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ちゅうカラぶろぐ


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昨夏と今春に公開された劇場版で興味が湧いたので、「薄桜鬼」のテレビシリーズを本格的に観始めました。
劇場版は伝奇物の色合いが濃い作品でしたがテレビシリーズの方はむしろ時代物のカラーが強いイメージ。大河ドラマの様なたっぷりした尺があるわけでもないのに結構細かい史実を取り上げてたりしてディテールにこだわりが感じられるのが良いですね。

こんばんは、小島@監督です。
既に第2シーズンである「碧血録」に突入していよいよ物語に悲愴感が増してきました。どんな結末が待っているか楽しみです。

さて、今回の映画はスタジオジブリの新作「思い出のマーニー」です。

喘息を患う中学生の少女杏奈(声・高月彩良)は養母の勧めで夏の間親戚の家で療養するべく北海道の海辺の町までやってきた。
地元の子たちとも上手く馴染めずにいる杏奈はある日入り江で無人の洋館を発見する。
洋館に奇妙な懐かしさを覚え夢にまで見るようになった杏奈は、ある晩その館に夢で見たのと同じ少女マーニー(声・有村架純)と出会う。

ジブリの新作にして米林宏昌監督の新作映画は2人の少女の交流と友情を描いた作品です。北海道の海辺の町を舞台に繊細でどこかミステリアスな物語が展開します。

何と言っても金髪碧眼の少女マーニーの幻想的な可憐さが印象に残ります。この子を目的に映画館へ足を運んでも良いんじゃない?と思えるくらい可愛いです。

もちろん見どころはそれだけではありません。
喘息という病気以外にも様々な要因で心を閉ざす杏奈の心の揺れと成長をマーニーとの交流を通して描くこの作品は、セリフだけでなくその心情を背景美術や小道具にも仮託して表現します。
それは時に風鈴であったりスニーカーであったり蝋燭であったりします。また物語や心情の変化に合わせて干満する入り江や満ち欠けする月など女性的なメタファーが要所に取りこまれているのも面白いですね。
このあたり、監督米林宏昌の前作「借りぐらしのアリエッティ」でも見せたイマジネーションの広がりが「アリエッティ」とはまた違ったベクトルで展開している感じです。
反面、ジブリ映画ならではの欠点というべきかイマイチキャラクターの服装が洗練されていないので登場人物の一人がスマホを取り出すシーンに奇妙な違和感を覚えます。どうもジブリの絵柄は現代的なツールと相性が良くないようで(苦笑)、このあたり、ジブリ作品の今後の課題にもなって行きそうですね。
また、これが宮崎駿が監督していたらもっと少女たちの挙動にももっと躍動感、というかディープなこだわりが盛り込まれていたに違いないハズで、それと比べるとどうしても端正さが目立つ感じです。

杏奈とマーニーの交流は次第に思いもかけぬ方向へ向かって行きます。物語が進み、マーニーという少女が何者かを明かされるまでの2人の会話に潜む僅かな齟齬にぜひ注目してください。幻想的でそれでいてそこはかとなく同性愛的な香りを漂わせながら確実に「終わり」の時が近づいていく雰囲気に、私はついレ・ファニュの「カーミラ」を想起しましたがどうでしょう。無論そんなホラーな話ではないですよ。

爽やかでいながら切なさと温かさがいつまでも残るラストの余韻も絶品。
作中の時間が真夏という事もありますが、夏に楽しむのにぴったりの映画です。是非セミの鳴き声がうるさい内に映画館で楽しんでほしい1本ですね。



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昨日のニュースにジャズ・ベーシストのチャーリー・ヘイデンの訃報が。
「マイ・バック・ページ」(キース・ジャレット・トリオ名義)を始め、不思議な暖かみを湛えた「語る」ベースはまさに20世紀を代表するベーシストだったと言って良いでしょう。
ご冥福をお祈りします。

こんばんは、小島@監督です。
久しぶりにライヴでジャズを聴きたくなってきた。

さて、今回の映画は「最強のふたり」で首から下がマヒした富豪フィリップ役を演じて世界的な称賛を浴びたフランソワ・クリュゼの主演最新作、「ターニング・タイド 希望の海」です。

