを買ったので(初戦と第2戦は家の都合でどうしても行けなかったらしい)2日の休みを代わってくれと頼み込まれ、まあそう何度もあることじゃないし良いかと承諾。
 それは良いのですが、2戦目までの感じからすると第6戦無くない?

 こんばんは、小島@監督です。
 やっぱりダントツでリーグ制覇したチームは格が違う。

 さて、今回の映画は「ボルテスV:レガシー」です。

 その日地球は突如外宇宙からの襲撃を受けた。プリンス・ザルドス(マーティン・デル・ロサリオ)率いるボアザン帝国が侵攻を開始したのだ。初めて見る武器の数々に地球の軍勢は歯が立たない。圧倒的優勢に立ちながらもザルドスは侵攻の手を緩めず「ビーストファイター」と呼ばれる獣型の巨大ロボットを投入してきた。
 その頃地球では前線基地「ビッグファルコン」にスティーヴ(ミゲル・タンフリックス)ら5人の若者が集められていた。目的も知らされず秘密訓練を受けさせられていたスティーヴたちだが指揮官リチャード・スミス(アルバート・マルティネス)より訓練がボアザン帝国と戦うためだと告げられる。スティーヴたちは密かに製造されていた「ボルトマシン」に乗り込み、ボアザン帝国打倒のため出撃した。

 歌や物語、美術などの創作物が、それを生み出した国より他の国で思わぬ形で評価されることが稀に起こります。例えば「劇画」という名称を提唱した漫画家辰巳ヨシヒロなどはその著作が日本より英語圏の方が評価が高く、シンガポールでアニメ映画が製作されたことがあります。他にも凄いのになると本国アメリカではほぼ見向きもされなかった曲がどういう経緯か海を渡り南アフリカだアパルトヘイト抵抗運動のプロテストソングとして長く歌い継がれることになったシクスト・ロドリゲスというシンガーもいます。

 ここに一本のロボットアニメがあります。その名は「超電磁マシーンボルテスV」。
 1977年に日本で放送されたそれは翌年フィリピンに紹介され、最高視聴率58%を叩き出すほどの大人気となり、これが嚆矢となって日本アニメがフィリピンに積極的に進出するようになりました。人気が過熱したフィリピンでは反発運動が巻き起こり、一説には物語の内容を自分に重ねて危惧したとも言われていますが当時独裁政権を敷いていたフェルディナンド・マルコスによりシリーズ途中で放送中止に追い込まれ、革命により政権が打倒されマルコスが亡命した後に最終回まで放送された経緯があります。90年代後半に入り再放送をきっかけに再評価の波が来たあとは名実共にフィリピンの国民的アニメとなり、そのテーマ曲が選挙活動に使われたり刑務所でも流されたりと尋常じゃない浸透度を伺わせるエピソードが枚挙の暇が無いほどです。2000年代に主題歌を歌った堀江美都子がライブのためにフィリピン入りした際には国賓待遇をもって迎えられました。
 そんなフィリピンで、リメイクするなら俺たちしかいないとばかりに昨年実写ドラマ版が製作されました。全90話で作られたドラマ版の序盤15話を再編集して劇場用映画としたのが「ボルテスVレガシー」です。

 こんな言い方も何ですが、良いところと悪いところが画面の同じところから豪速球で投げ込まれるような、そんな作品です。再編集だというのにシーン一つ一つがくどくて冗長でテンポが悪く、勢いが削がれているのに画のカロリーは異様に高い、そんなチグハグさが全編ずっと付いて回るため難解ではないのに観やすい作品ではありません。
 ですがそんな画面から伝わってくるのは作り手が子どもの頃、きっと目を輝かせてアニメを観ていたに違いないという確信です。やたらとくどいのも作品の魂を表現するにはそれくらいしないといけないと本気で信じている節があります。もちろん商業作品である以上数字は取りに行っているはずですが、どこか何かを度外視して作っている、そんな作品です。オープニングテーマを最初はフィリピン語に翻訳して歌手に歌ってもらったけれど、「あのスピリットを再現出来ていない」から日本語で歌い直した、なんてエピソードに原作への並々ならぬ愛着が伺えます。

 不格好だがカッコいい、整っていないが熱い魂は確かにフィルムにこもっている。まるで素敵に全力なファンレター、あるいは熱烈でちょっと気恥ずかしいラブレターのよう。お世辞にも手放しで激賞できるような出来ではないのですが、こんな作品が一つくらいあったって良い。

