Z級サメ映画祭を始めとしてひと癖もふた癖もあるこだわりのラインナップで独特の存在感を放ったミニシアター「大須シネマ」が今月いっぱいで閉館となってしまうそうです。
ほとんど幻になっていた作品やインディーズアニメなども上映していて、正直なところ行けるなら毎週行きたいくらいだったんですが閉館は本当に残念です。僅か5年ほどの営業期間でしたが名古屋の映画館の歴史に確実に足跡を刻んだシアターだったと言えるでしょう。
こんばんは、小島@監督です。
閉館前にどうにかもう一度くらい行っておきたい。
さて、今回の映画は「Flow」です。
森の中の一軒家で暮らす一匹の黒猫。あるとき森を大洪水が襲い、すみかにしていた家が水没してしまった。黒猫は辛うじて難を逃れたもののじわじわと上がっていく水位に逃げ場を失っていく。そこに一艘の船が漂流して来た。どうにか飛び乗った黒猫だが、そこにはカピバラが一匹先客として乗り込んでいるのを見る。その後もキツネザルやヘビクイワシ、レトリバーらが船に乗り込み動物たちの奇妙な旅が始まる。彼らの旅はどこに行き着くのだろうか。
執拗に命を刈り取ろうとする巨人からバイクにまたがり逃避行する青年の旅路を描いた「Away」でアヌシー国際アニメーション映画祭でコントルシャン賞を受賞したラトビアの奇才ギンツ・ジロバルディスの長編第二作となる今作は、大水害から難を逃れ偶然一艘の船に乗り合わせることになった黒猫ら動物たちの冒険を描きます。「Away」同様に今作もセリフは一切無く、幻想的な世界観に浸りながら観客各々の中で想像を巡らして湧き上がって来た感慨や考察をもって完成する作品です。
冒頭で黒猫が居着いている家や、まるで何かに導かれるように彼らが訪れることになる場所にはつい最近まで人間がいた痕跡が残っているものの作中に全く人間は登場せず、人類は何故いなくなったのか、本当に誰もいないのか、そして世界を覆い尽くさんばかりに襲う大津波も、一体何故起きたのかと言ったことはヒントすら与えられないレベルで何も説明はされません。ただ作中で度々登場する鯨に似た巨大水棲生物の存在が、どうやら私たちの知る地球ではないらしいことを僅かに示唆するのみです。
一見するとワケが分からないのに繊細に設計された水の表現や手持ちカメラのように微妙に揺らしているカメラワークがもたらす臨場感の強さで気づけば黒猫たちの旅路に目が離せなくなっており、詩的かつ哲学的である共に、画と動きだけで見せるというアニメーションの根源に触れさせてくれる感激に震えさせてくれる逸品です。
ギンツ・ジルパロディス監督はこの作品をもってラトビアに初めてアカデミー長編アニメーション映画賞をもたらしました。唯一無二の世界観を生み出せるフィルムメーカーの、今後の活躍が楽しみですね。
ほとんど幻になっていた作品やインディーズアニメなども上映していて、正直なところ行けるなら毎週行きたいくらいだったんですが閉館は本当に残念です。僅か5年ほどの営業期間でしたが名古屋の映画館の歴史に確実に足跡を刻んだシアターだったと言えるでしょう。
こんばんは、小島@監督です。
閉館前にどうにかもう一度くらい行っておきたい。
さて、今回の映画は「Flow」です。
森の中の一軒家で暮らす一匹の黒猫。あるとき森を大洪水が襲い、すみかにしていた家が水没してしまった。黒猫は辛うじて難を逃れたもののじわじわと上がっていく水位に逃げ場を失っていく。そこに一艘の船が漂流して来た。どうにか飛び乗った黒猫だが、そこにはカピバラが一匹先客として乗り込んでいるのを見る。その後もキツネザルやヘビクイワシ、レトリバーらが船に乗り込み動物たちの奇妙な旅が始まる。彼らの旅はどこに行き着くのだろうか。
執拗に命を刈り取ろうとする巨人からバイクにまたがり逃避行する青年の旅路を描いた「Away」でアヌシー国際アニメーション映画祭でコントルシャン賞を受賞したラトビアの奇才ギンツ・ジロバルディスの長編第二作となる今作は、大水害から難を逃れ偶然一艘の船に乗り合わせることになった黒猫ら動物たちの冒険を描きます。「Away」同様に今作もセリフは一切無く、幻想的な世界観に浸りながら観客各々の中で想像を巡らして湧き上がって来た感慨や考察をもって完成する作品です。
冒頭で黒猫が居着いている家や、まるで何かに導かれるように彼らが訪れることになる場所にはつい最近まで人間がいた痕跡が残っているものの作中に全く人間は登場せず、人類は何故いなくなったのか、本当に誰もいないのか、そして世界を覆い尽くさんばかりに襲う大津波も、一体何故起きたのかと言ったことはヒントすら与えられないレベルで何も説明はされません。ただ作中で度々登場する鯨に似た巨大水棲生物の存在が、どうやら私たちの知る地球ではないらしいことを僅かに示唆するのみです。
一見するとワケが分からないのに繊細に設計された水の表現や手持ちカメラのように微妙に揺らしているカメラワークがもたらす臨場感の強さで気づけば黒猫たちの旅路に目が離せなくなっており、詩的かつ哲学的である共に、画と動きだけで見せるというアニメーションの根源に触れさせてくれる感激に震えさせてくれる逸品です。
ギンツ・ジルパロディス監督はこの作品をもってラトビアに初めてアカデミー長編アニメーション映画賞をもたらしました。唯一無二の世界観を生み出せるフィルムメーカーの、今後の活躍が楽しみですね。
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