ちゅうカラぶろぐ


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まさか一つの台風で一週間引っ張ることになろうとは。挙げ句に日本を縦断することなく消えてしまうし。しかも場所によっては甚大な被害に。長雨による交通への影響も結構なもので、私も出勤を取りやめて自宅待機してた日があったり何なら今日もダイヤを狂わされていつもより長い時間電車に揺られたりしています。

 こんばんは、小島@監督です。
 今月半ばにしばらくぶりの泊まりがけの遠征が控えているのですが、天候、問題無いと良いな…

 さて、今回の映画は「モノノ怪・唐傘」です。

 「大奥」、そこは世を統べる「天子様」の世継ぎを産むために各地から美女・才女たちが集められ独自の社会を形成する特別な場所。そこに二人の新人女中アサ(声・黒沢ともよ)とカメ(声・悠木碧)が足を踏み入れた。自身の才覚を持ってキャリアアップを図りたいアサと憧れた大奥に自分の居場所を見つけたいカメ、性格がまるで違う二人だが妙に気が合い、二人の間に絆が生まれていく。しかし、最高職位である歌山(声・小山茉美)は冷徹な表情の裏に何かを隠していた。そして大奥には奇怪な事件が起こり始める。そこにまとわりついた「情念」に立ち向かうべく、「薬売り」(声・神谷浩史)は大奥に迫る。

 元をたどれば2006年に放送された、日本古来の著名な怪談を独自解釈を加えてアニメ化した企画「怪~ayakashi~」の中の一篇「化猫」が好評を博し、翌年にはその登場人物の一人であった「薬売り」(「化猫」の時はただ「男」としてクレジットされていた)を主人公として単独のTVアニメ「モノノ怪」が製作・放送されました。その後コミック版や小説などが出版されたり舞台化がされたりしましたが、監督・中村健治を始め中核スタッフが再結集しアニメーション作品としては実に17年ぶりとなる新作が製作、劇場用長編として今夏公開されました。公開から1か月以上が経過していますが根強い人気を獲得しているようでロングラン中。おかげで先日ようやく観ることができました。

 近世日本をモチーフにした世界観と、和紙の質感をテクスチャーとして取り入れた極彩色でアバンギャルドなビジュアルは健在。TVシリーズのファンだった身にはこのビジュアルだけでもう入り込めてしまうくらいに唯一無二の存在感です。むしろ17年間の技術力の向上に劇場版としてのスケールアップが加わり非常に密度と情報量の多い画面をしています。
 
 物語はアサとカメ、二人の友情を軸としつつ、成り上がるためには自身の大切な何かを捨てなければならないという大奥の巨大で硬直した官僚機構の側面を見せながら、続発する怪事件の原因を薬売りが紐解いていくホラーミステリとして重層的に展開します。様々な要素がさながら万華鏡のように組み上げられ、直接的な言葉では語らない部分も多く初見の方は面食らってしまうかもしれませんが、これこそが「モノノ怪」の味わいでもありファンにとっては「変に分かり易くなくていい」というひねくれた誉め言葉を発してしまうところでもあります。

 とにかく、上映中に観れて良かった。強烈な没入感をもたらす圧倒的な情報量はスクリーンでなくては味わいきれるものではありません。野心的な作品を多く放送していた時期の「ノイタミナ」作品らしいエッジの効いた面白さは今も強い存在感を放ちます。聞けばこの劇場版は三部作の予定で第二作が来年3月公開を目指して準備中とか。まだまだ薬売りの怪異譚を楽しませてもらえそうです。

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