ちゅうカラぶろぐ


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自分の住んでいる地域では、どういうわけかここ3週間近く全く雨が降らずだいぶ乾燥気味。同じ市内の別の地域では結構夕立とかも降ったりしているようで、マジでこの辺りだけというのが解せぬ。

 こんばんは、小島@監督です。
 さすがにそろそろ一雨欲しい。

 さて、今回の映画は「お隣さんはヒトラー?」です。

 1960年、ホロコーストで家族を失い1人逃げ延びたユダヤ人ポルスキー(デビッド・ヘイマン)は南米コロンビアの地で独り静かに暮らしていた。ある日、空き家だった隣家にドイツ人ヘルツォーク(ウド・キア)が引っ越してくる。ヘルツォークに遠き日に一度だけ間近で見たヒトラーと酷似していることに気づいたポルスキーは、ヘルツォークがヒトラーである証拠を掴もうと隣家の監視を始めるが。

 1960年にアドルフ・アイヒマンがアルゼンチンで拘束されたことなども遠因となり、ヒトラーが実は1945年に自殺しておらず密かに南米へ逃亡しているという噂がまことしやかに囁かれ、一種のフォークロアとなっていました。その南米逃亡説をモチーフにしたユニークな映画がポーランドとイスラエルの合作で製作されました。
 ホロコーストを生き抜きドイツ人とナチスに恨みを抱きながら隠棲してきた男の前に現れた、ヒトラーかもしれない男。監視のさなか、ヘルツォークが指していたチェスに勝ち筋を伝えたことをきっかけに、あろうことか2人の間に奇妙な友情が芽生えます。

 ポルスキーがホロコーストで家族を亡くしたことを直接示す描写は無く、ただ冒頭に戦前の家族の幸せな一幕を描くのみ、という見せ方が渋いです。敢えて描かないとしたことで他のナチス映画とは一線を画す形になっています。
 映画は序盤はむしろナチスとドイツに恨みを持つ老人が妄想に囚われているように思わせ、中盤はポルスキーとヘルツォークの奇妙な友情を描き、そして終盤はヒトラー疑惑が思いもかけぬ形へ収束していきます。いわゆる「お隣さんミステリー」的なプロットですがユーモアとサスペンスがもたらす緊張感は思いのほか高く、物語は最後まで目が離せません。主演2人の演技が素晴らしい上に苦味と滋味溢れる終幕の余韻も深く、実はたまたま空いた時間にちょうどハマってたから、で観た映画だったのですが良い掘り出し物を見つけた気分です。

 奇しくもこの映画がイスラエルから発信されている(2022年製作なので現在の紛争状態が勃発する前の作品ではありますが)というのも現在のガザ情勢を考えると複雑な気持ちになります。壁一枚挟んだだけの隣人とどうやって関係を築いていくか、見事に示していながら実際はフェンス一つ隔てたところで酸鼻極めた紛争が起きている現状。示唆するものと現実の重さとの乖離に思いを馳せる。どうか早く終息して欲しいと願って止みません。

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