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ちゅうカラぶろぐ


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ここ最近仕事も私事も日程が立て込んで3週間ほどほとんど休みの無い日々を送っていたらさすがに疲労が芯に来るようになり、昨日はひたすら眠って過ごす一日を過ごしました。今の自分に必要なのはこういう時間だったと実感します。ただ欲を言えばもう一日寝て過ごしたい。

 こんばんは、小島@監督です。
 更に欲を言えばいっそ3か月くらいバカンスしたい(笑)

 さて、今回の映画は「無双の鉄拳」です。

 かつて闇社会で「雄牛」の二つ名で恐れられた男カン・ドンチョル(マ・ドンソク)は、今では愛する妻ジス(ソン・ジヒョ)のために足を洗い相棒のチュンシク(パク・ジファン)と共に市場に魚を卸しながら慎ましやかに暮らしていた。
 ある夜、誕生日を祝うつもりで誘ったレストランでの些細な諍いでジスを怒らせてしまったドンチョルは、ジスの機嫌を取り戻すために急いで自宅に戻るがそこにジスの姿は無く部屋は何者かに荒らされていた。呆然とするドンチョルの携帯に何者かから電話が入る。ジスを誘拐したというその男は、身代金を要求するのではなく逆に金を渡すからジスの事は忘れろと提案してきた。警察の捜査も一向に進まない中、怒りに震えるドンチョルはジスを救うために独自で行動を開始するが。

 アメリカでフィットネストレーナーやボディビルダーとして活動した後、2000年代から韓国で映画俳優としてのキャリアを積み始め、「新感染 ファイナル・エクスプレス」や「犯罪都市」などでヒットを飛ばして今や韓国を代表するアクション俳優となったマ・ドンソク。昨年製作され日本で現在公開中の「無双の鉄拳」は、そんな彼の鍛えこまれた丸太の如き上腕筋と愛嬌のあるユーモアを存分に味わえる一本です。

 基本的にノワール・アクションであるこの映画、非常に起承転結がはっきりした作品です。序盤は体がごつい割に気が優しく怪しい話にコロッと騙されてしまうカン・ドンチョルの人となりを見せる一方で、美人を見つけると誘拐して身代金を家族に送り付けた後は整形して売り飛ばす人身売買組織を運営するヤクザのギテ(キム・ソンオ)の強烈な「悪」を交互に見せていずれ対決する2人を印象付けていく前半部は要所にコミカルなシーンが入るもののいかにもフィルムノワールめいたダウナーな空気の中で展開していきます。特に人の弱い部分を痛めつけては嘲笑う、どこか「バットマン」のジョーカーを思わせるギテを演じるキム・ソンオの怪演が光ります。既にマ・ドンソクのキャラクター性が固まっている以上悪役をいかに魅力的に描き出せるかが肝であるというのが実に良く分かっている感じです。そして溜めに溜まった淀みのようなフラストレーションが後半爆発します。

 一度マ・ドンソクに火が点いたらもう止められません。手がかりを見つけたら即「殴りに行く」という捜査スタイルで瞬く間にギテの存在に辿り着き、震えさせます。何なら途中で別のマフィアが壊滅させられてしまう勢いが見事。小悪党から外道まで、マ・ドンソクに立ちはだかる悪人が次々叩千切っては投げられていく爽快感を存分に堪能させてくれます。

 単純な物語ではあるのですが良く計算されて作られているのが分かるこの映画、特にユニークな点が2つあります。まずドンチョルが「雄牛」であった頃のことはセリフの端で僅かに語られるだけで登場しません。回想シーンが全く無い映画ではないのですがそれはむしろギテの極悪ぶりを強調するために使われています。「雄牛」がいかに凄まじいかは「終盤山ほど見せるから必要無い」という判断なのでしょうか。しかし見せないことでテンポが削がれないようになっています。
 もう一つ、これが最高なのですが見た目パワーファイターながら結構スピード感もあるマ・ドンソクのスタイルはある意味でこれまでの出演作品でブランディングが完成しており、そのイメージを活かしてこの作品では何と「直接見せていないのに音と気配だけで敵が叩きのめされていくのが分かる」という無茶苦茶なシーンが登場します。ほとんどモンスター映画的な表現の仕方なのですが、あまりに見事にハマりカタルシスと共に笑いまでもたらしてくれます。

 ここ数年の活躍で評価の高まってきたマ・ドンソクは、2020年以降に公開予定で現在製作が進んでいるマーベル・シネマティック・ユニバースの一作「The Eternals(仮題・邦題未定)」での出演が決まっており、更なる活躍が期待されます。
 そんな彼の主演作「無双の鉄拳」は梅雨時で湿度と不快指数が高い今くらいの時期に観るのがピッタリの爽快感の高い映画です。公開館数が少ないのが難点ですが、タイミングの合う方は是非ご覧になっていただきたい一本ですね。

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