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ちゅうカラぶろぐ


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クリスマス前後の2週間ほどは本来なら1年で最も忙しい時期で、むしろそうであるのが普通だったので、この時期にほとんど残業もせずに帰宅できてしまう今年は異常と言って良く、却って不安しか湧かない状況です。
 来年はもう少しマシになっていると良いなぁ。

 こんばんは、小島@監督です。
 皆さんのこの1年はいかがでしたか?

 さて、2020年最後の更新となる今回は毎年恒例の「今年の5本」と題して今年鑑賞した映画を振り返ります。例年同様今日現在の鑑賞可能状況も合わせて記載します。年末年始のご参考になれば幸いです。

1.ヴァイオレット・エヴァーガーデン
 色々迷いましたが1本だけを選ぶなら今年はこれです。人と人を繋ぐ物語であり、また大きな悲劇からの復活の叫びでもあるこの映画が持つパワーはコロナ禍で否が応でも人との距離を考えさせられた人々の哀しみや苦しさをすくい上げてくれるでしょう。「鬼滅の刃」の後塵を拝す形にはなっているものの、根強い支持を受けて現在も上映が続いています。

2.ブレッドウィナー
 タリバン政権下のアフガンで家族を救うため髪を切り少年として生きる少女の苦闘を描くアニメ。少女の勇気と知恵が熱い感動と長い余韻を呼ぶ1本です。近年は海外の秀作も多数上映されるようになってきました。Blu-ray/DVD発売中。また現在も各地のミニシアターなどで断続的に上映が続けられています。

3.海辺の映画館 キネマの玉手箱
 今年4月に没した巨匠・大林宣彦監督の遺作となったこの映画は、戦争への絶対的な怒りと映画への絶対的な愛情に満ちた激情ほとばしる、そして自由過ぎる1本。現在も各地のミニシアターなどで断続的に上映が続いています。Blu-rayなどのリリース予定は現在のところ未定の模様。

4.彼らは生きていた
 第1次大戦の記録映像を「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督の指揮のもと丹念に復元&カラー化。そこに当時の復員軍人たちのインタビュー音声を重ね、100年前に生きた彼らを身近に感じさせるドキュメンタリー映画の秀作。ミニシアターなどで断続的に上映が行われていますが、今年1月に封切られているもののソフト化はまだ未定の模様。

5.ランボー ラスト・ブラッド
 傷つき失い続けた孤独の戦士ランボーの最後の戦いを激しいバイオレンス描写を以て描き出すシリーズの完結編。スタローンが辿り着いた境地を見届けろ。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。

 今年はこんなチョイスにしてみました。世相を反映してか、割と重い作品が多かった印象です。次はそれ以外に印象に残った映画をいくつか。こちらは鑑賞順に列記していきます。