単独無寄港での世界一周を目指す4年に1度のヨット・レース「ヴァンデ・グローブ」
事故で負傷したフランク(ギヨーム・カネ)の代役としてレースに出場する事になったヤン(フランソワ・クリュゼ)は、初出場ながら5日目にして首位に立つなど好調な滑り出しを見せていた。
しかし漂流物に衝突して損傷したダガーボートを修理するためにカナリア諸島沖に停泊を余儀なくされる。
2日間に及ぶ修理を終えレースへと戻って行ったヤンはそこで思わぬものを目の当たりにする。いつの間にか船内にマノ(サミ・セギール)と名乗るモーリタニア人の少年が潜り込んでいたのだ。単独航海がルールのレースゆえ、失格になる事を危惧したヤンはレース本部に知られる前に近くの島にマノを降ろそうとするのだが、マノは頑なにヨットから降りたがらない。
フランス行きを切望するマノをどうするか決めあぐねているヤンの元に、本部を通して別のレース出場者からの救難信号が届いた。

フランスで4年に1度開催される世界唯一の単独無寄港世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」、そのレースをモチーフにレースに人生を懸ける男と切実な思いを持ってヨットに潜り込む少年の心の旅を描いた作品です。

何と言ってもこの映画の魅力はその映像に尽きます。ヴァンデ・グローブの全面協力の元、実際にレースで使われたヨットを用いて撮影されたというその映像はまさに圧巻。CGでは決して味わえない迫力がそこにあります。というかどうやって撮影したんだ?と思いたくなるようなカットもあるくらいです。
別に3D映画でもなんでもないというのに波のうねりや潮騒を余さず捉えるその映像に波しぶきが顔にかかってきそうな錯覚さえ覚えるほどです。
人独りの命など容易く飲み込んでしまいそうな海に小さなヨットで果敢に挑む人間の精神、その気高さ、昂揚、情熱や葛藤の全てを、さながらレースを追体験するかのように描き出していきます。

実は物語の運び自体はいかにもフランス映画というべきか、結構淡々としていてハリウッド映画の様な強調されたアップダウンは少ないのですが、「海」そのものが強烈に主張する映画なので退屈はしないです。

その迫力からスクリーンでの鑑賞こそ向いている作品だと思うのですが、東海3県でわずか1館だけのしかも限定的な公開しかないのが残念です。それでもスクリーンでなくともソフトや配信などで機会があれば観て欲しい逸品なのは間違いないですね。
それにしてもこういう作品がもっと公開館数が増えて触れる機会も増えれば洋画市場の裾野ももっと広がって活性化するんじゃないだろうかと思ってしまいますね(苦笑)

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先週放送された「ラブライブ!」の最終回、最後の最後でこれまでのムードをひっくり返す結末に盛大にズッコケました。確かに劇場版やアリーナライブを控えているなど「ラブライブ!」というブランドにエンドマークを付けるようなラストにはしたくないのは理解できるのですが、アニメ単体だけで観た場合、2期も後半に差し掛かって3年生メンバーの卒業が見えるようになってからのモラトリアムの終焉と青春のほろ苦さを丹念に描き出すドラマが素晴らしく、もしもエンディング前の穂乃香のセリフで終わっていたなら2010年代を代表する傑作に成り得たに違いなかっただけに複雑な気分です。

こんばんは、小島@監督です。
とは言え劇場版は公開されたらされたで観に行く気満々です。何だかんだμ’sの9人は気に入っていますのでね(笑)

さて、今回の映画は現在公開中の作品ではなく今週9日にBlu-ray&DVDがリリースされる「ホビット 竜に奪われた王国」です。先日ソフトのリリースに合わせた記念上映イベントで観る機会に恵まれました。

邪悪な竜スマウグ(ベネディクト・カンバーバッチ)に故郷を奪われたドワーフの王子トーリン(リチャード・アーミティッジ)は、13人のドワーフと灰色の魔術師ガンダルフ(イアン・マッケラン)とホビットのビルボ・バキンズ(マーティン・フリーマン)と共に故郷エレボールを奪還するために旅を続けていた。
邪悪なオークたちの追撃を躱しながら旅を続ける一行だったが、その最中に巨大蜘蛛の巣穴に紛れ込んでしまう。巨大蜘蛛に捕食されかけた一行を救ったのは、ビルボの機転と蜘蛛を退治に来た「森のエルフ」レゴラス(オーランド・ブルーム)とタウリエル(エヴァンジェリン・リリー)率いる闇の森の守備隊だった。

世界的に高い評価を得た「ロード・オブ・ザ・リング(以下ROTR)」3部作の前日譚に当たる「ホビットの冒険」を3部作を手掛けたピーター・ジャクソンが3部作として映像化。今回の「竜に奪われた王国」は「思いがけない冒険」に続く2作目に当たります。

