先週訃報が流れた野球漫画の第一人者だった水島新司さん、私も「ドカベン」や「あぶさん」などその著作をよく読んでいました。特にパ・リーグが今ほどの人気を獲得する遥か前から「あぶさん」において南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)を中心に丹念に取材を重ねて各球団の選手たちを実名で登場させるなど漫画を通しての野球界への貢献と影響が計り知れないほどです。パ・リーグの本拠地である球場ではほとんど顔パスだったと聞きます。訃報が流れた翌日、主要スポーツ紙がこぞって1面トップで報じ、全国紙でも社会面だけでなくスポーツ面でも報じられたのが何よりの証拠と言えるでしょう。
主要作品のほぼ全てを完結させ引退宣言をしてからのご逝去、まさに大往生だったのではと思います。
こんばんは、小島@監督です。
久しぶりに何か読んでみたくなってきた。
さて、今回の映画は「クナシリ」です。
北方四島の一つ、国後島。北海道の東端からわずか16㎞のところにあるその島は、日ロ間で領土問題が横たわる。そこには寺の石垣などの遺構が残り、シャベルで土から掘り起こせば醤油瓶や欠けた茶碗などかつて日本人が暮らしていた痕跡が残っている。1949年に日本人の退去が完了したこの島で現在暮らすロシア人たち。彼らにカメラとマイクを向けると、各々がそれぞれの立場で島の姿を語り始めた。
北方四島と呼ばれる島々があること、そこに領土問題があること、半世紀以上の長きにわたり返還のための交渉が続いていること、それらをご存じの方は多いと思います。ですがその一方でそこがどういう場所なのかを知っている方はほとんどいないのではないでしょうか。北方領土問題という言葉の下でだけその名を聞く島、私にとって国後島というのはその程度の印象でした。またロシア側から俯瞰すれば国後島はあくまで首都モスクワから遥か離れた最果ての一離島であり、そもそも関心を示す場所ですらないようにも思えます。そんな国後島に焦点を当てて取材を行った恐らくは初めてのドキュメンタリー映画です。手掛けたのはベラルーシ出身で現在はフランスを拠点に活動しているドキュメンタリー作家、ウラジーミル・コズロフ氏。
そもそもどんな風景をしているのかすら知らない国後島、普通に撮ってるだけの映像がもうそこから興味深い。実は温泉もあるらしいですよ、あの島。ある意味でチョロい客状態でした私(笑)もっともこの数十年日本人が未踏だったわけではなく1992年より始まった交流事業により7~9月のサマーシーズンにビザなしの訪問団が訪れたり鳥類などの学術研究で滞在する学者の方などもいるのですが、取材時期とは外れていたらしくこの映画には登場していません。
実際のところ、映画は数人の人物の生活とインタビューを淡々と綴っているだけの作品です。モチーフこそ刺激的ですが良くも悪くもフラットで、そこに大きなストーリーも無ければ何かを煽るようなことも無いのが特徴です。
ただこのインタビューが曲者。全体を通して老人が多いのですが人生の晩期をインフラの整備も今ひとつよろしくない最果ての地で暮らしているせいか愚痴っぽい方が多く、失くすものが無いのかロシア政府や役人への不満や批判もお構いなしなのがなかなかに驚きます。ちょっと笑えてしまうくらい。中には日本人とロシア人が共存していた1940年代を記憶している方もおり、思いがけない話が登場してきたりもします。
彼らの中には別にロシア政府のように北方四島を日本に返還することを頑なに拒むような強い主張はなく、むしろ温泉などの観光資源を活用して雇用を生み出して欲しくて日本人が再び来てくれることを望んでいる者さえいます。
作品の中で見え隠れするのは第二次大戦時に日本との戦いに勝利し住民を全員退去させ自国の領土の拡大に成功したことをプロパガンダしたい旧ソ連からのロシア政府の思惑と、更に色濃く目に留まるのは最果ての離島という地理的条件がそうさせるのか、住民の精神性がアップデートする環境に乏しい、つまり「時間が止まっている」ように見えることでしょう。
翻って、これほどロシアの風土に染まってしまった国後島を仮に日本の国土に引き戻せたとして、今、その島に生きる人はどうなるのか、そして島をどうしたいのか、その先を見つめるビジョンが日本にはあるのだろうかという思いも浮かんでは消えて、かなり複雑な思いを湧き立たせずにはおきません。