・男はつらいよ お帰り寅さん
 渥美清没後25年を経て作られた、昭和を代表するキャラクターへの別れの歌。50年という時間の流れが作品に唯一無二の味を与えている。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・フォードVSフェラーリ
 ル・マン24時間レースを戦う男たちの姿を描く。マット・デイモンとクリスチャン・ベール、名優二人の競演も熱い。あと自分の鑑賞履歴を振り返っていてこれが今年封切りの映画だったことに軽い衝撃を受けた。もう遠い昔のようだ(苦笑)。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・1917 命をかけた伝令
 「彼らは生きていた」と同様第1次大戦を舞台に、ある伝令が前線を駆け抜ける姿を疑似ワンカットで描き出す。強烈な緊迫感が堪らない。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。また今ならAmazonプライムで見放題作品の中にラインナップされています。
・ミッドサマー
 白夜の北欧で目も眩むような惨劇が展開する異色のスリラー。画面のエグさは今年随一である。Blu-ray/DVD/デジタル配信版発売中。
・悪人伝
 ヤクザの親分と暴力刑事がコンビを組んで連続殺人鬼に挑む!主演マ・ドンソクの圧倒的存在感炸裂の韓国ノワール。Blu-ray/DVD発売中。
・ごん gon the little fox
 新美南吉の名作「ごんぎつね」を木彫りのような素朴な造形のパペットを用いて撮影されたストップモーション・アニメ。短編ながら丁寧な空気感とディスコミュニケーションの寂寥感の描出が見事。各地のミニシアターやプラネタリウムなどで上映が続いています。ソフト化は今のところ未定の模様。
・事故物件 恐い間取り
 TVの企画で事故物件で生活することになった芸人が見舞われる恐怖を描くホラー。亀梨和也が売れない芸人を好演。映画としてはイマイチも良いところなのですが妙にツボにはまりました(笑)。一部劇場で現在も上映中。Blu-ray/DVDは2021年2月10日発売予定。
・TENET テネット
 時間を逆行する者と陰謀を巡りエージェントの戦いが始まる。今年は本当に大作が少なかった。そんな中で果敢に上映を実行してくれたクリストファー・ノーランに感謝。大作にしか作り得ない映像世界は確かにある。デジタル配信版発売中。Blu-ray/DVDは2021年1月8日発売予定。
・星の子
 一人の少女の心の揺れと成長を繊細に描くドラマ。主演芦田愛菜の演技が圧巻。現在上映中。
・鬼滅の刃 無限列車編
 もう説明要らないっすね!とうとう興行収入歴代1位に躍り出ましたね!
・ウルフウォーカー
 ケルトの伝承を題材に人と精霊の交流を描くアニメーション。製作は「ブレッドウィナー」と同じくアイルランドのアニメスタジオ・カートゥーン・サルーン。現在上映中。
・羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来
 中国発のアニメ映画。王道かつ正統派なエンターテインメント。可愛いキャラクターとアクション描写に日本アニメの影響が随所に見て取れる。現在上映中。「ウルフウォーカー」と共にアニメーションの新しい潮流を感じ取れる作品だ。

 今年は洋邦問わず非常にアニメ映画が豊作だった印象です。この流れは来年も続いてほしいな。
 最後に、今年鑑賞した旧作を列記していきます。今年はコロナ禍の影響を受けて新作が相次いで延期・中止となった反動でこれまでになく旧作が再上映されました。企画上映などで例年ある程度は観ていますがこれほど旧作をスクリーン鑑賞した年はありません。それはとりもなおさず映画館や配給会社の苦闘の表れとも言えるでしょう。「今年の」という趣旨からは離れますが、これら全てが今年のコロナ禍の産物でもあり、今回は敢えて記載することにします。こちらは製作年代順に列記していきます。既にほぼ全てソフト化されているので製作年と監督・主演のみ表記します。

・シェーン(1953年・監督ジョージ・スティーヴンス、主演アラン・ラッド)
・真夏の夜のジャズ(1960年・監督バート・スターン)
・死霊の盆踊り(1965年・監督A・C・スティーヴン、主演クリズウェル)
・ひまわり(1970年・監督ヴィットリオ・デ・シーカ、主演ソフィア・ローレン)
・ウィッカーマン(1973年・監督ロビン・ハーディ、主演エドワード・ウッドワード)
・金田一耕助の冒険(1979年・監督大林宣彦、主演古谷一行)
・風の谷のナウシカ(1984年・監督宮崎駿、主演島本須美)
・バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985年・監督ロバート・ゼメキス、主演マイケル・J・フォックス)
・AKIRA(1988年・監督大友克洋、主演岩田光央)
・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア(1988年・監督富野由悠季、主演古谷徹)
・バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990年・監督ロバート・ゼメキス、主演マイケル・J・フォックス)
・トータル・リコール(1990年・監督ポール・バーホーベン、主演アーノルド・シュワルツェネッガー)
・プロメア(2019年・監督今石洋之、主演松山ケンイチ)
・ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 永遠と自動手記人形(2019年・監督藤田春香、主演石川由依)

 書き出してみて気づきましたがだいぶ満遍なく観ているつもりだったけど2000年代だけ無かった。惜しい(笑)。
 来年はどんな映画に出会えるのでしょう。そして映画にも世の中にも明るい話題が出てきますように。