実は「ROTR」は何度も観たくらいに気に入ってる映画なのですが「ホビット 思いがけない冒険」は観ないままに終わってしまったので結果的に今作も公開時はスルーしていたのですが、結構何とかなるものです。前作を観ていなくてもほとんど問題無い事に驚きました。
「ROTR」は非常に長大な原作を3部作に「まとめ上げる(と言っても総時間は11時間に及びますが)」ような濃密なダイナミズムに満ちた作品でしたが、「ホビット」は低年齢向けの比較的短い原作を3部作に「仕立て上げる」という原作に対するアプローチの違いも影響しているかもしれません。

原作が低年齢向けの作品である事は映画自体のムードにも影響しており、重厚な雰囲気に満ちた「ROTR」と比べるとずっと物語も分かりやすく軽妙なファンタジー・アドベンチャーになっています。

物語にいろいろ盛り込めた結果なのか、全編に亘り工夫を凝らしたアクションを楽しめるのも大きな特徴です。中でも中盤ドワーフたちが樽に入り込んで急流をオークやエルフに追いつ追われつしながら下って行くシーンと終盤鉄鋼精錬所でのスマウグとの対決は数多くのアイディアとギミックが活かされた非常に楽しいシークエンスです。

3D映画として製作されている事もあって奥行きを最大限に利用したショットが多いのも特徴で、今回は2Dでの鑑賞だったのですが3Dでも観てみたくなりました。もっとも2時間40分も3D眼鏡を掛けていたくない気持ちも強くちょっと複雑な気分ですが(苦笑)
しかしHFR48方式(ハイ・フレーム・レート。映画は通常秒間12~24コマで撮影されるが「ホビット」は秒間48コマで撮影されている)の3D映画を観る機会は現状コレだけですし、完結編は3Dで観てみたい気がしますね。

3部作ということの弊害と言うべきか、物語のボルテージが最高潮に達した瞬間に終わってしまうため終わった後の感情の持って行き場に困るのが難点ですが、娯楽作としては充分楽しめる1本ですし、長尺とは言えBlu-rayやDVDなら一旦停止も可能です(笑)
たまにはこういう重量級のファンタジー映画も悪くないですよ。

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昨日の歌会に参加された皆さんお疲れ様でした。
今回も過去最大の参加人数だそうで、とうとう最初と最後に集まる804号室にも全員が収まらなくなってきた感じですね。また今回はしばらくぶりにお会いできた方が多かったのも嬉しかったです。

こんばんは、小島@監督です。
それにしても一度挫折したような事でも何年も後に思わぬ形で誰かの役に立てたかもしれないというのは嬉しくなりますね。
やることだらけでテンパって無理をしてつまづいても何か必ず掴んでるさ。無駄なんて何もない。

さて、今回の映画は「聖闘士星矢LEGEND of SANCTUARY」です。

夜空を貫く流星のように地上に堕ちる一つの光。それは射手座の黄金聖闘士アイオロス(声・森川智之)だった。彼の両腕には赤子が抱かれていた。裏切り者として襲撃され、瀕死の重傷を負ったアイオロスは、偶然その場に居合わせたグラード財団総帥城戸光政(声・大杉漣)に赤子と後に訪れる運命を託し命を落とす。
16年後、赤子は光政の孫娘沙織(声・佐々木彩夏)として美しく成長した。その16歳の誕生日に沙織は執事の辰巳(声・島田敏)から自身の運命を知らされる。突如沙織は何者かの襲撃を受ける。窮地に陥った沙織を救ったのは、ペガサス星座の聖闘士星矢(声・石川界人)だった。

原作者車田正美のデビュー40周年を記念し、世界的と言っても良い彼の代表作である「聖闘士星矢」をフルCGで劇場アニメーション化。デザインや設定を大幅に刷新したキャラクターに、「十二宮編」をベースにしながらも大胆に再構築した物語で、初見の方だけでなく旧来からのファンも楽しめる作品になっています。

この映画の特筆すべきポイントはCGアニメそれ自体にあります。昨今のゲームのCGムービーや昨年公開の「キャプテンハーロック」のようなリアル系とも、またプリキュアシリーズのエンディングのようなセルアニメ調とも一味違うユニークなビジュアルをしており、それぞれに意匠を凝らした十二宮を駆け上がりながらCGならではのスピーディーかつスケール感のあるダイナミックなアクションを繰り広げます。

