ちゅうカラぶろぐ


[37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  [45]  [46]  [47
緊急事態宣言に基づく自粛の影響が長引くにつれ、お酒を含めた飲食の傾向が大きく変わってきました。「オンライン飲み会」をする人が増えたことで結果的に「宅呑み」需要が上り、ビールやチューハイの缶だけでなく、実は通販では自分で店で買って持ち帰るには重たい一升瓶の日本酒や焼酎の売上が伸びたりしています。また卸業者的にはテイクアウトを始める飲食店が増えたので持ち帰り用の容器や割りばしなどの需要が増加したりしました。

 こんばんは、小島@監督です。
 オンライン飲み会、私もやってみましたが際限なく駄話して時間が過ぎていく感じが(苦笑)でもやっぱり人と飲むなら実際に顔合わせて飲みたいですね。テイクアウトして自宅で食べたりもいいですが、その「場」で食べてるから良い、というのもありますし。

 さて、今回の映画は「ワンダー 君は太陽」です。

 難病「トリーチャー・コリンズ症候群」により産まれた頃から何度も手術を重ねてきた少年オーガスト(オギー)・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)。両親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)とネイト(オーウェン・ウィルソン)から教育を受けてはいたたものの一度も学校に行ったことのなかったオギーだったが病状が一段落したことで学校に通えるようになる。しかし病により変形してしまったオギーの顔を見た生徒たちはなかなか受け入れられず、いじめにまで遭ってしまいオギーはふさぎ込んでしまう。 
 両親の励ましを受けたオギーは何とか立ち直り懸命に行動を起こす。そうした中でジャック・ウィル(ノア・ジュープ)という少年と友達になったオギーは少しずつ学校生活に馴染んでいくが…

 2017年に製作され(日本公開は翌2018年)、難病を抱えた少年が自らの世界を広げていく様と、それに寄り添い生きる家族の姿をユーモラスかつ繊細に描き出し各所で称賛を浴びた作品です。
 異質な存在に対して笑顔で残酷な言葉を浴びせかける子、見た目が違うけど話してみると賢いし面白いヤツだからと段々と仲良くなりオギーを受け入れていく子、どちらも子供らしい姿であり、それらに晒される日々の中でオギーは自身の内面も成長させながら同時に周囲の状況をも変化させていきます。
 面白いのはこの映画、決してオギー一人にスポットを当て続けるわけではない点です。始めにオギーが学校に行くことになったことで生じた困難と葛藤を描きますがその後、オギーの姉のヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)、ヴィアの親友のミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)、そしてジャック・ウィルと章立てを変えてそれぞれの視点で物語が語られオギーが起こした影響が波及していくと共に片面的でない内面が描き出され徐々に重層化していきます。

 この作品を手掛けたのはスティーブン・チョボウスキー。いわゆるスクールカーストの最下層となった青年の心情を繊細に描いた作品「ウォールフラワー」で評価を集め、近年ではエマ・ワトソンが主演した実写版「美女と野獣」の脚本を務めた人物です。

 一人の少年を起点に子供も大人も皆何かしらの影響を受け成長してゆく、主人公の見た目に眩みがちですがこれは人種や体型など他の事象へも置換可能で「ただ異質であるが故に」起きている差別やいじめに対してどう向き合うべきかの示唆も与えてくれる寓話的な内容であると言えるでしょう。
 ストレスや不安を何かにぶつけたくなる日々が続いていますが、少し立ち止まることを余儀なくされているこの時間にこういう物語に触れることで得られるものもあると思います。是非多くの方にご覧になって頂きたいですね。

 それにしてもできれば来週はまだ無理でも再来週かその次くらいには公開中の作品の感想が書きたいですのぅ。そろそろ映画館で映画が観たい。やっぱりね、映画館で観るのが良いんですよ。

拍手[3回]

コロナ禍により休業を余儀なくされ閉館の危機さえあるミニシアターの支援を目的に、映画監督深田晃司と濱口竜介が発起人となって立ち上げた「ミニシアター・エイド基金」(HP)というプロジェクトがあります。クラウドファンディングの形式をとり支援金を募るプロジェクトで、立ち上げから2週間ほどで2億近くが集まったとか。私もできる範囲での最大限を支援いたしました。たとえコロナ禍が治まっても、映画館が無くなってしまっては困るのです。Amazonプライムなどを利用して浴びるように映画を観てる日々ですが、映画館で観れないとやっぱり物足りないんですよ。
 
