日本時間では昨夜11時頃にフランス・パリで開催された「凱旋門賞」、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。レースの結果とは別にしてちょっと面白かったのがフランスが配信している映像の中に府中の東京競馬場でのパブリックビューイングの模様がインサートされていたところ。フランス競馬における日本の立ち位置ってどうなってるんだw
こんばんは、小島@監督です。
そう言えば7月に開催されたパリ大賞典ではCygamesがメインスポンサーになったりしていたし半世紀以上も執念深く凱旋門賞に挑み続けているしでちょっと無視できないのかもしれませんね。
さて、今回の映画は「ワン・バトル・アフター・アナザー」です。
ボブ(レオナルド・ディカプリオ)はかつては世を騒がせた革命家であったが、闘争の末に妻ペルフィディア(テヤナ・テイラー)を失って十数年後、今は愛娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)と共に静かに暮らしていた。しかしある時からウィラが執拗に狙われるようになってしまう。白人エグゼクティブで構成される極右組織への加入を望む軍人ロックジョー(ショーン・ペン)がウィラが自身とペルフィディアとの子どもである可能性を疑い拉致しようとしていたのだ。持ち得る権力を振りかざして執拗にウィラを追跡するロックジョーに、ボブとウィラは徐々に追い詰めらていく。
1920年代の石油業界を舞台に欲望に溺れる人間たちを描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や一見すると無関係に思える男女の24時間を描く群像劇「マグノリア」などで評価を集め、カンヌ・ベルリン・ベネチアの三大国際映画祭で受賞経験を持つ巨匠ポール・トーマス・アンダーソン。その新作は、かつての感覚も錆びついた頃に窮地に陥りテンパっちゃうオヤジと執拗に追い詰める変態軍人とが狂気のチェイスを繰り広げる逃走劇です。ストーリーの密度に加えてアイディアとバリエーション豊かなアクションシークエンス、それを支える見事なカメラワークと編集の妙が加わり先の読めないツイストに観客を引きずり込みます。
娘のために文字通り転がりながら奔走するイマイチ冴えないオヤジを演じるレオナルド・ディカプリオと変態的性癖が自分の野心の障害になったばかりにあらゆる手を尽くして排除しようと追う軍人役にショーン・ペンという2人の名優の演技を観ているだけでも楽しいところに何故かボブを気前よく助けてくれる空手道場の「センセイ(先生)」役ベニチオ・デル・トロが加わり、更にボブの娘ウィラ役の新星チェイス・インフィニティがディカプリオら名優たちに負けない演技で張り合って見せて160分時間いっぱい楽しませてくれます。
なかなか味わい深いのがロックジョーやペルフィディアと言ったイかれた人間と深く関わってしまったとは言えボブ自体は「イカれようとしたけどイカレられなかった」人間として描かれているのが特徴的で、感情的になっても変にキレるところまで行かない、知恵が回ってもヒーローにはなり切れない、ボブのどことない凡庸さをディカプリオが見事に体現しています。レオナルド・ディカプリオ、その風貌で長らく二枚目であり続けてましたが円熟して壮年期に差し掛かって来たここ数年は性格俳優としての色が強くなってきました。どこか名優ジャック・ニコルソンを思わせるキャリアと貫禄が付いてきて、今後どんな映画でどんな役柄を演じるのか、楽しみですね。
極左組織の革命闘争を発端にして極右組織も闘争に絡んでくるのでそう言ったものの縮図が見て取れるものかと言えばそうではなくむしろ自己顕示欲が強すぎる愚者が人を動かせる権力を持ち得てしまうことのおぞましさを描いている作品ですが、そこそこ前から準備している作品だというのに見事なまでに昨今の情勢に対する強烈な風刺とアイロニーになっていて、結果的にかなりの激辛な寓話になっています。