設定まで含めて一新されたキャラクター達も皆個性的。そそっかしいけれどどこまでも真っ直ぐな星矢や真面目が過ぎて天然の域に達している紫龍など多くのキャラクターが僅かな時間で強い印象を与えるアレンジが施されています。中でも特に強い印象を与えるのがヒロイン・城戸沙織と蟹座の黄金聖闘士デスマスク。原作の沙織は超然としてる上にかなりSっ気の強い人物なのですが、この映画では大きな運命に翻弄される等身大の少女として性格が根本的に変わっています。そして蟹座のデスマスクは顔つきにしろ性格にしろ「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジャック・スパロウを思い起こさせるようなブッ飛んだ人物になっています(声優も何とスパロウの吹き替えと同じ平田広明!)。たった93分しか上映時間が無いというのに1番フリーダムに振る舞っていて、愛され方が違います(笑)。彼の大活躍は是非スクリーンで味わっていただきたい所。

この映画で本当に欠点に感じてしまった事は1点だけ。予告編で大きくフィーチャーしているのに「ペガサス幻想」が作中使われていないという点に尽きます。どこかで使ってくれたならさらに評価が上がったに違いないだけにこの点残念でなりません。

しかしそこだけを以てこの素敵な作品をスルーするのはかなり勿体無いと言わざるを得ません。原作の持つロマンチシズムに加え、様々な新要素を盛り込んでギュッと圧縮させた非常に楽しい映画です。私、かなり気に入っております(笑)。是非多くの方にこの新しい「星矢」を堪能して欲しいですね。

そうそう、エンディングの後にもう1シーンあります。ご鑑賞の際はエンドクレジットが始まっても席をお立ちになりませんように(笑)

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先日たかちゃん、あーたむさん、フッチー君と私の4人で「相棒展Premium3」に行ってきました。
ドラマ「相棒」のセットや衣装、小道具を展示するイベントなのですが、展示物の中に「間違い」が仕込んであってそれを探すという趣向が施してあり単に眺めるだけでない分よりワイワイと楽しめるようになってました。

写真は相棒展中唯一撮影可能だった特命係のセット。ここだけは撮影可能どころか「SNS利用してガンガンアップしていい」とまでなっていたので遠慮無く行きました。正直こんなポイント用意してあると知ってたらちゃんとデジカメ用意しておけば良かった。

そしてこちらは「相棒」キャラクターグッズ1番人気という「角田課長のひまカップ」
毎度「暇か?」と言いながら特命係の部屋に入ってくる角田課長が良く手に持っているのと同じデザインです。ある意味「相棒」を象徴するアイテムなのでそりゃ買わざるを得ない。ていうか一緒に行った4人が全員買いました。
実際使ってみると結構使いにくかったりするのですが、まぁそこはそれ(笑)

こんばんは、小島@監督です。
こういうイベントはやっぱりグループで行って楽しむのが良いですね。

さて、今回の映画は「グランド・ブダペスト・ホテル」です。

それは一人の作家が語り始めるミステリーと冒険の物語。
1932年、格式高いグランド・ブダペスト・ホテルでコンシェルジュを務めるグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)。究極のおもてなしを信条とする彼を目当てに多くの客が訪れていた。
しかし、長年懇意にしていたマダム・D(ティルダ・ウィンストン)が何者かに殺害。彼女が死の間際に莫大な遺産をグスタヴに相続させる旨の遺言を残していた事で陰謀に巻き込まれる事になってしまう。ベルボーイのゼロ(トニー・レヴォロリ)と共に真相を探るためヨーロッパを巡る彼はホテルの威信とコンシェルジュとしての誇りを守る事が出来るのか?

「ムーンライズ・キングダム」や「ダージリン急行」を手掛けたウェス・アンダーソン監督の最新作はちょっぴり風変わりでとってもゴージャスなエンターテインメント。

1932年に公開された映画の中に一流ホテルを舞台に宿泊客や従業員の悲喜劇を描いた「グランド・ホテル」という物があり、同じ場所に集った人物の行動を同時進行で描く物語を「グランドホテル形式」と呼ばれる所以にもなりました。似たようなタイトルを持つこの作品も主舞台が1932年である事を鑑みても「グランド・ホテル」を意識してるのは間違いないですが、群像劇である点は同じでも、「グランド・ブダペスト・ホテル」は主軸になる物語に多くの別のエピソードが付加されていくという形なのでちょっと違いますね。

