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ちゅうカラぶろぐ


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先週最終回を迎えた「機動戦士ガンダムGQuuuuuuX」を振り返るなら、ひとえに「祭り」であったように思えます。サンライズ×カラーのコラボレーションがもたらしたのは富野由悠季監督の「機動戦士ガンダム」を正史とした「本歌取り」の物語によってもはや古典の領域になりつつある1st〜逆襲のシャアまでの作品群を「再発見」する導線を作ってみせ、平日深夜という不利な放送時間も意外なほどライブ感の醸成に一役買って古参どころかご新規さんも巻き込み、先行上映「Beginning」も入れると約半年間ファンを楽しませてくれました。マチュやニャアンらのキャラクターも個性的で、もうちょっと彼女たちの活躍を観ていたかったような気も。

 こんばんは、小島@監督です。
 さすがに古びていく一方であった旧作群を再発見できた功績は大きく、「ガンダム」というコンテンツはこれで更に10年は戦えるようになったと思えます。ここからガンダムに入ってきた人たちが後年更なる傑作を生み出して来たら嬉しいですね。

 さて、今回の映画は「罪人たち」です。

 1932年アメリカ南部。大金を得た双子の兄弟スモークとスタック(マイケル・B・ジョーダン/2役)は閉鎖された製材所を買い取り客に音楽と酒を提供するジューク・ジョイントをオープンしようとする。酒を手配しミュージシャンを雇いいよいよ店はオープンの時を迎えた。酒、音楽、ギャンブルまでも始まり狂騒の夜が幕を開ける。それはやがて人ならざる者さえも呼び寄せる事になる。

 「フルートベール駅で」や「ブラックパンサー」などアメリカにおける黒人の悲喜とカルチャーを作品に落とし込みながら高いエンターテインメントを見せるフィルムメイカー・ライアン・クーグラー監督。その最新作は黒人差別も強く残る1932年の南部でブルースの音楽と共に人外の存在、ぶっちゃけて言えばヴァンパイアと死闘を繰り広げることになった者たちの一夜を描きます。
 
 吸血鬼ものも数あれど、まだこんなアプローチがあるのかと驚かされる一本です。
 前半は意外なほどゆったりとしたテンポで南部の片田舎での濃密な人間模様を描いていきます。結構な数の人物が登場しますが、きちんと把握しやすく配置され人物描写が積み重ねられている手腕はなかなかのもの。
 物語の中心はスモークとスタックの双子ですが、彼等の従兄弟である少年「プリーチャー・ボーイ」サミー(マイルズ・ケイトン)も非常に重要な存在です。神父の息子であるサミーは天才的なブルースの才能を持っていますが聖歌たるゴスペルに傾倒している父とは対立しており、それはそのままブラックミュージックの対立軸とも言えるでしょう。ミュージカルというわけでもないのですが、この映画は非常に音楽の比重が高いことが重要なファクターになっています。

 サミーの奏でるブルースは客たちをトランス状態へと導いていきますが、その音色にヴァンパイアも誘われてしまいます。ここで吸血鬼ものの定番「招かれないと家に入れない」という設定が活かされているのが特徴的。これに匹敵するのは小野不由美の「屍鬼」くらいではなかろうかというくらいに前面に出て機能しています。また登場する吸血鬼たちがアイルランド系というのもポイント。彼らもまたアメリカの主流から外れた遅れて来た移民たちである点は、この映画を読み解くのに重要でしょう。
 緊張感と恐怖が沸点に達し狂騒が惨劇と死闘に変わる頃には、物語はそれまでのゆったりしたテンポをかなぐり捨てて爆発し、ブルースとケルティックミュージックが交錯するクライマックスに突入します。

 全編にわたるブルースの哀愁を帯びた旋律は一方で非常にクールで、観ているとサントラが欲しくなってくるくらい。正直当初は別の映画を観ようとしたら満席だったので代わりに、という程度で観た一本でしたが想定外の面白さに大満足。
 なお本当のクライマックスはエンドクレジットの最中に語られる上にクレジットの終わりにももうワンシーンあるのでご鑑賞の際は明るくなるまで席をお立ちになりませんよう。

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