 こんばんは、小島@監督です。
 これに限らず、クラウドファンディングを用いて休業を余儀なくされた店舗や業界への支援事業が数多く展開しています。皆さんの中でも何がしかの支援をなさった方、いらっしゃるのではないでしょうか。

 さて、これだけ自粛自粛で気も滅入ってくる日々には何かこう熱いボンクラ映画が観たくならないかい?そうだろう、そうだろう。ということで今回の映画はダブルスキンヘッドオヤジアクション超大作「ワイルド・スピード スーパーコンボ」です。

 イギリス・ロンドン、テロ組織に奪われた強力な致死性を持ったウィルス「スノーフレーク」を奪還すべくMI6の部隊が密輸トラックを襲撃する。奪還が成功するかに見えた矢先ブリクストン(イドリス・エルバ)が率いる一団が現れ部隊を一掃。部隊の一人ハッティ・ショウ(ヴァネッサ・カーヴィー)はウィルスがブリクストンの手に渡るのを阻止すべく自身の体にウィルスを注入して逃走した。
 状況を重く見た英米両政府は元アメリカ外交保安部捜査官のルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と元イギリス軍特殊部隊のデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)にハッティの保護を依頼するのだが。

 2001年から続く人気シリーズ「ワイルド・スピード」、その9作目にあたる作品で同時に初のスピンオフとして5作目「MEGA MAX」から出演しているドウェイン・ジョンソンと6作目「EURO MISSION」から出演しているジェイソン・ステイサムの2人を主人公に迎えて製作され、昨年公開されました。
 シリーズの肉密度とスキンヘッド率を上昇させた2人を主役に据えたことで、これまでの売りでもあったスマートな車たちによるダイナミックなカーアクションは少々鳴りを潜め、代わってパワフルそのものの肉体派アクションが展開します。監督は「ジョン・ウィック」シリーズや「デッドプール2」「アトミック・ブロンド」を手掛けたデヴィッド・リーチ。多様なアイディアを盛り込む同氏らしく、今作でもこれでもかとばかりに多彩なアイディアで楽しませてくれます。

 この映画、ドウェイン・ジョンソンとジェイソン・ステイサムの2人をメインに据えた時点でもう勝ちみたいな作品です。「ワイルド・スピード」シリーズの一環とは言え主人公のヴィン・ディーゼルが一切出てこない潔さもポイントで過去の作品を全く観ていなくても十分物語が分かるのも良いですね。それでいてちゃんとシリーズの一つとして成立できているのは3作目「X3 TOKYO DRIFT」以来一貫してシリーズのシナリオを手掛けているクリス・モーガンの手腕もあるでしょう。
 過去の作品において出会ったそばからガチンコで戦い続けてきた2人らしくコンビを組まざるを得ない状況になっても一切そりが合わず、罵倒はするわ何なら相手を出し抜こうとするわというやり取りがイチイチおかしい。135分もあるのにハイテンポで展開し、これらが渾然一体となった極め付きにサモアを舞台に展開するクライマックスのアクションシークエンス(何とハカで始まる!)は異様なまでのカロリーの高さでもうバカみたいに楽しいです。

 深く考えたら割と負け、理屈抜きのアクション・エンターテインメント。これぐらいアッパーな作品が観たい時だってきっとある。知能指数は低めでGOだ!