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「鬼滅の刃」の興行収入が300億に到達し、いよいよ歴代興収のトップに躍り出ようかという折に今夏リバイバル上映された「千と千尋の神隠し」が約9億数字を伸ばして引き離したと先日報じられました。そうは言っても今の勢いならいずれ追い抜くことにはなるのでしょう。しかしながら公開から約20年の時を経てもそれだけの数字を叩き出せる「千と千尋の神隠し」にはやはり化け物じみたパワーを感じざるを得ません。
 2001年、スピルバーグの「A.I.」や「ハリー・ポッターと賢者の石」などがひしめく中で巨匠と呼ばれるまでになった宮崎駿が手掛け、配給である東宝が本気で勝ちに行った1本である「千と千尋と神隠し」と、今年映画館が休業を余儀なくされそれがようやく明けたとは言え国内外のメジャー作品が次々と延期や上映中止になり「これが当たらなければ映画産業そのものが死にかねない」苦境の中で起死回生の期待を背負った「鬼滅の刃」、取り巻く世情は違えどその時頂点にいたのが共にアニメであるという意味こそ大きいでしょう。

 こんばんは、小島@監督です。
 「鬼滅の刃 無限列車編」も10年後20年後にある種のノスタルジーと共に再発見される作品であるといいですね。

 さて、今回の映画は「新解釈・三國志」です。

 漢王朝後期から三国時代を描いた歴史書「三國志」に歴史学者・蘇我宗光(西田敏行)が新説を発表した。彼は乱世の英雄たちにこれまでとは違う人物像を見出していた。
 酒を飲んで酔っている時だけ大言壮語を吐くが基本的に戦嫌いでやる気がない劉備玄徳(大泉洋)は、酔った時の一言がきっかけで関羽雲長(橋本さとし)、張飛翼徳(高橋努)と義兄弟の契りを交わし黄巾党の反乱を鎮圧すべく出兵する羽目になってしまうが。

 近年は映画だけでなくドラマや舞台にと間断なく作品を発表し続けている印象のある福田雄一の、今年だけでも3本目となる映画は三國志を題材にしつつ、自分のフィールドに引き寄せて自由闊達なコメディーを繰り広げる1本です。「銀魂」や「今日から俺は!」などコミック原作の実写化が多い福田雄一監督ですが、そのフィルモグラフィーを観ればムロツヨシを主演に迎え日本史上名高い人物たちでコメディーを展開した「新解釈・日本史」や落語の「芝浜」を現代のホストクラブを舞台に翻案した「明烏」など古典に対しても果敢に挑戦した作品が見受けられます。というか発表した作品が少ないだけで古典や歴史は実は題材としては割と当人の好みなんじゃないでしょうか。

 主演は意外にもこれが福田監督作品には初出演となる大泉洋。監督の要望に見事に応え、ひたすらぼやきまくるゆるい劉備玄徳を好演。ムロツヨシや佐藤二朗、小栗旬、山田孝之と言った福田作品の常連とのアンサンブルも楽しい作品になっています。特に福田雄一作品には欠かせないムロツヨシとの掛け合いが絶品。これは今後別の作品でもう一度実現してほしいくらいです。
 一方で欠点も厳然として大きくあり、これが福田作品を初めて観る、という方ならばともかく「勇者ヨシヒコ」などで見慣れた方にとっては「期待通り」ではあっても「期待以上」にはならない点です。出演陣の豪華さこそ目が眩みますが全体的にテンポが平板でTV的な楽しみ方が主軸になってしまっているので「映画」としてもう一つ突き抜けた何かが欲しかったような気がします。

 とはいえ年末の忙しない時期に観るならこれくらいライトな方が丁度いいかもしれません。一時肩の力を抜いてノー天気に行くのが多分一番のスタンスです。ご興味のある方は、どうぞ何も考えずに映画館に行きましょう(笑)

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先日nintendo e-shopを覗いていたら「グランディア HDコレクション」がセール対象になっているのを見つけてうっかり衝動買い。
 「グランディア」はもう20年以上前にセガサターンで発売されていたRPGで、当時ボンクラ大学生していた私は、無鉄砲な少年が世界へ飛び出していきやがて大きな運命の中に踏み込んでいく清々しいまでに王道な物語に見事にハマってしまい、それこそ寝る間も惜しんでプレイしていました。音楽も素晴らしく、当時開催されたあるイベントでBGMを手掛けた岩垂徳行さんのサインをサントラCDにしてもらったのも懐かしい思い出。

