それなりに田舎暮らしなのを自覚しているので近所でたまにタヌキやイタチを目撃してもそれほど驚かないのですが、さすがに先日カモシカを見た時はビビりました。まさか天然記念物と間近にエンカウントする日が来るとは。おとなしい性格の動物なのでゆっくりと立ち去っていくのを静かに見ていましたが。ただ驚きの方が強くてスマホで写真を撮っておくのを怠ってしまったのは後悔しましたね(笑)
こんばんは、小島@監督です。
もしもまた現れるような事があったら今度は写真に収めておきたいけど、そう思ってる内は多分出くわさないものでして。
さて、今回は最近配信で観た映画の中から1本。「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」です。
ニューヨーク公共図書館、そこは本館に加えて92もの分館を有する世界最大規模の私立図書館。6,000万点という膨大なコレクションを有するだけでなく、地域住民や研究者たちへの質の高いサービスでも知られている、「知の殿堂」とでも言うべき施設の職員たちと様々な目的をもって訪問する利用者の姿を綴る。
1960年代からドキュメンタリー映画を製作し続け、「パリ・オペラ座のすべて」や「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」などで知られる巨匠フレデリック・ワイズマンが2017年に発表した作品です。
名称に「公共」と名を持つものの設置主体は自治体ではなくNPOで年間予算の20%ほどは民間からの寄付で賄っているというニューヨーク公共図書館の、観光客が立ち入れない領域にも踏み込みその様子を記録したドキュメンタリーです。公開当時気にはなっていたのですが、上映館がそれほど多くはなかった上に206分という長尺故に上映回数も少なく結局機会もつかめぬままに終わってしまった1本がいつの間にやらAmazonプライムで配信されるようになっていました。
観ていて驚くのは、「図書館って何だっけ!?」と思ってしまうほどこのニューヨーク公共図書館の利用価値の高さ、取り組みの多彩さです。作家や研究者の講演会やトークショー(リチャード・ドーキンスやエルヴィス・コステロなどが映画に登場する)、読書の感想会、詩の朗読会だけでなく手話の勉強会、シニア向けのダンス教室、子供向けのロボット製作会、就職支援や起業セミナーまで行っています。更には自宅にネット環境の無い人へWi-Fiルーターを貸し出したりPCの操作をレクチャーしたりもしています。しかもそれら全ての利用は原則として無料で提供されていると言うのが凄い。社会インフラとしての機能力と発信力の強さが尋常じゃありません。
92もある分館がそれぞれ専門性を特化させたものだったり地域的な特性に合わせたサービスを提供しているのも凄い。ハンディキャップを持った人にも同等のサービスが受けられるように設備とスタッフを揃えている所も映し出します。その扉を開けるものには文化的な生活を送るための全てを備えている、それは即ち「公共(パブリック)」の本質に他なりません。と同時に民主主義の「土台」ともいえる部分も浮き彫りにしていきます。
そんな施設に勤めるスタッフの姿も実に印象的。映画の中には度々ミーティングのシーンが登場します。民間の寄付と行政の支援金で成立する組織が多彩なサービスを提供するためにどうやって予算を獲得するか、獲得できない場合に質的向上をどうやって実現するか、既に解決済みであると思われている箇所が実はまだ途上にあることをどうやって意識してもらうのか、誰にも門戸を開きたいが、一人が長時間居座って他の人を締め出されかねないとホームレス対策に悩んだりと良くここまでオープンにしたなと感心するほど実践的な議論が交わされ実にエキサイティング。もちろん緊張感漂う静寂の中で古い資料の保存を行う様や書籍の朗読の録音風景など多様なセクションで働くスタッフのプロフェッショナルぶりも随所に登場し、興味深いシーンが尽きることがありません。
特定の誰かを主軸に据えて構成されてはいないので散文的にも見えますが、それでいて映像の持つリズムはどこか軽やかですらあり、エンドクレジットに入る直前のシーンのチョイスの小粋さまで含めて編集のセンスがずば抜けています。206分もあるというのに遊びも余剰もほとんどないと言っていいほど超高密度な情報量を誇り、絶品のドキュメンタリー映画と言えるでしょう。
