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ちゅうカラぶろぐ


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「アイドルマスターシンデレラガールズ」の10周年を記念するOVA「ETERNITY MEMORIES」の配信イベントが昨日あり、がっつり鑑賞してました。ゲーム内で好評を博したイベントをベースにしたエピソードを始めとして、190人のキャラクター全員が登場するなど10年間の軌跡をこれでもかとばかりに盛り込んだ50分間。情報量が多すぎてちょいと追い切れないレベルの密度でしたが、このごった煮的なところもデレマスの魅力。今週末のライブを前に弾みを付けてくれる良いものが観れました。

 こんばんは、小島@監督です。
 作中、初めてのCDのリリースイベントを基にしたカットがあったのですが資料用としてもほとんど写真が残っていなかったのにたまたま作画スタッフの1人が当時1ファンとしてイベントに赴き撮影した写真を持っていてそれを資料として描き起こしたそうです。何という縁。
 僅か数秒のショットにも、時に歴史が宿る事があるものです。

 さて、今回の映画は「NOPE/ノープ」です。

 南カリフォルニアの片田舎で映画撮影に使われる馬の飼育をして暮らすヘイウッド家。しかし当主で優れた調教師でもあるオーティス(キース・デイヴィッド)はある日空中からの落下物に当たり事故死してしまう。跡を継いだ息子のOJ(ダニエル・カルーヤ)だが父のようにははうまくいかず、妹エメラルド(キキ・パーマー)とと共に撮影現場に向かうが、そこでトラブルを起こし仕事を不意にしてしまった。
 やむなくOJは牧場の近くで西部劇のテーマパークを経営している元子役俳優のジュープ(スティーブ・ユアン)に馬を何頭か売りに出さざるを得なくなってしまう。
 その日の夜、停電が発生し。馬たちが怯えだした。OJは上空に巨大な「何か」が存在するのを目撃する。

 「ゲットアウト」「アス」と言った個性的な作品で脚光を浴びたジョーダン・ピール監督の長編第3作、過去作は配信でしか観ていないのでちゃんとスクリーンで一度鑑賞してみたいなと思っていたところに新作が来てくれました。モチーフとしては未確認飛行物体、いわゆる「UFO」ものですが、そこはジョーダン・ピール監督、一筋縄ではいきません。空に現れた飛行物体、それに遭遇したOJたちは恐ろしいとは思いながらも逃げるどころか何とどうにかしてUFOを撮影して売り込んで一獲千金を目論みます。何ならギリギリまでおびき寄せようとさえするクソ度胸ぶりを発揮。「アス」あたりでも見受けられましたが監督のこの独特の明るさが今作でも表れています。
 また、今作の撮影監督を務めたのは「TENET」などクリストファー・ノーラン作品でカメラを担ってきたホイテ・バン・ホイテマ。スタジオではなくロケ中心であることに加えてIMAXカメラをフルに駆使したダイナミズム溢れる映像が作品に更なる説得力をもたらしています。

 オープニングタイトルで、馬に乗った黒人騎手の姿を投影した連続写真が象徴的に登場します。作中でも言及されますがこれは1878年に写真家エドワード・マイブリッジが撮影した連続写真で、「ゾエトロープ」(回転覗き画とも言われる、静止画を早回ししてのぞき窓を通して観ることで画を動いているように見せる機械)などを使って「動画」としての再生が可能になった写真であり、即ち世界最初期の映像の一つです。ですが作中でも言われるように撮影した人の名は残っていますが騎乗していた黒人騎手の名は残っていません。映画ではこの騎手がOJの祖先という設定になっています。これが象徴するのは「忘れられた存在」たちです。それはOJとエメラルドが黒人であることだけでなく、CG技術の隆盛により実際の馬を使っての映画撮影の機会も奪われつつあることを指し示し、また、かつてはドラマで人気を博した子役であったジュープも「ある事件」をきっかけにショービズから遠ざかりかつての自身の栄光が残した財産を糧に田舎のテーマパークでどうにか再起を図ろうと足掻いていることも指し示しています。
 そんな表舞台から忘れ去られた人たちの前に飛行物体が現れた時、彼らは自分なりの方法で自分を忘却の彼方に追いやろうとする世界に一矢報いようとするのです。それが絶対的に不利で無謀な状況であろうとも。何故なら彼らが取り戻したいのはアイデンティティーだからです。

 ところでジョーダン・ピール監督、結構アニメ好きなようで、クライマックスに「AKIRA」を思い起こさせるシーンがあるほか、ところどころでオマージュしたと思しきショットが飛び出します。その辺を注意して観てみるのも一興でしょう。あと本編には特に関係ないものの何より個人的に目を引いたのが、OJら登場人物たちが何と「キリン一番搾り」を呑むシーンがあります。あれはさすがに身を乗り出してしまいました(笑)
 
 相変わらずクセは強く好き嫌いの分かれるタイプの作品ですが、独自路線を貫くジョーダン・ピール監督の才気煥発さがスクリーンを縦横無尽に駆け回るような楽しさは実に魅力的。俗っぽさ上等。危機的状況でも歯を食いしばり立ち上がる人間のたくましさをどうぞスクリーンでご堪能あれ。

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