 こんばんは、小島@監督です。
 年末年始は久しぶりに童心に帰って冒険の旅に出ると致しましょうか(笑)

 さて、今回の映画は「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」です。

 黒猫の妖精・小黒(シャオヘイ・声・花澤香菜)は人間たちの開発によって故郷の森を追われてしまい新しい住処を探す旅に出た。
 ある時、小黒は人間の青年たちに襲われてしまう。小黒を救ったのは風息(フーシー・声・櫻井孝宏)と名乗る妖精だった。風息に連れられある島を訪れた小黒はそこで風息の仲間である洛竹(ロジュ・声・松岡禎丞)、虚准(シューファイ・声・斉藤壮馬)、天虎(テンフー・声・杉田智和)ら妖精たちと出会う。小黒が安息の地を得たと思えたのも束の間、人間ながら最強の妖術を使いこなす無限(ムゲン・声・宮野真守)の急襲を受ける。風息たちは辛うじて逃走に成功するが小黒は無限に捕まってしまう。無限は小黒を「館」と呼ばれる人間と共存する妖精たちが暮らす場所へ連れていこうとしていた。

 実はアニメで今一番熱い市場は中国だったりします。1990年代頃までは日本はアメリカの下請けが中心で自国のアニメと言えば劣化コピーのような半端な作品が多かったのですが、2000年代に入り中国が国策として自国でのアニメ制作と放送を奨励し始め、そこに近年の経済成長が追い風となってクオリティ的にも世界市場に打って出られる作品が登場するまでになりました。2010年頃には既に市場規模としても日本を上回るまでになっています。近年では強力な経済力をバックにアニメーターを高給で引き抜く、なんて話も聞くようになりました。
 「羅小黒戦記」もそうした中で生まれた作品の一つで、ベースは2011年から続いていたWEBアニメになります。昨年夏中国で劇場版が公開されヒット作となり、日本では昨年末頃より一部のミニシアターで字幕版が公開されていました。小規模公開ながらその質の高さが評判を呼び吹替版が製作され全国公開されるに至りました。

 キャラクターデザインから物語、その演出に至るまでスタジオジブリや京都アニメーション作品など日本アニメの影響が強く出ている作品です。アクション描写には「NARUTO」のようなテイストも感じられることでしょう。シリアスな画面から突然デフォルメされて笑いを差し挟んだりするところなどはもう日本アニメのスタイルそのままともいえます。驚くべきはそれらの影響をちゃんと咀嚼し自身のものとして消化できており「劣化コピー」などとは言わせないクオリティにまで引き上げている点です。縦横無尽にアクションを展開しながら過剰なバイオレンスにはならない上品なバランス感覚も見事と言えるでしょう。
 実力派声優を取り揃えた吹替の出来も素晴らしく、音響監督岩浪美和氏の手腕も手伝って日本アニメを観るのとほぼ同じ感覚で楽しめるのも作品鑑賞への敷居を下げるのに一役買ってくれています。総合的にハイグレードなエンターテインメントとして成立している作品です。

 日本ではサブカルチャーの一翼として「アニメ」が爛熟と言えるまでに独自進化を遂げた一種の弊害として、ディズニーやピクサーの作品以外の海外アニメーションのほとんどはアート作品扱いになり小規模公開に追いやられて私のような映画ファン以外の目に触れられることが少なくなってしまっています。それを思えば今回の全国公開の意義は大きく、日本アニメが世界の潮流の中でどのような存在であるのかを俯瞰できる良いきっかけになるのではないかと期待しています。
 更に言を重ねれば先日「ウルフウォーカー」が日本公開されたアイルランドのアニメーション・スタジオ「カートゥーン・サルーン」がスタジオジブリの影響を公言しているように、日本アニメが蒔いた種子が今世界で開花しつつあるのを感じます。この新たな流れが日本アニメ市場に良い刺激をもたらせてくれることを祈ってやみません。

