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ちゅうカラぶろぐ


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事前登録の期間が3年近くあった「ウマ娘プリティダービー」のアプリが遂にリリース。ぶっちゃけ私も事前登録1周年とか2周年とかを茶化し気味にネタにして実際リリースされないのではないかと思っていたクチなので「遂に」なんていうのもおこがましいのですが、立ち上げあるいはアニメ1期辺りからずっと追ってきたファンの方にはさぞ待ち望んだ瞬間だったことでしょう。
 プレイしてみたらこれがまた滅茶苦茶面白いのです。リリース時点で既にかなりのハイ・ボリュームなのも良いですね。割と時間泥棒な上にバッテリー消費も激しいので自宅でしかプレイできないのがちょっぴり難点ですが。

 こんばんは、小島@監督です。
 取り敢えずはサイレンススズカを秋の天皇賞で勝たせてあげたいですのぅ。

 さて、今回の映画は「トキワ荘の青春 デジタルリマスター版」です。

 1950年代、東京都豊島区。木造アパート「トキワ荘」には手塚治虫(北村想)が住み込み連日編集者がひっきりなしに彼の元を通い詰めていた。向かいの部屋で暮らす寺田ヒロオ(本木雅弘)はそれを横目に見ながら出版社に持ち込みを続ける日々を送っていた。
 やがてトキワ荘を去った手塚治虫と入れ替わるように「藤子不二雄」の名でデビューした2人の漫画家、藤本弘(阿部サダヲ)・安孫子素雄(鈴木卓爾)が住み始め、その後さらに石森章太郎(さとうこうじ)、赤塚不二夫(大森嘉之)、森安直哉(古田新太)、鈴木伸一(生瀬勝久)らが入居してきた。皆が皆雑誌「漫画少年」の投稿仲間だった彼らは寺田ヒロオを中心に「新漫画党」を結成。共に暮らしながら漫画の未来について語り合い、自身の漫画を出版社に売り込む日々を送ることになる。

 一つの文化が勃興したり新たな潮流が生まれる時、何人もの才ある者が一つの街に集う現象が起こることがあります。それは例えばゴッホやルノワール、クロード・モネら印象派とポール・シニャック、ジョルジュ・スーラら新印象派が台頭していた19世紀末のパリのように。1950年代、日本では稀代の天才・手塚治虫が牽引した戦後の漫画界を、彼の後に続こうと夢追い人達が集まったのは一つの街どころか小さな木造アパートでした。恐らくここまでミニマムな空間に多くの才能が集結した状況は世界的に見ても珍しい現象でしょう。そんな彼らの青春群像を本木雅弘演じる寺田ヒロオを中心に描く作品です。1996年に製作され、25年の時を経てデジタルリマスター版が製作されました。

 青春映画ですが実はそれほどアッパーテンションにはならない作品です。多くの小さなエピソードを点描して重ねながら淡々とトキワ荘の住人たちが漫画に苦闘する日々が描かれます。喜怒哀楽の表現も抑制が効いておりあまり「叫ぶ」ということがありません。劇的に変化しているはずの状況に比して起伏の少ない地味な映画のため、合わない方は絶対的に合わない作風です。しかしこの物静かな時間の中に微かな郷愁漂う澄んだ空気感はなかなかに見事な作品です。
 またこの映画、主演本木雅弘もさることながら共演している脇役たちにも注目です。阿部サダヲや生瀬勝久ら当時小劇団に所属してTVや映画への出演歴がほとんどなかった俳優たちの新鮮な演技が楽しめます。これは25年の時を経た今となっては作品の出来とはまたひと味違う見どころと言えるでしょう。

 主人公である寺田ヒロオは、1950年代の終わりに作中でも登場する「背番号0」と「スポーツマン金太郎」(今ではスポーツ漫画の一般的な手法となった、試合の場面にアナウンサーの中継コメントが入る、その嚆矢と言われている)というヒット作を生み出すものの、その後劇画ブームから来る映画的な画調と刺激的なストーリーが重用される潮流に抗い続けることができず、高度経済成長期を迎える中で藤子不二雄や石森章太郎が名声を勝ち得、また赤塚不二夫がギャグ漫画の地平を切り拓いていくその陰でやがては筆を折るに至り、その後はトキワ荘の住人たちともほとんど交流を深めること無く1992年にこの世を去ります。映画の終盤では既に時流に置き去りにされつつあることを予感する描写が登場し、寂莫とした雰囲気を漂わせながら終わります。
 
 実は作中に説明的な描写もほとんど無いためある程度予備知識が必要な作品ではありますが、日本の漫画の勃興期を描いた映画として一見の価値はあるでしょう。各地のミニシアターでリバイバル上映されている今、静かな美しさを持ったこの作品に是非触れてみて頂きたいと思いますね。


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