先日、2年ほど前に「酒は充分知った。これからは食だ」と、定年まで数年を残して調理師免許を取るべく退職した職場の元先輩に思いがけず再会。近況を尋ねたら今秋から遂にワインバーを開店するとのこと。もう数年先の事かと思っていたら予想以上に早かった。…のは良いのですが、退職した時よりえらい太ってて驚きました。どんだけリタイア生活満喫してましてん(苦笑)
こんばんは、小島@監督です。
取り敢えず、開店したら一度行ってみなくちゃ。仕事帰りに寄るにはかなり行きづらい場所なのが難点だけど。
さて、ここしばらく試験だ何だで新作映画を観に行けていないので今回は少し前にリバイバル上映で観たクラシックな作品をご紹介。今回の映画は、「天使の入江」です。
パリの生真面目な銀行員のジャン(クロード・マン)は、友人のキャロン(ポール・ゲール)に半ば強引に連れ出されたアンガンのカジノで大勝ちし大金を獲得した。ギャンブルの魅力にハマり出したジャンはキャロンの誘いに乗り、より大きな勝負に出るために父親に勘当されるのも構わずパリを離れ南仏のニースへと向かった。
ニース到着後、逗留先となる安ホテルを見つけたジャンはそのまま「天使の入江」と呼ばれる海岸近くにあるカジノへと繰り出していく。そこでジャンはルーレットのテーブルで以前アンガンのカジノで見かけた女性を見つけ声をかける。ジャッキー(ジャンヌ・モロー)と名乗るその女性と意気投合したジャンはギャンブルのパートナーとなって2人で勝ちを重ねていった。
しかしある時2人は大負けし、ほぼ無一文になってしまったジャッキーはジャンのホテルに転がり込み、そこでかつてギャンブルのために夫と息子を捨てたことを告白する。翌朝、今度こそギャンブルと決別しようとジャッキーは独り駅へと向かうのだが。
1962年にフランスで製作された映画で、監督はジャック・ドゥミ。ドゥミは1960年代にフランスで起きた映画の潮流「ヌーヴェルヴァーグ」の代表的な監督の一人で、近年その監督作品が妻であり映画監督でもあるアニエス・ヴァルダや盟友であるカメラマン故・ラウル・クタールの協力と監修のもと相次いで4Kによるデジタル修復版が製作されており、今年その内のいくつかがアニエス・ヴァルダの初期作品と共に「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」と題して全国のミニシアターで順次特集上映が行われています。
話を映画に戻しましょう。開幕、ミシェル・ルグランの手によるテーマ曲と共に「天使の入江」を歩くジャッキーの姿を映したと思ったらそのまま猛スピードで後退してゆくファーストショットが強烈な印象を観る者に与え、その後のうねりを予感させます。
この映画、ジャック・ドゥミが後に名作と呼ばれる「シェルブールの雨傘」の準備に入ろうとしたところ、資金集めが思うように行かず、その資金を調達するために「だったらもう1本書いて当ててやらぁ!」と勢い任せにシナリオを書き上げ撮影まで漕ぎ着けたという逸話があり、だからなのでしょうか、勝つ時も負ける時も大きい2人の感情の交感はあまりに激情かつ刹那的でテンションが高いというか変に切迫した雰囲気が漂います。因みにこの激情が功を奏したか、「天使の入江」公開の翌年に資金繰りの問題は解決し「シェルブールの雨傘」は製作が開始され、翌1964年に公開に至っています。
ギャンブルのスリルに溺れ刹那的な感情のままに生きるジャッキーは、しかしどこか無垢な純真さを併せ持ち、無垢であるが故に破滅的な「冒険」への誘惑に抗えない。それはジャンにしても同じで、作中何度も映し出される勢いよく回転するルーレットの姿はそのまま2人を翻弄する運命の象徴でしょう。
実はそういった映画の主題とは別に個人的に印象に残ったのはカジノの情景です。最初のアンガン、メインとなるニース、後半2人が訪れることになるカンヌ、作中3か所のカジノが登場するのですが後になるほどその内装やスタッフの所作が洗練されていきます。特にカンヌの両替所のスタッフの手つきの滑らかさなど何故かやけに目に焼き付いてます。ホント、良い手さばきしてるんですよ。