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先週のレイウォール君のブログにも登場した「ミリオンライブ」の新曲「NO CURRY NO LIFE」、妙に耳に残ります。今の「ミリシタ」のイベント曲でもあるので期間中はゲームをプレイしていれば必然何度も耳にすることになりますし、ゲーム中で観られるMVもコミカルで何だか印象に残ってしまいおかげで気づけば脳内無限ループ状態。どうすりゃいいの(笑)

 こんばんは、小島@監督です。
 アイマスに限らず聴くと何でか耳に残る曲ってたまに出くわしますね。そのうち歌えるようになりそう(笑)

 さて、今回の映画は「トータル・リコール 4Kデジタルリマスター」です。

 近未来、労働者であるダグラス・クエイド(アーノルド・シュワルツェネッガー)は美しい妻ローリー(シャロン・ストーン)と共に平凡ではあるが幸せな日々を送っていた。しかし、いつからか毎夜火星の夢を見るようになり、それにうなされるようになった。
 ある日、「理想の記憶売ります」というコピーに惹かれ、クエイドは非日常的な体験の記憶を販売する「リコール社」を訪れる。クエイドは「火星を救う秘密諜報員」というプログラムに興味を示しこれを体験することに決めるが、突如トラブルが発生しプログラムは中断。更にクエイドはその帰りに自身の同僚や妻ローリーからも命を狙われるようになってしまう。

 今でこそフィリップ・K・ディックと言えばその評価も確立しその作品もコンスタントに映像化されるようになりましたが、実はその存命中は1本のテレビドラマと数本のラジオドラマが製作された程度で映像化、特に映画とはディック自身が書き上げたシナリオまで残っていたりするのにも関わらず縁が薄いままでした。唯一存命中に製作が進んでいたのが「ブレードランナー」(1982年)でしたが、その完成を見届けることなく亡くなっています。
 ディック作品が現在のように度々映像化されるようになったのは没後、ある意味でその先鞭をつける格好となったのがこの1990年に製作された「トータル・リコール」です。短編「記憶売ります」を原作に、大胆に様々な要素を加味し翻案したアクションSFエンターテインメントに仕上がっていますが、現実と虚構の狭間で翻弄されアイデンティティの在りかに苦悩する主人公や人間に対し口答えする機械などにディック的要素を観て取れます。
 2012年にコリン・ファレル主演で同タイトルの映画が製作されていますが、こちらはリメイクというより原作小説に対しより忠実なアプローチで製作された再映画化と言った趣の作品になっています。

 この映画の監督は「ロボコップ」や「スターシップ・トゥルーパーズ」を手掛けたポール・バーホーベン。エロとグロとバイオレンスをふんだんに盛り込んだエンターテインメントをいくつも作り上げてきた監督で、特にこの作品ではアーノルド・シュワルツェネッガーというスターを主役に据えた事でその才を遺憾なく発揮した一本になっています。
 
 久しぶりにこの映画を観て感心するのは、作品の持つスピード感。クエイドが自分のアイデンティティを揺らがされてから最終的に火星存亡の危機に立ち向かうようになるスケールの大きな物語を展開しているのに上映時間は113分。2時間切っているのです。シュワルツェネッガーの筋肉に頼っている部分も大きいとはいえ多すぎるくらいにある要素に対して語り口に不足を感じさせないのはさすがの一言で、脚本を手掛けたダン・オバノン(代表作に「エイリアン」(1979)など)の手腕も大きいでしょう。
 映像としてはシュワルツェネッガーやシャロン・ストーンと言ったスターたちの競演はもちろん、特殊メイクの第一人者であるロブ・ボッティンの手による視覚効果も見事です。先進的なVFXで映画史にその名を刻んだ「ターミネーター2」が登場するのは翌年の1991年、「トータル・リコール」はアナログな特殊撮影の集大成ともいえる作品と言えるでしょう。

 緻密でスケールの大きなSF設定と、大抵の窮地は筋肉で解決する大味さが高次元で同居する、今観ても楽しい一本です。公開30周年を記念しての再上映が始まっており、この機会に是非スクリーンで楽しんで頂きたいですね。