キレッキレの演出が160分続く、癖も強いながら娯楽性と社会性が共にトップスピードなジェットコースターの如き傑作です。秋の入り口に差し掛かったところで凄いのが現れました。「スピルバーグが3回観た」もこれは誇張ではないかも。クライマックス、圧巻のカーチェイスにどうぞ痺れてください。
こんばんは、小島@監督です。
そう言えば7月に開催されたパリ大賞典ではCygamesがメインスポンサーになったりしていたし半世紀以上も執念深く凱旋門賞に挑み続けているしでちょっと無視できないのかもしれませんね。
さて、今回の映画は「ワン・バトル・アフター・アナザー」です。
ボブ(レオナルド・ディカプリオ)はかつては世を騒がせた革命家であったが、闘争の末に妻ペルフィディア(テヤナ・テイラー)を失って十数年後、今は愛娘ウィラ(チェイス・インフィニティ)と共に静かに暮らしていた。しかしある時からウィラが執拗に狙われるようになってしまう。白人エグゼクティブで構成される極右組織への加入を望む軍人ロックジョー(ショーン・ペン)がウィラが自身とペルフィディアとの子どもである可能性を疑い拉致しようとしていたのだ。持ち得る権力を振りかざして執拗にウィラを追跡するロックジョーに、ボブとウィラは徐々に追い詰めらていく。
1920年代の石油業界を舞台に欲望に溺れる人間たちを描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や一見すると無関係に思える男女の24時間を描く群像劇「マグノリア」などで評価を集め、カンヌ・ベルリン・ベネチアの三大国際映画祭で受賞経験を持つ巨匠ポール・トーマス・アンダーソン。その新作は、かつての感覚も錆びついた頃に窮地に陥りテンパっちゃうオヤジと執拗に追い詰める変態軍人とが狂気のチェイスを繰り広げる逃走劇です。ストーリーの密度に加えてアイディアとバリエーション豊かなアクションシークエンス、それを支える見事なカメラワークと編集の妙が加わり先の読めないツイストに観客を引きずり込みます。
娘のために文字通り転がりながら奔走するイマイチ冴えないオヤジを演じるレオナルド・ディカプリオと変態的性癖が自分の野心の障害になったばかりにあらゆる手を尽くして排除しようと追う軍人役にショーン・ペンという2人の名優の演技を観ているだけでも楽しいところに何故かボブを気前よく助けてくれる空手道場の「センセイ(先生)」役ベニチオ・デル・トロが加わり、更にボブの娘ウィラ役の新星チェイス・インフィニティがディカプリオら名優たちに負けない演技で張り合って見せて160分時間いっぱい楽しませてくれます。
なかなか味わい深いのがロックジョーやペルフィディアと言ったイかれた人間と深く関わってしまったとは言えボブ自体は「イカれようとしたけどイカレられなかった」人間として描かれているのが特徴的で、感情的になっても変にキレるところまで行かない、知恵が回ってもヒーローにはなり切れない、ボブのどことない凡庸さをディカプリオが見事に体現しています。レオナルド・ディカプリオ、その風貌で長らく二枚目であり続けてましたが円熟して壮年期に差し掛かって来たここ数年は性格俳優としての色が強くなってきました。どこか名優ジャック・ニコルソンを思わせるキャリアと貫禄が付いてきて、今後どんな映画でどんな役柄を演じるのか、楽しみですね。
極左組織の革命闘争を発端にして極右組織も闘争に絡んでくるのでそう言ったものの縮図が見て取れるものかと言えばそうではなくむしろ自己顕示欲が強すぎる愚者が人を動かせる権力を持ち得てしまうことのおぞましさを描いている作品ですが、そこそこ前から準備している作品だというのに見事なまでに昨今の情勢に対する強烈な風刺とアイロニーになっていて、結果的にかなりの激辛な寓話になっています。
キレッキレの演出が160分続く、癖も強いながら娯楽性と社会性が共にトップスピードなジェットコースターの如き傑作です。秋の入り口に差し掛かったところで凄いのが現れました。「スピルバーグが3回観た」もこれは誇張ではないかも。クライマックス、圧巻のカーチェイスにどうぞ痺れてください。
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