物語の構図だけ観ればダメな男女のどうしようもない逃避行のような道行きを描いただけの話ですが、何故かこれが妙に美しい。「ルーレットであんなにポンポン勝ててたまるかー!」とかそういう野暮は一先ず置いて(笑)、回るルーレットに身を投げ出した2人が最後にどこに行き着くのか、もし機会が出来たなら是非その目で確かめてみてください。
こんばんは、小島@監督です。
取り敢えず、開店したら一度行ってみなくちゃ。仕事帰りに寄るにはかなり行きづらい場所なのが難点だけど。
さて、ここしばらく試験だ何だで新作映画を観に行けていないので今回は少し前にリバイバル上映で観たクラシックな作品をご紹介。今回の映画は、「天使の入江」です。
パリの生真面目な銀行員のジャン(クロード・マン)は、友人のキャロン(ポール・ゲール)に半ば強引に連れ出されたアンガンのカジノで大勝ちし大金を獲得した。ギャンブルの魅力にハマり出したジャンはキャロンの誘いに乗り、より大きな勝負に出るために父親に勘当されるのも構わずパリを離れ南仏のニースへと向かった。
ニース到着後、逗留先となる安ホテルを見つけたジャンはそのまま「天使の入江」と呼ばれる海岸近くにあるカジノへと繰り出していく。そこでジャンはルーレットのテーブルで以前アンガンのカジノで見かけた女性を見つけ声をかける。ジャッキー(ジャンヌ・モロー)と名乗るその女性と意気投合したジャンはギャンブルのパートナーとなって2人で勝ちを重ねていった。
しかしある時2人は大負けし、ほぼ無一文になってしまったジャッキーはジャンのホテルに転がり込み、そこでかつてギャンブルのために夫と息子を捨てたことを告白する。翌朝、今度こそギャンブルと決別しようとジャッキーは独り駅へと向かうのだが。
1962年にフランスで製作された映画で、監督はジャック・ドゥミ。ドゥミは1960年代にフランスで起きた映画の潮流「ヌーヴェルヴァーグ」の代表的な監督の一人で、近年その監督作品が妻であり映画監督でもあるアニエス・ヴァルダや盟友であるカメラマン故・ラウル・クタールの協力と監修のもと相次いで4Kによるデジタル修復版が製作されており、今年その内のいくつかがアニエス・ヴァルダの初期作品と共に「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」と題して全国のミニシアターで順次特集上映が行われています。
話を映画に戻しましょう。開幕、ミシェル・ルグランの手によるテーマ曲と共に「天使の入江」を歩くジャッキーの姿を映したと思ったらそのまま猛スピードで後退してゆくファーストショットが強烈な印象を観る者に与え、その後のうねりを予感させます。
この映画、ジャック・ドゥミが後に名作と呼ばれる「シェルブールの雨傘」の準備に入ろうとしたところ、資金集めが思うように行かず、その資金を調達するために「だったらもう1本書いて当ててやらぁ!」と勢い任せにシナリオを書き上げ撮影まで漕ぎ着けたという逸話があり、だからなのでしょうか、勝つ時も負ける時も大きい2人の感情の交感はあまりに激情かつ刹那的でテンションが高いというか変に切迫した雰囲気が漂います。因みにこの激情が功を奏したか、「天使の入江」公開の翌年に資金繰りの問題は解決し「シェルブールの雨傘」は製作が開始され、翌1964年に公開に至っています。
ギャンブルのスリルに溺れ刹那的な感情のままに生きるジャッキーは、しかしどこか無垢な純真さを併せ持ち、無垢であるが故に破滅的な「冒険」への誘惑に抗えない。それはジャンにしても同じで、作中何度も映し出される勢いよく回転するルーレットの姿はそのまま2人を翻弄する運命の象徴でしょう。
実はそういった映画の主題とは別に個人的に印象に残ったのはカジノの情景です。最初のアンガン、メインとなるニース、後半2人が訪れることになるカンヌ、作中3か所のカジノが登場するのですが後になるほどその内装やスタッフの所作が洗練されていきます。特にカンヌの両替所のスタッフの手つきの滑らかさなど何故かやけに目に焼き付いてます。ホント、良い手さばきしてるんですよ。
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