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ここ1週間はもうずっと先週NHK-FMで放送されていた「今日は一日アイマス三昧!」の聞き逃し配信を聴き倒しておりました。アイマスの数多い楽曲群をトークと共に9時間かけて楽しむ特集番組です。敢えて多くは語りますまい。ただもう満喫と言い切れるほどに堪能しました。

 こんばんは、小島@監督です。
 年1回くらいで良いからまたやってくれないかな~。

 さて、今回はしばらくぶりに上映中の作品ではなく配信のものから1本。Amazonプライムを漁っていたら思いもかけないタイトルを見つけました。今回の映画は「雄呂血」です。

 正義感の強い若侍・平三郎(阪東妻三郎)は漢学者・松澄永山(関操)の娘・奈美江(環歌子)に恋心を寄せていた。しかし永山の誕生祝の宴の夜、家老の息子である浪岡(山岡桃太郎)の無礼をとがめたことで喧嘩になってしまう。しかし家老の威光を恐れる同門の者たちによって平三郎一人のみがその咎を責められてしまった。また後日、奈美江を侮辱した家中の若侍を懲らしめた事が逆に永山と奈美江の誤解を招き、破門されてしまったばかりか故郷にもいられなくなってしまう。
 無頼の浪人に身をやつし心が荒んでいった平三郎、そんな折にある小料理屋で奈美江に似た風貌の女性・千代(森静子)と出会い、平三郎の心はかき乱される。

 1925年に製作された、伝説的とも言える剣戟映画(いわゆるチャンバラ映画)映画です。善意から起こしたことが誤解を生み、それが更なる誤解を招いて破滅の道へと陥っていく男の姿を描きます。主演の阪東妻三郎は当時まだ23歳でしたが既に多大な人気を得ていたムービースターであり、自身が主宰となってのプロダクションを立ち上げ、「雄呂血」はその第1作として製作されました。

 この映画の名を不動のものとしたのはクライマックス。実に27分という長丁場での大立ち回りが展開します。上映時間は74分なので実に3分の1がクライマックス。縄や十手やさすまたなどの多くの得物が入り混じり石は投げる瓦も投げる目つぶしまでする乱戦ぶりを長回しやパンニングを駆使して見せる様は、一人斬る度に見得を切っていた当時の歌舞伎的な殺陣の見せ方から一線を画す革新的なもので世に剣戟ブームを巻き起こしただけでなく後の映画製作に多大な影響を与えました。しかも驚くべきことにこれほどの長丁場であるにも関わらず同じテを二度使っていないというから驚きです。
 この殺陣を組み上げたのは市川桃栗という殺陣師ですが、興味深いことに日本映画史に残るこの作品の殺陣を手掛けながら出身や経歴は今に至るも良く分かっていない人物です。ただ彼の弟子に石原裕次郎や小林旭ら昭和の映画俳優にアクション指導(格闘の演技という意味で「技斗」と呼ばれていた)を行った高瀬将敏がいます。

 現代的な視座から鑑賞すると、誤解が更なる誤解を呼び転落していく男の悲哀に今日にも通ずるものを見出せる一方で「一本気で正義感の強い」とされる平三郎の性格も、今観れば直情的かつ独善的で思い込みの激しいストーカー気質にしか見えない部分が多々あり共感しづらいところも多いでしょう。それでも90年以上の時を経てなお色褪せない迫力を有した作品です。
 製作時期が時期なので当然モノクロで無声(サイレント)映画なのですが、Amazonプライムで配信されているのは音楽と活弁士の語りが付加されたバージョンとなっておりかなり観易くなっています。会員になっている方は是非映画史上名高いこの逸品に触れてみてほしいですね。

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先週ボジョレー・ヌーヴォーが解禁されました。コロナ禍の只中で例年通りではなかったのもありますが、今年のヌーヴォーは思い入れ深いものになりました。
 実は今年は初めて輸入前の現地法人とのやり取りから任されることになり、最初に購入の打診を送ったのは5月の連休明け。その後、立てようがない需要予測に翻弄されたり発注した後の通関のための書類のやり取りに四苦八苦したり、コロナ禍で飛行機が減便されていたのでそもそも現地をいつ出港されるかから不透明だったりとこの1~2か月は増加する一方の残業時間と共に本当に心身ともにキツい時間を過ごしました。
 どうにか商品も無事入荷し解禁に漕ぎつけることができ、いくつかの後始末を残して今はひと段落といったところです。