物語は1930年代、60年代、80年代と3つの時代に渡る回想劇として描かれ、それぞれの時代ごとにスクリーンサイズが変わるのが大きな特徴です。
見た目からして個性的なキャラクター達やホテルの外観を堂々とジオラマと模型で撮影したりマット・ペインティング(実写映像と背景画像を合成する技術)を大胆に使ってみたりとリアリティよりも「見世物」である事を前面に打ち出し、またスタンリー・キューブリックなどの映像技法を織り交ぜたりしてユニークでありながらどこかクラシカルなテイストの映像を楽しめます。

主演のレイフ・ファインズを始めティルダ・ウィンストン、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、シアーシャ・ローナン、エドワード・ノートンなど「超」がつくほど豪華な俳優陣も見どころで、世界遺産に登録されたドイツのデパートを利用したホテルの内装も含めて実に煌びやかな雰囲気が全編を包んでいます。

監督の持ち味なのか、突発的にグロテスクな笑いを取りに行く瞬間があり人によってはそこでドン引きしてしまう可能性も無くは無いのですが、これでもかとばかりにアイディアと工夫が詰まった心底楽しい映画です。ハリウッドの王道スタイルとは一味違った作品ですが、是非このおもちゃ箱をひっくり返したかのような映画を楽しんでみてほしいですね。

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先週から始まったブラジルワールドカップ、日本の初戦はコートジボワールを相手に1-2で敗北。
結果以上に驚かされたのはコートジボワールの選手ドログバの圧倒的存在感。後半途中からの出場でしたがピッチに入るなりスタジアムから上がる大歓声、その後5分と経たずに2点を挙げてしまうほど選手たちの動きにスイッチを入れる、小宇宙(コスモ)すら見えてしまいそうなほど1人だけ明らかに格の違うその様はまさにエース。悔しいけれど惚れ惚れするほどでした。
そりゃ内戦だって止められるわ。

こんばんは、小島@監督です。
しかし前回優勝国スペインが初戦で1-5の大敗を喫したりコスタリカが前回4位のウルグアイにジャイアントキリングしたり、ワールドカップにはやはり魔物が潜んでいるとしか。

さて、今回の映画はジェイソン・ステイサムの主演最新作「ハミングバード」です。

かつて特殊部隊を率いた軍曹でありながら戦地で犯したある罪によって軍から逃亡し家族や社会から離れロンドンの片隅でホームレスとして生きる男ジョゼフ・スミス(ジェイソン・ステイサム)。
ある日、心を通わせたホームレスの少女が街のマフィアに拉致され、自身も追われる事に。辛うじて追っ手を躱したジョゼフが逃げ込んだ場所、それはコヴェント・ガーデンの高級アパートだった。幸運にも家主が不在な上に長期休暇で半年以上は留守にすることを知ったジョゼフはそのままそこに居着き、他人になりすまして少女の消息を追う事にするのだった。

「トランスポーター」や「エクスペンダブルズ」で知られるジェイソン・ステイサムの最新作はトラウマに苦しむ元特殊部隊員のホームレスという役どころ。タイトルの「ハミングバード」とは小型無人偵察機の事を指していて、逃亡兵であるステイサムを秘かに捜索し続ける存在であり、同時にジョゼフのトラウマの象徴として彼の悪夢の中にも現れる存在です。

この物語を面白く、また味わい深くしているのはジョゼフが高級アパートに逃げ込んだ後、家主が長期不在なのを知ってそのまま居着いてしまうというところ。段ボール小屋からふかふかのベッドに移ったジョゼフはそこで何年ぶりかの安眠を得られることになります。さらに面白いのは家主のキャッシュカードまで見つけながら浪費三昧な生活を送るようなことはせず、自分と少女の人生を取り戻すべく就職口まで見つけ出すのです。
この2つの世界の対比を演出するロンドンの街並みを映し出すカメラワークも見どころです。

ホームレスの頃より交流のあった修道院のシスターとのロマンスとも言い切れない淡く微妙な関係もポイント。シスターもまたジョゼフ同様心に「罪」を抱えており、物語に更なる深みを与えます。

しかしながら予告編などではアクションを謳ってたりしますが、実はアクションシーンはかなり少なめ。ステイサム主演だからとアクションを期待していくとかなり肩透かしを食うので注意が必要です。物語の質とは別にちょっぴり物足りなく思ったのは認めます(苦笑)
この映画におけるステイサムはアクションというより彫りの深い渋みをこそ味わうべきのようです。