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昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 初参加の方が11名もいるというのはちょっと記憶に無いくらいの人数で驚きました。楽しんでいただけましたでしょうか。
 Take it freeの品やじゃんけん大会の出品アイテムが展示されていたりゲーム機が用意されたり歌会当日がG1レース開催日だったりするとビューイングが始まったりと8階ロビーも色んなことに使ってますので色んな楽しみ方を見つけてもらえると嬉しいですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 実は歌会後、最近推してるアイドルグループ「THE ENCORE」のメンバーの生誕祭イベントがあったので観に行ったのですがそこで長く音信不通になっていた友人とばったり再会するというミラクルが。人生時々面白いことが起きますね(笑)

 さて、先日名優西田敏行さんの訃報がニュースとなりました。
 主演4作を含め実に14作のNHK大河ドラマに出演しているほか1970年代始めから半世紀に渡り数多くの作品に間断なく出演していました。今年だけでも「さよならマエストロ」「終わりに見た街」に出演し、年末には「Doctor X劇場版」が控えておりこの数十年間で日本の映画やドラマをいくらかでも観たことがあるなら出演作を素通りすることは不可能に近いくらいでは。一方で20本以上のシングルを発売しているなど歌手としても活躍し、まさに稀代のエンターテイナーと言って過言ではないでしょう。
 今回はそんな西田敏行さんを偲び、その主演作の中から私にとって忘れ難い1本「学校」をご紹介。敢えて「釣りバカ日誌」や「アウトレイジ」には行きません(笑)

 夜間中学校で教鞭を取る黒井(西田敏行)は、夜間中学での教育に情熱を注ぎ生徒たちから信頼を寄せられている一方で校長からの異動のオファーも断り続けていた。黒井のクラスには働きながら学校に通うカズ(萩原聖人)や不登校を理由に編入してきたえり子(中江有里)、50歳過ぎて入学して来た韓国出身のオモニ(荒屋英子)などワケありの生徒たちが学んでいる。
 ある日、給食の時間に黒井の元に生徒の1人で病気療養中だったイノさん(田中邦衛)が亡くなったという知らせが届いた。

 1993年に松竹の創業100周年を記念し、山田洋次監督が長年温めていた企画をようやく実現に漕ぎ着け映画化された作品です。様々な境遇で義務教育を修了できなかった者や外国籍の者が通い学ぶ夜間中学校を舞台に生徒と教師の交流と人生の哀歓を描いたヒューマンドラマです。この映画をきっかけに夜間中学校の知名度が増したと言われています。
 極めて高い評価を持って迎えられたこの作品は日本アカデミー賞最優秀作品賞を獲得し、西田敏行も最優秀主演男優賞を受賞しました。西田敏行、基本シリアスなこの映画でもアドリブを忘れません。そこで仕掛ける?みたいなタイミングで笑いを取りに行ってます。
 その後「学校」はシリーズ化され2000年までに4作が製作されました。ですが様々な形の「学校と呼ばれる場所が舞台となっている」以外の共通点は無く出演者も違うためどこから観ても問題無い内容になっています。

 7人の生徒にスポットが当たるこの映画で特にクローズアップされるのが田中邦衛演じるイノさんで、小学校にも行けずに働き続け50代になるまで読み書きができず、文字の読み書きを学びたくて夜間中学校の存在を探し出した人物として登場します。教育を受けることで少しずつ輝きを増していくイノさんの姿を田中邦衛がその人生ごと体現するような演技で見せてくれます。今ならなお興味深く観られるところとして、競馬が趣味で「馬名だけは勉強しなくても読める」というイノさんが子どものような顔で饒舌に一頭の馬について嬉々として語るシーンがあります。
 それがオグリキャップ。田中邦衛の名口上と共に第35回有馬記念のレース映像がフッテージとして使われています。「ウマ娘」でも人気キャラクターの1人であり、90年代初頭に一大ブームを巻き起こしたオグリキャップの往時の熱狂ぶりを物語るシーンになっています。

 イノさんの死が知らされたことをきっかけに黒井と生徒たちは「幸福」について語り合います。こここそこの映画の肝なので敢えて詳細は語りません。劇的に泣ける、というわけではないですが良く練られた言葉の数々に名優たちの演技が乗って深く沁み入るようなシーンです。
 夜間中学校が舞台ということで度々夕焼けの情景が出てくるのも特徴で、その美しさも映画に厚みを加えています。
 バブル崩壊後とはいえまだ余力のあった時期ながらそう言ったものからこぼれ落ちた人々をすくいあげた見事な作品で、むしろ今でこそその価値を再発見されるべき映画の一つかもしれません。
 
