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ちゅうカラぶろぐ


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先日、声優大山のぶ代さんの訃報が。
 現在の水田わさびさんに代替わりしてからもうすぐ20年になりますが自分にとってはやはり世代的に「ドラえもん」の声といえば大山のぶ代さんのイメージ。のび太と一緒になって遊び回るというよりどこか保護者のような優しさを感じさせる声音にずっと慣れ親しんで来ました。ドラえもん降板後も「ダンガンロンパ」シリーズのモノクマ役で印象を残しこちらのイメージの方が強い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 死因は老衰とのことで大往生と言えるでしょうが、幼い頃から知っている方の訃報はやはり寂しいものがありますね。

 こんばんは、小島@監督です。
 劇場版ドラえもんはシリーズ45周年を記念して来年1月にリクエストで選ばれた作品を上映する企画が準備中とか。もう一度童心に帰ってあの声をスクリーンで楽しみたいですね。

 さて、今回の映画は「シビル・ウォー/アメリカ最後の日」です。

 近未来のアメリカ。「3期目」に突入した大統領(ニック・オファーマン)は権威主義に傾倒し独裁体制を築いた。これに反発した「西部勢力」が反乱を起こし内戦が勃発。アメリカ各地で武力衝突が発生した。
 戦場ジャーナリストのリー・スミス(キルスティン・ダンスト)と同僚のジョエル(ワグネル・モウラ)は、進行を続ける西部勢力に先んじてワシントンD.C.に乗り込み14ヶ月間一度も取材を受けていない大統領へ単独インタビューを実行しようと試みる。リーの師であるサミー(スティーブン・マッキー・ヘンダーソン)とリーに憧れ戦場カメラマンを志すジェシー・カレン(ケイリー・スピーニー)も加わり、4人は700km先のワシントンD.C.を目指す。

 「シビル・ウォー」とは「内戦」の意味ですが、アメリカではそれ自体で「南北戦争」を指す言葉になります。歴史に刻まれたこの戦争が再びアメリカ全土を覆ったら、それほどの分断がアメリカにまた横たわったら。最初にあらすじを知った時は政治劇の趣きを予想していましたが、実際はだいぶ違いました。舞台説明はほとんどされず、むしろ制作側の政治色は極限までオミットされています。
 独裁体制を敷いた大統領に叛旗を翻したのがテキサスとカリフォルニアの連合で、それに呼応した州も出て来て独立を歌い出した、という設定ですが、保守的で共和党支持が強いテキサスとリベラル志向で民主党が強いカリフォルニアが手を組むなどまずあり得ず、そんな「不可能が起きないといけないほどの事態」が起きてしまっているというのがポイントです。実際のところ、もし実現したら人口もGDPも軍事力も世界トップクラス、連邦政府打倒も夢ではない勢力の誕生で、それ故に映画では反乱軍が優勢で攻勢に出ているのも納得というところでしょうか。
 極めてデリケートなテーマながら政治性を敢えて薄めているところが賛否両論ある所以ですが、もっともリアリティ重視でアメリカの内戦を映画にして大統領選の年にぶつけて来たらそれこそ内戦の引き金になりかねないのでこのくらいで丁度いいのでしょう。

 映画はそう言った背景を考察させて観客に委ねることはせず、基本的にはジャーナリスト4人のロードムービーの形で展開していきます。立ち寄った先で起こる数々の事件に寓話性とサスペンスを見い出し、中でもジェシー・プレモンス演じる「赤いサングラスの男」は下手なホラー映画が裸足で逃げ出すレベルの怖さで観客を震え上がらせてくれるでしょう。旅が進むにつれてジャーナリスト4人のドラマも絡み合っていき、リーは次第にPTSDが深刻化していく一方でジェシーは戦場カメラマンとして急速に成長していきます。

 この映画を特徴づけるもう一つが音響です。まるで「プライベート・ライアン」や「地獄の黙示録」を思わせるリアルで生々しい音響設計に、時折不意に不協和音のようにスーサイドやスタージル・シンプソンの楽曲が差し挟まれ、それらが渾然となって独特の映像世界を作り上げています。IMAXのように迫力重視のスクリーンだといささかアンバランスに感じたのですが、Dolby cinemaや109名古屋の「SAION」、ミッドランドスクエアの「粋」など最近シネコンでも追加料金は不要ながら音響をアップグレードしたスクリーンが登場してきており、そう言った繊細なニュアンスを楽しめるスクリーンで鑑賞した方がより没入度が増すこと必至です。
 また、ジャーナリストという主戦軸から一歩引いた視点を主人公に据えていることもあり時折リーやジェシーが撮る写真が静止画で挿入されこの虚構の世界に奇妙なドキュメンタリーのような風合いをもたらしています。かつてこれに近い語り方をしていた高橋良輔監督の「FLAG」というアニメがあり、何だかそれを思い出してしまいました。

 恐らく日本人である以上この作品が持つ恐ろしさを本質的には理解できないのかもしれません。しかしラストでジェシーが撮る一枚の写真に複雑な感情が湧き上がらずにはおかないはず。アメリカも日本も大きな選挙を控えて政治の注目度が上がっているご時世。一つのよすがとして注目して然るべき作品なのは間違いありません。是非スクリーンで鑑賞して異様な空気感に震え上がってみてください。

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