それでもさすがに長すぎると言うのなら短いシーンの連続で構成された作品ですし自宅で観る分には手ごろなところで休憩をはさんでも良いでしょう。けれどこの長さに付き合うだけの価値を容易く見出せるほど知的な刺激に満ちた作品です。是非多くの方にご覧いただきたいですね。
こんばんは、小島@監督です。
もしもまた現れるような事があったら今度は写真に収めておきたいけど、そう思ってる内は多分出くわさないものでして。
さて、今回は最近配信で観た映画の中から1本。「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」です。
ニューヨーク公共図書館、そこは本館に加えて92もの分館を有する世界最大規模の私立図書館。6,000万点という膨大なコレクションを有するだけでなく、地域住民や研究者たちへの質の高いサービスでも知られている、「知の殿堂」とでも言うべき施設の職員たちと様々な目的をもって訪問する利用者の姿を綴る。
1960年代からドキュメンタリー映画を製作し続け、「パリ・オペラ座のすべて」や「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」などで知られる巨匠フレデリック・ワイズマンが2017年に発表した作品です。
名称に「公共」と名を持つものの設置主体は自治体ではなくNPOで年間予算の20%ほどは民間からの寄付で賄っているというニューヨーク公共図書館の、観光客が立ち入れない領域にも踏み込みその様子を記録したドキュメンタリーです。公開当時気にはなっていたのですが、上映館がそれほど多くはなかった上に206分という長尺故に上映回数も少なく結局機会もつかめぬままに終わってしまった1本がいつの間にやらAmazonプライムで配信されるようになっていました。
観ていて驚くのは、「図書館って何だっけ!?」と思ってしまうほどこのニューヨーク公共図書館の利用価値の高さ、取り組みの多彩さです。作家や研究者の講演会やトークショー(リチャード・ドーキンスやエルヴィス・コステロなどが映画に登場する)、読書の感想会、詩の朗読会だけでなく手話の勉強会、シニア向けのダンス教室、子供向けのロボット製作会、就職支援や起業セミナーまで行っています。更には自宅にネット環境の無い人へWi-Fiルーターを貸し出したりPCの操作をレクチャーしたりもしています。しかもそれら全ての利用は原則として無料で提供されていると言うのが凄い。社会インフラとしての機能力と発信力の強さが尋常じゃありません。
92もある分館がそれぞれ専門性を特化させたものだったり地域的な特性に合わせたサービスを提供しているのも凄い。ハンディキャップを持った人にも同等のサービスが受けられるように設備とスタッフを揃えている所も映し出します。その扉を開けるものには文化的な生活を送るための全てを備えている、それは即ち「公共(パブリック)」の本質に他なりません。と同時に民主主義の「土台」ともいえる部分も浮き彫りにしていきます。
そんな施設に勤めるスタッフの姿も実に印象的。映画の中には度々ミーティングのシーンが登場します。民間の寄付と行政の支援金で成立する組織が多彩なサービスを提供するためにどうやって予算を獲得するか、獲得できない場合に質的向上をどうやって実現するか、既に解決済みであると思われている箇所が実はまだ途上にあることをどうやって意識してもらうのか、誰にも門戸を開きたいが、一人が長時間居座って他の人を締め出されかねないとホームレス対策に悩んだりと良くここまでオープンにしたなと感心するほど実践的な議論が交わされ実にエキサイティング。もちろん緊張感漂う静寂の中で古い資料の保存を行う様や書籍の朗読の録音風景など多様なセクションで働くスタッフのプロフェッショナルぶりも随所に登場し、興味深いシーンが尽きることがありません。
特定の誰かを主軸に据えて構成されてはいないので散文的にも見えますが、それでいて映像の持つリズムはどこか軽やかですらあり、エンドクレジットに入る直前のシーンのチョイスの小粋さまで含めて編集のセンスがずば抜けています。206分もあるというのに遊びも余剰もほとんどないと言っていいほど超高密度な情報量を誇り、絶品のドキュメンタリー映画と言えるでしょう。
それでもさすがに長すぎると言うのなら短いシーンの連続で構成された作品ですし自宅で観る分には手ごろなところで休憩をはさんでも良いでしょう。けれどこの長さに付き合うだけの価値を容易く見出せるほど知的な刺激に満ちた作品です。是非多くの方にご覧いただきたいですね。
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