 訃報相次ぐ今年にまたひとり去り行く名優へ、ご冥福をお祈りいたします。

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先日、声優大山のぶ代さんの訃報が。
 現在の水田わさびさんに代替わりしてからもうすぐ20年になりますが自分にとってはやはり世代的に「ドラえもん」の声といえば大山のぶ代さんのイメージ。のび太と一緒になって遊び回るというよりどこか保護者のような優しさを感じさせる声音にずっと慣れ親しんで来ました。ドラえもん降板後も「ダンガンロンパ」シリーズのモノクマ役で印象を残しこちらのイメージの方が強い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 死因は老衰とのことで大往生と言えるでしょうが、幼い頃から知っている方の訃報はやはり寂しいものがありますね。

 こんばんは、小島@監督です。
 劇場版ドラえもんはシリーズ45周年を記念して来年1月にリクエストで選ばれた作品を上映する企画が準備中とか。もう一度童心に帰ってあの声をスクリーンで楽しみたいですね。

 さて、今回の映画は「シビル・ウォー/アメリカ最後の日」です。

 近未来のアメリカ。「3期目」に突入した大統領(ニック・オファーマン)は権威主義に傾倒し独裁体制を築いた。これに反発した「西部勢力」が反乱を起こし内戦が勃発。アメリカ各地で武力衝突が発生した。
 戦場ジャーナリストのリー・スミス(キルスティン・ダンスト)と同僚のジョエル(ワグネル・モウラ)は、進行を続ける西部勢力に先んじてワシントンD.C.に乗り込み14ヶ月間一度も取材を受けていない大統領へ単独インタビューを実行しようと試みる。リーの師であるサミー(スティーブン・マッキー・ヘンダーソン)とリーに憧れ戦場カメラマンを志すジェシー・カレン(ケイリー・スピーニー)も加わり、4人は700km先のワシントンD.C.を目指す。

 「シビル・ウォー」とは「内戦」の意味ですが、アメリカではそれ自体で「南北戦争」を指す言葉になります。歴史に刻まれたこの戦争が再びアメリカ全土を覆ったら、それほどの分断がアメリカにまた横たわったら。最初にあらすじを知った時は政治劇の趣きを予想していましたが、実際はだいぶ違いました。舞台説明はほとんどされず、むしろ制作側の政治色は極限までオミットされています。
 独裁体制を敷いた大統領に叛旗を翻したのがテキサスとカリフォルニアの連合で、それに呼応した州も出て来て独立を歌い出した、という設定ですが、保守的で共和党支持が強いテキサスとリベラル志向で民主党が強いカリフォルニアが手を組むなどまずあり得ず、そんな「不可能が起きないといけないほどの事態」が起きてしまっているというのがポイントです。実際のところ、もし実現したら人口もGDPも軍事力も世界トップクラス、連邦政府打倒も夢ではない勢力の誕生で、それ故に映画では反乱軍が優勢で攻勢に出ているのも納得というところでしょうか。
 極めてデリケートなテーマながら政治性を敢えて薄めているところが賛否両論ある所以ですが、もっともリアリティ重視でアメリカの内戦を映画にして大統領選の年にぶつけて来たらそれこそ内戦の引き金になりかねないのでこのくらいで丁度いいのでしょう。

 映画はそう言った背景を考察させて観客に委ねることはせず、基本的にはジャーナリスト4人のロードムービーの形で展開していきます。立ち寄った先で起こる数々の事件に寓話性とサスペンスを見い出し、中でもジェシー・プレモンス演じる「赤いサングラスの男」は下手なホラー映画が裸足で逃げ出すレベルの怖さで観客を震え上がらせてくれるでしょう。旅が進むにつれてジャーナリスト4人のドラマも絡み合っていき、リーは次第にPTSDが深刻化していく一方でジェシーは戦場カメラマンとして急速に成長していきます。

 この映画を特徴づけるもう一つが音響です。まるで「プライベート・ライアン」や「地獄の黙示録」を思わせるリアルで生々しい音響設計に、時折不意に不協和音のようにスーサイドやスタージル・シンプソンの楽曲が差し挟まれ、それらが渾然となって独特の映像世界を作り上げています。IMAXのように迫力重視のスクリーンだといささかアンバランスに感じたのですが、Dolby cinemaや109名古屋の「SAION」、ミッドランドスクエアの「粋」など最近シネコンでも追加料金は不要ながら音響をアップグレードしたスクリーンが登場してきており、そう言った繊細なニュアンスを楽しめるスクリーンで鑑賞した方がより没入度が増すこと必至です。
 また、ジャーナリストという主戦軸から一歩引いた視点を主人公に据えていることもあり時折リーやジェシーが撮る写真が静止画で挿入されこの虚構の世界に奇妙なドキュメンタリーのような風合いをもたらしています。かつてこれに近い語り方をしていた高橋良輔監督の「FLAG」というアニメがあり、何だかそれを思い出してしまいました。