拍手[3回]

職場からの指示で週3勤になり、余裕のある時間が増えました。自分から申請した休みではないしコロナ禍で仕事そのものが減少している結果の状況なのと職場からのメールなどはちょいちょいチェックしないとまずいので妙に落ち着かない気分です。
 ま、そうは言っても観てる映画の本数とゲームのプレイ時間は増えましたがね、フフフ。

 こんばんは、小島@監督です。
 何より一番増えたのは睡眠時間だったりする(笑)

 さて、前回のハイルさんのブログにもありましたが先日声優・藤原啓治さんの訃報が流れました。2016年に病気療養を理由に一時休業に入ったものの翌年から少しずつ再開しており吹替やナレーションを中心に出演作が増え始めていた矢先だっただけに残念でなりません。個人的に特に印象深いのは「鋼の錬金術師」のマース・ヒューズ。「メタルギアソリッド」ファンとしてはシギントも忘れ難いところですね。そこで今回は彼を偲んでその演技の粋を味わえる1本をご紹介。「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」です。

 しんのすけ(声・矢島晶子)と連れ立ちロボットアニメの映画を観たひろし(声・藤原啓治)は、その帰り道しんのすけにせがまれて肩車をした際にギックリ腰になってしまった。よろめきながら病院に向かうも日曜日なので休診。絶望的な気持ちになるが突如現れた美女に誘われマッサージを兼ねたエステの無料体験を受けることに。気持ち良さに一眠りしたひろしは目が覚めた時、自身の体がロボットになっていることを知る。

 2014年に公開した劇場版で、生身とロボット2人のひろしが登場。故・藤原啓治の硬軟織り交ぜた喜怒哀楽の振り幅の大きい演技を存分に堪能できる1本です。脚本は「仮面ライダーフォーゼ」「天元突破グレンラガン」などを手掛けた中島かずき、監督はこの作品だけでなく「クレヨンしんちゃん」シリーズに長年制作進行や絵コンテなどで関与し続けている高橋渉が務めています。また高橋渉はこれが初監督作品でもあり、劇場版クレヨンしんちゃんでは後年「爆睡!ユメミーワールド大突撃」(2016年)「爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~」(2018年)でも監督を担っています。シリーズの中でも高い興行成績を誇っているほか文化庁メディア芸術祭でも優秀賞を獲得するなど批評面でも高い評価を得た作品です。

 しがない中年男の悲哀と意地、劇場版クレしんでは定番ともいえる家族愛を軸に、クレしん特有の強めの笑いをまぶしながら展開する作品です。ただこの「笑い」が曲者でテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ」や往年のファミコンソフト「キン肉マン マッスルタッグマッチ」のパロディが唐突に登場する上、ゲスト声優としてコロッケが出演しているのを良いことにクライマックスではかなりの大ネタをブッ込んでくるので笑いの方向性がだいぶ昭和~平成前半。これに付いていけるか行けないかで評価がだいぶ分かれるんじゃないかという気もします。

 藤原啓治さんの演技に注目すれば、それが真骨頂を迎えるのは後半。ロボとーちゃんはひろしが改造されたわけではないことが判明し生身のひろしが帰ってきます。そこから見せる人間とロボットの相克を1人2役で文字通り「一身に」表現してみせます。この映画において笑うのも泣くのも観客の感情を揺さぶるのは全て彼が起点になっています。まさに独壇場。名優だからこそなし得る渋さが光る演技をたっぷりと堪能できます。

 真に得難い声の持ち主でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。

拍手[4回]

愛知県が独自に出した緊急事態宣言を受けて、ミッドランドスクエアシネマ全館、伏見ミリオン座、センチュリーシネマ、シネマスコーレが概ね5月連休明けまでの臨時休業に踏み切り、名駅界隈で営業しているのは109シネマズ名古屋と今池のシネマテークの2館のみに。この2館もいつまで営業が続くのか予断を許さない状況。致し方無いことではあるのですが、やはりきついです。
 営業再開したらガンガン観に行ってやる!と思う一方で特にミニシアターに対して支援・救済のためのクラウドファンディングを立ち上げているところもあるのでそこに支援を投じようかとも思う次第。

 こんばんは、小島@監督です。
 で、実は私も職場が外出自粛要請と売り上げの急激な減少を受けて今週から約3週間の予定で出勤日数が週3日のみに。もうこうなったらやれるだけ積みゲーを崩しにかかります。

 さて、それでも私はここで映画を紹介し続けるぜ!ということで、今回の映画は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝 永遠と自動手記人形」です。

