ちゅうカラぶろぐ


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NHK Eテレで深夜にひっそり放送されたのでご存知ない方が多いのではないかと思いますが、先日「駅が語れば」というドキュメンタリー番組が放送されました。JR北海道の宗谷本線、最北の無人駅と言われた抜海駅、今年3月に100年の歴史に幕を下ろした駅の最後の数ヶ月と、駅と鉄道と共に生きた人々の姿を綴った作品です。意にそまぬ結婚で鉄道に乗って駅に降り立ち、しかし献身的な夫に支えられて暮らした女性、鉄道でやって来た流れ者に家族を殺され悔恨の日々を過ごした男性、国鉄民営化の波に翻弄された駅員、そんな人々を静かに見守り続けた小さな駅。イッセー尾形と吉岡里帆の抑制の効いたナレーションに乗せて、映像も音声も降り積もる雪の如く静か。しかし余韻はどこまでも深い。油断すると泣いてしまいそうでした。あまりにも渋くて地味な作品ですが、これこそNHKの真骨頂。できればミニシアターのスクリーンで観たかった。

 こんばんは、小島@監督です。
 「駅が語れば」は今月20日に再放送を予定しているそうで、気になった方は是非!

 さて、今回の映画は「羅小黒戦記2ぼくらが望む未来」です。

 シャオヘイ(声・花澤香菜)は、師である執行人ムゲン(声・宮野真守)のもとで自身の強い力をコントロールする修業に励んでいた。
 そんな折、妖精たちが暮らす集落「会館」の一つが人間の軍隊に襲撃され、妖精を殺す力を秘めた霊木「ルオムー」が強奪された。襲撃の際の映像にはムゲンの姿が捉えられており、長老たちに呼び出されたムゲンはナタ(声・水瀬いのり)の家に軟禁されることになってしまう。
 シャオヘイは姉弟子であるルーイエ(声・悠木碧)と共にムゲンの嫌疑を晴らすべく行動を開始する。

 「鬼滅の刃」や「チェンソーマン」が日本だけでなく世界市場でもメインストリームに躍り出て活況を呈しているように見える日本アニメ市場。しかし単純に経済規模の話だけで言えば、日本を凌ぐ大きさとなっているのが中国です。既に製作本数も日本を凌駕し、今年公開された「ナタ 魔童の大暴れ」(日本では12月26日公開予定)はアニメ映画の歴代世界興行収入を塗り替え第1位となりました。中国経済自体は失速傾向にあると聞きますが、それでも世界のエンターテインメントにおいて中国の存在は極めて大きなものになっています。
 「羅小黒戦記」はもともとは2011年に小規模なWEBアニメからスタート、10年かけて中国を代表するアニメへと成長した作品です。2019年に劇場版が製作され日本では同年に字幕版が、翌年に吹替版が公開、コロナ禍に見舞われながらも口コミで評判を呼びロングランを記録、「鬼滅の刃無限列車編」が日本映画界の救世主となっていた一方で中国アニメの新潮流を印象付けました。5年ぶりの続編となった今作では、前作ではまだ残っていたインディーズっぽさも無くなりビジュアル、ストーリー両面においてスケールアップした堂々の大作です。

 主人公のシャオヘイはまず前作でムゲンとの出会いを通して人間を知り、今作では姉弟子であるルーイエとの冒険の中で価値観の相違と相克を知ることになります。一方でルーイエもまたシャオヘイを通して自身の過去と再び向き合うことに。シャオヘイとルーイエの価値観の相違は技術は教えるけれど心の領域には何も押し付けないムゲンの自然体な薫陶を受け自身の眼で世界を見つめたが故に生まれているものだというところが実に味わい深い。この2人の関係性を縦糸にしつつ、襲撃事件をきっかけに緊張状態が一触即発のところまで行く妖精と人間の相互不信とその陰にうごめく陰謀を横軸に、非常にドラマ性が高くなっています。

 実のところ先述の「ナタ 魔童の大暴れ」を筆頭に「白蛇:縁起」「ナタ転生」「TO BE HERO」など最近の中国アニメの主流は恐らく3DCGの方にあると思うのですが、「羅小黒戦記」はシンプルなデザインに手描きの描線を活かした2Dスタイル。キャラクター人気は主流だけれどアニメの表現としては傍流なのでちょっと独特な立ち位置なのではないかと思います。しかしそのぶん「DRAGON BALL」や「NARUTO」の遺伝子を強く感じられる映像表現は日本人には馴染みやすいのではないでしょうか。しかも超ハイクオリティ。カメラワークの見事さも加わってアクションシークエンスの迫力はこの作品の白眉です。

 正しく洗練と進化を遂げた今作は、台頭する中国アニメのパワーをまざまざと見せつけてくれます。エンターテインメントとしての深みもキャラクターの魅力も増した「羅小黒戦記」、続編も期待したくなっちゃいますね。

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