休職1日目、かなりがっつり引継ぎはしたのですが、朝からバンバン電話がかかってくるのに苦笑しています。まあ私としても想定外のイレギュラーな話だったりしたので仕方ないところではあるのですが。
こんばんは、小島@監督です。
静かな日々がやってくるのはいつの日やら。
さて、今回の映画は「王立宇宙軍 オネアミスの翼」です。
「何もしない軍隊」と揶揄され、落第物の集まりと見下されているオネアミス王国の宇宙軍。そこに所属する士官のシロツグ(声・森本レオ)は、かつては水軍のジェット戦闘機乗りに憧れていたがそこに行けるほどの優秀な成績を修められず、仕方なく入った王立宇宙軍で気の抜けた日々を送っていた。
ある夜、同僚たちと繰り出した歓楽街でシロツグは布教活動を行う少女リイクニ(声・弥生みつき)と出会う。休日に下心を秘めてリイクニの下に話を聞きに行ったシロツグは、「戦争をしない軍隊」である宇宙軍を褒められ、やる気を起こしカイデン将軍(声・内田稔)が推進する有人宇宙飛行計画に志願するのだった。
のちに「新世紀エヴァンゲリオン」で日本アニメ史に不動の名を刻むことになるアニメスタジオ・GAINAX。その第1回作品として1987年に製作された劇場用アニメ映画です。企画そのものはGAINAXの前身とも言うべきアマチュア映像集団「DAICON FILM」の時期に既にあり、本作を製作するためにDAICON FILMを解散し、GAINAXが設立された経緯があります。そんな作品が製作35周年を記念し4Kリマスター版によるリバイバル上映が現在行われています。昔レンタルビデオで観たコレをスクリーンで観られる日が来るとは正直予想外でした。
端的に言えば軍のはみ出し者だったメンバーたちが力を合わせてロケットを飛ばす、それだけの物語です。正直に言えば119分というがっつりとした上映時間をしている割には内容は薄く起伏にも乏しく、いささか退屈を禁じ得ない部分はあります。
しかしその大きすぎる欠点を差し置いてなお魅力的に映るのは、ひとえに異常なまでの濃度と密度を誇る作画にあります。なんてことない動作の一つ一つが緻密に描写され、クライマックスのシャトルの発射シーンなどは実写と比較しても遜色ない境地にまで達しており、しかもすべて手描きというのがもう驚異としか言いようがないレベルです。
DAICON FILM結成時にはまだ学生であった山賀博之、庵野秀明、貞本義行、前田真宏と言った主要メンバーたちは大学在学中から「超時空要塞マクロス」や「風の谷のナウシカ」などにアニメーターとして参加しており、そんな彼らの新たなステップとしての意味合いも強かったこの作品は、映画が作品としてまとまるバランスを逸脱したのと引き換えに参加したアニメーターたちのセンスを見事なまでに発露させる結果となりました。このアンバランスさは監督の山賀博之を筆頭に平均年齢24歳という若いスタッフで主要メンバーが固められていたことも大きいでしょう。同人レベルでは注目を集めていたとはいえ商業的には全く実績の無いスタッフにいきなり全国ロードショークラスの劇場用アニメをしかもオリジナル作品で任せたところに1980年代半ばの時代性が垣間見える面白さがあります。今でこそ映像製作としても大手となったバンダイも、当時はまだ映像事業に参入して日も浅い時期で、ある種の「攻め」をしたい意図もあったかもしれませんね。
どうにも保守的になりがちな昨今とは違う、「野心」と「若さ」がそのまま形になったかのようなこの作品を時を経て再見すると言うのはただノスタルジーとは一線を画す何かを観る者に与えてくれるような気がします。この道の先に「エヴァンゲリオン」がある、というのも面白い。90年代のクリエイティブに繋がる礎ともいえる逸品、どうぞスクリーンでご堪能あれ。
こんばんは、小島@監督です。
静かな日々がやってくるのはいつの日やら。
さて、今回の映画は「王立宇宙軍 オネアミスの翼」です。
「何もしない軍隊」と揶揄され、落第物の集まりと見下されているオネアミス王国の宇宙軍。そこに所属する士官のシロツグ(声・森本レオ)は、かつては水軍のジェット戦闘機乗りに憧れていたがそこに行けるほどの優秀な成績を修められず、仕方なく入った王立宇宙軍で気の抜けた日々を送っていた。
ある夜、同僚たちと繰り出した歓楽街でシロツグは布教活動を行う少女リイクニ(声・弥生みつき)と出会う。休日に下心を秘めてリイクニの下に話を聞きに行ったシロツグは、「戦争をしない軍隊」である宇宙軍を褒められ、やる気を起こしカイデン将軍(声・内田稔)が推進する有人宇宙飛行計画に志願するのだった。
のちに「新世紀エヴァンゲリオン」で日本アニメ史に不動の名を刻むことになるアニメスタジオ・GAINAX。その第1回作品として1987年に製作された劇場用アニメ映画です。企画そのものはGAINAXの前身とも言うべきアマチュア映像集団「DAICON FILM」の時期に既にあり、本作を製作するためにDAICON FILMを解散し、GAINAXが設立された経緯があります。そんな作品が製作35周年を記念し4Kリマスター版によるリバイバル上映が現在行われています。昔レンタルビデオで観たコレをスクリーンで観られる日が来るとは正直予想外でした。
端的に言えば軍のはみ出し者だったメンバーたちが力を合わせてロケットを飛ばす、それだけの物語です。正直に言えば119分というがっつりとした上映時間をしている割には内容は薄く起伏にも乏しく、いささか退屈を禁じ得ない部分はあります。
しかしその大きすぎる欠点を差し置いてなお魅力的に映るのは、ひとえに異常なまでの濃度と密度を誇る作画にあります。なんてことない動作の一つ一つが緻密に描写され、クライマックスのシャトルの発射シーンなどは実写と比較しても遜色ない境地にまで達しており、しかもすべて手描きというのがもう驚異としか言いようがないレベルです。
DAICON FILM結成時にはまだ学生であった山賀博之、庵野秀明、貞本義行、前田真宏と言った主要メンバーたちは大学在学中から「超時空要塞マクロス」や「風の谷のナウシカ」などにアニメーターとして参加しており、そんな彼らの新たなステップとしての意味合いも強かったこの作品は、映画が作品としてまとまるバランスを逸脱したのと引き換えに参加したアニメーターたちのセンスを見事なまでに発露させる結果となりました。このアンバランスさは監督の山賀博之を筆頭に平均年齢24歳という若いスタッフで主要メンバーが固められていたことも大きいでしょう。同人レベルでは注目を集めていたとはいえ商業的には全く実績の無いスタッフにいきなり全国ロードショークラスの劇場用アニメをしかもオリジナル作品で任せたところに1980年代半ばの時代性が垣間見える面白さがあります。今でこそ映像製作としても大手となったバンダイも、当時はまだ映像事業に参入して日も浅い時期で、ある種の「攻め」をしたい意図もあったかもしれませんね。
どうにも保守的になりがちな昨今とは違う、「野心」と「若さ」がそのまま形になったかのようなこの作品を時を経て再見すると言うのはただノスタルジーとは一線を画す何かを観る者に与えてくれるような気がします。この道の先に「エヴァンゲリオン」がある、というのも面白い。90年代のクリエイティブに繋がる礎ともいえる逸品、どうぞスクリーンでご堪能あれ。
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