 戦災により両腕を失い、機械義手を付けている女性ヴァイオレット・エヴァーガーデン(声・石川由依)はC.H郵便社を営むクラウディア・ホッジンズ(声・子安武人)のもとで代筆業をして暮らしている。
 ある時、ヴァイオレットのもとに一つの依頼が届いた。良家の子女のみが通うことを許される女学院。そこの生徒であるイザベラ・ヨーク(声・寿美菜子)の教育係として赴任してほしいというものだった。女学院を訪ねたヴァイオレットはイザベラと出会う。イザベラは病を患い、そしてそれ以上に将来に対して悲観していた。

 昨年公開された京都アニメーション製作のアニメ映画です。多くの方が亡くなった7月の放火事件を受け公開そのものが危ぶまれていましたが、事件直前に完成していたことが判明し9月に公開されました。また監督藤田春香の意向で製作に関与した全スタッフの名がクレジットされています。製作発表の当初は2週間の限定上映との告知でしたが事件後の激励に応える形で3週間へと延伸し、公開後の高評価を受けて上映館によっては通常のロードショー作品と同様の扱いとなって更に数週間上映期間が延びたところもありました。本来であれば今月新作の劇場版が公開される予定でそのPRを兼ねての再上映が今一部の映画館で行われていますが、新型コロナウィルスの影響で新作の公開は延期となってしまいました。不遇ともいえる数奇な運命を背負わされた作品です。

 実はその再上映を利用して鑑賞したため(このご時世なので観客は私を含めて4人しかいなかった)TVシリーズの方はまだちゃんと観たことが無くこの1本だけの感想になりますが、人々の心根の優しさを細やかにすくい上げる語り口に良い具合に泣かされてしまいました。「手紙」が重要なファクターになっているだけあり言葉に気を使って作られているのが分かりますし、表情や仕草の芝居も見事で決してセリフに頼り切らないのもいいですね。衣擦れの中にヴァイオレットの義手が鳴らす機械音・作動音が混じる効果音の具合も見事で細部まで血と神経の通った作品です。特に髪の毛やスカートの裾の表現が素晴らしく、この辺りにここまで繊細な書き込みができるところは京アニの真骨頂とも言えるでしょう。何もかもが「美しい」と言えるアニメ映画です。

 物語の方は2部構成となっており、前半はヴァイオレットとイザベラの交流を主軸に、後半は郵便社に押し掛ける少女テイラー(声・悠木碧)とヴァイオレットと配達人の青年ベネディクト(声・内山昂輝)とのエピソードが中心となり、その2つを手紙がつなぎます。物理的に隔てられていようとも心までが離れてしまったわけではない。決して多弁ではない一通の手紙が相手の心を救うこともある。この優しい語り口こそ、多くの人を惹きつけた要因でしょう。

 奇妙なまでに多くの厄災に翻弄されるシリーズですが、作品が持つテーマは今まさに真に迫るものと言えます。擦り切れそうな日々が続く昨今、ふと誰かを思うよすがとしてせめてひと時こういった作品で安らぎを得られたらと願います。

拍手[2回]

とうとうゴールデンウイーク映画の顔であった「名探偵コナン」と「クレヨンしんちゃん」の新作までもが公開延期に。今般のコロナ禍がもたらす「新作映画がほとんど公開されない」というのは長く映画ファンをやってきた身としても経験が無く、旧作を積極的にリバイバルしながらわずかな新作と3月上旬以前に封切られた準新作を取り回してしのぐ今のシネコンのタイムテーブルは見てて痛々しくさえあります。しかも感染リスクのことを考えると私みたいなタイプはそれでも行く可能性はありますが、誰かを誘ったり軽々に来場を勧めたりしづらいのがより心苦しい。「映画」そのものが今、受難の時を迎えています。

 こんばんは、小島@監督です。
 無論それは映画だけのことではないです。私の仕事も結構なダメージ食らってますし。

 さて、そんな只中なので今回取り上げるのも公開中の作品ではないです。昨今のこの状況を予見したかのような内容に今再評価の動きが高まっている作品をレンタル配信で鑑賞。ということで、今回の映画は「コンテイジョン」です。先月この映画の医療監修を担ったイアン・リプキン氏が新型コロナウィルスに罹患したこともニュースとして伝えられました。