百聞は一見に如かずとはまさにこのこと。歴史と不和の果てに存在する島の在り様に現在を映し見る作品です。聞けばコズロフ氏は同じ題材を、今度は根室の側から撮影する映画を準備中とのこと。この合わせ鏡がどのような形で完成するのか、今から楽しみです。
主要作品のほぼ全てを完結させ引退宣言をしてからのご逝去、まさに大往生だったのではと思います。
こんばんは、小島@監督です。
久しぶりに何か読んでみたくなってきた。
さて、今回の映画は「クナシリ」です。
北方四島の一つ、国後島。北海道の東端からわずか16㎞のところにあるその島は、日ロ間で領土問題が横たわる。そこには寺の石垣などの遺構が残り、シャベルで土から掘り起こせば醤油瓶や欠けた茶碗などかつて日本人が暮らしていた痕跡が残っている。1949年に日本人の退去が完了したこの島で現在暮らすロシア人たち。彼らにカメラとマイクを向けると、各々がそれぞれの立場で島の姿を語り始めた。
北方四島と呼ばれる島々があること、そこに領土問題があること、半世紀以上の長きにわたり返還のための交渉が続いていること、それらをご存じの方は多いと思います。ですがその一方でそこがどういう場所なのかを知っている方はほとんどいないのではないでしょうか。北方領土問題という言葉の下でだけその名を聞く島、私にとって国後島というのはその程度の印象でした。またロシア側から俯瞰すれば国後島はあくまで首都モスクワから遥か離れた最果ての一離島であり、そもそも関心を示す場所ですらないようにも思えます。そんな国後島に焦点を当てて取材を行った恐らくは初めてのドキュメンタリー映画です。手掛けたのはベラルーシ出身で現在はフランスを拠点に活動しているドキュメンタリー作家、ウラジーミル・コズロフ氏。
そもそもどんな風景をしているのかすら知らない国後島、普通に撮ってるだけの映像がもうそこから興味深い。実は温泉もあるらしいですよ、あの島。ある意味でチョロい客状態でした私(笑)もっともこの数十年日本人が未踏だったわけではなく1992年より始まった交流事業により7~9月のサマーシーズンにビザなしの訪問団が訪れたり鳥類などの学術研究で滞在する学者の方などもいるのですが、取材時期とは外れていたらしくこの映画には登場していません。
実際のところ、映画は数人の人物の生活とインタビューを淡々と綴っているだけの作品です。モチーフこそ刺激的ですが良くも悪くもフラットで、そこに大きなストーリーも無ければ何かを煽るようなことも無いのが特徴です。
ただこのインタビューが曲者。全体を通して老人が多いのですが人生の晩期をインフラの整備も今ひとつよろしくない最果ての地で暮らしているせいか愚痴っぽい方が多く、失くすものが無いのかロシア政府や役人への不満や批判もお構いなしなのがなかなかに驚きます。ちょっと笑えてしまうくらい。中には日本人とロシア人が共存していた1940年代を記憶している方もおり、思いがけない話が登場してきたりもします。
彼らの中には別にロシア政府のように北方四島を日本に返還することを頑なに拒むような強い主張はなく、むしろ温泉などの観光資源を活用して雇用を生み出して欲しくて日本人が再び来てくれることを望んでいる者さえいます。
作品の中で見え隠れするのは第二次大戦時に日本との戦いに勝利し住民を全員退去させ自国の領土の拡大に成功したことをプロパガンダしたい旧ソ連からのロシア政府の思惑と、更に色濃く目に留まるのは最果ての離島という地理的条件がそうさせるのか、住民の精神性がアップデートする環境に乏しい、つまり「時間が止まっている」ように見えることでしょう。
翻って、これほどロシアの風土に染まってしまった国後島を仮に日本の国土に引き戻せたとして、今、その島に生きる人はどうなるのか、そして島をどうしたいのか、その先を見つめるビジョンが日本にはあるのだろうかという思いも浮かんでは消えて、かなり複雑な思いを湧き立たせずにはおきません。
百聞は一見に如かずとはまさにこのこと。歴史と不和の果てに存在する島の在り様に現在を映し見る作品です。聞けばコズロフ氏は同じ題材を、今度は根室の側から撮影する映画を準備中とのこと。この合わせ鏡がどのような形で完成するのか、今から楽しみです。
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お店の対応もとても良く、
迅速丁寧にご対応いただきました。
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