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ちゅうカラぶろぐ


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昨日の歌会に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 8年ぶりのパーティールーム!もはや懐かしいというべきでしょうか。ちょっと気分がアッパーになった皆さんの歌を聴けたのも面白く、とても楽しい時間を過ごせました。

 こんばんは、小島@監督です。
 またこんな場があるのも楽しいかも。

 さて、今回の映画は「室井慎次敗れざる者」「生き続ける者」です。

 室井慎次(柳葉敏郎)は、かつて心通わせた男との約束を胸に警察組織の改革を進めていたが目に見える成果を出せぬまま組織内での風当たりが強くなり、道半ばで警察を去った。故郷の秋田へ帰った室井は古民家を買い取り修復して暮らし始めた。その後、母親を殺され孤児となった少年・貴仁(齋藤潤)、父親が罪を犯して収監中の子ども・凛久(前山くうが/前山こうが)を里親として引き取り育てていた。
 そんなある日、家のそばで他殺体が発見され、その身元が20年前のレインボーブリッジ事件の犯人グループの一人だと判明する。折しも、室井は森で行き倒れた少女・杏(福本莉子)を助け、預かるようになるが杏はかつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美(小泉今日子)の娘であった。
 小さな山村で、異変が迫りつつあった。

 不思議な巡り合わせと言うべきか、今年は「あぶない刑事」と「踊る大捜査線」という1980年代と90年代を代表する警察ドラマの新作映画が公開される年となりました。アクションと軽妙なテイスト、洗練されたファッションで見せる底抜けのエンターテインメントだった「あぶない刑事」、より現実的な警察組織の業務形態を物語に落とし込み、個人と組織の相克を描いた「踊る大捜査線」、いずれも今日に至るまで息が長く続くシリーズになり、ドラマシリーズを今観ればどちらも当時の時代の空気を色濃く写していたことに気付かせてくれます。
 「踊る大捜査線」が画期的だったのは織田裕二演じた明るく個性的な性格の刑事・青島俊作と堅物な超エリートだった室井慎次の対立と協力を繰り返しながらやがて強い友情で結ばれる二人を中心としながらも、刑事と犯人だけでなく「警察」という組織に関わる様々な人物が大量に登場する群像劇だったことが上げられ、「個人と組織の関わりを描く物語」というパッケージ自体が後続に与えた影響が非常に大きい作品です。1997年の連続ドラマの好評を得て翌1998年に初映画化。以降断続的に映画やスペシャルドラマが製作されており、特に2003年公開の第2作は実写邦画の歴代興収第1位の座を未だに譲り渡していない大ヒットとなりました(アニメも含めた日本映画としては2024年現在第7位。)

 そうは言っても2012年以降シリーズが途絶えていた「踊る」の12年ぶりの新作の中心になるのは、実直に生きた男・室井慎次。プロデューサー・亀山千広、監督・本広克行、脚本・君塚良一と言ったシリーズの中核メンバーも再結集して二部作の劇場版として製作されました。主演はもちろん柳葉敏郎。四半世紀に渡り同役を演じ続けてきた彼の、集大成とも言える仕上がりになっています。
 警察を去り山奥に隠棲している室井を、過去の因縁が追いかけてきます。追いかけてくるのは事件だけではないようで、室井はある種のヒーローになっているらしく警察を辞めているのに何かにつけて協力を求めに人がやって来ます。
 しかし、サスペンスやスリラーとして極めて魅力的な舞台が用意されているものの、そこが主眼にはなっていないのがこの二部作の大きな特徴で、良きにつけ悪きにつけ恐らく観に行った大半の方が「期待とは違う」と思ったのではないでしょうか。

 事件ものとして観ると、舞台を整えるのみに終わる前編を受けてさて後編はどうなるかと言えば、これが結構簡単に解決してしまいます。室井にしてみても「過去が追いかけてきた」から協力しているに過ぎない姿勢を終始崩さないため事件の顛末が物語に占める優先度は思いのほか低いところにいます。
 代わって全編に渡り重要なものとして語られるのが里親としての室井の姿です。貴仁、凛久、杏、3人ともそれぞれ相当にヘビーな境遇の持ち主である少年少女たちを精一杯愛して育てようとしている不器用な男の姿を前後編合わせて4時間という上映時間の大半を使って描いています。冬になれば雪も深くなる山村というロケーションと合わせて、同じフジテレビ系列のドラマで今も名作の呼び声高い「北の国から」が感触として近い印象です。
 また一方で、目に見える形での成果は無かったのだろうとは言え、実は室井が手掛けた組織改革は様々なところで着実に萌芽している描写もあり、その意味で確かにタイトル通りに「敗れざる者」であり「生き続ける者」であることが伺えます。

 ロケ撮影の多い映画で、中でもシーンの合間に度々挿入される荘厳な秋田の山村の点描が映画を彩ってくれる、相当に渋い燻し銀の人間ドラマ。求めてるものが違い過ぎて映画2本分の時間とお金を返して欲しくなる人もいるだろう一方で、私みたいにうっかり涙腺を刺激されてしまう人もいるはず。でもこれは恐らく私の方が少数派。ロッキングチェアでウイスキーのグラスを傾けたくなったそこのあなた、友達になりましょう(笑)

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