 香港での商用を終えたベス・エムホフ(グウィネス・パルトロウ)は帰路の途中シカゴに立ち寄り浮気相手との関係を楽しんだのち帰宅した。2日後ベスは自宅で急激に体調を崩し意識を失う。夫のミッチ(マット・デイモン)は慌てて救急車を呼ぶが、ベスは間もなく病院で命を落とした。ほぼ同時期に香港で青年が、東京では香港から帰国したサラリーマンが同様の症状で死亡、またその場に居合わせた人々も発症し命を落とした。
 DHS(国土安全保障省)の職員たちはCDC(疾病対策センター)のエリス・チーヴァー(ローレンス・フィッシュバーン)の元を訪ね、生物兵器を使ったバイオテロの可能性への懸念を伝える。エリスはエリン・ミアーズ(ケイト・ウィンスレット)を派遣し病気の調査に当たらせるが。

 2011年に製作・公開されたパンデミック・スリラーです。脚本は「ボーン・アルティメイタム」や今冬公開予定の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」などのスコット・Z・バーンズ、監督は「オーシャンズ」シリーズや「チェ」2部作などを多くのヒット作を生み出したスティーブン・ソダーバーグが手掛けています。未知のウイルスの蔓延により次々と人が倒れていく中でどのようにそれと向き合っていったかを描く群像劇となっています。「オーシャンズ」シリーズやアカデミー賞監督賞を受賞した「トラフィック」などソダーバーグ監督は群像劇が多いので彼の好みのスタイルなのでしょう。
 丹念なリサーチの結実が感じられる映画で、クローズアップされるドアノブやタッチパネルに未知のウィルスが接触感染・飛沫感染であることを伝える描写、感染拡大の予防方法、発症が確認されてからの防疫プロセスなど、今まさに連日ニュースで伝えられている様子そのままの場面が次々と登場します。更にこの状況下で利己的に動き回るネットジャーナリスト、飛び交うデマと疑心暗鬼の渦にパニックを起こす人たちの描写も生々しく、9年前の作品が見せる今日性に驚かされます。

 世界的なクライシスを描く映画ではありますが全体的に抑制のきいたトーンで語られ、静かな緊張感が持続する作りをしています。…いますが、はっきり言ってそれは「今」だからこそ言えることであり現在のようなパンデミック下でない何事も無いような時にこれを観ていたら「スケールが大きい上に俳優も豪華なのに地味」としか言いようもない部分もあります。ですが実際今まさに自身の生活が脅かされている現在、この映画が伝えているものは決して小さくはありません。無ければ無いに越したことはないのでしょうが、時に公開後何年も経ってからこういう「力」を持った映画が登場することがあります。

 絶対的なまでに「今」観るべきという映画と言えます。映画観る時でまで現実と向き合いたくない、という方もいらっしゃると思いますので無理にとは言いませんが、それでも今起きていることにどう向き合うかを考えるきかっけの一つにしていただければと思いますね。

拍手[1回]

今日の昼全国を駆け巡った志村けんさんの訃報に驚きと悲しみを隠せません。「8時だョ!全員集合!」「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」「志村けんのだいじょうぶだぁ」などのコント番組の直撃世代だったこともあり、「変なおじさん」や「バカ殿様」といった彼が生み出したキャラクターたちに笑わせてもらったものです。
 大人になってから彼のコントを観ると笑いをもたらす表情や動きの一つ一つに多様で膨大な修練と稽古が裏打ちされていることに気付けるようになりました。俳優としても類稀な才の持ち主であったに違いないのですがあくまでコメディアンとしてコントの道を貫き、映画の出演作は少なく、ドリフターズのメンバーとして2作、声優としてアニメ映画に2作出演した以外では故・高倉健からオファーがあったという「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年製作。監督降旗康男)のみ。今年初主演作となる「キネマの神様」がクランクインが予定されていたと聞きました。これからその芸能人生の集大成が観られるかと思っていたのに本当に残念でなりません。

 こんばんは、小島@監督です。
 謹んでお悔やみ申し上げます…おのれ…コロナウィルス…ッ(慟哭)!