 こんばんは、小島@監督です。
 そんな今年のヌーヴォーは、普段のあっさりとした、悪く言えば水っぽい印象を覆すかなりしっかりとした味わいをしています。少し完熟した甘さも感じるので今年のボジョレー地区は夏場結構暑かったのでしょう。何気に美味しいのでたまにはワインもいかがでしょうか。

 さて、今回の映画は「今日もどこかで馬は生まれる」です。

 9万人の人がひしめく東京競馬場。高らかに鳴り響くファンファーレと共にG1レースが幕を開けた。出走する十数頭のうち勝利の栄光に浴するのは1頭のみ。多くの競走馬はこの場に立つことも無く引退を余儀なくされる。引退した競走馬は、その後一体どうなるのであろうか。この問題に当事者たちはどう向き合っているのか。さまざまな立場で馬と関わる人々を訪ね、彼らの想いを聞く。

 映画の中でも語られますが、JRAの売上高は実に2兆7000億にも上りその国庫納付金は3000億にもなるそうです。そんな華々しい場に立てる者は少なく、またその時間も短い。野球やサッカーなどのプロ選手も現役でいられる時間よりそうでない年月の方が長いと言われますが、屠畜される馬も少なくない競走馬の世界はさらにシビアなものであると言えるでしょう。セカンドキャリアとして再調教されて乗馬クラブの所属になる馬も多いそうですが(自分も乗ったことありますし)、人を乗せられなくなった馬のその後のサードキャリアとなると最早統計も無いそうです。
 この映画は、馬に関わる多くの者たちへのインタビューを通して競馬産業の中で生きる人たちの想いを浮かび上がらせます。監督平林健一を始め、広告映像制作会社に勤める若手クリエイターたちのチームによって資金をクラウドファンディングで募る形で製作されました。

 主題に対し、本当に多くの人への取材を行ったのが見て取れるドキュメンタリー映画です。インタビューした相手も競馬場に足しげく通うファンや馬主、騎手だけでなく競走馬の生産・育成を行う牧場のオーナーやスタッフ、調教師、厩務員を引退後も馬に関わる生活を選んだ者や元競走馬をパートナーに馬術大会への出場を目指す選手、馬を屠畜し食肉へと加工する工場の職員、引退馬のセカンドキャリアを支援するNPO代表、人を乗せられなくなった馬のために養老牧場を営む者、ジオファームを立ち上げ放牧した馬の糞尿で堆肥を作って農家へ卸したりそれを利用してキノコを栽培する者、と競走馬が「生まれてから死ぬまで」のどこかに濃密に関わるさまざまな人々にカメラを向けています。
 競馬を趣味している方には既に承知している事実をなぞっているだけの箇所もあるのかもしれませんが、乗馬クラブに通っていた時期があるとはいえ気が向いた時にG1レースをTVで見る事がある程度の私には新鮮に映るトピックの方が多いです。

 競走馬の世界は人間が作り出した枠組みの世界であり、本来の生物の営みとは一線を画します。しかし兆に届くほどに産業として巨大化しており多くの者の生活を支える場になっている以上その枠組みを生半可に壊すことは最早出来得ないでしょう。引退馬の在り方に対し多くの葛藤を抱えながらその道を模索する者たちを活写しながらも安易な結論を提示しないこの映画のスタンスは、タームに対して「答えなどは無く、あがくしかない」ことをよく理解していると言えます。

 丹念に作りながらも94分とテンポ良くまとめられていてダレることが無い一方で、かなり素朴な印象を受けるのは若手作家ならではというところでしょうか。作中ある競走馬について度々言及されるのですが、特にテロップなどで概要を解説したりはせずに語りっぱなしになっているのは不親切なのかそこに興味を持って調べるというアクションを起こして欲しい意図の表れなのか分かりにくいところなどもあったりもして熱意が先行し過ぎている感もありますが、語り口にまでそれを押し付けていてはいないところに好感が持てますね。
 高い問題意識と、それに真摯に向き合ったのが見て取れる力作。ミニシアターでの上映が中心なので鑑賞できる機会が限られる作品ではありますが、多くの方に観て頂きたい一本ですね。