それでもサスペンスというより社会に居場所がなくなった男の再挑戦の物語として、苦みと渋みの中にほんのかすかな爽やかさを宿すラストの後味まで含めて期待以上に高質な映画です。
なかなかに観る価値のある1本ですよ。

それにしても今年は8月に「バトルフロント」、11月には「エクスペンダブルズ3」とステイサム当たり年(ついでに言うとどちらもスタローン絡み)。ファンには堪らない年になりそうです笑)


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昨日夕方に強い雷雨が降ったようで1時間近く停電になり「ハイキュー!」と「ベイビーステップ」がちゃんと録画されてなくて軽くショック。「ハイキュー!」の方は早々に配信も始まるのでそれでフォローしようかと思うのですが、「ベイビーステップ」は再放送待つしかないかも。
更に言えばその時私は名古屋から帰る電車の車中で2時間も立ち往生。ぎゃふん。

こんばんは、小島@監督です。
最近は仕事でも遊びでも出かけると帰宅時間は9時かそれ以降になってしまう(苦笑)

さて、今回の映画は「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」です。
2010年から続くシリーズも現在公開中の「episode7 虹の彼方へ」で遂に完結。
「逆襲のシャア」の3年後の世界を舞台にアナハイム工専に通う少年バナージ(声・内山昂輝)が謎めいた少女オードリー・バーン(声・藤村歩)と出会う事で地球連邦を転覆させる可能性すらあると言われる「ラプラスの箱」を巡る謀略と闘争の渦に巻き込まれていきます。
当初6部作のOVAとして製作されていたようですが、最終的に1作増えて7部作になり実質的な総時間は2クールのTVアニメとほぼ変わらないボリュームになりました。

全作を通して言える事として、劇場上映も睨んだ作品だけあって非常に上品で端正な作画が展開する事、澤野弘之の手によるBGMのスコアがもう絶品な事と選曲のセンスの冴えが抜群である事が挙げられ、これら全てが上手い具合に相乗効果をもたらし実に格調高い映像を楽しめます。
もしBlu-rayやDVDをお持ちの方は字幕表示をONにして観てみてください。洋画的な雰囲気が割増しになります(笑)

原作小説を手掛けた福井晴敏(「亡国のイージス」「終戦のローレライ」など)は、個人的に好きな作家で多くの作品を読んではいますが少々くどいというか「脂っこい」ところがあり、それが人によっては魅力に映る反面欠点にもなるところなのですが、その「脂っこさ」が福井テイストを残したまま上手い具合に削ぎ落とされて観易くなっている、その料理の仕方にも感心します。

シリーズのご他聞に漏れずこの作品も少年が「ガンダム」と出会う事で物語が動き始めるのですが、「赤い彗星の再来」と言われるフル・フロンタルに池田秀一をキャスティングしている他、シリーズとの類似点を敢えて多く散りばめながらそれでいて「過去の呪縛」と「未来への可能性」の相克を描くこの物語は、「UC」が「ユニコーン」だけでなく「Universal Century(宇宙世紀)」とも読めるダブルミーニングである事や終盤に明かされる「ラプラスの箱」の真実も合わさり1stから始まる連綿と続くシリーズの広がりとファンそれぞれが持つ「ガンダム」のイメージの多様化の暗喩と見る事も出来、なかなか示唆に富んでいます。
そう言う観点からこの作品を観ると、「ラプラスの箱」の守り手である老人サイアム・ビストに永井一郎(episode7も生前に収録が済んでいたようでそのまま演じていらっしゃってます)を持ってきたのも示唆的で、1stガンダムの印象的なあのナレーションはサイアムが一年戦争を回顧しているようにも感じられるようになるのが見事で、絶妙な配役といえると同時に映像化ならではの味わいでしょう。

無論こんな小難しい事を考えずともボーイ・ミーツ・ガールから始まる少年の成長物語としてもかなり直球の作りなのでシンプルに楽しむことも可能です。敵であれ味方であれ様々な大人たちとの交流の中で一つ一つ成長していき最終的に大きな決断をするに至るバナージとオードリー、そして彼等と共に大人たちも成長します(もちろんしない人もいますが(笑))。その姿にはきっと大きな感動を呼ぶことでしょう。

劇場公開と同時にソフトもリリースされ既に様々なスタイルで全作品の視聴が可能になっています。ガンダムファンの方もそうでない方も観てみる価値はありますよ。


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