ちゅうカラぶろぐ


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昨日放送された「M-1グランプリ」、ご覧になった方も多いでしょう。優勝したたくろうも見事でしたが、私的にストライクだったのはドンデコルテ。報われずにいる中年の機微と不平不満をすくい上げ的確に言語化して笑いに昇華させる凄みに痺れました。選んでいた言葉からして恐らく社会学にも造詣がある上に異様なほど巧みな話術。長年埋もれたこんな才能がフッと輝き出す瞬間を見られるのが「M-1」の面白さですね。

 こんばんは、小島@監督です。
 ドンデコルテ、しばらく注目していよう。

 さて、今回の映画は「WEAPONS/ウェポンズ」です。

 その夜、午前2時17分。メイブルック小学校のジャスティン・ギャンディ(ジュリア・ガーナー)が担任を受け持つクラスの生徒たちが1人を残して同時にベッドから起き上がり闇夜へ駆け出してそのまま失踪した。警察はジャスティンと唯一残った生徒アレックス・リリーを聴取するが手掛かりは得られず1ヶ月が経過した。生徒は戻らず事件の犯人と疑われ休職を余儀無くされたジャスティンは、アレックスと接触を試みるが。
 一方で息子が失踪したアーチャー・グラフ(ジョシュ・ブローリン)も遅々として進まない捜査に業を煮やし自身でも調査を開始。すると監視カメラの映像からある異様な状況に気付くのだが。

 ホラー小説の大家スティーブン・キング、あるいはスティーブン・スピルバーグ監督の映画では郊外を舞台にした作品が度々登場します。1970年代に州間高速道路(インターステイト・ハイウェイ)が整備され、過密化した都市部からいわゆる中流層が離れて新興住宅街が全米各地に造成され、都市へのアクセスも容易なそれらの街は通勤のベッドタウンとしての機能も果たしつつそれぞれが「アメリカ」の縮図となりました。キングやスピルバーグはそう言った「郊外」が持つ舞台の可能性にいち早く着眼し一時代を築いたと言って良いでしょう。それから半世紀近くを経て物語の舞台として定着した「郊外」は、近年でも「ゴーストバスターズ/アフターライフ」などの秀作が登場しています。今作「WEAPONS/ウェポンズ」も間違い無くその系譜に名を連ねるモダンホラーの逸品です。

 「これはある街で起きた、本当の話」という少女の声の語り出しで映画は始まります。郊外の小学校の生徒が1クラスぶんまるごと失踪し、大人たちは慌てふためき、警察の捜査も難航、自分たちでは解決できぬまま多くの者が亡くなったという。もうこのイントロだけで掴みはバッチリ、この手のジャンル映画にしては長い128分という上映時間も何のその、謎多き前半から怒涛の後半まで観客を強力に牽引します。

 映画は少々特殊な構造をしており、キャラクターの名を冠した6つの章で構成されています。各章はジャスティンやアーチャーなど章題となった人物の視点で展開、いわゆる「羅生門」的構造です。それぞれのエピソードは時系列では部分的に重なっており、章が進むにつれて全体像が見えていきます。観客は1章2章ではそもそもの行方すら掴ませない展開に、後半全貌が見えた後も「コレどうやって落とすの!?」という状況に翻弄されます。その翻弄のされ方がとても楽しい、というのがこの映画の面白さです。最後の一発逆転ぶりはもう「ジョジョの奇妙な冒険」でも読んでいるかのよう。提示されている粗筋と全く結び付かない「WEAPONS/ウェポンズ」というタイトルも、最後まで観ればなるほどというほかありません。
 フイっとこういうのが登場して来るから映画を観るのはやめられません。

 この作品も当初配信スルーになる予定だったと聞きます。本国での好評を受けて劇場公開へと舵を切った今作はワーナー・ブラザース・ジャパンの最後の洋画配給作品となりました。最後に挙げるにはクセの強い花火ですが、それもまたらしいというところでしょうか。
 公開ももう終盤に差し掛かっていますが、ブッ飛んだユニークな映画が欲しい方は是非どうぞ。

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