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今年春ごろにクラウドファンディングで支援していた声優・小岩井ことりが音響メーカーとガチで開発した有線・無線両用イヤホンが先日遂に届きました。まだ有線でしか使っていませんが、待っただけのことはある良い音してます。あまりイヤホンとかこだわらない方の人だったので、こういうちゃんとしたもので聴く楽曲の音はそれ自体が何だか新鮮。

 こんばんは、小島@監督です。
 ちなみに無線だと小岩井ことりほかアイマス声優数名が収録したシステム音声が耳元で聴こえるのさ、フフフ。

 さて、今回の映画は「プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日」です。

 ある土曜日の朝、目覚めたのどか(声・悠木碧)は傍らに眠るラビリン(声・加隈亜衣)が奇妙な形のライトを持っていることに気づく。しかしそれが何かラビリンに尋ねても何も覚えていないという。ちゆ(声・依田菜津)とひなた(声・河野ひより)と共に宿題を済ませる約束をしていたのどかはひなたの家に向かう。その道の途中でのどかはひかる(声・成瀬瑛美)とはな(声・引坂理恵)という少女と出会う。

 コロナ禍において延期や中止など苦渋の決断を迫られたコンテンツは数限りなくありますが、このプリキュアシリーズや仮面ライダー、スーパー戦隊といったいわゆる「ニチアサ」は毎年新作を放送し定期的に2~3本の映画も製作しているという性格上その中でも特にタイトな立ち回りを強いられたコンテンツと言えるでしょう。
 本来3月に公開が予定されていたこの「プリキュアミラクルリープ」も2度の延期の末、従来なら単独タイトルの映画が公開されるシーズンでの封切りとなりました。一方で仮面ライダーとスーパー戦隊の方は夏の2本立て映画を中止してライダーは年末恒例の2作品タイアップ映画(今年はゼロワンとセイバー)を準備し、スーパー戦隊はいわゆる「VSシリーズ」を公開していた新春に単独での映画の公開を予定する形を取りました。他方でTV放送の方は仮面ライダーゼロワンの話数を短縮し通常の時期にセイバーの放送を開始したあたりを見るに他の2タイトルも同様の流れを追うのではないかと思われます。

 話を映画の方に移しましょう。
 恒例の複数タイトルとのクロスオーバー映画である「ミラクルリープ」ですが、今作では明確に物語の主軸を「ヒーリングっど♡プリキュア」のメンバーに据え、「HUGっと!プリキュア」と「スター☆トゥインクルプリキュア」のキャラクターは客演という立ち位置になっています。キャラクターのポジショニングが綺麗にハマっている分物語もグッと観易いものになり「同じ時間を繰り返す」というSFの定番ともいえるシチュエーションにもスッと入っていけるようになっています。いくらでも深刻な状況が作れるテーマですが、比較的ライトなところで留める辺りにメインターゲットを忘れていない姿勢が伺えます。

 また、こういうクロスオーバー映画のように主役の側の圧が強い作品にとっては対決するヴィランが魅力的であることが不可欠ですが今作のヴィラン・リフレインは紳士的な性格ながら妄執に突き動かされるキャラクター性に加え演じる平田広明の声も相まって非常に印象深いものになっており、映画への見応えを高めてくれています。

 本来は春に公開を予定していた作品だけあって作中で花見をするシーンが登場したりキュアグレースのこの映画だけの特別フォームが桜をモチーフにしている物だったりと春爛漫なところが秋深まる時期に鑑賞している分かえって物寂しく感じられるのが難点ですが、総じて期待を裏切らない良作と言える逸品です。
 思えばこの病禍が世界中に広がる昨今に翻弄されながらも「愛で地球を癒す」ことを謳う「ヒーリングっど♡プリキュア」は奇しくも時代との親和性が非常に高い作品となりました。これからクライマックスへ向かうことになりますが、どうのような着地点に辿り着くのか、今から楽しみです。


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