 さて、全国的な自粛ムードで外出も憚られる昨今なので今回は最新作ではなくここ数日に配信で鑑賞した作品の中から一つをご紹介。今回の映画は「パパはわるものチャンピオン」です。只今Amazonプライムにて見放題配信中。

 プロレスラー大村孝志(棚橋弘至)はかつてエースとして活躍していたが怪我や世代交代の影響で今は悪役の覆面レスラー「ゴキブリマスク」としてリングに上がっていた。そんな自分を妻・詩織(木村佳乃)は理解し応援してくれるが息子の祥太(寺田心)には打ち明けられずにいた。
 ある日、同級生に焚きつけられ祥太は父の仕事を突き止めようと後をつけていく。そしてヒールレスラーとしてリングで反則行為に及ぶ父の姿を目撃してしまうのだった。

 2018年に製作・公開されたプロレスラー棚橋弘至の初主演映画であり、同時に新日本プロレスの全面協力のもとオカダカズチカや真壁刀義ら現役レスラーが多数出演したプロレス映画です。リングで戦う人々の姿を描いたプロレス映画はアメリカ・日本・韓国を中心に定期的に製作される題材で、中でも2008年にミッキー・ローク主演で製作された「レスラー」はベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得するなど世界的に高い評価を得ました。近年でも洋画ではプロレスラーに憧れるダウン症の少年を描いた「ピーナッツバター・ファルコン」(2019年)やプロレスを生業とする一家の姿を描く「ファイティング・ファミリー」(2019年)が、日本では女子プロを題材にした青春映画「太陽からプランチャ」(2014年)や道頓堀プロレスの協力のもと製作された「おっさんとケーフェイ」(2017年)などが製作されています。どれも公開規模は決して大きくはなくメインストリームとは言い難いですが、他の格闘技と比べて特に興行的側面や演出色の強いプロレスに他にはない魅力を感じている人が多いことの表れと言えるでしょう。

 話を「パパはわるものチャンピオン」の方に戻しましょう。
 この映画、かなり不思議な魅力のある作品です。レスラーが全員現役なのでダブルを使わずプロレスのシーンは全てガチなためリアルなプロレスが観られる(公開後この映画を再現したイベントが新日本プロレスで開催されたほど)一方で、物語ははっきり言ってかなりベタな部類に入りますし、主演棚橋弘至の演技も決して上手い方とは言えません。だと言うのに面白い。面白いのです。往時の動きは陰りを見せエースとしては活躍できなくなり覆面を被りヒールとしてブーイングを浴びるようになってもリングに上がり好きなプロレスを仕事にして生きていきたい男の誇りと矜持が泥臭いドラマの中に描き出され、気づけば妙な感情移入。クライマックスのオカダカズチカ演じるレスラー・ドラゴンジョージとのマッチアップではあるシーンでついマジ涙。時間つぶしのながら見のつもりでいたのに最後は本気で観てました。

 さして普段プロレスは観ない私でも結構楽しめてしまったのでプロレスファンの人にとってはより深く楽しめるタイプの作品でしょう。分かりやす過ぎるくらいのベタな泥臭さが苦手でなければ一度トライしてみてほしい逸品ですね。
 
 しかし、気楽に映画館に行ける日々が早く戻って来て欲しい…

拍手[1回]

何がきっかけというワケでもないのですがフッと観たくなったもので、久しぶりに「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」を見返しています。1996~99年の作品ですからもう20年以上になるんですね。
 戦場で奇妙な出会いを果たした青年士官シロー・アマダとジオン公国名家の令嬢アイナ・サハリンの「ロミオとジュリエット」を思わせるラブストーリーを軸に、シローが小隊長として赴任した08小隊のメンバーとの交流や衝突、戦場の現実と理想の狭間で揺れる姿を描き出します。ウェットで情を重視したドラマを展開する一方で戦闘シーンが非常にドライで、他作品よりモビルスーツの兵器としての側面が強調されているのが特徴ですね。サブキャラクターに玄田哲章、小山茉美、永井一郎、広瀬正志などファーストガンダム出演者が何人もキャスティングされているところも興味深いところ。
 本編11話+中盤までの再編集と終盤へのブリッジとなるエピソードで構成された中編「ミラーズ・リポート」、完結編「ラスト・リゾート」の全13エピソードとそれほど長くなくて見易い部類に入る作品なので未見の方は是非。

 こんばんは、小島@監督です。
 共に米倉千尋が歌うOP「嵐の中で輝いて」とED「10 YEARS AFTER」も名曲。何度か歌会でも歌ったしね(笑)!

