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ちゅうカラぶろぐ


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「まだ6月だよ!もうちょっと手加減してくれ!」と言いたくなるレベルのここ数日の暑さ。ただ歩いてるだけで私みたいなお太り様は汗ダルマですよ。湿度が高いので髪の毛がチリチリするけど汗で整髪料が流れてしまうのでヘアスタイルを整えることを諦める時期がエグい形で今年もやって来ました。
 たまたま今日は仕事でフランスから来訪された方の応対をしたのですが、あまりの暑さで到着するなりその方の息が上がっており、冷房を強めに効かせて呼吸を整えて頂いてからのミーティングになりました。

 こんばんは、小島@監督です。
 ていうか今からコレで7月8月どうなるんだ…

 さて、今回の映画は「メタモルフォーゼの縁側」です。

 夫に先立たれ自宅で書道教室を営みながら独り暮らしをする75歳の市野井雪(宮本信子)は、夫の三回忌法要の帰り、暑さを避けるために立ち寄った書店で一冊の漫画を目に留める。「君のことだけ見ていたい」というタイトルのその漫画の表紙が気に入り、内容も知らぬままに購入する。漫画を読み始めてほどなくそれが男性同士の恋愛を描く「ボーイズラブ(BL)」コミックだと知り雪は驚くが、漫画家・コメダ優(古川琴音)の描く世界観に魅了され、いそいそと続きを買いに再び書店へ足を運んだ。
 一方、書店でバイトをする17歳の女子高生・佐山うらら(芦田愛菜)は、引っ込み思案で周囲と距離を置き冴えない日々を送っていた。そんなうららの秘かな楽しみはBLコミックを読んで胸をときめかすことだった。ある日、「君のことだけ見ていたい」の続きを買いに来た雪に在庫を尋ねられたのが縁で思いがけずBL話で盛り上がることに。17歳のうららと75歳の雪、BLコミックを介した2人の奇妙な友情が始まった。

 年齢も境遇も違い過ぎ、全く交差するはずの無かった2人にひょんなことから縁ができ、親友になる。しかもその2人を繋げるのはBLコミック。鶴谷香央理の同名コミックを原作に、「阪急電車 片道15分の奇跡」や「ひよっこ」など数多くの映画やドラマを手掛けた岡田惠和が脚本、「青くて痛くて脆い」などの狩山俊輔が監督を務めた作品です。どこかゆったりとした時間の中で、暖かな風合いの物語が展開します。

 とにかく芦田愛菜と宮本信子、主演2人の演技が素晴らしい作品です。
 何につけ自信の無いうららはBLオタクなことも周囲に知られたくなくて過剰に隠し気味。自分の買ったコミックのコレクションも本棚には並んでおらず、机の下の段ボールにしまわれています。カフェやレストランでも店員や隣のテーブルの客にそれが気づかれるのを嫌って大急ぎで隠そうとするくらい。
 一方、雪の方はそもそも「絵が綺麗だから買った」だけで「BL」という単語さえ知らない。ただそうであるが故に作品の世界観に偏見も無くハマってしまうのです。70を過ぎてなおこれまでの自分が知らなかった新しい世界を知る喜びに心浮き立たせる姿を名優・宮本信子が実にキュートに演じています。

 最初は「オタクとして」先輩であるうららが思いがけずBLの扉を開けた雪の手を取り、沼に引きずり込んでいきますが、二人の交流が深くなっていくと、今度は「人生の」先輩である雪の生き方に影響されて、うららは成長していきます。それは決して急激ではなく、むしろほんの一歩、というところなのですがその加減が絶妙です。
 キラキラした青春とは自分は無縁、と考えているうららですが、インドア派に見えて度々全力疾走するシーンが登場します。気持ちを持て余したり、何かを決意したり、あるいは楽しみな新刊が発売されたり。様々な感情の発露の結果として走るうららは無自覚でも青春の真っ只中にいるのです。それがささやかな一歩でも、人生の新たなステージへの第一歩。数年後数十年後にもしかしたら大きな変化に結びついているかもしれません。

 先週このブログで取り上げた「ハケンアニメ!」が誰かに「刺さる」アニメを作ることに懸命になるクリエイターたちの物語でしたが、こちらは「刺さった」人たちの変化を描く物語です。「好きなもの」がある、それを語り合える友人がいる、というのは本当に素晴らしいこと。主たるモチーフこそ「BL」ですが、「映画」「音楽」「ゲーム」でも、好きや夢中になれる「何か」を持つ方にはきっともう一人の自分を見るかのように共感できるはず。暑くなってきた夏の一日、縁側で涼むような気持でどうぞ。やはり「推し」は人生を彩ってくれます。

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