 恐らく日本人である以上この作品が持つ恐ろしさを本質的には理解できないのかもしれません。しかしラストでジェシーが撮る一枚の写真に複雑な感情が湧き上がらずにはおかないはず。アメリカも日本も大きな選挙を控えて政治の注目度が上がっているご時世。一つのよすがとして注目して然るべき作品なのは間違いありません。是非スクリーンで鑑賞して異様な空気感に震え上がってみてください。

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昨日開催された「宇宙戦艦ヤマト」の50周年記念上映イベントの場にて、庵野秀明監督が「ヤマト」の新作を作れるようになったと発表しました。庵野監督、「ふしぎの海のナディア」でヤマト発進シークエンスを完コピしたシーンを入れ込んだくらいにはガチ勢なのでまた強烈なものを作ってくれそう。

 こんばんは、小島@監督です。
 「宇宙戦艦ヤマト」、リメイクも含めると映像作品の数が実は20作品を超えているとか。この作品の周りはだいたいいつもゴタゴタしてる印象があるので無事完成まで漕ぎ着けられると良いのですが。

 さて、今回の映画は「ルパン三世/ルパンVS複製人間」です。

 ある日、1人の男が処刑された。厳正な解剖の結果、男は「ルパン三世に間違い無い」と判断される。しかし銭形警部(声・納谷悟朗)はそれを信じず自らの目で遺体を確かめとどめを刺そうとする。しかし突如遺体は爆発し銭形の前にルパン三世(声・山田康雄)が姿を現し、その場から逃走して行った。
 後日、ルパンを追い銭形はエジプトへ。ピラミッドの中でルパンは「賢者の石」を盗み取ろうと行動していた。

 1978年に製作された、「ルパン三世」初めての劇場版です。映画化としては1974年に「念力珍作戦」という実写映画があったり(さすがにまだ観たことない)、TVシリーズの1エピソードを劇場用にブローアップして上映した短編映画「ベネチア超特急」があったりしますが、長編アニメ映画としてはこれが第一作。当時のアニメ映画としては珍しく画面比4:3のTVサイズではなくビスタサイズ(画面比1:1.85)で製作され、作画に通常より大きな背景やセル画が用いられたそうです。数年おきに金曜ロードショーで放送される定番のプログラムで何度か観たことはあるのですが、大須シネマで今リバイバル上映中。まさかのスクリーン鑑賞の機会を捕まえました。
 
 TVシリーズ第1期のアダルティでハードな作風の再現を目指していたようで、かなり際どいセリフやシーンが登場します。これが実は金曜ロードショーで放送される際にほとんどカットされてしまっていてちゃんとフルサイズで観たことがありませんでした。実際観てみたら結構なボリュームで知らない箇所があって驚きました。ずっと繋がりが悪いと感じていた箇所のほとんどで何かしらのシーンが入っていて、さながらパズルの欠けたピースがハマるような感覚です。

 物語は峰不二子(声・増山江威子)の頼みを聞いてあれこれ盗みに行ってるうちにルパンは自らを神と標榜する男・マモー(声・西村晃)との戦いに巻き込まれていきます。当時いわゆる「試験管ベビー」と呼ばれる体外受精児の誕生がニュースで報じられるなどクローンはトレンドなテーマでもあり、ただ登場するだけでなくその知見も盛り込まれているほか、「神に挑む」というテーマも「幻魔大戦」や「サイボーグ009」「神狩り」などで先達がいたりしてハードSFの要素が強い側面もあります。一方で、そういった要素をルパン三世のキャラクターで軽やかに押し切ってしまう面白さもあり、なかなか癖になる作品です。

 翌年に宮崎駿監督による傑作「カリオストロの城」が公開され、そのダイナミズムとロマンチシズムに比べるといささか荒っぽさが目立ちますが今観ても充分に楽しめる一本。何度もTVで観ていても、知ってるつもりになっていただけでやっぱり一度はスクリーンで観ておくものだなと実感。せっかくだからルパン三世なら「バビロンの黄金伝説」とか「DEAD OR ALIVE」とかもリバイバルの俎上に乗ってほしいなぁ。「ちゃんと」観たことの無い作品、自分で思っているよりずっと多いようです。

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