 さて、今回の映画は「ミッドサマー」です。

 大学生のダニー(フローレンス・ビュー)は、妹が両親を巻き込んで一家心中を図ったトラウマから抜け出せないでいた。恋人であるクリスチャン(ジャック・レイナー)との関係も上手くいかず、ダニーの哀しみにクリスチャンは寄り添ってくれない。不眠症になったダニーはある時、クリスチャンから半ば強引に誘われたパーティーの場でクリスチャンが男友達のジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)、マーク(ウィル・ポールター)らとスウェーデン人の交換留学生ペレ(ヴィルヘルム・ブロングレン)の故郷で行われる夏至祭に行くことを知る。旅行のことを知らされず戸惑うダニーにクリスチャンは迷った末に旅行に誘い、ダニーも同行を決めた。
 ペレによれば故郷の夏至祭は今年は90年に1度のものになるという。スウェーデンに到着したダニーたちは人里離れたヘルシングランド地方へ向かう。白夜の地で、ダニーたちが目にする夏至祭とは…?

 封切りから約1か月、SNSなどで評判が広まり公開館が増えるばかりかディレクターズカット版まで上映されるようになった逸品です。ホラーやスリラーといえば大抵明度や色調が暗い場面というのがお定まりですが白夜のスウェーデンを舞台にほぼ全部明るい中で展開するばかりか咲き誇る花々や溢れる笑顔の只中で目もくらむような惨劇を叩き付けてくる、映画史上でも稀なタイプのスリラーと言えるでしょう。
 生命倫理の根本から全く違う閉鎖的な文化の中に迷い込んだ恐怖を描いた作品としては、1973年に製作された「ウィッカーマン」というホラー映画がありますが、いくつかの要素に共通項があり「ミッドサマー」にもどこか通底するものを感じます。また、どことなく「第七の封印」「野いちご」などを手掛けたイングマール・ベルイマン監督作品にも近い雰囲気を感じますが、作中イングマールという名の人物が登場するのでこの辺りは意識的にやっていることかもしれません。

 個を重視する社会と共同体を絶対視する社会、性的なものを忌避するキリスト教と性交すら命の営みの中で当たり前のようにある自然崇拝、様々な対立構造を見せるこの作品をより深く楽しむには多少でも民俗学的なものを知っておくと良いでしょう。実は作中で夏至祭の儀式の一環として行われる物事のいくつかは出自は様々とは言え北欧でかつて「あった」とされるものが組み合わされています。閉鎖的な共同体に外部からの訪問者がやってくる(外部の血を取り込む)「まれびと信仰」は北欧だけでなく日本やアジアでも見受けられるものです。ただ知ってると興味深くは見られますが、同時に最終的な落としどころが読めてしまう弊害もあるので予備知識の塩梅はなかなか難しいところ。

 一般的なホラーやスリラーとの大きな違いは突然ショッキングなシーンをぶつけて驚かせるのではなくすべて地続きの中に当然のようにグロテスクなものを差し挟んでくる、恐らく意識的に「生理的に合いにくいリズム」で物語を綴っている点です。ぞわっとする不快感を緻密に積み上げてクライマックスへと持って行くためホラーへの耐性が相当高くないと色々な意味で辛い作品なのではないかと思われますが、だからこそハマってしまう人がいるのも理解できる作品です。ただ個人的にはこの147分はさすがに長くてきつかった。ディレクターズカット版は171分あるそうで、ちょっと私には無理かも。

 この何かキメたかのような白昼夢のごとき映像はやはり唯一無二で、また話題作でもありますし興味があれば観ておいても良いかとは思います。が、ぶっちゃけとてもタチが悪くてエグい映画なので耐えられないと思えば途中で退席するのも一つの手段です。ご無理はなさいませんように。

拍手[2回]

/